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期待の現役東大生ミステリ作家・浅野皓生さんに迫る【デビュー作のモデルはUmeeT!?】

2023.04.10

昨年秋に結果発表が行われた、KADOKAWA×東大新聞主催の「東大生ミステリ小説コンテスト」。

見事大賞に輝き、今年1月発売の『東大に名探偵はいない』にそのデビュー作が収録された、法学部3年(取材時・2022年度末)の浅野皓生さんを取材してきました!

そしてなんと、浅野さんの収録作『テミスの逡巡』作中に登場する学生メディア「UTディスカバー」のモデルになっているのは、我々UmeeTなんだそう!!これは話を聞くしかない!

期待の新人作家の人となり、そして後半では、UmeeTがモデルとなった裏話に迫ります。

〜『テミスの逡巡』あらすじ〜

学生メディア「UTディスカバー」に所属する橋部は、既定路線からはみ出して活躍する卒業生を取材している。30歳までは弁護士という異色の経歴を持つ医師・伊田への取材のなかで、転身の契機は法律の限界を知ったことだと語る伊田に、橋部はなぜか強烈な不穏を感じていた。無難に書き上げた記事を公開した1週間後、伊田は人殺しだという告発状が届く。

『東大に名探偵はいない』特設サイトより
学生証
  1. お名前:浅野皓生さん
  2. 所属:法学部3年
  3. 座右の銘:「忍耐は苦い、しかし、その実は甘い」

取材には、浅野さんのほかに、KADOKAWAの担当編集の方(東大法学部の卒業生!)にもお越しいただきました。

筆者
筆者

本日はよろしくお願いします!

筆者
筆者

早速ですが、浅野さんは「東大生ミステリコンテスト」で大賞を受賞されたということで。

元々本を出したいという願望はあったんですか?

浅野さん
浅野さん

それは小さい頃からありましたね。中高時代は文芸部でしたし。「このミステリーがすごい!大賞」に出したこともあります。とんでもない作品でしたけど…

本を出せることがあったらいいなとは常に思っていましたが、それが現実化するとは思っていませんでした。でもこのコンテストを見た時に、現役東大生限定ということで、ぶっちゃけ競争率が違うと思ったんですよね。これは僕ぐらいでも何とかなるんじゃないかという打算が働いて、それでやる気を出して書きました。

筆者
筆者

またまた、ご謙遜を!

人物のキャラを決めるのは、好きじゃない

浅野さん
浅野さん

元々、1つ書きたいアイデアがあったんですが、今回のコンテストの字数と照らし合わせてこれなら入るかなと思って。

筆者
筆者

どの部分が一番最初の元ネタなんですか?

浅野さん
浅野さん

元々は「犯人」の動機の部分ですね。そこから膨らませてこういう形になりました。

(取材ではより詳細に話してくださっているのですが、ネタバレ防止のため割愛しています。まだの方はぜひご一読を!!試し読みも公開されています。)

筆者
筆者

なるほど。それはどういうタイミングで思いついたとか覚えてるんですか?

浅野さん
浅野さん

うーん…最寄り駅からの帰り道の緑道を歩いていて、僕が通っていた幼稚園の脇を通り過ぎた時に思いついた記憶はあるんですけど、それがなぜでいつだったかは、はっきりと覚えてないです。多分2年生の時だったと思います。

筆者
筆者

めちゃくちゃ具体的じゃないですか。歩きながら考えるんですね。

浅野さん
浅野さん

そうですね。よく歩きながら、頭の中で登場人物を喋らせて、この人だったらどういうこと言うかなー、どういうことするかなーって妄想しています

担当編集
担当編集

その登場人物に顔はあるんですか?

浅野さん
浅野さん

ありますね。

担当編集
担当編集

それは芸能人とか、実際にいる誰かに似ているのでなくてオリジナルの顔?

浅野さん
浅野さん

そうです。

筆者
筆者

へ〜!気になります。似顔絵描いてみてくださいよ!

浅野さん
浅野さん

いやいやいや、絵が下手すぎて…小学3年生レベルなので。

主人公の橋部は、こうシュッとしてて、目はそんなにぱっちりした感じではないけど、ちゃんと物事を見ようとする感じ。背は割と高い。

担当編集
担当編集

結構はっきりしたイメージがあるんですね。

浅野さん
浅野さん

胆力とエネルギーがある人なので、伊田と並んでても割と大きく見える人なんですよね。

担当編集
担当編集

それは原稿を書く前からイメージがあるんですか?それとも書きながら段々具体化していく?

浅野さん
浅野さん

書いていくうちにできてくる感じですね。今回は特に、伊田と対峙する場面が何回かあるので、それを書いていくうちに段々できてきました。

筆者
筆者

元々設定があって、それに沿って書いていくという感じではないんですね。

浅野さん
浅野さん

キャラをかっちり決めるのはあんまり好きじゃないんですよね。登場人物を自分が人工的に決めた枠の中に押し込んでしまうのは、堅苦しい感じがするので。

どちらかというと、書いているうちに登場人物の人となりが自ずからできてくるみたいなのが好きです。

筆者
筆者

最終的にそこまでの解像度で人物ができているとは思いませんでした。

浅野さん
浅野さん

橋部には毎日申し訳ないなと思ってますよ。こんな恥になるようなことを書いてしまって。

一同
一同

(笑)

橋部の何が「恥」なのかは、本文を読んでのお楽しみです!

筆者
筆者

お話を聞いていると、創作をしてるというより、人物の解像度を思いっきり高くして、その結果勝手に話ができていってる、という感じがします。

浅野さん
浅野さん

そうですね。こういう話が書きたい、というのだけ決めて、じゃあ登場人物はどういうふうに動くかなってずっとシミュレーションしてます。歩きながら考えてることが多いですね。

没もたくさんありますけど。今日も来る途中で1個、「これは不合理な行動だな」って没になりました。

筆者
筆者

なるほど。頭の中で作業してるんですね。

浅野さん
浅野さん

たまに相関図書いたりもしますよ。これは書かないと忘れちゃう!って。

筆者
筆者

なんだか、自分で作ってるものでありながら、すごく客観視してますね。

浅野さん
浅野さん

そうですね、登場人物は別人なので。今読んでも、自分が書いた感じがしないんですよね。「ふーん」って感じ。

一同
一同

ええ(笑)

浅野さん
浅野さん

自分が書いた記憶と内容が分離してるんですよ。登場人物が何かしても、別に僕が動かしたわけじゃない。

筆者
筆者

面白いですね。今までの人生で接してきた人たちの集合体みたいな感じなのかなあ。

こうやって頭の中に勝手に動く人がいるって作家さんは多いんですか?

担当編集
担当編集

タイプは人それぞれですけど、そういう人が多いとは思いますね。

大まかな設定とストーリーを決めた上で、この人だったらこの場面でどう考え、行動するかな、と想像するのがベースになっている作家さんが多い印象です。

筆者
筆者

それができる人とできない人でだいぶ分かれるような気がします。私も一応こうして文章を書いている身ではありますが、わからない世界です…

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「ものを書くことからは、足を洗おうと思っていた」

筆者
筆者

中高で文芸部に所属されていたということですが、その頃はどんなジャンルを書かれてたんですか?

浅野さん
浅野さん

当時からミステリーが多かったですね。『相棒』が大好きで、それが原点になっています。

だんだんミステリーじゃないものも書き始めて、大学に入ってからはミステリーじゃないものを2つ書きました。

筆者
筆者

その2つというのは?

浅野さん
浅野さん

銀杏並木文学賞に応募したものと、もう一つは授業の課題で書いたものです。

筆者
筆者

駒場の「宇宙科学」の授業ですね。当時Twitterで読みましたよ!

筆者
筆者

東大にも文芸部や新月お茶の会(ミステリ・SFサークル)がありますが、それらには入らなかったんですね。

浅野さん
浅野さん

はい。入学当時は、ものを書くことから足を洗おうと思ってたんですよ。

担当編集
担当編集

犯罪みたいな言い方(笑)

浅野さん
浅野さん

僕は中高で演劇もやっていたんですが、演劇や小説なんてものにかかずらっているとヤバいんじゃないか、のめり込んで何か道を踏み外すんじゃないかという気がして、そういったサークルには入らなかったんですよね。

でもいつの間にか演劇もまたやってるし、こうやってミステリーも書いてますし、いつのまにか戻ってきてしまっているという(笑)

浅野さんは五月祭にて公演を行う「劇団ゆうじゅうふだん」のメンバーです。来る五月祭でも公演開催予定とのこと!

こちらは2022年度公演の案内です
筆者
筆者

小説を読む方はどうですか?

浅野さん
浅野さん

中高時代はミステリーが本当に好きでたくさん読んでたんですが、大学入ってからは学術書や新書を読むのがすごく好きになって、そっちを読んでいますね。

この前、この本(『東大に名探偵はいない』)のゲラ(編注:紙面見本のこと)を読んだのが久々のミステリーでした。最近は、またミステリーに戻ってきています。さっきも市川憂人先生の鮎川哲也賞受賞作『ジェリーフィッシュは凍らない』を一気読みしてから来ました。

読むと楽しいのはわかってるんですよ。でも僕はのめり込むと他のものを読めなくなったり勉強できなくなったりするから…

担当編集
担当編集

自分を律してますね〜

浅野さん
浅野さん

今は「自分はミステリーの勉強をしないといけないから」って言い訳をして読んでますね。

筆者
筆者

演劇の話も出ましたが、演劇づくりは小説を書くことと関係してるんでしょうか。

浅野さん
浅野さん

僕の中では深く関係しています。例えば会話が多く登場するという点で、演劇と小説は共通しています。僕は現代口語演劇の影響を受けていて、自然な会話を重視するので、演劇をつくる時は、台詞があまり綺麗になりすぎないようにするんですよ。ちょっと澱んだ感じ、「あー」とか「えー」とか入ってる感じに。それは小説で台詞を書くときも同じです

筆者
筆者

なるほど。逆に、演劇と小説の違いってどんなところなんですか?

浅野さん
浅野さん

色々あるのですが、例えば演劇の方が文脈なく成立しやすいというところでしょうか。

小説は、ミステリーなんかは特にストーリーがちゃんとないとうまくいかないことが多いのですが、演劇の方は生身の肉体が目の前にあるので、話をどんどん飛ばしたり明確な筋がなくても、鑑賞に耐えるものになりうる。そういう意味で演劇の方が自由度は高いところがあるかもしれません。

筆者
筆者

今回は浅野さんが現役東大生であるという点でも注目されているかなと思います。普段からレポートや試験で長文を書くこともあると思いますが、それらと小説を書くことってやっぱり違いますか?

浅野さん
浅野さん

全然違いますね。レポートとか試験とかは、知とか学問対象に対する理解の程度を採点者に対して分かりやすく示す必要がある。あるいはレポートや論文なら、学問の世界にいる人たちに理解してもらえればよいので、もっと暗黙の知のようなものが前提にあっていいんですよね。

例えば民法の解答を書くときに、いちいち対抗要件とは何か、とか説明しなくていい。ここは共有されてるよねっていう土台の上で、しかも分かりやすく論じることが求められる。でも小説は色んな人が読むので、そういう土台がない。だからゼロベースから組み立てなきゃいけないんですよね。

一方で、小説は論理立ってなくてよくて、あっち行ったりこっち行ったりしても最後にまとまればいい。というか、まとまらなくたっていいわけです。

構成の自由度は小説の方が高い一方で、読者と共有してる前提がないという特徴もある、といったところでしょうか。

デビュー作のモデルはUmeeT

筆者
筆者

さて、今回の作品に登場する東大の学生メディア「UTディスカバー」のモデルは我々UmeeT、そして主人公の橋部は私(筆者わかな・UmeeT編集長)がモデルとのことで…。いや、恐れ多いですね。モデルだと自認していいんですか?

浅野さん
浅野さん

いやいや、れっきとしたモデルですよ。もちろん、橋部=わかなさんではないですが。だとしたら若干わかなさんディスになってしまうので。

今回、何らかの東大要素を盛り込むことがコンテストの応募要件だったんです。

元々のアイデアではジャーナリストが主人公の話だったんですが、東大要素を絡めるならこれを東大のウェブメディアにするのがよいのではないか。そうなったらわかなさんのことが浮かんで、UmeeTをモデルに書かせていただきました。

筆者
筆者

光栄です、ありがとうございます!

浅野さん
浅野さん

具体的にUTディスカバーの活動や作業が思い浮かんだのは、やっぱりUmeeTさんの取材を受けたからっていうのもあるし、読ませてもらってるからというのもあるし。

浅野さんには実は以前、「東大で性教育を学ぶゼミ」の立ち上げメンバーとしてUmeeTでインタビューさせていただきました。その記事もぜひ!↓

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わかな
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浅野さん
浅野さん

現実にこういうふうな記事をこういう頻度で出してる、とかも見つつ、参考にしました。UTディスカバーはメンバーが4人しかいないから、更新は月に1本くらいかなとか。

筆者
筆者

UmeeTの閲覧数とかも聞かれましたもんね。突然聞かれたので、何か試されてる!?って身構えちゃいました。

個人的な事情って何!?ってなりました
担当編集
担当編集

浅野さんはUmeeTにどんな印象を持っていますか?

浅野さん
浅野さん

UmeeTさんの記事は結構読みますよ。ベテランちさんのとか、洋服のブランドを立ち上げた東大生のとかも読んだかな。人の話を聞くのって面白いので、知らない人の話をどんどん掘り起こしてほしいです。UTディスカバーもそういうメディアです。

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周囲には「作家先生」と煽られます

筆者
筆者

今日はサインを頂こうと思って本を持ってきました。(取り出す)

浅野さん
浅野さん

うわー、これよくあるんですよ。

親が知り合いからサイン頼まれて持ってきたりするんです。毎回どうしようと思って…

担当編集
担当編集

小説を書くことについて、ご両親の受け止めはどうなんですか?

浅野さん
浅野さん

まず母親にはずっと「駄文を書くのやめろ」「また駄文を書いてるのか」と言われていたので、今回で一定の人権を得ましたね。でも母親は、作品自体は忙しさにかまけてまだ読んでいないという…

逆にママ友の皆さんはこういうの好きなんですよ。買って読んでいただいて、本当にありがたいんですが、その感想が母の元に届くので、読む前にネタバレを喰らって母がますます読む気を失っている状況です。

父は普通に読んで、「あー、まあまあまあ」みたいな。

担当編集
担当編集

厳しいな〜(笑)

浅野さん
浅野さん

まあ、書くなという圧はなくなって書きやすくはなると思います。でもそれ以上に何かあるわけではないです。むしろ煽られます。

これは本当に不快なんですけど、「でもほら作家先生だから〜」って親が言ってくるんですよ。

一同
一同

(笑)

担当編集
担当編集

仲の良いご家族ですね〜

浅野さん
浅野さん

ほんっとにやめてほしいんですよ。母親なんてまだ読んでないのに「作家先生、作家先生」って言ってくる。いや、読んでないんでしょ?って。

筆者
筆者

家族外からの反響はどうですか?

浅野さん
浅野さん

友達からも連絡がきますね。それこそわかなさんからは長文の感想をいただいて…

筆者
筆者

そりゃあ自分がモデルになった本だなんて、人生に一度あるかないかですからね…!

浅野さん
浅野さん

友人からの感想とかは楽しく読ませていただいてます。ただやはり、友人からも「作家先生」と煽られますね。

サイン、頂きました!

次回作、そして今後の展望

筆者
筆者

次回作の予定はあるんですか?

担当編集
担当編集

はい、今回はアンソロジーという形で一編だけの収録だったんですが、本格的なデビュー作として浅野さんの単著を弊社でぜひお願いしたいと思っていて。

浅野さん
浅野さん

それに耐えるだけのプロットがないとどうしようもないので、今英米法の授業のレポートを書きながら必死に考えています。まさかこんなことになるとは思わなかったので一番重たい授業をとってしまって…

筆者
筆者

おお…大ヒット期待しています!!

浅野さん
浅野さん

それは僕の頭がどれぐらい干からびてるか次第ですね…(笑)

筆者
筆者

今後もコンスタントに書いて行く予定なんですか?

浅野さん
浅野さん

それはもちろん書いていきたいですよ!

ただ、僕は司法試験の勉強もしないといけないですし、夏から留学にも行くので、ゴタゴタして視界が悪くなってきた感じです。でもそれはそれで楽しい。

筆者
筆者

将来は小説家に?

浅野さん
浅野さん

そもそも、僕は干からびてしまうかもしれないと恐れており…

もし干からびないで書き続けさせていただけるなら、絶対に書き続けたいです。

ただ、それだけで生きていけるとは思っていないので、法律の勉強もちゃんとして、それでどれぐらい自分で自分を養うだけの経済的余力を得ることができるかにもよると思います。

筆者
筆者

すごく現実的ですね。

浅野さん
浅野さん

やっぱり生きていかないといけないのでね…

担当編集
担当編集

今の時代、専業作家で生きていける小説家は限られるんですよ。兼業の人が多くなってきています。

経済的な理由もありますが、別の仕事もやっていると確実に創作に生きるというポジティブな面もあります。家に引きこもって小説を書くだけでは、世界が狭まっていってしまうし。

だから専業の作家さんはいろんなところに取材に行って補ったりするんですが、仕事をしていればそれだけで人との繋がりも増えていくので、小説以外の職業経験はあった方がいいと思います。

浅野さん
浅野さん

というわけで僕は司法試験を受けないといけない。

筆者
筆者

それは…頑張ってくださいというより、頑張りましょうですね!!(筆者も司法試験志望の法学部生です)

筆者
筆者

今回の『テミスの逡巡』はテーマが「法の理不尽」でしたが、今後も法律をテーマにしていくんですか?第二の新川帆立先生、といったところで…

浅野さん
浅野さん

いやいやいや、大変恐れ多いです…新川先生に「リーガルミステリーの新旗手」だなんて言及いただいているのを昨日発見して、半蔵門線の中で30分くらい返信の文面を練ってたんですよ…

浅野さん
浅野さん

特に法律関係で書き続けるというわけではなくて、今考えているテーマは法律とは直接は関係ありません。

とはいえ法律は良いテーマだし重要なテーマなので、色々と考えていきたいです。

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おわりに

筆者
筆者

最後に、読者の方に向けて何か一言ありますか?

浅野さん
浅野さん

そうですね、楽しんでいただければ本当にありがたいんですが、楽しくなかったら本当にごめんなさい、という…

筆者
筆者

またまた…

担当編集
担当編集

合う合わないもありますからね。

浅野さん
浅野さん

合わなかったら、ごめん、我々は相性が悪かったんだ、と。

筆者
筆者

そうですね。

今日はありがとうございました!”作家先生”の次回作に期待しております。

浅野さん
浅野さん

またそういうことを…

一同
一同

(笑)

『東大に名探偵はいない』

おまけ: デビュー作は法学部の先生に怒られそう!?

※ここからはネタバレを含みます。『テミスの逡巡』をまだお読みになっていない方はご注意ください!

筆者
筆者

著者コメントで「法学部の先生に怒られそう」なんて書いていましたが…?

浅野さん
浅野さん

ほんと怒られそうですよ。法律構成が若干怪しいので。

作中では「憲法38条3項により嫌疑不十分で不起訴となった」としてますが、本当は憲法38条3項より刑事訴訟法319条の方を書くべきなんですよね。

憲法38条3項:

何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

刑事訴訟法319条2項:

被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。

浅野さん
浅野さん

憲法38条3項の自白法則を受けて刑事訴訟法は319条を定めていて、それが一応今回の直接の根拠規範になるんですけど、でも「刑事訴訟法319条」って言ってもピンと来ないので…しかも憲法38条3項の方がわかりやすく書いてあるんですよね。それでそっちを採用することにしました。

浅野さん
浅野さん

2つ目に、作中では「証拠として採用されなかった」って書いてあるんですが、厳密には公判廷に行く前に嫌疑不十分で不起訴になっているので、証拠ですらないんですよね。勾留の相当性とか逮捕するための十分な理由がなかったってことなんですけど、それを書いてると長くなっちゃう。

筆者
筆者

法学部生として聞くと面白い話ですね。この前刑事訴訟法の授業で習ったところだ。

浅野さん
浅野さん

そもそも、「法の理不尽」なんて言ってるけど、理不尽って言ったってそれが法律なんだからっていう話ですし、それも怒られそう。

筆者
筆者

法律に限らずかもしれないけど、読者に伝わるようにすることと元々のアイデアって必ずしも一致しないんですね。

浅野さん
浅野さん

そうですね。まあでも、ゼミでお世話になった刑法の教授には今後本をお渡ししようと思っています。「怒らないでください…!!」って。

浅野さん、ありがとうございました!
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杉山大樹
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わかな
たのしいことはなんでも好き。
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