クリスマスなので、競歩大会をした。

2020.12.31

2020年12月25日、東京駅前。

時刻は22時、街はクリスマスカラーに色めき、恋人たちがひしめき合う夜。

編集部
編集部

みなさま、クリスマス競歩大会にようこそお集まりいただきました。

クリスマスの夜に駆り出されたというのに楽しそうな編集部。

今日はクリスマスです。が、我々は暇です。よって競歩をします。

さて、この聖なる競歩大会の参加者3名をご紹介しましょう。

Entry No.1

学生証
  1. 名前:わかな
  2. 所属:文科一類1年
  3. 備考:筆者。一番それっぽい記録は「小2の時の校内マラソン大会学年3位」。2週間前に腰をやったので運動はお休み中。ちなみにバイト(3時間経ちっぱなしの塾講師)帰り。既に疲れている。

Entry No.2

学生証
  1. お名前:れおん
  2. 所属:理科三類1年
  3. 備考:筆者がバイト先から連れてきた。こちらも3時間のバイト終わり。集合時間も場所も30分前に講師室で知らされた。ちなみに徹夜明け。

Entry No.3

学生証
  1. お名前:夜の帳
  2. 所属:理科二類1年
  3. 備考:正直に言うと速く歩きそうには全く見えないが、公式大会北信越5位の記録を持つ本大会唯一の「本物」。ちなみに昨夜は居酒屋のワインの在庫をなくしてきた20歳。

以上3名、真剣勝負です。

真剣勝負感のない写真。

いやあ、それにしても寒いですね。スーツ姿には真冬の冷たい風が突き刺さるようです。バイト帰りなので当然スーツです。

今日の授業、教室に入るや否や「メリークリスマス!」って言ったら、生徒に「先生の今日のご予定は?」って聞かれたけど、まさか「競歩大会をします」なんて言えなかったな。クリスマスなのに塾来て偉いね!なんて言ったけど、たぶん一番偉いのは私だな。

寒すぎるのでスーツの上にダウンを着込みます。見た目は気にしません。背中にはカイロを装着しました。そんなにするなら着替え持ってこいよ。

流石にヒールのパンプスで競歩は無理なので、テニスシューズに履き替えさせてください。見た目が不審者ですがまあいいでしょう。本当はクリスマスにガチ競歩してる人って思われたくないから、クリスマスに急いでるだけのOLに扮するためにパンプスで出場したかったんだけどな。靴ずれする危険には負けました。現実主義なもんで。

なんでテニスシューズ?とは言わないお約束

れおんには「バイト後に競歩大会に来てもらう」ということだけは事前に伝えていたので、彼は着替えを持ってきましたが、肝心の靴を忘れたので革靴で歩くようです。頑張れ。

バイト先からそのまま筆者に連れてこられたれおんは肉まんとファミチキを頬張って大会に備えます。徹夜明けのため、今日はこれが1食目だそうです。

筆者も時間がなかったので、ファミチキだけ胃袋に突っ込んで来ました。正直全然足りていませんが、気合は十分です。

夜の帳からは事前に「めちゃめちゃ私服で行きます」との連絡をもらっていましたが、本当にめちゃめちゃ私服で来ました。それも典型的東大生っぽくないタイプの私服で来ました。ちなみに筆者、彼とは初対面です。

※大会は感染症対策に留意して行い、大会中も2mの間隔が確保できない場合にはマスクを着用しました。

大会会場へ

移動中。

会場に移動しました。今回の会場は皇居1周です。編集長によれば5kmくらいとのこと。5kmを走るなら19歳の老体には厳しいものがあるけど、歩くだけならいけるのでは??

夜の帳は5kmを22分台走った 歩いた公式記録を持つ実力者ですが、「そんなガチ競歩すんの?」「今日はおさんぽだと思って来た」などとほざいています。しかしガチでやってもらいます。真剣勝負なんで。

今日は3人の体力差を考慮して、時間差スタートによりハンデを設けることとします。私(わかな)がスタートして5分後にれおんが出発、その10分後に夜の帳が出発することになりました。

まずは夜の帳に最低限のルール説明をしてもらいます。

夜の帳
夜の帳

競歩には2つルールがあって、1つ目は両足が同時に地面から離れちゃいけないってこと。これを破ると「ロス・オブ・コンタクト」って反則をとられる。

あーね、有名なやつね。

夜の帳
夜の帳

で2つ目が、脚が地面と垂直になる前に膝を曲げちゃいけないってこと。これを破ると「ベント・ニー」って反則をとられる。

なにそれ初耳
実践。

これが難しい。夜の帳にお手本を見せてもらい、脚の使い方が特殊なことはわかりました。これは筋肉痛の予感がしてきたぞ。

お手本拝見。プロっぽい

いざ、勝負

時刻は23時前。編集部に見守られながら、いざ、スタートです。ここからは私目線でお届けします。

スタート。

0分

スタート。私目線の写真も残しておこうと思って撮ったけど、後から見返したらなにこれ?

ブレすぎて何が何だか
月はこうなる

5分

既に足が痛い。競歩の歩き方は脛にくるらしい。定期的に編集長が自転車で後を追ってきては写真を撮ってくれる。笑顔で対応する余裕はまだある。

それにしても編集長もタフだよなあ。一昨年のクリスマスは予算1000円でデートして、

去年の夏は東大赤門から東に向かって10時間ひたすら歩き続けて、

今年のクリスマスは競歩大会のスタッフだもんなあ。いやもしかして、タフなんじゃなくてクレイジーなだけ…?

そんなことを考えていたら、前をずっと走ってるおじいちゃんに振り向かれた。足音が完全に走ってる人のそれじゃないことは自分でも感じる。不審な足音立てて、怖がらせてごめんなさい。

おじいちゃんを抜くことを当面の目標にした。いけそうでいけない。

そしてその頃、スタート地点では…

れおん、5分遅れてスタートです。

10分

暑くなり始めた。ダウンの前を開けるくらいでちょうどいい。

あーーそれにしてもお腹空いたな。昼に学食で「チキンおろしだれ」とライス中食べてからまだファミチキしか食べてないのやばくない??これから帰ってご飯食べるけど、家着く頃には余裕で日付変わってるだろうしやばくない??ていうか今日寝坊して朝ご飯食べてないから、今の私の身体ってほぼ鶏肉じゃない??

と、ここで再び自転車に乗った編集長。自転車は楽しそうでいいねえ!!!

ブレブレな編集長
編集長を撮る私

…そろそろ考えることがなくなってきた。

ていうか私、クリスマスに何やってるんだろう?

それはそう。ちなみにゆとりはない

去年のクリスマスは何してたっけ。あの頃はまだ受験生だったな。さぞや辛いクリスマスを…

いや、去年はちょうどクリスマスが塾の最終授業に当たって、みんなでパーティーをしたんだった。

受験期とは思えない。今思えばあの頃はコロナもなかった…

暖かい教室でサンドイッチとお菓子とケーキを食べて、みんなで駄弁ったっけ。

あれ?

なんか今年の方が辛くない?

1限から3限まで授業受けて、3時間立ちっぱなしでバイトして、それからこんなところまで来て、なんで私、歩いてるんだろう。不思議だ。

せっかく大学受かったのに、なんで受験生時代よりも過酷なクリスマスを過ごしてるんだろう。不思議だ。

あれ、でもそもそもこの企画、やろうって言い出したの、私だ。

おかしい。

それにしても最近おかしい。明らかについてない。

1ヶ月に1本のペースで傘なくすし。

バイト帰りにヒールでずっこけて腰捻挫するし。

ラーメン屋で財布開けたら47円しか入ってないし。

教習所の仮免前のみきわめでは、ドアロックし忘れて一時停止忘れてウィンカー4回出し忘れてS字カーブで乗り上げて、堂々の不合格だし。

わたし、何か悪いことでもしました?

15分

道端に警備員さん。遅くまでお疲れ様です、と思ったところで、自分がスーツにテニスシューズであることに気づいた。変な人じゃないんです。クリスマスに暇だから競歩してるだけです。変な人か。

おじいちゃんには依然として車2個分ぐらいの距離を空けられている。おじいちゃん、やるなあ。

ここで開始直後に投稿したインスタのストーリーに友人から「あたおか(編注:「頭がおかしい」の略)」とのコメントが届く。最高の褒め言葉をありがとう友よ。頑張れる気がしてきた。

頭がおかしそうな絵文字で返しといた

変な歩き方のせいで相変わらず足は痛い。企画段階ではハンデのために「夜の帳に足ツボサンダルを履かせる」って案が出てたけど、ボツにしてよかったな。絶対無理。足もげる。辛さのわりに画が地味だし。

なんて考えていた頃、当の夜の帳は…

15分遅れてスタートです。

20分

車道沿いを歩いていると車に抜かれまくる。突如、車が羨ましくなってくる。路肩には「高井戸まで20分」の標示。私は20分かけて未だコースの半分にも届いてないってのに、車ならこのぐらいの時間でそんなところまで行けるらしい。車に乗れば…

いや、みきわめには落ちるし教官には呆れられるし、その車を運転することすらできるのか怪しいんだった。ていうか私明後日仮免受けるんですけど、頼むよ神様。(編注:筆者は2日後の仮免に無事合格しました!!万歳!!!

冷静に、速すぎない???

25分

それにしても後ろから誰も来ない。若干の不安を覚え始めた。暇。話し相手が欲しい。

暇なとき、脳死で思い浮かぶことが「課題やばい」なのが嫌すぎる。自分がものすごくつまらない人間になってる感じがする。自分、それなりに面白い人間なんだけどな…少なくともクリスマスに競歩するぐらいには面白い人間なんだけどな…

しかしそうは言っても課題はやばい。圧倒的に、時間がない。でも今日は帰ったらこの記事の原稿書かないとだしな…大学生にはなっても、家に帰るまでが遠足だし、記事を公開するまでが競歩大会。

あれ、もしかして私、競歩やってる暇なかった??

そんなことを考えていると、しばらくぶりに自転車に乗った編集長が!もはや安心感を覚えた。嬉しい。

30分

あまりにも人が来る気配がないので、これ勝てるのでは?という気持ちになってきた。やるからには勝ちたい思いもある。引き続き、感覚がなくなってきた足を動かす。

と、ここでサークルのめちゃくちゃ真面目な内容のLINE通知が。「了解です!ちなみにこちらはただいま競歩大会中です」とでも送ろうかと思ったけど、今後の自分のサークル人生のことを考えてやめた。やめておいてよかった。

そして34分が経過したとき…

???
???

姐さん、お疲れーっす

れおん、到来。そしてあれよあれよという間に…

抜かれました。わたし、徹夜明けの革靴マンに5分もハンデもらっても負けるんだ…

れおん
れおん

この革靴ガリガリ言うんだけど〜

とりあえず体力は温存しつつ、距離は広げられないように後ろについて走ることに。さあ、もうそろそろ終盤だ…!

そしてついにスタート地点が見えてきました。

相変わらずブレブレの私目線

ラストスパート。2人で並走します。未だ夜の帳の姿は見えず…これは2人の勝負になってきたぞ。ここは勝つしかない、んだけど、どうも追いつけない。

ゴール目前にして、私は競歩の真理に辿り着きました。

何が辛いって、息が苦しいとか足が動かないとかじゃない。体力ならまだ残ってるのに、猛ダッシュでラストスパートをかけられるぐらいには残ってるのに、競歩のルールがそうさせてくれない。

走りたいのに、走れない。

だって競”走”じゃなくて、競”歩”だから。

そんなわけで惜しくもれおんを抜くことはできず、わずかの差で2着につけてゴールイン。

その差、1秒に満たず。惜しかった…

タイムは2人とも41分50秒でした。夜の帳のベストタイムのおよそ倍です。彼のすごさが改めてわかる。

マラソン大会後みたいに息切れするような感じはなく、でも足が自然と動き出すので止まっていられないような感覚です。いやーやり切った。距離もちょうど良くて、冬の夜なのにポカポカして夜風が気持ち良いです。

そしてわずか1分後。あそこに見える影は…

夜の帳、到来。やっぱり速い人はフォームが違うな。

そのまますごい速度でゴールインです。記録は28分10秒、15分のハンデを加えて43分10秒!実にわずか1分20秒の差でした。

疲労困憊。

戦いを終えて

編集部
編集部

お疲れ様でした。終わってみて、どうだった?

わかな
わかな

時々虚無にはなったけど、結構楽しかったですね。疲れすぎず適度に運動できた感じ。

れおん
れおん

うん、楽しかった。5分のハンデでも追いつくのにだいぶ時間かかったから、15分はだいぶ大変だろうなと思ってた。

夜の帳
夜の帳

いやマジで、どこまで行っても2人が見えなくて萎えた。てかこのコース5kmもないって!

コースの長さを見誤ったこともあり、15分のハンデはほんの少し大きすぎたようですが、めちゃくちゃ善戦してくれました。冷静に考えて、競歩ガチの人をこんなしょうもない企画に使ってしまってすみません。大変失礼いたしました。

歩いている最中は人目が気にならないこともなかったですが、なんだかんだ楽しめました。

編集部
編集部

一生忘れないクリスマスになったね。こんなこと二度とないでしょ。

3人
3人

間違いない。

おわりに

大手町駅構内で我々はクリスマスの終わりを迎え、そのまま各自帰宅しました。

なんだろう、この満たされた気分は。クリスマスという聖なる夜に、競歩大会という大イベントを成し遂げたという満足感。ただのクリスマスとは一味も二味も違う、私たちだけのクリスマス。

楽しそうでしょ???

“クリスマスは大切な人と出掛けたりお高いご飯を食べたりして過ごすもの”

そんな固定観念に囚われる人生に疲れたあなた、来年のクリスマスは、競歩をしてみませんか。

追伸: こんなくだらない企画にご協力くださった夜の帳、れおん、そしてUmeeT編集部のチロルさん、ゆうなさん、ヤマトさん、本当にありがとうございました!!

寒い中40分もお待たせしました。
この記事を書いた人
わかな
たのしいことはなんでも好き。
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