初めまして、東京大学2年生のフスマです。
突然ですが、みなさんの夢はなんですか?
「宇宙飛行士になりたい」「ノーベル賞を取りたい」など、人によって夢は様々ですよね。僕?僕の夢はでっかい流しそうめんをやることです。
一口に「夢を叶える」といっても、いろいろなルートがあります。医師になるなら医学部、教師になるなら教育学部…と半ば学部が決まっているような夢もありますが、「新聞記者になりたい!」「外交官になりたい!」あたりの夢であれば、それにはどんな知識が必要なのかを逆算して学ぶ必要があるでしょう。
そして、そんな夢を持っている学生に立ちはだかるのが「学科選び」という関門です。東大生であれば2年次の進学選択で、そうでなければ大学入試の時点で行きたい学科を決定しなければいけません。
しかし、自分が本当にやりたいことをできるのはどの学科なのか……パッといえる人のほうがむしろ少ないかもしれません。特に、僕のような巨大な流しそうめんが夢の人間はいったいどんな学部を志望すればよいのでしょうか?
そんな疑問を解決するべく、サークル同期かつUT-BASEの編集部で活躍する森田さんにお話を伺ってきました。
UT-BASEといえば、『東大生の成長拠点』として履修やサークル、学科選びなどの情報を集めて発信しているWebメディア。その立ち上げメンバーの一人であり、現在は監修として進学選択についてのお役立ち情報を多数発信している森田さんなら、巨大な流しそうめんの夢を叶えるための有力なアドバイスをいただけることでしょう。
あと、僕には流しそうめんの他にも夢があるので、それらに適した学科も聞いてみようと思っています。
…というわけなんだけど、巨大な流しそうめんをやるにはどんな学部に入ればいいのかな?
え?
夏休みとかに超でっかいウォータースライダーみたいな台を作ってさ、大量のそうめんを流してみんなで食べたら絶対楽しいと思うんだよ
そう思わない?
なんでそうめんにそんなに情熱かけてるのかはわからないけど、巨大な流しそうめんの台を作るなら工学部の建築学科が向いてるかな。それと木造で台を作るなら、農学部の環境資源科学科・木質構造科学専修課程がピッタリの研究をしてるよ。木造建築とか、木で構造物を作ることを極めるコースだね
確かに、SASUKEのセットみたいなサイズだと工作というより建築物の領域になるね。木造建築専門のコースってのもあるのか…!
思ったより100倍クリティカルな回答がもらえて感動してる
※調べたところ、農学部環境資源科・木質構造科学専修課程についてはUmeeTから紹介記事が出ていました。ぜひご確認ください。
あとは巨大なサイズの流しそうめん台を作ったらどういう法に抵触するのか、ってのは法学部で学べるところだね
ほう(法学部だけに)
信頼関係破壊の法理ってのがあって。土地なんかを借りてるときに、貸主と借主のあいだの信頼関係が壊れたときには貸し借りの契約を破棄していいですよってものなんだけどね。借りた土地に無許可で流しそうめん台を建てたらこれに該当して、そうめん台の撤去とその費用負担の義務が発生すると思うよ
さすが法学部の民…一個も知ってる単語がない
まあ要は、無許可で流しそうめんをやるとこういう法でシバかれますよってこと
無許可でやる前提なんだ
そういえば法学部◯◯学科って聞いたことがない気がするんだけど、法学部には◯◯学科とかの区分けはないのかな。ずっと理系だったからあんまその辺よくわかってなくて
法学部は学科を置いてなくて、進路に応じて1類から3類の区分けがされてるよ。 たとえば2類は法曹関係に進む人が多かったり、1類は官庁とか霞が関で働く人が多いかな。学科とは扱いが違うから、類ごとに定員がないのも特徴だね。
それで民法とか刑法とか労働三法とか、学びたい法律ごとに授業を履修していく形なんだ。
なるほど、法学部は他学部とシステムがだいぶ違うんだね。理系学部のガイダンスしか受けてないからカルチャーショックだ……。
あとは工学部の航空宇宙工学科に行くのもいいんじゃないかな?
え、航空宇宙学部ってスペースシャトルとか飛行機とかの産業に関連するところだよね?なんで流しそうめんに関わってくるの?
いや、考えうる限り最も巨大な流しそうめんってさ
第一宇宙速度以上で打ち上げて地球の周回軌道を回るそうめんじゃん
!!!!!
だから、そうめんを軌道に打ち上げるためのロケットを制作する技術が必要かなと思って。 航空宇宙工学科は飛行機やスペースシャトルの制作に携わるための技術を学ぶから最適だと思うよ。
確かに、人工衛星みたいに地球を周回するそうめんは「流しそうめん」と呼んで然るべきかもしれない……市販の流しそうめん器でも水流がループしてるやつあるし似たようなもんか……
でも宇宙って低温でほぼ真空だし、そうめんを周回軌道に打ち上げてもフリーズドライみたいになって乾麺に戻っちゃうよね
それと、万が一地球を周回するそうめんをキャッチできなかったらスペースデブリが一個増えちゃうことにならない?NASAとかJAXAに怒られそう
言われてみればそうだけど、周回軌道で流しそうめんをやった時のあるあるがこんなに出てくることないよ
このように、非常に知見あふれるアドバイスをもらうことができました。「巨大な流しそうめんを作る」のような一見ものづくり系に見える夢でも、工学部に行く以外の道にも正解があるかもしれませんね。
ほかにも夢があるんだけどさ
うん
どんな手段を使ってでも通学時間をめちゃくちゃ短くしたいんだよね。いまはオンライン授業だから通学しないで済んでるけど、千葉に住んでるから駒場に行くまで片道2時間弱かかっちゃって大変で……。みんなの通学時間がもっと短い世界にならないかな
なるほど……通学時間は短いほうがいいってのはある意味、学生みんなの夢だよね。都市開発をする仕事につければ、もっと短時間で通学できるような街を目指して都市計画をする、という手法で解決ができるね
そういう仕事に就きたいなら……工学部なら建築学科であるとか、社会基盤学科や都市工学科はそのものズバリのテーマじゃないかな?教養学部の学際科学科・地理空間コースも都市計画の立案に焦点を当てていて、幅広い側面から居住空間について学べるところだね
通学を快適にするための街づくりができたらすごくいいね!大学を主体にした街ってあんまり聞かない気がする。
せめて学生寮から大学まで電車一本で行けたら嬉しいよね……
オンライン講義をもっと推進して、大学自体をバーチャル化してしまえば通学時間はゼロになる…っていうやり方も面白いかも。電気情報工学科・電気電子工学科(EEIC)は今季の授業のオンライン化で大活躍した学部だし、”バーチャル大学”を作るなら学べることはたくさんあると思うよ
なるほど、VRChat(バーチャル空間で他のプレイヤーとのやり取りを楽しめるサービス。名前の通りVRにも対応。)みたいなバーチャル空間に大学を作れれば確かに通学時間はゼロになるのか!
通学時間を減らすにせよでっかい流しそうめんをやるにせよ、一つの夢や目標にたどり着くにもいろいろなアプローチがあって、それに応じていろいろな学部での学びが役に立つんだね。ふざけた質問なのに真面目にこんなにたくさん答えてくれて嬉しいよ
とんでもない!もっと詳しく学部について知りたかったら、UT-BASEで各学部の情報をまとめたページを製作中だから是非確認してみてね!
……そういえば、千葉に住んでるって言ったよね?通学に総武線使ってる?
そうだけど、それがどうしたの?
いや、理学部物理学科とか理学部天文学科とかで得られる知見を応用すればさ
駒場と千葉のちょうど真ん中…錦糸町あたりにさ、中性子星みたいな巨大質量の物体を配置すれば時空が歪んで結果的に家と学校を近づけられるんじゃない?
それ学部で学んでどうこうできる次元じゃなくない?
あと中性子星の重力で崩壊した錦糸町なんて見たくないよ
「通学時間を短くしたい」などと、夢を通り越してシンプルな欲望を発露してしまいましたが、いろいろなアプローチを提示してくれました。
きっと一つの夢に対しても、見方や考え方によって必要になってくる知識や技術は多種多様に変わってくるのだと思います。そして、同じ夢に対して多様な考えや学びを持った人が協力して努力することではじめて、真に「夢がかなった」ということができる…のかもしれませんね。
最後にもう一個だけ夢を聞いてもらっていいかな?
うん
何らかの形で教育の機会均等化に貢献したいと思ってるんだよね
え、マジのやつじゃん
そう、マジのやつ。お世辞にも都会とは言えない場所に住んでて、塾に行かないまま大学受験したから、中高の同級生みんなが塾に行ってる状況がすごく羨ましくてさ。そもそも経済的事情で塾に行けない人もたくさんいるし、そういう人達も学べる環境があってほしいなって……。
そういう夢を持ってる人って、どういう学部に行けばいいのかな
教育のことだし、一番普通に考えたら教育学部になるよね。ひとくちに教育学部といっても全員が教師になるわけじゃなくて、教育について研究する学者になる人もある程度いるから、新しい学び方を考えるのには向いてそう
あ、教育学部って全員が全員先生になるわけじゃないんだ。ぜんぜん知らなかったな……
オンライン講義の導入とか、政策方面にアプローチをかけるなら法学部の1・3類がいいと思う
1類が官庁に行く人なんだったよね。調べたら3類って進路がバラバラで、必ずしも官僚になるわけではなさそうだけど…?
うん、行政を変えたいからといって、必ずしも霞が関に行く必要はないと思う。学校で使われてる映像授業システムも民間から売り込んだものがほとんどだし。教育学部で学んで学者になるにしても、政府の諮問会議とか委員会に呼ばれることが多いよ。東大の先生方も実際そういうのに呼ばれることは多いらしい
なるほど、法学部とか教育学部か……。理系の僕にもできそうな方面のアプローチってないかな?
映像授業のシステムを作るであるとか、そういうソフト系の開発なら工学部の電気情報工学科とかシステム創成学科とかかな
知ってる学部が出ると安心感があるね。確かに僕がやりたいのはその方面かもしれない
あとは2050年くらいの未来になれば、学校が想像もつかない形になってるかもしれないよね。そもそも先生が人間じゃなくてAIになってるかもしれないし、授業ロボットみたいなのが出てきてもおかしくないよね。そういう新しい教育用のハードウェアを作るなら、計数工学科とかになりそう
なるほど、すごく計数工学科に行きたくなってきたな。でもあそこって入るのに必要な平均点がめっちゃ高いことで有名だよね。
進学選択で希望出そうにも点数全然届かないからなあ……。現実って非情だ……
気がついたら8月ももう終わるし、そんな時期なのに涼しくなる気配もないし……。とりあえず気晴らしに…
でっかい流しそうめんでもやりてえなぁ……
欲望がループしはじめたのでインタビューを終えましたが、マジの進路相談についても親身になって応じてくれました。学部についての知識を僕はほとんど持っていなかったので、文系・理系双方の学部についての教えてくれた森田さんには尊敬が止まりません。貴重なテスト前後の時間を割いてインタビューにお答えくださり、本当にありがとうございました。
皆さんも、自分の夢について「この夢ならこの学部だろう」と決めつけずに、幅広い視野をもって多様なアプローチを考えてみると将来の選択肢が広がるかもしれません!
また、記事中にもリンクを掲載しましたが、森田さんの所属するUT-BASEには東大の各学部の情報が詳しく掲載された紹介ページがありますので、「記事に出てきた学部についてもっと知りたい!」「こんな記事で学部のことわかるわけねえだろダボ!」という方はぜひ確認してみてください。
他にも様々な資料から各学科についての情報を得ることができますので、進学選択を控えている学生の方は、自分の希望する学部についてはガイダンスやパンフレット、先輩に聞くなどして深く調べてから志望を出すようにしてみてくださいね。