メリークリスマス!!
こんばんは。21歳女性、今年クリスマスに欲しいものは圧倒的な時間と学力とお金です。
今日(執筆日)は1年で一番特別な日、街が色鮮やかに彩られる特別な夜、そう、
クリスマス!
クリスマスといえば、みんな大好きなあのおじいさんと動物のコンビがいますよね!
そう、サンタ!とトナカイ!
私の欲しいものをなんでもくれたサンタさん、
もらった着せ替え人形をイカした髪型にイメチェンさせようとしてどういうわけか斬新な髪型になったり、
たまごっちを何度育てても3日で死なせたり、
高そうな腕時計を東大入試直前になくしたりしてごめんね。
でもサンタさん、そんな私も今年で21歳、立派な大人です。
あの頃の無垢な私と違って、もうなんでもわかる歳なんです。だから思います、
そもそもそりで空を飛べるなんて聞いたことないし、空を飛ぶトナカイだって見たことない。
しかし大人になった私を侮るなかれ。私は知っています。あらゆることは科学が解決してくれるってね。
ということで!サンタが空を飛ぶメカニズムを解明すべく、UmeeTに連載エッセイを書いてくださっていたこともある宇宙工学者の久保さんに突撃質問してみました。
今日はよろしくお願いします!
早速ですが、サンタさんってどうやって飛んでるんですか?
そうだね。空を飛ぶ仕組みの話に入る前に…サンタが空を飛ぶ仕組みをネットで調べてみると、いろんな説が見つかります。サンタが世界に1人だと仮定すると、一晩でプレゼントを配りきるためにはものすごいスピードで飛ばなきゃいけないんですよね。
例えばこの記事に言及があるけど、一晩の移動距離は地球から太陽までの距離よりも長くなる。
とんでもないですね。
だけどサンタとトナカイってイラストなんかだと優雅にゆっくり飛んでるイメージだと思うので、今回は横方向の移動スピードが現実的になるように、サンタが各国にたくさんいるという仮定を置いて進めていきます。
なるほど。
サンタとトナカイが空を飛ぶメカニズムの案の1つ目として、この動画を参考にしたんだけど…
漫画でよく見る、「キャラクターが走って崖から飛び出してもしばらく滞空している」描写。あれと同じように、トナカイがすごい速さで足を動かすことで空を飛んでいる、と考えてみます。
この動画だと、人間が空気を蹴って滞空するためには、マッハ3の速度で毎秒100回、もしくは普通のペースで脚を動かしてもマッハ300の速さがあれば浮ける。
なんかわからないけどとんでもなさそうな速さですね。
今回はマッハ3・毎秒100回を基準にトナカイの場合を計算してみたんだけど…
これが動画に出てきた空気抵抗の式。宇宙分野とか飛行機の分野でもよく出てくる式だけど、
空気の密度はρ_0=1.293kg/m^3、
トナカイの足の裏の面積がわからなかったから馬蹄のサイズを参考に、直径15cmの円だとして、人間と違って2本の足を同時に踏み出すから2倍するとS=(0.15/2)^2*π*2=0.035m^2
トナカイの体重を180kgと仮定して、これをもとに計算すると、トナカイが脚を踏み下ろす速度はマッハ 14ぐらいになる。
マッハ14…
つまり、トナカイは毎秒100回のペースで、マッハ14の速度で脚を下に踏み下ろせば空を飛ぶことができるはずです。
実はこれだとトナカイは自分の体重を支えているだけなので、本当はサンタさんの体重だったりプレゼントの重さだったりもプラスされるんだけど、よく見るようなイラストではトナカイは何頭もいることが多いから、サンタやプレゼントの重さはみんなで分担できる分、差し引いてこのように単純に考えておきましょう。
マッハという単位に馴染みがないんですが、これはどのくらい速いんでしょう?
マッハは、音速の何倍のスピードかという意味。地上の音速が大体毎秒340mぐらいなので、その14倍、毎秒およそ4800mくらいで脚を踏み下ろせばいいわけです。
とんでもないですね。足が速いどころの騒ぎではないです。
マッハ14のスピードがあれば滞空はできるってことだと思うんですが、プレゼントを届けるために地上に降りてきてからまた空中に上昇したい時はもっと速度を上げたり、回転数を上げたりするのが必要ってことですか?
そうだね。マッハ14・毎秒100回転だと水平に空を飛んでいく感じになります。ただ、例えば地上から飛び立つときに地面を蹴ってあげれば高く上がることができるから、その高さを空中で維持すればいいことになりますね。
とはいえ、地面を蹴る瞬間はものすごい加速度がかかるはずなので、サンタさんは首の骨折るんじゃないかな、ぐらいの加速度になるかも。
サンタさんは首の骨が屈強なんですね。
どのくらいの速度で蹴る必要があるかは、サンタ一行が上空の高度どのあたりを飛んでいるかにもよりそうですね。
確かにそうだね。例えば空を飛んでいる時のマッハ14と同じ速度で地面を蹴ったらどれくらいの高さまで上がれるのかも計算してみると面白そうですね。トナカイの脚の質量や、地面の硬さなどを適切にモデル化できれば計算できそうです。
それにしても、マッハ14で地面を蹴ったら地面にヒビが入ったりしそうですね。
そうだね、アスファルトとか割れるかもしれない。だいぶ頑丈なところでやらないといけないですね。
弾丸のスピードを調べてみると、速いものでもマッハ2、3くらいだから、マッハ14となると相当だよね。弾丸なら軽いけどトナカイの脚となると重さも結構あるだろうから、エネルギーとしては相当でかい。
エネルギーは質量と速さの2乗に比例するので、トナカイの脚の重さが体重の10%ぐらい(18kg)と適当に仮定すると、質量100g・マッハ3の弾丸と比べてエネルギーは(18000/100)*(14/3)^2で約4000倍になりますね。
それを夜にみんなが寝静まった頃にやってるわけですね。
街中の子供が起きちゃうね。
子供が起きちゃうという話で言うと、実は地面を蹴る時だけじゃなくて、空を飛んでいるときにも騒音が発生してるはずで。音速を超えるもの、戦闘機なんかを想像してもらえればいいと思うけど、すごく速いものって衝撃波を発するんですね。
だからトナカイが足を踏み出すと、毎秒100回も衝撃波を発する。子供は起きる起きる。
衝撃波っていうのは音を発するんですか?
そうそう、僕も直接聞いたことはないけど、音速を超える移動があると、空気中に圧力の不連続面ができることでものすごい音がするはず。
昔、コンコルドっていう超音速の飛行機があって、騒音被害がものすごかったなんていう話もあります。
なるほど。でも良い子はすやすや寝ているから気づかないと。
流石に気づくんじゃないですかね。花火とか雷みたいな音がするはずです。
それじゃ困るじゃないですか。上空のすごく高いところを飛べば、ある一定以上で騒音が気にならないぐらいになりませんかね。
確かにそれはあるかもしれないね。サンタさんに騒音被害でクレームが来たら、サンタは上空何km以上を飛行しなさいみたいなことが法律で決められてしまうかもしれませんね。
そうやってサンタと人間が共存していくってことですね。
でもそうなると、プレゼントを届ける時も街に近づいちゃいけないから、頑張って煙突めがけて上空から落とすしかないんですかね。
そうだね、パラシュートみたいな感じになるのかな。
煙突にすぽっと入れるための制御もすごい難しいと思いますね。
パラシュートでプレゼントを落として狙った煙突に確実に入れるには、はやぶさ2みたいに打ち出してパラシュートを開くだけではダメ。
打ち出した後もその日の風の具合とかによってプレゼントの位置がずれていくので、煙突の位置をちゃんとセンサーで測りながら、この位置が計画とずれたらパラシュートも紐の長さとかを調節して傾けたり、そういうフィードバック制御が必要になってきますね。
めちゃくちゃハイテクじゃないですか。
その制御装置の方がプレゼントじゃないかっていうね。なんかすごいマシンが届いたーってなりますね。
もう一つ大変なのが、熱の問題。ものすごく速いものが空気に当たると、突入してくる物の前方の空気がギュッと圧縮されてめちゃくちゃ温度が上がるんですね。
宇宙に絡めて話すと、大気圏に突入するときにすごく熱が発生するって聞いたことあるかな?よく摩擦熱と誤解されるんですが、あれは実は空気が圧縮されて発生する熱なんです。
だからトナカイさんの脚でも同じことが起こるはずで、踏み出すたびにものすごい衝撃波とともに下の空気もものすごく圧縮されてめちゃくちゃ熱くなる。多分脚はめちゃくちゃ燃えて、火の玉になりながら飛んでいるような感じになるのかもしれないですね。
それでトナカイの鼻は赤いのかもしれないですね。
鼻どころか全身燃えてますけどね。サンタさんも全身赤いしね。
あ、あれも実は燃えてたんですね。
宇宙の話に絡めると、小惑星探査機のはやぶさ2のカプセルは地球に帰ってきて大気圏に突入後、オーストラリアの砂漠に着陸して回収されたんだけど、あれはマッハ34の猛スピードで大気圏に突っ込んでいったんだよね。スピード自体ははやぶさ2のほうが速いんだけど、空気が圧縮されて加熱する時というのは、圧縮される空気の密度が高いほど加熱もよりされる。
はやぶさ2の場合だと高度80kmが大体入熱のピークで、3000℃ぐらいになります。
それとトナカイさんを比較すると、トナカイさんの方が脚のスピードは遅いけど、高度が低い分空気の密度がすごく大きい。
計算してみると、
入熱量は速度の3乗と密度の1乗に比例するから、
大気密度ρ_0km=1.3kg/m^3, ρ_80km=10^-4kg/m^3を考慮すると
入熱量比は(14^3/34^3)*(1.3/10^-4)で約900倍になって、トナカイの足の方がはやぶさ2のカプセルより入熱が大きい計算です。
!?とんでもない熱ですね。でもトナカイが燃え尽きたらもうサンタさんは飛べなくなりますよね。
サンタだけが落ちてくるだろうね。
(…シータ!?)
そんな温度だとあっという間に燃え尽きちゃいそうだけど、どうなんでしょうか。
同じように、はやぶさ2とかのカプセルも大気圏に突入してくるから燃え尽きちゃうんじゃないか、みたいなことをよく言われるんだけど…あれはどういう仕組みかというと、3000℃に耐えうる材料っていうのはこの世に存在しないから、表面が溶けていくのは避けられない。だからむしろ、その材料が蒸発していくときに表面から奪う蒸発熱で冷やすっていう仕組みになってるんですよね。
だから、トナカイさんの足もそうやって、蹄みたいなところが蒸発してすり減っていきながら冷やして、なんとか飛んでるような感じになるかもしれない。
トナカイに靴みたいな物を履かせて、それがだんだん溶けていくようにすることでトナカイが燃えることから守るみたいなことって可能なんですか?
そうだね。靴の底とかが溶けてるってことはその材料が溶けるぐらいの温度にはなってるはずなので、足の裏もめっちゃ熱いだろうから、本当にトナカイの足が熱すぎないかどうかはちゃんとシミュレーションしてみないとだけど。まあでも靴を履かせることでだいぶ楽になる余地はあるかもしれませんね。
あとは、その靴を大きくすれば空気抵抗が増えるから、踏み込むスピードとか回数を減らして入熱量を抑えることもできるね。とはいえ空気抵抗が大きいということは同じスピードで踏み込むのも大変になるから、どのみちトナカイさんの脚の筋力はめちゃくちゃムキムキなんじゃないですかね。
マッハ14のインパクトがすごくてスルーしてたけど、そもそも1秒間に百回踏み込むのもだいぶやばいですよね。地上から観測できるとしたら、それこそ脚がぐるぐるに見えるかもしれませんね。
確かにね。
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他にも飛び方の可能性はあるんでしょうか?
そうだね、例えばこの記事には、飛ぶ方法の一つとして風船の仕組みが紹介されています。
風船の仕組みというのは、いわゆる浮力というやつ。例えば風船の中にヘリウムガスとか、空気より軽い気体を入れておくと浮いていく。風船の体積分の空気の重さ分が浮力としてはたらくわけです。
水に物を浮かせる時の浮力と仕組みは同じですね。
そうそう。サンタさんがすごい量のヘリウムを用意してるって可能性も考えられますね。
サンタさんが持ってる大きい袋、おもちゃの袋と見せかけてあの袋にヘリウムをめっちゃ入れてるとかも考えられますね。
袋を持って飛ぶ感じね。それだとトナカイとそりいらないじゃんってなりますけどね。
確かに。トナカイが頑張って飛ばせてるって方が自然な感じしますよね。
せっかくトナカイいるなら働いてほしいですよね。
もしこの浮力の説で行くなら、相当巨大な気球ぐらいのサイズのでっかい風船でないといけないので、たぶん遠くから見てもなんか飛んでるなってわかると思うんですよね。
もしくはトナカイを動力にするんだったら、ONE PIECEのルフィみたいに、めちゃくちゃ空気を吸ってトナカイ自身が膨らむっていうのもありかもしれないですね。
燃えるぐらいなら空気吸わされる方がマシかもしれないですね…?
その方法をとるとすると、トナカイはものすごい膨張しないといけないんですか?
そうだね。原型をとどめないくらいにはなると思います。
うーん、サンタにどこまでの現実味を求めるかによっても採る説が変わってきますね。
僕としてはやっぱり、現実的に考えてどう実現できるかを考えるのが面白いですね。航空宇宙工学の観点って、そんなのありえないでしょうってものをどうやって現実的に実現して行くかを考えていくものなので。普通のおっちゃんでもこういうものを準備すればサンタになれるよって方が面白い。
でも今の設定だと、何かしらの特殊能力を持ったトナカイを準備しないとサンタにはなれないですね。
そうだね。トナカイだけに任せると大変なので、サンタのそり側にも何か入れることはできそうだね。今のところサンタ何もしてないからね。
トナカイは飛ぶ担当、サンタはプレゼントを狙って落とす担当って感じですかね。
まあプレゼントを1個1個落としてたら処理が間に合わないだろうから、そこも自動操縦になってるのが現実的かな。
やっぱりサンタ何もしてないですね。
そりにつけるとしたらロケットとか飛行機みたいなエンジンですか?
そうだね。例えば先ほど紹介したサイトでは第4の方式として、人工衛星みたいに宇宙軌道上を回り続ける方式を紹介してる。実際それをどう加速させるかについてこの記事では言及していないんだけど、人工衛星になるぐらいまで加速するってなったらやっぱりロケット付きのそりとかを使うことになるかな。ただ、そりも宇宙船みたいに囲われてないと、宇宙は真空だからサンタが呼吸できなくて死んじゃうけど。
とは言え、そりサイズの小さいロケットでは絶対に宇宙軌道上には行けないから、数十mぐらいのでっかいロケットそりの先端にサンタがいるって感じ。そこまでして飛んでどうすんねんって感じですが。
人工衛星みたいな感じで回り続けるには一定の高度が必要ってことですか?
燃料なしで回り続けるとなるとそうだね。そもそも人工衛星とかをなんで高い高度に入れるかというと大気の抵抗をなるべく減らすためなんだよね。人工衛星とか宇宙ステーションはだいたい高度400kmぐらいを飛んでる。低いところだと空気抵抗でどんどん落ちてきちゃう。
逆に、飛行機とかは大気が濃いところで空気を取り込んで、それを燃料としてずっと噴き続けることによって滞空する。そういう方式の違いがあります。
それなら、サンタさんのそりも飛行機と同じ機構の方が現実味がありそうですね。
そうだね、ジェット旅客機みたいな感じかな。セレブとかが乗るプライベートジェットぐらいのサイズで、比較的小さくできそう。
これならちゃんと現実に存在しているし、十分ありえますね。
普通にできると思う。でもこれだったらトナカイいらないじゃんってなるよね。