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【瀧本哲史インタビュー】地方大学東大:高値掴みする東大生

2016.04.13

本稿は、瀧本ゼミ顧問の瀧本哲史氏と、そのゼミ生によるインタビューです。

第1弾:「流されるまま東大:消化試合としての人生」

第3弾:「革命抑止大学東大:革命、起こしませんか」と併せてお読み下さい。

職員証
  1. お名前:瀧本哲史さん
  2. 所属:東京大学法学部卒業
  3. 進路:学部卒業と同時に東大大学院法学政治学研究科助手に採用。助手の任期後、経営コンサルティング会社McKinsy&Companyで主に通信、エレクトロニクス業界の新規事業、投資プログラムのコンサルティングに従事する。その後、2000億円近くの債務を抱えていた日本交通の経営再建に取り組む。現在はエンジェル投資家として活躍する傍ら、京都大学で、起業論の授業を担当。東京・京都で、学生に対し企業分析と政策分析の自主ゼミ「瀧本ゼミ」を開く。。 

地方都市東京

ゼミ生: 前回「トップオブトップを見よ。東大という環境の中で、流されゆくままに志を廃らせるな。環境を変える努力をせよ」という話で締められました。

瀧本 : 東大だって、まだまだ相対化が必要です。よく「高校時代は俺スゲー!と思っていたが、東京に来て、視野が狭かったと反省したよ」っていう人がいますよね。

でも、その東京だって、ある意味では地方都市ですよ。あるゼミ生の一人は、この間ウィーンに行って、文化資本の差に愕然としていました。同様に、ニューヨークなり西海岸なり、シンガポールなりに行ってみれば、そちらの方がある意味「中央」であることを痛感するはずです。

Times Higher Educationによる東大の大学世界ランキング推移。 10年で約30ランク後退し、同じアジア圏でもシンガポール国立大学(26位)や北京大学(42位)の後塵を拝する。

結局、どこを視点とするかによって、「中央⇔地方」は相対的なものでしかないんです。

「地元の国立大学に進むと、”道庁か地銀か”という進路になりそうだ。そもそも北海道自体、成長エリアではない」と言って、東京に出てきたゼミ生がいるのですが、世界全体から見れば、日本自体が成長エリアではない

その意味で「東京大学と北海道大学」も「霞が関と北海道庁」も相対的な違いでしかない。地元の友達を根拠もなく下に見てる東大生って多いですが、視座を変えて見てみれば、自分も同じなんですよ。

でも、だからと言ってニヒリズムに浸る必要はない。確固たるビジョンを持って、あえて地方に残る人間ももちろんいます。

例えば僕の高校時代の友人には、東大で建築を専門にしていましたが、「自分は地域の特性に合わせた住宅政策をやりたい」と言って、あえて大学院は北海道大学に進み、寒冷地住宅を突き詰めた人間がいます。今は国交省に入って、その手の政策をやっている。

ところが、普通の東大生はそこまでビジョンも、専門性も持っていない。「なんとなく東大に残ってる」人間ばかりでしょう。それは危機感持たなきゃダメですよ、ということです。

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世界におけるトップ企業

ゼミ生: 日本には世界のトップオブトップはないんでしょうか。

瀧本 : 企業で言うなら、世界におけるトップ企業や、伸びている企業って、一般に知られている会社と大いにズレがあります。例えば、関西ペイントってどこで伸びてます?

ゼミ生: ゼミでも話題になってましたけど、インドとかアフリカですよね。

関西ペイントは早くよりアフリカに進出し、売上高の12%をアフリカが占めている。(当社のIR資料より)

瀧本 : 社名からイメージされるような、大阪のペンキ屋さんじゃないんですよね。本業で忙しい会社って、世間に対して積極的にビジネスモデルやブランドを露出させる動機がないから、 しばしば「埋もれている」ように見えることがあります。

「東大生高値掴みの法則」

ゼミ生: 前回記事でも「周りに自慢できる企業に就職する人間が多い」という話がありましたが、この話についてもう少し伺いたいです。

瀧本 : 最近の家電メーカーの凋落は皆さんに周知のところでしょう。一昔前だと、長期信用銀行や、山一證券の例もあります。野村はアグレッシブすぎるので、やや大人しそうな山一證券に行く東大生とか、バブル期に結構いたんですよね。

当時4大証券だった山一證券の倒産を描いたWOWOW連続ドラマ「しんがり 山一證券 最後の聖戦」。 1997年当時をよく知る世代をターゲットに、2015年制作された。

最近だと大手商社が話題ですね。あんまり考えずに、その時の人気や知名度だけで会社選ぶと、「東大生高値掴みの法則」の通りに、10年後に会社ごとなくなって中途採用で買い叩かれる、ということは充分あり得る話だと思います。

もちろん、なにかの戦略があって「あえて商社に行く」のならアリです。実際、ある種の金融サービスでは、元長銀の人が活躍していますからね。

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自分の戦略を持って行動すること

ゼミ生: 結局は「環境が全て」ということですかね?

瀧本 : いえいえ。似たような環境にいても、キャリアに関して、ものすごくいい方向に行った例と、混迷を深めた例があります。

いい例は、McKinseyから、かなり初期に山口県のあるカジュアル・アパレルメーカーに転職を決めた人です。まだまだ無名の会社で、関西中心にしか店舗がなかったので、McKinseyの周りの人も殆ど知らなかった。

でも、その人はよく調べて、既存の業界の常識をぶち壊しつつ、日本各地に展開していく可能性を見いだし、そこへ行く決断をしました。今では、日経平均を一番左右する企業として知られています。そして、その人はその会社の副社長になりました。結果的に、一見リスキーだが、非常に合理的な意思決定が出来たわけです。

山口県にあるカジュアル・アパレルメーカーの上海 南京西路店 (ファースト・リテイリング会社HPより)

悪い例は、東大に行くのがデフォの有名校を卒業し、東大理系で非常に専門的な研究をやっていた人です。ハイスペックな人材だったのですが、流されるままの進路決定を繰り返すことになります。博士課程に進むも、研究テーマを「なんとなく」で決めてしまい、研究者として次のステップがないことに気付いてしまった。

そこしか拾ってくれなかったので、あるコンサルティング会社に入りました。いい会社だったのですが、その人は大学院までと同じ調子で、主体性を持たずに「よい子」を続けてしまう

昇進もだんだん難しくなり、その後も、機を外した転職を繰り返すうちに、どんどん市場価値が下がっていったと聞きます。

同じコンサルティング・ファームというキャリアを選んでも、これぐらい差がでます。今の世の中、安定した生活を手にしたと思ったら、高値掴みだったり、一見マイナーなものがトップになったりすることがザラにある。

結局は、自分のビジョンと戦略に沿って、意思決定しないといけない。ましてや、東大はトップでもなんでもなくて、世界の「地方大学」に過ぎないわけですから。

次回に続く)

第1弾:「流されるまま東大:消化試合としての人生」

第3弾:「革命抑止大学東大:革命、起こしませんか」と併せてお読み下さい。

なお、瀧本哲史氏が東大生を中心に開いているゼミ「東京瀧本ゼミ企業分析パート」は、2016年度5.5期生を募集しています。

詳細はこちら、ゼミ説明会の申し込みはこちらからご応募ください。

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瀧本ゼミ
はじめまして! 瀧本ゼミです。UmeeTのライターをやっています。よろしければ私の書いた記事を読んでいってください!
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