東大には進学選択※というシステムがあります。
※1年生と2年生の途中までの成績をもとに、3年生からの進学先(学部・学科)を決めることができる制度。
その進学選択の中で、最難関と言われるのが、”医進”(理科三類以外から医学部医学科への進学)です。
そこでUmeeTでは、今年度医進を成し遂げた方々に声をかけ、座談会を開催しました!
今回お集まりいただいた方々はこちら。
話が盛り上がりに盛り上がったため、今回は理二から医進したヤマトさんにフォーカスしてお届けします!
「レポートは教授へのラブレター」
「“真面目に勉強するのはキモいことである”という通念、これが教室を支配している」
など様々なパワーワードが飛び出した座談会、是非最後までご覧ください!
本日はよろしくお願いします!早速ですが、どうして医進しようと思ったのか教えてください。
実のところ、僕は高校生の頃から東大医学部に行きたかったんですよね。
でも受験の時に理三は無理かなと思い、結局理二に出して合格しました。
そういう東大生それなりにいる気がします。
そこで逃げたなという思いがあったので、1年生の4月から医進を目指して授業を受けていました。
ですが、6月にあった大学生活初めてのテストの結果があまりよくなくて…
あらららら
東大生って理三に限らずやっぱ頭いいなって思ったんですよね(笑)
そこから本気で勉強し始めました(笑)
具体的にはどんな戦略で進学選択に臨まれていたんですか?
僕は試験一発よりはレポートや実習系の授業の方が得意だったので、そういう授業を多くとるように意識していました。
私はレポートの書き方最後までわかってなかったなあ…(笑)
とりあえず上限ないやつはいっぱい書いておこうと思ってた。
(とりあえずいっぱい書けるのもまた才能では…?)
レポート書くときのコツとかあるんですか?
僕はレポートは教授へのラブレターだと思って書いてました。
おおおお?
要は読んでくれる人にリスペクトを示すということです。具体的に言うと、まずはレポートの体裁を論文の形に合わせることを意識していました。
なるほど…
レポートを読む人は普段からご自身で論文を書いたり、査読する立場の東大教授なので、論文に近い形式じゃないとちゃんと評価してもらえないんじゃないかと思って取り組んでいました。
だから仮説、方法、結果、考察っていう感じで章立てをして、参考文献をきちんと記載することを意識して書いていましたね。
(これが教授からモテる男のやり方か…)
あとはなるべく下手に出るようにすることも意識してました。
下手に出る?
教授って本当にその分野のスペシャリストなので、ネットでちょっとググったくらいの付け焼き刃な知識はすぐに看破されてしまうと思っていて。
だから、例えばきちんと論文の原著(英語)にあたって真面目に取り組んでいる姿勢を見せつつ、「こういうところはまだ分かっていないけれど、自分的には多分こうなんじゃないかと予想してます…!」くらい下手に出るとか、なるべく鼻につくようなレポートにならないように意識していました。
そもそも東大生の中でも、フォーマット・内容ともに気合が入ったレポートを出せている人は全体の上位3割くらいだと思うので、そこさえちゃんとやれば悪くない点数はくると思っていました。
なるほど…
僕のレポートに対する持論は、とりあえず圧倒すればいいということですね。
圧倒??
例えば初ゼミの最終レポートは3000字以上と言われたところを江戸時代の文書の原文に触れつつ2万字書いて優上をもらったり、スポ身ではA4×1枚って言われたところに選択できるテーマを全て書いてさまざまな分野の知見を絡めつつ10枚で出したりしました。とりあえず質・量ともに圧倒しさえすれば点数はついてくると思います。
そんなに書けるの凄すぎる
『ボーカロイド音楽論』のレポートは、自分が中高6年間までに抱えてきた問題意識と授業の内容を化学反応させて書いたものだったので、学部1年生としては傑作と言えるものができたと思ってます。もちろんこの先もっといいものを書ければと思っていますけどね。
傑作と言えるレポートがあるのすごい
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ヤマトさんが、医進を目指して勉強していく中で一番大変だったと感じたことは何ですか??
一番は孤独な時間をどう過ごすかというところですかね。
孤独?
受験の時と違って、大学生になって周りが遊んでいる間もずっと勉強している訳ですよね。
加えて色々やっかまれたりするのが嫌だなーと思っていたので、周りに医進目指してるということを伝えてなかったんです。そうすると必然的に1人で勉強する時間が長くなってしまって、その孤独感と向き合い続けなければならないというところに一番苦労しました。
確かにそれはしんどいですね…
私は逆に入学式とか顔合わせの時点から医進するっていうことを周りに言うようにしてましたね。それは昔から目標は人に言ったほうが叶いやすいという感覚を持っていたからなんですけど。
そう伝えた時の周りの学生の反応はどうでしたか?
少なくとも茶化すような人はいなかったですね。逆に周りに医進宣言できたのは、それを茶化すような東大生はいないだろうっていう謎の信頼感があったからかなと思います。
そういう環境だったから孤独ではあったかもしれないけど、安心して勉強できていたなと思います。
茶化す、茶化さないの話に関連して、真面目に勉強することをスティグマ化する環境も存在しますよね。
スティグマ化?
「真面目に勉強するのはキモいことである」という通念が教室を支配しているということですね。
なるほど…
確かにその通念は感じたことあります。
恐ろしいことに、この通念って個々人に内在化されている場合も多くて、権力の担い手が見えないんですよね。
しかも学生集団の中で起こっていることなので固有の根深さがあると思います。
学校では、教員権力の強さが注目されがちです。
「僕は教科書に支配されない」などのフレーズは巷に溢れていますよね。
こういった教員支配の面が強調されることによって、その裏に隠れている通念支配の問題は見過ごされてしまいがちです。
確かにそうですね…
僕は中高時代からこのことに対する問題意識を持ってて、出身は開成なんですが、休み時間に授業の話をしようとすると、「いや俺それ寝てたよ、そんな授業聞いてるやついないよ」って言われたことがあるんですよ。
私も似たような経験をしたことあります
そういう疎外のメッセージが逆に自分のモチベーションを向上させたところはあるかもしれません。
東大に入ってからは、さっき野呂さんもおっしゃっていた通り真面目に勉強してても変に見られにくい空気は感じますよね。
確かに
加えて私はどう大学デビューをしようか考えたときに、インパクトが強い方がいいだろうと思って、自己紹介に開成高校総代卒業と部活とポケモンの話を書いたんですよね。特に学業面の活躍を高校同期はみんな知っていました。
(絶対その次に自己紹介したくない…笑)
そのおかげで、のっけから「ラワイルとは勉強するものなのである」というキャラ作りができていました。
私が勉強していても、「やっぱ勉強してるんだすげーな」ってなるだけなので、それは勉強に集中する上でプラスだったなと思いますね。
そういうキャラを作れると強いよなあ
大学は、本気で勉強したい人は前の方で授業を受けるし、勉強したくない人は教室にすらいない。勉強したい人が自由に勉強できる環境になっているなと思いますね。
私もそれは大学に入って強く感じました。
あと私はクラスがよかったですね。中国語のTLPクラスだったのですが、いい意味で真面目なところは真面目というか。
本当に色々な生徒がいるのですが、お互いがお互いをリスペクトしているってところがありました。
勉強する子は勉強するし、勉強じゃない活動に精を出している子はそっちを頑張ってやってる、大学生活をエンジョイしている子はしている。お互いが違うっていうことを認めているような雰囲気があったなと思います。
めっちゃいいクラスですね…
ヤマトさんは将来どういった進路を思い描いているのでしょうか?
今のところは研究をメインでやってもいいかなと考えています。
東大医学部の先生たちから研究者を育てようっていう気概がひしひしと感じられて…(笑)研究者が足りてないのかなっていう思いもありますし。
さらにいえば、近年人工知能の研究が進んでるじゃないですか。でも医療の分野ではそうでもないんですよね。
その「医療と AI の接点」の研究が多分これから進んでいくと思っていて、そういったこれから広がっていく分野は面白そうだなと思っています。
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いかがでしたでしょうか?
私は、「真面目に勉強するのはダサい」という通念が教室を支配しているというラワイルさんの分析にめちゃくちゃハッとさせられました…
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また、ラワイルさん、のろさんにフォーカスした記事でも、進学選択に関するエピソードや役立つ情報がたくさん紹介されています。ぜひお読みください!
ラワイルさんにフォーカスした記事はこちら
野呂さんにフォーカスした記事はこちら
最後までお読みいただきありがとうございました。