「五感」で、「本気」で、アフリカを学ぶ
さて、そんな「学び」と「発信」の両方にとって欠かせないのが、アフリカ研修だ。
このアフリカ研修では、事前にその国について勉強する中で疑問に思ったことの答えを現地に求め、それを社会に向けて発信しようというスタンスを大事にする。実際アフリカに関する情報は日本には乏しく、行かなければ分からないことだらけなのだ。
「実際アフリカに行ってみないと始まらない!!」、そんな思いから始まったアフリカ研修は、今年で始動から実に6年が経ち、今までにガーナ、タンザニア、ルワンダ(×2)、マラウィ、ウガンダへの渡航を経て、団体を代表する一大事業に成長した。
半年以上をかけてゼロから自分達だけで作り上げるアフリカ研修は、紛れもなくMPJユースで最も重要な活動である。
五感で、本気で、アフリカを学ぶ二週間の研修は、現地機関訪問・ビレッジ訪問・学生会議の主に三つの柱から成り立っている。
①現地機関訪問
アフリカに渡航する前の事前勉強会で、各メンバーはその国の興味事項について調査を尽くす。そして、疑問に思ったことを現地に持っていくのだ。どこに話を聞きに行くのかを決めるところから、アポ取りまで全て自分たちでやる。
例えばある日は、政府系のコーヒー開発局を訪れた。ウガンダは実は世界有数のコーヒー生産地であるのにも関わらず、あまり目立っていない。その理由とそれを克服しようという政府の戦略に興味を持ったためだ。
またある日は、北部ウガンダで長らく続いた紛争で酷使された少年兵の現在に興味を持ち、UNICEFの事務所を訪れた。
ちなみに僕の個人的関心は渡航と同時期に施行された反同性愛法だったが、政府から弾圧を受ける彼らとコンタクトを図るのは難しく(多くの人が身を隠しながら生活しているため)、学生会議で各学生の同性愛への認識を問うことぐらいしかできなかった。
②ビレッジ訪問
また先述の通り、開発の最先端の現場をホームステイを通して五感で感じ取ってきた。そしてそれぞれのメンバーが感じたことを基に議論もした。
開発途上であるにもかかわらず、村の人々の笑顔は活き活きと輝いており、「開発って必要なのだろうか?」「そもそも何のための開発なんだろう?」、そんな議論をせずにはいられなかったのだ。
僕自身、村の人々の輝く笑顔に彼らなりの「幸せ」を感じた。
ウガンダという国は、国際機関UNDPが発表する「人間開発指数」という指標の上では最底辺に位置するはずだ。日本とは違う時間の流れの中に、日本とは違う価値観があった。
そうして開発への疑問は自分の中で「幸せってなんだろう?」という疑問へと変わっていった。この議論はメンバー内で帰国後も続き、後日行われた研修の一般向け報告会でのテーマにもなった。
答えのある問題ではないが、間違いなくこれからも続けていくべき議論である。
③学生会議
そして、日本とアフリカの関係を考えるというテーマのもと、現地の学生と会議を開いた。
ウガンダはもちろん隣国タンザニア、ルワンダからも学生が集まった。
昼食休憩中にマトケと呼ばれる食用バナナを食べながら、「日本が敗戦から破竹の勢いで成長できた理由って何?」と聞かれて一瞬言葉に詰まってしまった苦い記憶は忘れない。
ウガンダを始め、アフリカについて学びたいという期待を持っていた僕は、逆に日本のことを知りたいという期待に答えることができなかった。質問してきた彼はルワンダ人だったが、今思えば虐殺からの「奇跡の復興」を遂げたルワンダにとって、日本はロールモデルだったのかも知れない。実に大きな期待を裏切ってしまった。