『超かぐや姫!』の彩葉は東大工学部のどこに進学した? 独自に徹底検証!!

(アイキャッチ画像: ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ)

皆さん、『超かぐや姫!』知っていますか? 電柱から現れた少女「かぐや」を引き取った女子高校生「彩葉」が、インターネット上の仮想空間「ツクヨミ」でライバーとして活躍していくという、「令和版竹取物語」です! 2026年1月にNetflixで配信された後劇場公開され、興行収入は10億円を突破。今まさにバズっている映画なのですが、そんな『超かぐや姫!』のあるシーンがいま東大生の間で話題になっているんです。

そのシーンとは、かぐやがいなくなってしまった後、研究者になることを決意した彩葉が、ホワイトボードで自分の進路を母親と先生に説明する場面(映画残り17分付近)です。実はこのホワイトボードを拡大してみると、「東京大学工学部進学」、「大学院情報理工学系研究科進学」と書いてあるのです! これを受けネット上では彩葉の進学先に関する考察が盛り上がり、なんと現役の東大教授まで巻き込む事態に!!

東大情報理工学系研究科の稲見先生のポスト

実は、筆者自身も現在情報理工学系研究科の修士1年生なので、彩葉がどこに進学してくるのかとても気になります! …ということで、今回は彩葉が一体東大工学部のどの学科に、そして情報理工学系研究科のどの専攻に進学したのかを徹底検証していきます!

(©コロリド・ツインエンジンパートナーズ)

問題のホワイトボードを再現してみた

まずは公式設定を確認してみました。映画はもちろん、書籍版やHPなど全て確認してみましたが、「工学部」、「情報理工学系研究科」以上の情報は書いてありませんでした。やはり、最大のヒントはあのホワイトボードです。映画を頑張ってコマ送りして、彩葉が説明に使っていたホワイトボードを再現してみました!

(筆者作成)

まずは、ホワイトボード右側の、「工学部→情報理工学系研究科」というルートから絞れそうです。多くの学部生は自分の学科に対応する院の研究科にそのまま進学します。彩葉もそうだったと仮定すると、情報理工のどの研究科に行ったのかわかれば、自動的に工学部のどの学科だったのかもわかります。情報理工学系研究科にはコンピュータ科学、数理情報学、システム情報学、電子情報学、知能機械情報学、創造情報学の6つの専攻がありますが、対応する工学部の学科があるのは、数理情報学(計数工学科数理情報工学コース)、システム情報学(同システム情報工学コース)、電子情報学(電子情報工学科)、知能機械情報学(機械情報工学科)の4つだけです(かっこ内は対応する学科)。コンピュータ科学は学部が理学部で、創造情報学は対応する学部がありません。

これで4択まで絞れました! 次はホワイトボード左側に注目してみます。下側の「学ぶべき学問」は、情報理工の色々な研究科に対応しそうなので、あまり絞れません。上側を見ると、彩葉の一番の目的は「サイボーグボディ」の開発にありそう! また、映画全体で描かれているツクヨミはVR空間ですから、当然これは大きな学習テーマになっていくはずです。……ということで、今回彩葉が情報理工に進学した目的は「サイボーグ」と「VR(バーチャルリアリティ)」の2つを学ぶことだと言っていいでしょう!

この2つのテーマを一番学べる研究科はどこなのか? 情報理工の公式ページで4つの専攻を調べてみました!

数理情報学

電子情報学

システム情報学

知能機械情報学

「キーワード」に注目してみましょう。数理情報学にはVRや身体関連の記述がありません。電子情報学には「バーチャルリアリティ」はありましたが、身体関連の記述がありません。一方、システム情報学には「バーチャルリアリティ」に加え、「人間拡張」や「人間機械システム」などサイボーグに関連しそうなワードもあります。知能機械情報学にも、「バーチャルリアリティ」に加え、「ロボティクス」、「身体性認知科学」というワードが入っていました。この4つの中では、数理情報と電子情報が「ソフト」寄りで、システム情報と知能機械情報が「ハード」寄りだと言えそうです。今回はサイボーグボディという「ハード」の開発が目的なので、彩葉の進学先はシステム情報学または知能機械情報学のどちらかなはずです!

Advertisement

稲見先生にインタビュー

彩葉の進学先はシステム情報と知能機械のどちらなのか? 色々考えてみましたが、なかなか絞る条件が見つかりません……。そこで、今回は実際にシステム情報の先生に聞いてみることにしました! 今回お話を聞かせていただいたのは、先ほどXのポストも紹介させていただいた、システム情報学専攻教授の稲見昌彦先生です! 稲見先生は「第3の腕」となる着脱可能なロボットアーム「自在肢」を開発した、まさにサイボーグ開発者。本物のサイボーグ研究者に彩葉の研究内容、そして進学先について熱く語っていただきましょう!

(システム情報学専攻教授の稲見昌彦先生、撮影:鎌谷一生)

「身体情報学」とは?

––本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは稲見先生の研究内容について簡単にご紹介いただいてもいいでしょうか。

東大の先端研で「身体情報学」の研究をしています。身体というとスポーツの力学的なアプローチや、医療などの生理学的なアプローチが多いと思いますが、我々は身体に対して情報的にアプローチしています。

––「身体」に興味を持たれたきっかけは?

元々生物に興味があって、実は修士までは生物系の専攻でした。生物は生物で人工物にはない効率の良さがあるんです。例えば『攻殻機動隊』にも出てくるルシフェラーゼ反応。ホタルが酵素によって発光する時の反応なのですが、エネルギー効率が良い。

そういう生物的なところに人工物的な良さをうまく組み合わせたシステム、つまりサイボーグが大切だなと思ったんです。そしてそこに工学と生物のどっちからアプローチするか考えて、当時私は生物からアプローチした方が近いかなと思いました。しかし研究を始めてみると、今みたいにCRISPR-Cas9とかがある前で、サイボーグに辿り着くまではちょっと先が長そうだなと思いました。元々趣味でロボット作ったりもしていたので、そっちを研究としてやっていこうかなと思ったんですね。

Advertisement

フィクションと研究の相互作用

––学生の頃から「サイボーグ」にご関心があったんですね。

フィクションの影響もありました。僕の好きなアニメに『サイボーグ009』っていうアニメがあります。あ、今度リメイクされるみたいなので履修しておいてください。

––履修します(笑)

『サイボーグ009』がすごいのは、1964年の漫画だけど、実はサイボーグという言葉が一番最初に登場した論文が出版されたのが、1960年なんです。わずか4年前。そこには人類が宇宙で活躍するためには新しい臓器も入れて代謝とシステムを良くしていかなければならないとか、バイオハイブリッドみたいな話が書かれていて、SFみたいな論文なんですね。

––研究とSFは密接に関係があるんですね。

その通り。研究者がSFから学べるのは、やっぱり「センス・オブ・ワンダー」だと思います。何がいいか、どういうのがびっくりするか、どういうのが美しいと思えるかっていうこと。ただHowの部分は学べなくて、手が届きそうなフィクションの部分をリアルに持っていくのは我々の仕事。

一方で、我々がフィクション側に提供できることもある。SFの中で、フィクションは本当に数%で、残りは全部リアルじゃないと読者はその世界観についてこられない。その残りの部分のリアリティを高める時に我々の技術を引用してくれることもあります。多分それが相互作用で、だから我々はフィクションのリアリティを高めるためにいるし、またクリエイターの人たちはそこから新たなフィクションを提供して、解決すべきHowじゃなくてWhatの部分を描いてくれる。

––夢を見させてくれるということでしょうか。

そう。今、AIの時代になって、Howのコストはどんどん下がっていくはず。今までは誰かが作りたいものを代わりに自分が作るのがエンジニアとして偉かった。でも皆さんたちの世代は我々以上に、別に研究者じゃなくて、ビジネスの現場だったとしても、構想する力、世の中を変えたいと思える力がより重要になってくる。その時にやっぱりSFとかアニメとかからヒントをもらうことはたくさんあると思っています。

「彩葉はアイアンマン」

––今回の『超かぐや姫!』もSFの一種でしょうか

うん、最初からやっぱりちゃんとSFになってるなと思いました。竹取物語ってある意味日本初のSFでもあるけど、今それを描くならどうなるかというのをすごく真面目に考えてやっているなと。例えば、サイバースペースは『サマーウォーズ』でも描かれていたけど、『超かぐや姫!』ではVTuber的な人達がいたり、ボーカロイドが流れたり、描かれ方がちゃんと今様になっていると感じましたね。そういう今様な文化を取り込んで、これこそ、本当はありたいサイバースペースの姿だったんじゃないのかと。メタバースって本当はああなりたかった、もしくは次もう1回ブームが来る時にああなりたいという姿がうまく描かれていたと思います。

––彩葉が研究者になってかぐやを蘇らせるというストーリーについてはどう感じましたか?

彩葉はマーベルのアイアンマンだと思うんですね。マーベルのシリーズ色々ありますが、僕は特にアイアンマンが好きで、なんでかっていうとあれちゃんとエンジニアじゃないですか。突然誰かから授けられた力じゃなくて、自分でスーツを作ってヒーローになっている。彩葉もちゃんと自分で工学を勉強して作ろうとしてますよね。

あとはインカーネーション(肉体化、受肉)っていう面もあるよね。実際に現前させるというか、まさに降臨させる。この受肉の儀式を特別な力ではなくエンジニアリングでやる。そして、その受肉の「肉」は肉体というバイオ的なものではなくて、ロボット工学的な人工物だっていうのが、すごく僕の研究する身体情報学っぽいなと思いました。そこでさらにただ単に形としてのロボットじゃなくて味覚とか嗅覚とかも与えてあげたいという思いもあったわけでしょ。

––それも彩葉のホワイトボードに書いてありましたね。

書いてありましたね。問題のホワイトボード(笑)

––はい(笑) じゃあこのあたりで本題の彩葉の進学先についての話に行こうと思います。

その話が本題でした(笑)

Advertisement

稲見教授が『超かぐや姫!』ガチ考察!

––まず、彩葉の研究内容を理解するために、ひとつ解説してほしいシーンがあるのですが……。

はい。

––ラボのような場所で彩葉とかぐやが会話をしているんですが、二人の間にグレーのコントローラーのような機器が写っています。これは一体何なんでしょう?(映画残り15分20秒付近)

これは医療ロボットのダビンチでしょ。真ん中の縦長のものがダビンチのコントローラーですよ。ゴーグルを覗き込みながら、この下のレバーで操作するんです。

医療ロボット「ダビンチ」を操作している場面
(Cmglee, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, ウィキメディア・コモンズ経由で, リンク)

––あ、ダビンチのコントローラーってこんな形なんですね、知りませんでした…。じゃあかぐやがこのシーンで言った「おもーい」というセリフはどういう意味なんでしょう?

重いと言ってるのは触覚をフィードバックしてるんじゃないかな。実際に重いんじゃなくて、慣性質量が合わない。もしアバターがVRアバターだったら質量ゼロだから慣性質量もゼロで全部くっついてくるけれども、本物のロボットだった場合、まずロボット自体が人間と同じぐらいのダイナミクスを持ってるとは限らない。だから手をパッと動かしたとか、首をクッて振った時に遅れてついてきちゃうことが多いんですよね。そうするとうまくついてくる感じがしない。まさに「重く」感じる。

––なるほど……。スマホの動作が「重い」みたいな感覚なんですかね。納得しました。研究者視点で見るとめっちゃ面白いですね。

こうやって我々が勉強したりとか研究したりするのは世の中の見え方の解像度を高めるためですから。やっぱり知識を知ってると多分普通の人と違った見え方をしているのだと思います。

ズバリ、彩葉の進学先はどっち?

––では彩葉の研究内容も理解できたところで本題に入りたいと思います。こちらが再現したホワイトボードで、(記事の最初の方法を説明して)情報理工の中でもシステム情報と知能機械の二つに絞らせていただきました。

僕も絞るとしたらその2つかなと思っていました(笑)。

––では、稲見先生。

はい(笑)

––ズバリ、彩葉の進学先は、システム情報と知能機械のどちらでしょう!?

……僕は、やっぱりシステムだと思います(笑)

––まあそうですよね(笑)

ただね、彩葉のことだから、きっと色んな人のアドバイス聞いて、もしかしたらシステムで博士取って、知能機械で講座を開いてるかもしれないし、僕が先端研で知能機械の先生とご一緒していたみたいに、色々な分野の人が集まる研究所にいるかもしれない。

––確かに…

だからそれが逆に専攻で分かれていることの限界でもあって、今までないものを作ろうとするときには逆に既存の専攻の壁とかにとらわれてはいけないと思うんだよね。多分彩葉が研究者としてすごい成果を出せたのも、コンピューター科学も含めて色々なことを学んできたからじゃないかと。だから大切なのは所属じゃなくて、こういうものを作りたいということで、そのために必要なことを既存の分野を超えて学ぶっていうのが本来の大学の勉強。学部とか特に進学選択とか大変だと思うんだけれども、やりたいことをやるためにやらなくちゃいけないことがあって、やらなくちゃいけないことの組織の枠組みにとらわれて必死にやってるうちに、本当に学びたかったはずのことが、うまく学べなくなっていることもある。でも必要なことがあったらそれをどんどん学んでいくってことが大切でしょう。必修だから学ぶのではないはず。

––所属にこだわっていた僕の浅はかさを思い知りました…(笑)

まあシステム情報の宣伝はするんだけどね(笑)

––では最後に、高校生や駒場の1, 2年生に向けてメッセージをお願いします。

知識や経験がないと作りたいものとかやりたいことって見つからないと思うんですよね。だから本当にやりたいことを見つけたりとか、自分の心が動くものを見つけるためにこそぜひいろんなことを学んでください。僕は今まで学んできた知識のおかげで『超かぐや姫!』をエンジニアリングの観点から面白く観れた。別にアニメだけの話じゃなくて、世の中のいろんな現象とかがより面白くなるのも、そういう知識とか経験があるからですよね。是非そのためにぜひいろんなものを食わず嫌いしないで学んでください。知識こそが究極の人間拡張です。

––稲見先生、大変お忙しい中企画に付き合っていただきありがとうございました!!

Advertisement

検証結果まとめ

ということで、彩葉の進学先の検証結果は……

「所属なんて気にするな! 必要なものを学び、作りたいものを作れ!」

という結論になりました(笑)

いやいや本当に稲見先生の考えの深さに恐れ入るとともに、自分が進学先の学科なんてものにこだわっているのが恥ずかしくなりましたね(笑) 

とはいえ、一応検証企画ですから、有力ルートを結論として示しておこうと思います。システム情報の場合、工学部計数工学科、知能機械の場合は工学部機械情報工学科ですが、いずれも理一以外からの進学者は限られますので、科類は理科一類でよいでしょう。ということで、彩葉の東大進学ルート候補は以下の2つです!

理科一類→工学部計数工学科システム情報工学コース→情報理工学系研究科システム情報学専攻

理科一類→工学部機械情報工学科→情報理工学系研究科知能機械情報学専攻

『超かぐや姫!』を見て彩葉に憧れた方は、ぜひ参考にしてみてください! とはいえ、大事なのは自分が本当にやりたいことです。所属に縛られず色々なことを貪欲に学んでいきたいですね。

こんな記事も読まれてます

学問・研究

【「責任」を切り分けず生きていく】哲学者・古田徹也先生インタビュー【後編】

あさのこうせい 2026.06.05
学問・研究

【「運」に満ちた世界で「責任」を問う】哲学者・古田徹也先生インタビュー【前編】

あさのこうせい 2026.06.05
ネタ

2~4限が空きコマなら埼玉三大銘菓を全部現地に買いに行ける説【クリスマスに検証】

不可説 2026.03.03