※ この記事は2017年2月に執筆されたものです
2月も半ば。受験シーズン真っ盛りだ。
来週はついに東大入試である。
私たち東大生も、かつては予備校の模範解答(解答例)を参考にして受験勉強をしてきた。
「本当に同じ問題の解答例なの!?」と思うこともしばしば。
現代文は特にひどい。
数学だったら式が違うくらいだが、なにせ現代文は最後の答えまでが違う。
このままでは受験生もどの解答例を参考にすれば良いのかと、戸惑ってしまうだろう。
この状況をなんとかしなかればいけない。
私たちは東大現代文の真髄を求め、模範解答の王者を決めることとした。
そこで、現役東大生を集めて、予備校の模範解答を徹底検証することにした。名付けて、
東大受験を突破してきた東大生なら安心できる。
まさに東大が選んだ人材こそが現役東大生なのだ。
また、解答を客観的に見ることによって新たな発見があるかもしれない。
それでは、これからコンテストの一部始終を一緒に見てみよう!
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都内某日、理系6名、文系6名、合計12名の東大生が一同に集められた。
彼らの目的はそう、【東大現代文模範解答コンテスト】の審査に他ならない。
コンテストのルールは以下のとおりである。
|
至ってシンプルである。
模範解答同士、正々堂々と勝負するしかない。
正面からのガチンコ勝負である。
今宵、模範解答たちの熱い闘いの火蓋が切って落とされたのだ……!
審査を開始してすぐ、会場は静寂に包まれた。
並みいるライバルたちを倒して東大受験を突破してきたツワモノ達である。
やはり審査がはじまるとその集中力は凄まじい。
と、思いきや。
「こんなに難しかったっけ?」「よくわからんなー」という声が漏れる。
なに?ツワモノ達が夢の跡か?
しかし数分すると、
「この喜び久しぶり!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「受験生のときより現代文解けるようになってるかも!!!!!!!!!!!!!!」
次第に会場のボルテージは高まっていく(冷静に見るとすごい光景だ)。
さすがである。腐っても東大生、受験から遠ざかった今でもその感覚は衰えることを知らない。
本文を読み込む視線もギラギラと光る。
模観回答を品評するペン先にも力が入る。
そう、東大生たるもの、問題と常に真剣勝負で向き合うのだ。
それが東大生としてのプライドである。
模範解答同士の真剣勝負に、東大生たちも正面から向き合っていく。
…
…
…
ピロリロリンピロリロリン。「終了です。」
約束の時間が来たようだ。審査は終わり、集計が始まる。
果たして、優勝したのはどの模範解答なのか。
さて、いよいよコンテストの結果発表である。
ドコドコ┗(^o^)┛ドコドコ┏(^o^)┓ドコドコ┗(^o^)┛ドコドコ┏(^o^)┓ドコドコ┗(^o^)┛ドコドコ
だだん!!
おめでとうございます!!88点!!(すごい)
〜現役東大生からのコメント〜 『要素がてんこ盛りという印象です。』 |
おめでとうございます!!82点!!
〜現役東大生からのコメント〜 『こちらも必要十分ですね。微差で2位になってしまいましたが素晴らしいと思います』 |
というわけで、優勝と準優勝が決まった。
80点以上はこの2つしかなかった。
あっぱれである。
心から拍手を贈りたい。
ところで、最下位はどこだったのだろうか??
予備校の名誉のために名前は伏せよう……。
しかし、その点数は見逃すわけにはいかない!!
これでは、東大の本番で、受かるか落ちるかの瀬戸際ではないか……!
(東大生の風の噂では現代文の合格ラインは得点率60%前後と言われている)
なぜこんなことになってしまったのだろうか??
予備校名 | 得点(満点100点) |
T進 | 88点 |
Y々木 | 82点 |
その他のどこか | 74点 |
… | 71点 |
… |
58点 |
最高得点は88点、最低得点は58点。
同じ予備校の模範解答なのに、なぜここまで差が出たのか。
審査をした東大生たち自身、あまりの格差にショックを受ける。
しかし東大生はガッカリするだけでは終わらない。
この結果は東大生たちの好奇心をそそる。
「逆に、どうすれば高得点を取れるのか?」
審査を終えて、料理長の美味しいご飯を食べながらゆっくり談笑……といくわけにはいかない。
東大生たちが問題と解答を読み直し、審査基準についてズバズバ切り込んでいく。
その一部、設問1でなされた大激論をご紹介しよう。
設問(一)「そのような身体反応を以てさしあたり理非の判断に代えることができる人」(傍線部ア)とはどういう人のことか、説明せよ。
この問題を目の前にしたとき、まずは次のような問いを思い浮かべるべきだろう。
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これくらいは東大生にとって朝飯前だ。
実際、どの解答例も、こういった基礎的なところはできている。
(これさえ出来てない模範解答があったらと思うと夜も眠れないくらい恐ろしいが…)
それでは、どこで差がついたのか?
差がついたのは、問いと意味理解の深さだ。
簡単にいうと、問題文や設問に深いツッコミをいれられたかどうかだ。
今回のコンテストにあたり、東大生は実に深く細かいポイントまで問うていた。
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東大現代文を目の前にした東大生は、まさに水を得た魚である。
どんどんと切れ味の鋭いツッコミをいれていき、模範解答をどんどん斬っていく。
……自分の知的枠組みを作り替えることを喜びとする人。
例えばこの答案。
傍線部とは随分意味が変わってしまったことがひと目で分かる。
傍線部では「さしあたり…代えることができる人」なのに、なぜ「…喜びとする人」という着地になるのか。
また、そもそも喜びとするかどうかは本文ですら言及されていない。
ツッコんだはいいものの、意味理解を間違えたのだろうか?なかなか不思議な解答である。
……自らの知の枠組みが揺らぐままに内省できる人。
この答案も「さしあたり…代えることができる人」を言い換えているようには見えない。
また、よく見ると「内省」という言葉の意味合いも「身体感覚」という傍線部とは少し違う。
それだけではない。
「納得感を確かめる」ことと「知の枠組みが揺らぐ」ことを「ままに」で接続している点も本文の論旨と反している。
本文を丁寧に読むと、知の枠組みが揺らぐこと「すら厭わずに」納得感を確かめる、といった論理構造の方が正しいからだ。
……こうしてミスの根本を探っていくと、あることに気付く。
東大生たちが問うていたことが、まさに点数の格差に直結している。
そういえば「身体感覚」の意味理解も、「知的枠組み」が論理的にどうつながるかも問われていた。
このように、本文で欠けたピースを問いによって埋めながら進むと、より本文の理解が深まる。
そうして、しっかりと本文の論理を辿っていくことで、模範解答を書くために必要な要素が揃ってくる。
問うて議論をしてから模範解答を比べてみると、その質には歴然とした差があることに気付くのだ。
たいていの受験生は模範解答を頼りに、自分の解答の出来を確かめたりする。
ここまで読んだ読者はそれがいかに不安定かお分かりだろう。
解答の精度は予備校によってマチマチで、東大の合格目安ギリギリのものさえある。
模範解答を盲信するだけでは、東大現代文のコツはよもや掴めないだろう。
……じゃあ、いったいどうやって勉強すればいいんだあああ。
問題を解いて、模範解答を眺めて採点して終わりではダメだ。
それは本当に妥当なのか、より精度の高い読みはないのかを問い続けるのが大事なのだ。
「答え」に「問い」をぶつけて初めて議論が始まる。
その議論を通して、物事の様々な側面が見えてくる。
受験勉強全般においても問い、そして議論するのが最も大事だ。
しかし、受験勉強は机に向かって一人で勉強してばかり……。
友達と喋るときは疲れてテレビの話しかしない……。
熱く議論を交わす時間も気力もそうそうないだろう。
それじゃ、どうやって、友達と「問うて議論する」勉強をやればいいのか?
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名乗るのが遅れてしまった。今回のコンテストは、UmeeTとSchipの共催であった。
説明しよう。
Schipは、東大生を中心として設立された団体である。
「解く」が中心になっている勉強を「問う」を中心に変えようとしている。
そんなSchipでは、「問うて議論する」新しい東大現代文教材、Anchorを作った。
自分の頭で本文の意味内容と向き合い、読み取った意味を正確に伝わるように表現する。
その力を身につけることができるのだ。
Anchorは二つのことを意識して作っている。
一つは、常に自らの解答について議論し、問い続け、それをより良いものに更新し続けること。
もう一つは、単に受験現代文のスキルが身につくだけに終わらず、議論し問い続ける方法自体を学べる教材であることだ。
模範解答が悪いのではない。
しかし、模範解答を信奉してはいけない。
受験は宗教ではない。
常に、自分の頭で考え抜くことが大切だ。
そうやって議論した先には、自分の頭で考え抜くことが好きな友達との楽しい大学生活が待っている。
東大現代文解説Anchorはこちらで販売中↓↓↓
https://schip.me/anchor
※当記事における模範解答の点数評価は評価者個人の裁量による部分も大きく、あくまで当記事にあたっての暫定的評価であって客観的な信頼性を保証しかねることをご理解いただければ幸いです。