東京の街は色めき出している。
僕は一人、彼女を新宿駅で待つ。
「お待たせっ。」
「いや、全然。僕も今来たところだよ。」
「本当に?よかったー。
新宿なんか普段なかなか来ないからね。どこに行こうか楽しみだよ。
プランは考えてくれてるんだよね?」
「もちろん。バッチリさ。」
バッチリどころじゃない。
今日の日のために、何度脳内でシュミレーションしたことか・・・!
時間をたっぷりかけて、付け入る隙のない完璧なデートプランを考えたのだ!
その分、莫大な費用がかかってしまうことになったが、年に一度の大切な日だ。
ゆうちょで、今日までバイトで貯めたお金を、惜しみなくおろしてきたぞー!
んっ?
んんっ?
1000円しかないっっっっっっつつつつ!!!!!!!
小銭もカードも、他には何もない!!
なんでなんだ!?ちゃんとおろしたのに!
もしかしてあれか、電車で僕のバッグジロジロ見てるおじさんいたけど、あいつに盗られたのか!?
くそっ、どうしよう!!
(帰宅後自宅にて、雑然と散乱する諭吉を発見。おじさん疑ってごめんなさい。)
「どうしたの?早く行こうよ。」
「あっ、そうだね・・・。」
ま、まずいぞ。このままでは・・・。
なんとかして1000円のデートプランを考えなくては!!
とりあえず、お金をかけずに回れるデートスポットへ行くことにする。
新宿で無料で楽しめる場所といえば、都庁だ。
そこに向かえば間違いないだろう。
長い長い「動く歩道」で都庁へ。
都庁到着。赤い光がクリスマスの夜を彩る。
地上202メートルの展望台まで上る。
東京の夜景は綺麗だ。焦る僕の心は落ち着いてきた。
普通にいいデート、できてるじゃないか!
さすが東京。無料で楽しめるスポットがあるものだ。
まだ1000円の余裕もあるのだし、この調子でいけばうまくいくかもしれない。
そう思った矢先、彼女がぽつりという。
「あー、少しお腹すいてきたな。夕食はお洒落なイタリアンがいいな。」
っっっっっっつ!!!!!
ま、まずい・・・。夕食という最大の関門があるではないか・・・!
しかも彼女、メアリーは過去に財布を忘れて、デート代を全て彼氏に払わせたという過去を持つ。(これは実話です。)
クリスマスの今夜は、全てのデート代を僕に払わせる気で来ているだろう。
ディナー、一人500円・・・。
都庁展望台にて、「展望台キティ」キーホルダーをねだる彼女だが、当然買わない。(買えない。)
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キティから逃げるように都庁を抜け、ディナーの場所を考えながら、新宿のデートの名所、「ナイアガラの滝」を目指すことにする。
新宿中央公園の中心にある滝型の噴水だ。こちらも当然無料。
彼女もきっと喜んでくれるだろう。
えっ・・・。
何も流れてない・・・。
(本来、この石壁の部分に盛大に水が流れております。)
彼女も、こんな寒い中歩かされて、なんで石壁?みたいな顔をしている。
これはまずい・・・。
切り替えて、次のスポットへ向かわなくては!
新宿駅へと再び舞い戻ってきた僕たち二人は、原宿方面へと向かう。
なぜなら、新宿駅から原宿方面にかけて、まさにデートにうってつけのイルミネーションロードがあるからである。
そう、新宿サザンテラスだ。
き、綺麗!
雰囲気の良い並木道の木々が、クリスマスらしいオレンジの光をまとっている。
彼女もとても楽しんでくれているようで、一安心だ。
1000円しか持っていないことなど忘れそうになる。
いや、いっそ忘れさせてください。
このまま、この暖かな光に包まれさせてください。
「なんかあるね。可愛い。」
どうやら「ビッグフラワーパーク」というフォトスポットらしい。
その一角に、カップルベンチを発見した。
しばらく座って談笑する。
彼女もここまで歩いて、疲れていることだろうという配慮だ。
いやしかし実は、これからのための英気を養ってもらう、という意味合いの方が強いのだが・・・。
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ひとたび新宿サザンテラスを抜けると、途端に普通の道になる。
次なる目的地まで、ここからが長い。
彼女には酷寒の街をひたすらに歩いてもらわねばならぬ。
「寒い・・・。」
これでもかというほど、あからさまに顔をしかめる彼女。
非常に申し訳ないが、しばらく我慢して欲しい。
正直、僕も寒すぎて、もう身体の感覚がないんだ。
マフラーを着けないという選択をした三時間ほど前の自分を、非常に恨めしく思う。
歩くこと数十分、原宿に到着。
綺麗なイルミネーションだが、目的地はここではないのだ。
寒い、お腹すいた、イタリアンが食べたい、とひたすらに言ってくる彼女をなだめながら、道は続く。
さらに歩くこと数十分。
ようやく目的地に到着した。
代々木公園の青の洞窟だ。
「綺麗だねー。本当に真っ青なんだね。」
これまでの、八寒地獄のような道のりがチャラになったかは分からないが、彼女も満足そうである。
いやー、頑張ってここまで歩いてきてよかった!
顔は青いが、心はあったかい。やはり綺麗な景色は良いものだ。
きらびやかな道を進む。
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並木道を抜けると、もう渋谷の街だ。
街も青のイルミネーションで溢れている。
「次はどこに向かうの?」
彼女が尋ねる。
待たせたな・・・。
次はお待ちかねのディナーだ!!!
渋谷駅前にある「POTA PASTA」。
今までずっと渋谷駅の方へと向かってきたのも、全てはこのお店のためだ。
パスタ1皿500円。二人で計1000円。ディナーにして、破格である。
これで、ひたすらにイタリアンを所望する彼女の希望も満たされるだろう。
彼女の元に、きのこバター醤油パスタが運ばれてきた。
500円とは思えない、本格的なパスタだ。
店内の雰囲気もお洒落で良い。
僕のトマトモッツァレラも並べられている。
二人でいただく。
美味しい!!!!!!!
まさか1000円しか持っていない奴がこんなに美味しいパスタをいただけるとは思ってもみなかった。
「美味しいね!!私の希望を聞いてイタリアンにしてくれてありがとう!」
彼女にそう言っていただけると、彼女が目を離したすきに、何度もスマホで店を探した甲斐もあったものである。
さあ店を出て、最後の目的地だ。渋谷駅を、渋谷ヒカリエ側に廻る。
pairing bellsだ。
置いてあるベルを鳴らすと、連動して音と光の演出が始まるらしい。
チリン。
こうしてクリスマスの夜、二人はベルの音と光に包み込まる。
多幸感が溢れる。
このままずっとこうして・・・。
1000円よ・・・。ありがとう・・・。
fin
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みなさんいかがだったでしょうか。僕の妄想クリスマスデート活劇。
うっかりデート当日に、1000円以外持ってくるの忘れちゃった!なんてことになってしまった人は、参考にしてください。(責任は取れません。)
ただ一つ、言わせてください。
マフラーだけはしていけ。本当に寒いから。
彼女役をやってくれたメアリーさん、サポーターとして同行し様々なデートスポットについて御教示くださったいっちーさん、非常に魅力的な写真を撮ってくれたカメラマンの谷口くん、本当にありがとうございます。
メアリーさんといっちーさんが、昨年のクリスマスに自転車で東京中のイルミネーションを回りまくった記事はコチラ。
そして、ここまでこの記事を読んでくださった皆様に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
おまけ
