「日本をよくしたい。」
壮大な目標を掲げる会社がある。
エスキュービズムという会社をご存知でしょうか?
ソフトウェアの開発・販売、テレビや冷蔵庫などの家電の製造、IoT、それから流通事業、はたまたかき氷機の製造まで、様々な事業を行なっています。
この会社何をやっているの?と思った方も多いのではないでしょうか。
その根底には「日本をよくしたい」という大きな野望がありました。
実はこの会社を立ち上げた薮崎さんは東大出身。
どうして起業したのか?ビジネスを通してどう日本を良くしていくのか?質問攻めにしようとしたのですが、逆に東大生の欠点を痛いほど突かれてしまいました。
これから就活する人、なんとなく大学生活を過ごしてしまっている人にも是非読んでいただきたいインタビューです。
-今日はよろしくお願いします。早速ですが、どうして起業しようと思ったのか、聞かせてください。
もともとすごく感じていたのは、日本の学校って、クラス40人くらいいるとすると、オール5の人って3人か4人いるんですよね。
でもその5がついた人たちの中でも1番から3番は絶対にあるはずなんです。つまりみんなが絶対に同じかっていうとそうではなくて、すごく差があったりするなと。
例えば学校のテストは範囲が決まっているから、その範囲を完璧に仕上げて100点取るだけで十分。
ほんとは200点取れる人も、テスト上は100点になってしまう。さらに別に教科外で宗教について自分で学ぶとか、政治について考えたりする時間って点数に反映されないですよね。
こんな風に今の日本の教育って一番上がわからないような画一的な相対評価だし、それにオール5の人の中でも差ってものすごく大きいなと感じたんです。
-それと起業したのは、どういう関係があるんですか?
日本の会社も同じ仕組みだと思ったんです。会社も基本的には、すごくできるやつもできないやつもほとんど評価が変わらないところが多い。
だから優秀な人ほど外資とかコンサルとか投資銀行とか行ってみたくなるんだと思います。給料も高いというのももちろんあるけれど、それよりもちゃんと能力を評価されるイメージがあるから。
その、ちゃんと正当に能力を評価するということがすごく重要な気がして。
卒業した後にリクルートに入ったんです。リクルートの同期は“変なやつ”が多くてとても面白かったです。
ただ一方で、大学の時の友人と話したり、いろいろな会社の上の人と接したりする中で、多くの社会人が、会社に入ると良くも悪くも組織のルールに従順になってしまっていると感じました。
たとえば、いろいろ新規のことをしようとしても、飲み会で盛り上がるだけで結局実現しなかったり。
なぜかっていうとやっぱり決められたことだけをきちんと100%やってる方が会社の評価という点では効率的だったんですよ。今の日本の企業はやったもん負けになってしまうんです。
テストと同じで大手企業の営業でも、「これをお客さんに一千万円売ってね」って言われたら、他の仕事で価値をあげたところで、全然意味がないんです。
だから自分の時間を投資しない。でも仕事人生40年間と考えると、20代の若いときに、将来にとって大事なことを、言われてなくてもいろいろやって、力をつけて行くべきだと思うんですけどね。
これが成り立たないのは、自分の成長のために時間を使ってもお給料は上がらないし評価もされない、ただ自分のプライベートが追われるって話になってしまうから。
そして日本がなぜ今止まっているか、停滞しているかっていうと、これが全ての原因だと思ったんです。
だからほんとになにか事業をやりたいというよりは、要は本当に日本をよくしたいと思っていて。
そのためには、自分を含め活躍したい人が力を持て余している環境が不幸だなと思って、
こういう人が、損得勘定を考えずに100%力を発揮して、そしてそれがきちんと評価されて結果として反映される仕組みを作りたいと思って会社を作ったんです。繋がった?(笑)
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日本をよくしようと思って政治家も一度考えた事があるんです。でも日本全体で変えるって言っても少し難しいなと。
それよりは、世の中を自分で変えたいと思い、行動できる人を集めて、まずは“できる人”だけで変わろうと思ったんです。
そんな集団を作って本当に未来を変えていければいいと思っていて。それが成功したら多分、みんなあっち側いけるぞってついてくるから、その方が早いと思ったんです。
-会社の成功っていうのはそれくらいの影響力を持つまで大きくなるってことなんですか?
そうです。だからうちがやっているのは、大企業を作る過程なんです。
日本発のグローバル企業を作ろうと思っています。うちはベンチャーって言うよりは中小企業でいいんです。
だってソニーもホンダもパナソニックもみんな、数人の工場から始まって世界的大企業になっている。この過程をもう一回やればいいじゃん、と思っているんです。
欧米とかシリコンバレーとかに憧れている人も多いかもしれないけれど、日本にだって世界的な企業はたくさんあるんです。(そのあたりに興味がある方はBiz/Zineさんの記事を読んでみてください)
-ベンチャーと中小企業の違いってなんですか?
ベンチャーはある程度リスクを負って何かを変えようとしている企業で、中小企業っていうのは、なんらかの事業をして黒字を出してちゃんと永続性が保たれるものと考えています。
ちゃんとしたイケてる大企業が増えて来ないと日本は変わらないわけで、名だたる大企業がダメになっている、というニュースが最近多いですが、そうした企業の代わりにそこをちゃんと担う企業が必要だと思ってるんです。
そしてその企業のあるべき姿は今の日本のダメなところをちゃんと捉えた上で、ある程度成果主義でもあるし、”優秀な人”が本気で働ける場である必要があると思っています。
-話は変わりますが、東大生についてはどう思われますか?
過去にいっぱい面接に来た中で、東大生が世の中で一番保守的です。
何故なら、東大に入ったことで一回勝っているから。東京大学は日本で一番っていう認識をみんなが持っているし、今までそれなりに努力しているから、その努力と一番の地位とキープしてスタートするんです。
だから就職活動でもう一回他の人と初任給が一緒だったり同じ職種だと嫌になってしまうんだと思います。
だけど、これまで過去22年間頑張ってきた分だけ東大生は地力が違うと思うんです。普通にやれば活きるはずなんだけど、東大生はこれをわかりやすく示してもらいたいんですよね。
なぜかというと東大生は今まで他人の評価で生きてきたからなんです。
東大が一番だとか「勉強頑張ったね」っていうのも人の評価。東大生の保守的なところって、初任給が周りと一緒なのが嫌だと思うとかそういうのではないんです。
実は勝てると思っているんだけど、そのときに「君の方がすごいね」っていう他人の評価をもらえなくなることにあるんです。明確に給料で、「君の方が高いよ」とか「役職上だよ」って言ってもらえないと嫌なんです。
もちろん社会に出ると「評価されない仕事はなんの意味もない」というのも正しいと思います。でも、他人の評価を得ているうちは本質的には頑張ることはできないと思います。
他人の評価を気にしているうちは、他人の「すごいね」を欲しいからやっているわけであって、誰も見てない中でイノベーションを起こすということにあまり意識が向かないと思います。
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-じゃあ薮崎さんは結構東大の中では変わり者になるんですか?
どうだろうね。俺は典型的な東大生の気質を持っていると思うけれど、早くに外の世界に積極的に関わって、そうした中できちんとした自信をつけることができていたところが違うのかもしれない。
東大生の持っているのはまだ根拠のない自信なんだよね。
東大生の場合受験においては確固たる自信を持っているんだけれど、勉強以外ではなんとなくの根拠のない自信なのね。それを本物の自信に変えないといけない。
これに結構時間がかかるんです。東大生は人の評価で自信を得ているから一生変わらない人も多い。
それでも能力が突出している人が多いから大手企業でもそこそこ上に行ってしまう。だから俺から見ると大手企業とか官僚の世界って幼い人が多いんです。自分の評価に転換できてない人が30半ばでも結構いっぱいいると感じます。
-どういうきっかけで本物の自信は得られるんですか?
そのためには、自分で決めたことをちゃんと達成していくってことが重要なんです。
そしてそこでは人の評価でなくて自分の評価で生きないといけない。受験の時に経験したと思うけれど、自分で実際にやって成果を得たら、自信に変わる。
こういう経験を学生時代にいろいろな領域で早めにした方がいいと思います。
実は大学3年の時に一般参加で情熱大陸に出ているんです。白石康次郎さんっていう最年少世界海洋冒険家の人と一緒にヨットに乗って回る番組で、死にそうな目にあったり、2週間学校休んで太平洋航海したりしました。吉本の芸人さんとか体力自慢の無職の人とか、いわゆる“勉強”以外で才能のある人しか来ない中に一人で乗り込んでガチで勝負しましたね。
こういった経験のおかげでバイアスを外していろんなことに気づけたり、起業できたりしたと思っています。
-貴重なお話、ありがとうございました!
インタビューが始まった途端、早口で、そして熱く語る薮崎社長のエネルギーに圧倒され、そして東大生の自分の欠点を痛いほど突かれてしまいました。
東大生だけでなく、多くの人がなんとなく他人の評価で生きていると思います。
別にそれが悪いことではないと思うけれど、大きな野望を掲げる薮崎社長を見ていると、自分の評価で生きた方が楽しいし、生きがいのある人生になるのではないかと感じました。
他人の評価で生きている東大生、「ガチで勝負」していないんじゃないですか?