はじめまして、東京大学文科一類2年のやまびこです!初めての記事作成ですがお手柔らかにお願いします(笑)。
突然ですが皆さん、第二外国語って何語を選択しましたか?高校生の方なら、何語を選択するつもりですか?
私はフランス語を選択しました!TLP(後ほど説明します)に在籍していたこともあり、語学の授業でたくさん友達ができて、フランス語選択して良かったな~って思っています!
…いやでも、
フランス語自体の魅力は何だろう?
フランスの文化に触れられる?それはそうだと思うけど・・・
フランス文化の魅力って何?
そりゃフランス料理はおいしいし、フランスのブランドはおしゃれだけど、それだけなのかな?フランス語を学び、フランス人と交流できるようになるメリットってあるのかな?
こんな疑問を解消すべく、やまびこのフランス語のクラスメイトだったUmeeT編集部員「わかな」と一緒に、駒場でフランス語を教える寺田寅彦先生にお話を伺いました!
原典で仏文学を読みたいという想いがフランス語との出会い。
フランスでの17年間の生活を経て2009年に帰国。以後東大教員。
ー本日はよろしくお願いします!
ーざっくりとした質問ですが、フランス語を学習する魅力って何だと思いますか?
フランス語はアカデミー=フランセーズという機関のもとで洗練されてきました。綴りや文法がきっちり決められているため、明確な意識をもって体系的に勉強できます。
日本語は主語・動詞・目的語がごちゃ混ぜでもどこか通じてしまいますが、フランス語はそれがしっかり守られていなければなりません。その違いは文化にも表れています。日本にはパンに焼きそばを挟んだ焼きそばパンなんてものがありますが、フランス人はそれを許さないでしょう。「パンとパスタを混ぜるなんてありえない!」と怒ると思います。日本人がフランス語の背景にあるそんな文化に触れて、カルチャーショックを乗り越えれば、人間としての幅が広がると思います。
ーフランス語ってルールが本当にかっちりしているんですよね!だからこそ難しいなって感じることも多いですが、意識してみるとそれはフランス語の大きな魅力なのかもしれません。
ー原宿のラフォーレや、ブランドのMaison de FLEURなど、日常で見かける言葉の意味が分かると楽しいです。
日本にいながらも日常的に接点があることは、フランス語の大きな魅力ですよね。レストランでフランス語で注文できたら、それだけでも凄く楽しいと思います(笑)。
フランス文化は食事や服、絵画、音楽といった点で高く評価され、日本にも広く知れ渡っています。フランス文化が権威をもっているからこそ、ラフォーレは「森ビル」ではなく「ラフォーレ」なのでしょう。
ー発音の美しさもフランス語の魅力だと思っています。上手く言葉にできないですが、フランス語を聞くと、なんかいいなって気分になります。
中国語やイタリア語といった言語は、音が上がったり下がったりして、歌うような響きがあります。フランス語はそれらと比べてあまりイントネーションがなく、ふにゃふにゃとした印象を与えることがあると思います。
それでもフランス語がどこか心地よいのは、美しいイメージのフランス文化が背景にあるからかもしれませんが、私は、フランス語がはっきり発音されているからでもあると思います。
日本語は文脈に依存しており、内容が完結していなくても通じてしまうところがあります。しかしフランス語は完結した文で内容をはっきり伝えなければなりません。「自分を伝える」意志が乗ったフランス語にはリズムが生まれるのです。
-フランス語は棒読みでふにゃふにゃ喋るのが正しいと、今までずっと思っていました… これからは堂々と話します!
[広告]
ーフランス文化と言えば、料理や服といった目に見えるもののイメージがかなり強いですが、目に見えない所にはどのような魅力がありますか?
フランスでは人とのコミュニケーションがとても大切にされています。人それぞれに様々な価値観があることが色々なことの前提になっています。
フランスでは昔、革命で王の首を切って共和政を実現しました。そのとき、様々な身分や文化背景を持った人が集まって運営しなければならないと自覚したのです。だから今でもフランスでは話し合いを通じ、皆が自分の意見を強く主張することを必要とするのです。
ーこの文化に触れることにはどのような意義がありますか?
フランス文化に直接触れると、違う考え方の人々とのコミュニケーションから自分の人間形成の幅を広げられると思います。しかし、そこでフランス人を「自分のことばかり考える人たち」と思ってしまうと、コミュニケーションに苦労し、こんなはずじゃなかった…と「パリ症候群(*1)」に陥ってしまうかもしれません。
(*1)パリの生活っておしゃれそうで憧れますよね!でも実際住んでみたら大変ってことがよくあるみたいです。そのギャップによる苦しみを「パリ症候群」と呼ぶことがあります。
ーフランスでは差別が強くて外国人には生きづらそうなイメージがあります……実際はどうなのでしょうか?
差別は差がある集団内だから生まれます。フランスは様々な人が集まっているため、差別はあります。
私もフランスで仕事をしていたとき、移民のステータスから差別的待遇をされていました。フランス人と外国人の待遇は明らかに違いました。手続きのために、冬の冷たい雨風の下で3,4時間待たされたのは辛かったです。
しかしフランスでは、差別を差別と認め、差別はいけないと主張できる文化があります。こんなの差別だ!と相手に言えば、そんなつもりじゃなかった!と対話が生まれます。ここが日本との大きな違いです。日本では差別を封じ込めて、なかったことにする動きの方が強いですから。
その声を上げられない人は、フランスで大変な思いをするかもしれません。
-その分フランスで生活すれば、自分の意見をはっきり伝えられる強さが身につくということですか?
そうです。そしてそのためにはフランス語が必要なのです!
フランス語には”On parle la même langue.”という言い回しがあります。直訳すると「私たちは同じ言語を話す」、ひいては「気が合う!」という意味です。フランス人がフランス語でのコミュニケーションを重視する姿勢が伝わってきます。フランスでは、同じ言葉で話そうとする意識が大切にされています。
ー10年以上駒場でフランス語を教えてきて、東大生に対して何か感じてきたことはありますか?
二つの観点からお話しします。
一つはやはり優秀であるということです。勉強の方法がわかっているので、教えている側の狙いをよく理解し、そこに向かって努力してくれます。教員としてはとてもやりがいがあります。
二つは、異文化を理解しようとしてくれるということです。私は駒場に来る前フランスで17年ほど生活していたため、日本での生活に、学生としても仕事としても強いカルチャーショックを感じていました。日常生活のあり方や人との関わり方に対する考え方がフランス人のままだったのです。
そんな私は他の人とは違う悩みを持っていました。周りに日本の人しかいなくて緊張したり、電気の付け方が分からなかったり、窓が開けられなかったり……
でも東大の学生はそんな私を変人扱いせず、学生なりにどうしてそう悩んでいるのか考えてくれました。私にとってそれは嬉しかったし、恵まれていると感じました。
ー東大のフランス語教育についてはどう感じていますか?
第三外国語としての講義や、初級・中級・上級といった習熟度別の講義、文学の授業など高いレベルの講義など、あらゆる人に見合った講義を展開しています。たくさんの優秀な先生がいる東大だからこそできることだと思います。
さらに、2016年からはフランス語でもトライリンガル・プログラム(TLP)(*2)を開講しています。TLPに参加すれば、フランス語を集中的に鍛えることができます。TLPでは多くのフランス語の授業を少人数で履修することで、話して書く能力を伸ばします。
(*2)東大入試の英語の成績上位者が応募できる第二外国語の少人数プログラム。一般の学生に比べて多くの言語の授業を履修し、運用能力を伸ばすことができる。参考:http://www.cgcs.c.u-tokyo.ac.jp/tlp/
ーTLPは研修制度が充実しているのですよね?
はい。フランス語TLPでは、プログラム中2回の国際研修を用意しています。フランスやフランコフォニー(フランス語圏の地域)に1~2週間奨学金付きで滞在することができる、プログラム最大の売りです。ただフランス旅行として楽しむだけではなく、現地の大学で勉強したり、フランスの環境労働省の方の前でプレゼンしたりと、様々な内容を実施してきました。ハードですが、その分その先フランス語を使っていく上で大きな自信になるはずです。
ー環境労働省…!それは貴重な経験ですね。
[広告]
ー最後に、フランス語を学んでいる東大生に一言お願いします!
言語を学ぶことは、スポーツに似ています。言葉を話すこととは口も体も動かすことですから。オリンピックの選手などを見ると、コーチは選手より技術やセンスは下かもしれません。だけど選手の成長のためにはコーチは絶対に必要です。これと同じように、たとえ能力の高い東大生と言えど、言語は一人で学んでも成功しません。東大には、言語のアスリートになれる能力を持った人がたくさんいます。そして、レベルの高いコーチも沢山います。だから東大は言語を学ぶのに絶好の場なのです。
フランス語を勉強すると、意識が研ぎ澄まされます。例えば、ラフォーレがラフォーレと名づけられたことがどうでもいいと思わなくなります。「どうしてこうなんだろう」「こういうふうにしたらもっといいんじゃないか」フランス文化はそんな意識を高めてくれます。それを求めている学生には、フランス語学習は良い選択ではないかと思います。
“Il faut cultiver notre jardin.”という格言を最後に紹介します。これは18世紀にヴォルテールが『カンディード』という作品の末尾に記した言葉です。『カンディード』は博識の先生と一緒に旅をする青年の物語なのですが、行く先々で悲劇に見舞われます。それでも、先生は気にせず次に次に進んでいきます。そんな経験を経て最後にカンディードが得た言葉が、“Il faut cultiver notre jardin.”なのです。
この言葉は直訳すると「我々の庭を耕さないといけない」という意味です。青年は世界を回ったが、そこで、まずは自分自身を大切に耕すことが大事だと気づいたのです。
学生の皆さんにはそのことを忘れずに、大学生活でたくさんの学びを得て、自分自身を豊かにしていってほしいです。
ー寺田先生、ありがとうございました!
今回のインタビューを通じて、私は「フランス語を学んできて良かったな」と感じました。それと同時に、「折角勉強したフランス語をもっと活かさないと」とも考えました。フランス留学をして、フランス文化に直接触れてみたくなりました!
フランス語の勉強をめんどくさいと感じている方もたくさんいると思います。しかし、フランス語学習は自らの世界を大きく広げ、人生を変える可能性をも秘めていると思います。この記事を読んでくださった方が、少しでもフランス語に興味をもっていただけたなら幸いです!
最後まで読んでいただきありがとうございました!