散乱する酒瓶、日々持ち込まれる謎の物体、散らかった布団…
ALT とかいうアーティスト集団のアトリエだ。東大生と藝大生が放課後に夜な夜な集う「秘境」である。
それは常に誰かが何かを生み出している空間。
カオスから生起する創造性。
この空間からいま、世界の営為にアートで参加する動きが生まれている。
この記事では、ALT の実践に基づいてアートがビジネスを変えていく姿を示す。
「『アート』は終わった」とも「アート思考によってイノベーションを」とも叫ばれる時代において、一体アートの担う役割とは何だろうか?アーティスト集団 ALT はこのように答える。
「人間の世界において、答えるよりも先に新たな問いを立て、世界の分岐を作り続けること」
AIが優れた絵を描き、計算資源がそのまま金融資本になり得るこの世界で、人間ができること。それは、「人間とは何か」という人間固有の悩みを基盤にした、人間の世界をつくり続けていくこと以外にあり得ない。
そして、「もしこんな世界があったらどうだろう」という未来の可能性を、共感性と解釈多様性の高い形で表現することができるのがアートなのではないだろうか。
[広告]
前振りが長くなりました、ALT に参戦している 工学部2年のプラート アルヴィン(Alvin Praet)です!小さい頃からアンモナイトをはじめとした化石の研究に没頭し、HCAP Tokyo や UT-BASE をはじめとした学生団体に身を埋め、現在はDeepTech 領域での研究者かつ起業家を志す自分が、なぜかいま、「アート」を藝大生たちと一緒にやっています。
それは「こんな未来あったら面白そうじゃない?」という自分の遊び心を社会に彫刻をしたいと思ったから。起業家的に/アーティスト的に世界に参画する方法を肌感覚で実感したかったから。言語や論理で語れない領域に「本当の自分」みたいなクサいものが見つかると悟ったから。
ALT はかの有名記事を書いたことで知られる東大OBで東京藝術大学修士課程の下山明彦さんが率いています。起業家でありながらアーティストでもある彼と共に、「ありうべき未来は、アートから生まれる。」という未来志向のステートメントを掲げ、東大生や藝大生を巻き込みながら活動しています。
この記事では、ALT の東大生メンバーを代表して色々語らせてもらいます!
ALT がやっていることを簡潔に表現したらこんな感じです。
起業家のビジョンをアートにすること。
うーん、わかるようでわからない(笑)。ビジネス×アート? 概念としてはわかっても、いまいち実感が持てないですよね。そしてなぜそんなことをする必要があるかもわからない。具体例を元に説明を試みます。
2022年、ALT は東大OBの橋本舜さんが創業された 株式会社 BASE FOODと一緒にプロジェクトをしました。BASE FOODは、完全栄養食を通して主食にイノベーションを起こし、健康をあたりまえにすることを目指している企業です。そしてプロジェクトの目標は、未来志向のアートによってその BASE FOOD のビジョンを進化させること。
まず、起業家(橋本舜さん)とワークショップを行って、思想やビジョンへの理解を深めていきます。真っ新な部屋を用意し、対話しながら思いつくままに作品アイデアを表現していきます。これが気持ち良い!
次のステップは社員の方々とのワークショップです。BASE FOOD は完全栄養食を通して健康をあたりまえにすることを目指しているわけですが、その「健康」の捉え方は人それぞれなはず。ビジョンの中心的な概念である「健康」がいかに多様に解釈可能であるかを対話を通して実感し、作品案に落とし込んでいきます。
そしていよいよ、アートメイキングに入ります。冒頭で述べたように、アートを通して新たな「問い」を立て、世界の分岐を作ること=ビジョンに他の可能性を与えることが狙いです。完成した作品の一つを紹介しましょう。
ALT はアート作品を「参加的対話型鑑賞」という方法でインストールします。社員の皆さんがこのアート作品に参加し、実体のあるモノを通して対話をしていきます。
ALT の作るアートとは解釈を一意に定めるものではなく、鑑賞者それぞれの受け止め方が肯定されるべきものです。油絵具を塗り重ねるように、対話を通して作品に解釈を塗り重ねていきます。そこで実感される解釈の「違い」を言語化することを通して、「実はこんな世界もあり得るのでは?」という我々の作りたい「世界の分岐」が生まれ、ビジョンを進化させていくのです!
[広告]
これまで2年間ほど活動してきた ALT ですが、その2年間の集大成として迫力のある展示を作っています!!
2021年に起業家の高木健作さんと共同開催した「いまここで、よく生きる。」展。
2022年に BASE FOOD とコラボしたプロジェクト。
これらの活動の集大成として、下山さんの藝大の修士課程卒業展示に合わせて、2023年1月28日〜2月2日の期間で展示会「ALT + >>」を開催します!
なんと、上野にある藝大キャンパスのグラウンドに自前のプレハブを特別に建てて、展示会場にしてしまうんです。
もちろん、見掛け倒しでは終わらせません。この展示会では、ありうべき未来をアートから生み出し、世界を加速させることを目指した ALT の過去と現在、そして未来を、各プロジェクトの作品やアーカイブを展示することで表現します。
一般的な絵画や彫刻から連想される「アート」とは一味違い、社会と密接に相互作用することを価値とし、社会の未来の姿を描き出そうとするスペキュラティヴな「アート」の形を実感していただけるかと思います!
作品が発する「問い」を受け取ったならば、また新しい世界の眺め方のレンズを持つことができるようになるはずです。
東大生メンバーは主に展示会の言語表現に貢献しました。展示空間の中で、アートと言語表現を組み合わせながら、どのような体験を形作っていくかを考えていくわけです。
例えばこの「宣言」。
これは展示会の最後に皆さんに読んでいただく文章で、ALT の理想を高らかに謳い上げています。どのような体験を経てこの宣言に繋がっていくか、乞うご期待です!
また、我々は展示空間における言語表現に加えて、ALT の活動そのものや、ALTの来し方行く末を多角的に分析するリサーチも行い、その成果を論考という形で100ページにも及ぶ展示会カタログに収めました!
アートは企業の経営にどのように貢献できるの?アートの「民主化」って一体何?人間はどうやってアートに「価値」を見出すの?
ALT の活動記録や作品に加えて、こうした論点について分析した6本の充実した論考が揃っています。10月-11月にかけて、学科の授業に圧迫されながら土日を返上して書いていたことが懐かしいです。トホホ
それだけに、最後はデザイナーの方の手による息をのむような美しい装丁を施され、自分たちの書いた文章がハードカバーの冊子になったのを見た時には、達成感も一入でした。
展示会にお越しいただいた暁には、カタログも手に取って頂けると嬉しいです!
[広告]
<場所>
110-8714 東京都台東区上野公園12-8 東京藝術大学構内グラウンド
<開館スケジュール >
1月28日(土)〜 2月2日(木)9:30-17:30 (入場は17:00まで)
<予約方法>
日時指定のオンライン事前予約制で、以下のホームページにてご来場希望日の10日前の午前10時より受付を開始いたします。入場料は無料。
コロナ対応として、当日来場するためには事前予約をしないといけないのですが、藝大の卒展は人気が高いので一瞬でチケットが完売するとの噂です。
可能ならば来場されたい日の10日前の10時にスタンバイしていただいて、ご予約をされることをオススメします。最初の予約は18日の10時より開始です!
アートにはもっともっと世界を形作っていく力があるはず。それが我々の信念です。
ビジネスも、研究も、日常生活も、アートの力で進化させることができるはずです。
そんな ALT は世界の全てにアート的に参加する挑戦の真っ最中です。これからも面白いワクワクすることをたくさん仕掛けていきます!
例えば、地方自治体との新たな芸術祭の開催への動きが始まっており、地方展開も進めていくところです!また、アートの制作者も愛好家も気軽に往来し語り合うコミュニティとアトリエを運営しようとしています。
筆者個人としては、起業家的に ALT の事業開発にも関わらせてもらっており、仮説検証のサイクルを回し、課題解決に取り組み、プロジェクトを拡大させていくことを学ばせてもらっています。
展示会が終わったら他にも個人的にやりたいことはたくさんあります。
① 自分の大好きな化石やアンモナイトをテーマにした作品を藝大生と一緒に作りたい!
② スタートアップに繋がりそうなプロジェクトを走らせたい!
③ 自分のことをアーティストだと呼べるようになりたい!
などなど。
何はともあれ、ALTは未来のアーティストや起業家、研究者が高密度で集まっている奇跡みたいな空間なので、何でもできると思っています。興味ある!という方は、ぜひ一度「秘境」アトリエに遊びにきてください。歓迎します!
以下のALT 公式ホームページのお問合せ欄に書き込んでいただくか、個人的に連絡をください!