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【女子率5%の環境はつらい?】女子が少なすぎる学科に所属する東大女子にホンネを聞いてみた

2021.05.01

みなさん、突然ですが東京大学の男女比を知っていますか?

東大公式で確認したところ、学部生は男子が11284人女子が2726人

院生は男子が9434人女子が3567人でした。(2020年11月1日時点)

割合にすると、男子が約75%、女子が約25%と、女子が非常に少ないのが実情です。

その中でも、特に女子が少ないのは理工学系の学科・研究室で、女子が1割にも満たないようなところもあります。

2021年度入学者の女子率が2割の壁を超えたと話題でしたが、まだまだ少ないですよね。

実際のところ、女子率が低い学科・研究室に所属する女子学生のみなさんは、東大の男女比についてどう考えているのでしょうか

そこで今回は、女子率が低い学科・研究室の4人の女子学生に直接インタビューを行ないました。

「進学に躊躇いはなかった?」

「女子が少なくて苦労すること、辛いことは?」

現在の環境に対する本音を包み隠さず話していただきました。

CASE1:工学部航空宇宙工学科の原野さんの場合

学生証
  1. お名前:原野佑夏さん
  2. 所属:東京大学工学部航空宇宙工学科4年

女子がひとりもいない学科!?

筆者
筆者

工学部の航空宇宙工学科に在籍されているということですが、男女比はどのくらいなんですか?

原野さん
原野さん

私の学年は、55人中女子が5人です。ただ、これでも多い方らしくて、学科に入ったばかりの頃に先輩から「今年は女子が1割もいていいね!」と言われました。

筆者
筆者

1割でも多いんですね……

原野さん
原野さん

でも工学部はどこ似たようなものだと思います。工学部も大きく機械を扱うハード系とプログラミングなどをやるソフト系に分けられるんですが、ソフト系の方が少し女子比率は高いです。

筆者
筆者

女子が全くいない学科もあるんですか?

原野さん
原野さん

はい。そこはここ数年は1人もいないみたいです。

筆者
筆者

女子が1人もいないとかなり入りにくそうですね……

原野さん
原野さん

確かに、新入生のときにその学科を視野に入れている女子もいますが、実際の進学選択では結局他の学科を選んでいますね。

女子が少ないからといって、女子で固まるわけではない

筆者
筆者

原野さんが航空宇宙工学科を選んだ理由を教えてください。

原野さん
原野さん

ホームページなどをみて航空宇宙工学科に興味を持って、学科の教授にメールをしたんです。そしたら、専門課程の授業をお試しで見学させてもらうことになりました。授業も面白く、学科の雰囲気もよかったので、この学科に行きたいと思うようになりました。

筆者
筆者

男女比などの点で不安はなかったんですか?

原野さん
原野さん

元々、男女比なんて気にしないという気持ちでいたんです。ただ、お試し授業のときに周りがほとんど男子だったので、少し戸惑いは感じました。

ただ、工学部であればどこも同じような男女比だろうと思い、やりたいことをするために航空宇宙工学科を選びました。

筆者
筆者

実際に入ってみていかがでしたか?

原野さん
原野さん

結局、男子とも女子とも仲良くできています。

現在は週1の実習を除いて全てオンライン授業ですが、学科が決まった2Aの時点では対面だったので、そこで仲良くなれました。

筆者
筆者

それはよかったです。

それでもやはり、女子の方が仲良くなりやすかったりはしますか?

原野さん
原野さん

いや、女子と仲良くなりやすいというより、一緒に実験をする班で仲良くなりやすいですね。

航空宇宙工学科は必修が多くとても忙しい学科なので、同じ班の人との交流が増えて、結果的にそこで仲良くなります。実験班でご飯に行くこともあります。

筆者
筆者

女子で集まったりはしないんですか?

原野さん
原野さん

最近になって女子会を開いたりもしたんですが、最初は全然でしたね。

筆者
筆者

同性で固まったりしたくなるものなのかなと思ったんですけど、違うんですね。

原野さん
原野さん

いや、私は集まりたかったんですけどね(笑)

周りの女子がなんていうか「強い人」で、ひとりで大丈夫って感じだったんです。

筆者
筆者

学科の人とは男女関係なく仲良くされているということですが、他のコミュニティでも男女の友達がいるんですか?

原野さん
原野さん

男子で仲良くしている人もいますが、ご飯を食べに行ったりするのはほとんど女子ですね。

筆者
筆者

男子と女子では、付き合い方が変わったりしますか?

原野さん
原野さん

うーん。例えば男子だと、ファッションとかの話をしてもあまり伝わらないだろうと思って、そういった話題を避けたりはします。ただ、他学科の女子の友達だと航空宇宙の話を避けたりするので、男女というより、相手によって分かる話題を選んでいるというだけの話かもしれないです。

原野さん
原野さん

あー、でも考えてみると、男子と1:1でご飯に行くことはないですね。何人かではあるんですけど。

筆者
筆者

やっぱり、自然と気をつかっているんですかね。

原野さん
原野さん

そうかもしれないです。

筆者
筆者

やっぱり、距離が近くなりすぎても良くないと思ったりするんですか?

原野さん
原野さん

はい。ちょっとありますね(笑)

しばらく会わないと、私だけ他人になっていた

筆者
筆者

男子ばかりの環境で大変なことや辛いことはありますか?

原野さん
原野さん

大変ではないんですが、私ひとりだけ男子の輪に入りきれず残念に思うことはあります。

原野さん
原野さん

男子同士だと長期休暇に気軽に旅行に行ったりしている印象がありますが、なかなか私だとそういうわけにもいかないので、それは少し悲しいですね。

原野さん
原野さん

それと、コロナで学科の人としばらく会わない時期を経て、久しぶりに会ったとき、みんな初めて会ったみたいによそよそしくなったのも寂しかったです。男子同士では結構話してるんですけどね。ただ、少し経つとすぐ前みたいに仲良く話せるようになりました。

聞いてみると、最初は、私とどう接すればいいか分からなかったそうです。

筆者
筆者

仲が良くても、女子だと男子とは違う対応になるんですね。

原野さん
原野さん

あとは、街とかを歩いているときに、男子4人と私1人とかの場合だと、どう見られているんだろうと思ったりしますね。

筆者
筆者

原野さんは学科で仲良く付き合える人を見つけられたと思うんですが、周りの女子はどうですか?

原野さん
原野さん

私が見る限り、みんなうまくやれている気がしますね。私は元々男女比が4:1の中高一貫校に通ってて、科類も理一だったので、女子が少ない環境には慣れていたんですが、例えば女子校出身の人も同様に男子の友達と仲良くしています。

男女比が偏っているからこそ、男子がひとりになっている女子を気にかけてくれて仲良くなれるというのはあるかもしれないです。

家族は女子率なんて気にしなかった!?

筆者
筆者

原野さんは、自分の所属する学科の男女比が均等になっていった方がいいと思いますか?

原野さん
原野さん

はい。女子が増えた方が嬉しいと思います。ただ、工学部を目指したい女子が増えて自然に解消されるのあればいいと思うんですが、女子枠を作って無理に入れようとするのは、違うのかなと感じます。

筆者
筆者

女子だと、興味があっても周りから反対されて理一や工学部を目指せないという話を聞くことがありますが、原野さんはどうでしたか?

原野さん
原野さん

実は、私も家族も、理一の女子比率がとても低いということを、入学するまで知らなかったんです。航空宇宙工学科を目指したときも、家族は男女比を気にしてなさそうでした。

実はこれ、工学部の女子にはあるあるで、他学科の工学部の女子と話をしていたときも、入学するまで男女比がこれほど偏っていると知らなかったという話で盛り上がりました。

筆者
筆者

もし、航空宇宙工学科の女子が0人だったら、学科に入るのをやめていたと思いますか?

原野さん
原野さん

いえ、やっぱり航空宇宙工学科を目指したと思います。

ハードルは上がりますが、やりたいことをやりたいので!

筆者
筆者

最後にひとことお願いします。

原野さん
原野さん

女子が少ない環境で、最初は不安もありましたが、実際に入ってみると、私はマイノリティで辛いという気持ちにはなりませんでした。

ぜひ女子の皆さんも航空宇宙工学科を目指して欲しいです!

筆者
筆者

ありがとうございました!

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CASE2:工学部計数工学科のめいさんの場合

学生証
  1. お名前:めいさん(仮名)
  2. 所属:東京大学工学部計数工学科4年

進振りの点が高かったから計数工学科を選んだ

筆者
筆者

計数工学科に在籍されているということですが、男女比はどのくらいですか?

めいさん
めいさん

私の学年は60人中3人です。

筆者
筆者

てことは、5%……!

筆者
筆者

めいさんは留学生ですが、入学した時点で計数工学科に行くことは決まっていたんですか?(※留学生の場合は、入学前に進学する学科が決まっていることがある)

めいさん
めいさん

いや、実は私は元々応用化学科を志望していたんです。でも、授業を受けたりするうちに、実験が嫌だと感じるようになって、志望を計数工学科に変えました。

筆者
筆者

どうして計数工学科を選んだんですか?

めいさん
めいさん

多分私の理由は計数工学科を選んだ人の中でも一番良くないと思うんですけど……(笑)

まず、私進振りの点数が高くて、87点あったんですね。だから人気の学科に行きたいというのがありました。

筆者
筆者

めっちゃ点高いですね……

めいさん
めいさん

それと、将来の進路を考えたときに、経済的理由と心理的理由で、GAFAのエンジニアになりたいと思ったんです。

そこで、どの学科が適しているか考えて、計数工学科を選んだというのもあります。

理系らしい学科を選ぶ女子は「尖っている」

筆者
筆者

女子が少ないことに抵抗はありませんでしたか?

めいさん
めいさん

理一のときから少なかったので、特に抵抗はなかったですね。

ただ入ってみて、親密な関係の友達ができない環境だとは感じます。

男子と女子だと、やっぱり仲良くなりにくいです。女子と仲良くなりたいと思っても、いないので。

筆者
筆者

学科にいる他の女子とはよく交流するんですか?

めいさん
めいさん

いや、特に交流してません。仲が悪いわけじゃないけど、良いわけでもないという感じです。

めいさん
めいさん

私の意見ですけど、理系らしい学科を選ぶ女子には「尖っている人」が多いと思います。

私はいわゆる女子が関心を持つようなものに興味があるんですけど、私以外の女子はプログラミングや数学に関心を持っていて、私とは趣味が合わないなと感じます。

筆者
筆者

逆に男子とは交流がありますか?

めいさん
めいさん

一部の人とは仲良くなれています。

男子の中でもうまく話せる人と話せない人がいて、会話に慣れていない人との交流はないです。数学にしか興味がなく、他人と交流しないような人もいるので。

筆者
筆者

そういった人たちは、男子で固まったりするんですか?

めいさん
めいさん

男子で集まって、数学の話で盛り上がっていたりすることはあります。

筆者
筆者

そういった場に女子が入ることはないんですか?

めいさん
めいさん

1人はプログラミングなどアカデミックな話に参加していますね。ただ、プライベートな話をしている様子はないです。

筆者
筆者

実験とかで仲良くなることはありませんか?

めいさん
めいさん

計数工学科の実験はほとんどオンラインなので、そんなに仲良くなれないです。

ただ、私の場合はあまりにも授業が分からなくて、何人かに助けを求めて連絡を取ったので、そこで少し仲良くなれました。

筆者
筆者

女子ではなく、男子に連絡をしたんですか?

めいさん
めいさん

はい。さっきも言ったように、私は同じ学科の女子とあまり合わなくて、しかも実験班も違ったので。男子の中でも、優しそうで、話を聞いてくれそうな人を選んで連絡しました。

「私、そこそこ賢いのかも」が「私って「カス」だ」になる環境

筆者
筆者

もし院に行っても、同じように自分から関わらないと交流が広がらないんですかね?

めいさん
めいさん

うーん。プロジェクトが同じだと仲良くなれたりするのかもしれませんけど。

でも私就職する予定なので、院についてはあまりわからないです。

筆者
筆者

就職されるんですか?

めいさん
めいさん

はい。もう内定ももらってます。

ちょっと逃げようかなと思って……(笑)

院試受けても受かるか分からないし、研究もしたくなかったので。

筆者
筆者

環境が嫌というより、研究が嫌だったんですか?

めいさん
めいさん

環境も嫌だったような気がします。

これは私個人の意見ですけど、計数工学科の雰囲気はすごく理系っぽくて、みんな技術とか理論の勉強について、一生懸命努力してるんです。

ただ、世の中で他にどんなことが起こっているのかということや、自分のやっていることをどうビジネスとして生かせるかということに興味がない人が多くて。私の場合、ここにいても得られるものはないのかなと感じました。

筆者
筆者

学科の雰囲気が合わなかったんですね。

めいさん
めいさん

私、学科に入って挫折したんです。

進振りでも点が高かったから、自分はそこそこ賢いのかなと思っていたんですけど、計数工学科に入って自分は「カス」だってことに気づきました。

自分より数学とかプログラミングに関心を持っていて、自分より努力している人を見ると、すごく苦しい気持ちになったので、自分は向いてないんだと思いました。

計数工学科に入って良かったこと

筆者
筆者

女子の少ない学科で学ぶなかで、辛かったことや不都合に感じたことはありますか?

めいさん
めいさん

うーん。例えば、「隣の人と議論してください」というときに、仲がいい人と座っていないと取り残されてしまうというのはあると思います。仕方ないですけど、男子は男子に話しかけることが多いので。

めいさん
めいさん

あと、男子は自然に集まって問題の議論をしているんですけど、私と議論してくれる人はいないです。ただ、これは女子だから入れないというのもありますが、話の内容で入れないというのもあります。

めいさん
めいさん

女子だから距離を置かれていると感じることもたまにありますが、それほどではないです。

筆者
筆者

女子が少ない工学部の学科に所属していることに関して、周りからの反応はどうですか?

めいさん
めいさん

頭が良いというイメージを持たれることが多いです。あとは、「周りに女子いる?」ってよく聞かれますね。

めいさん
めいさん

ただ、計数工学科に入って良かったこともあって、いい人に話しかけると助けてくれるんです。

男子がいっぱいいるので、その中から付き合いやすい人を選べば問題ないと思います。

専業主婦がほとんどいない中国と比べて

筆者
筆者

女子が少ない学科を選ぶことに抵抗はありませんでしたか?

めいさん
めいさん

理一がそもそも少ないので……(笑)

私は中国の高校出身なんですけど、日本ほど文理の男女比が偏っていないような気がします。高校の段階では、理系でも女子が多くいました。

めいさん
めいさん

東大に入って、思ったより女子が少ないとは感じました。そこでちょっとでも女子が多い方がいいなという気持ちがあって、第二外国語もスペイン語を選びました。

ただ、問題は理系の男女比というより、東大全体の男女比のような気がします。

筆者
筆者

中国の大学と比べて、東大の男女比は偏っていますか?

めいさん
めいさん

私も中国の大学に通っていたわけではないのではっきりとは言えないんですけど、そもそも中国は共働きでない家庭がほとんどないんです。それに比べると、日本は専業主婦の方が多いと思います。

めいさん
めいさん

中国では、働いて稼がなければいけないという意識が女子にも強くあるので、それが大学の男女比にも影響していると思います。

筆者
筆者

東京大学が男女比を是正するためにしている取り組みについてはどう考えていますか?

めいさん
めいさん

実は私、大学がどのような取り組みをしているのか詳しく知らないんですけど、女子学生の安全面を心配して一人暮らしを避ける家庭があると思うので、安全整備に力を入れて欲しいです。

筆者
筆者

男女比について、他に気になっていることはありますか?

めいさん
めいさん

男女比ではないんですけど、私、進路に関するメンターをやっているんです。そこで、就職するか院に行くか迷っているという理系の女子がよく相談にきます。

一方で、男子はあまりこないので、ひとつの特徴かなと思います。

筆者
筆者

どうしてですかね?

めいさん
めいさん

女子は将来の結婚とか出産を視野に入れている人が男子より多い印象で、ワークライフバランスについて早くから考えているのかもしれないです。

筆者
筆者

なるほど。家庭を持つことがキャリアに与える違いなどが、将来の選択に影響しているのかもしれないですね。

ありがとうございました!

CASE3:工学部機械情報工学科→情報理工学系研究科のマロンさんの場合

学生証
  1. お名前:マロンさん(仮名)
  2. 所属:東京大学情報理工学系研究科修士2年

院生にも話を聞いてみた

筆者
筆者

マロンさんは現在情報理工学系研究科に所属されているとのことですけど、学部生時代の学科はどこだったんですか?

マロンさん
マロンさん

学部時代は機械情報工学科に所属していました。

筆者
筆者

学科の男女比はどのくらいでしたか?

マロンさん
マロンさん

女子は43人中3人でしたね。

筆者
筆者

やっぱり少ないですね……現在はどうですか?

マロンさん
マロンさん

院だと研究室単位で活動するので、他の研究室のことはよくわからないですけど、私が所属している研究室は、同期が11人いて、女子が私含めて2人です。

修士1年は女子が1人で、私より上には留学生の女子が2人います。

筆者
筆者

学部生時代に機械情報工学科を選んだ理由を教えてください。

マロンさん
マロンさん

私は昔から美容業界に興味があって、将来はそれに関係する仕事につきたいと思っていたんです。

私が進振りする前くらいの時期に、美容業界がITに力を入れているという話を聞いたので、情報について学べる機械情報工学科を選びました。

筆者
筆者

女子が少ないことなどに関して、抵抗はありませんでしたか?

マロンさん
マロンさん

元々理科一類で女子率が低かったこともあって、特に気にしていませんでした。

筆者
筆者

進学のときに、理科一類を選ぶときはどうでしたか?

マロンさん
マロンさん

そのときも気にしていませんでしたね。私は東大生を多く出す女子校出身で、理系に進学する女子も周りに一定数いたので。

ただ、実際に入ってみると、女子が思ったよりも少なくて衝撃を受けました。数字では聞いてたけど、やっぱり少ないな〜って。

「女子が怖い」と男子に避けられた学部時代

筆者
筆者

東大に入学してから今まで、ずっと女子が極端に少ない環境で過ごされてきたと思うのですが、不都合などはありましたか?

マロンさん
マロンさん

研究室に関しては、女子が少ないことで甘やかされたこともありました。

私はあまり成績が良くなかったのですが、教授もできるだけ女性を入れようとするので、そのおかげで今の研究室に入れたというのはあると思います。

筆者
筆者

女子が少ないことがプラスに働いたこともあるんですね。

マロンさん
マロンさん

はい。そこまで問題はなかったような……あーでも前期教養のときはありましたね。

筆者
筆者

どんなことがありましたか?

マロンさん
マロンさん

男子の方が人数が多いので、基本的に優位なんですよね。

普通に下ネタとかも言うので、不快な思いはしてましたね。女子がいる前で裸になる人がいたりだとか。

筆者
筆者

うわー、それは嫌ですね……

マロンさん
マロンさん

あと、そう言ったことについて私が「やめてほしい」と指摘すると、話を聞いてくれずに「女子は怖い」とか言って逃げられることが多くありました。

私の周りにはですけど、議論してくれない男子が多かったです。

「女性はこうあるべきだ」「東大女子はこうあるべきだ」みたいなことを言われて、嫌な思いをしたことはあったと思います。

筆者
筆者

そういった雰囲気を感じたのは前期教養のときだけですか?

マロンさん
マロンさん

機械情報工学科に入ったときもありましたね。

ただ研究室に入ってからはそこに関してストレスを感じることはありませんでした。

女子が周りに少ないことに麻痺してくる

筆者
筆者

現在、研究室ではどのように活動されているんですか?

マロンさん
マロンさん

私の場合は、パソコンを使ってコードを書いたり、論文を読んだりするのが主なので、ほとんど家で活動しています。個人個人で活動しているという感じで、生徒間のやりとりはありません。

筆者
筆者

学科の人と遊びに行ったり、ご飯を食べに行ったりはしないんですか?

マロンさん
マロンさん

一緒の研究室の女の子とは遊びに行きますね。ただ、研究という点では孤独です。男女という差もありません。

筆者
筆者

現在の環境に対して、何か思うところはありますか?

マロンさん
マロンさん

院から東大に来た人とかと話す中で、いかに狭い世界で生きてきたのかなということは感じるようになりました。

マロンさん
マロンさん

先ほど今の環境に対してストレスを感じることはないと言いましたが、それは今まで下ネタが当たり前だったり、女性が怖いと避けられるのが当たり前だったりの環境にずっといたから慣れてきているというだけで、よく考えると問題は転がっていると思います。

マロンさん
マロンさん

どんどん麻痺しちゃってる気はしますね。私自身が他大の人と密に接するコミュニティにいなかったというのも、ひとつの原因かもしれません。

筆者
筆者

先ほど学科を選ぶときにためらいはなかったと言われてましたけど、もし女子が0人だったらどうですか?

マロンさん
マロンさん

0はめちゃくちゃ抵抗あると思います。

理科一類だったとき、クラスには私含め女子が4人いて、ひとりは留学生の子であまり関わらなかったんですけど、そのときからたとえ少なくても女子がいるということへのありがたさはすごく感じていていました。

だから、0人と2、3人は私にとって全く違いますね。

女子の集団で遊ぶことはない

筆者
筆者

前期教養のときはどんな人と交流していたんですか?

マロンさん
マロンさん

同じクラスの女の子2人と優しめの男子の5〜6人のグループで遊んだりすることが多かったです。

さっきも言った通り、クラスは治安が悪くて、しかもそういう人がいわゆるカースト上位にいたんです。仲良くしていたのはむしろそういう人に圧をかけられていた男子ですね。

ただ、男の友達と女の友達はまた違うと思っていて、心通じ合うくらい仲良い友達は数人しかいません。

筆者
筆者

学科に入ってからはどうですか?

マロンさん
マロンさん

学科の女の子とはそこまで仲良いわけではないですね。悪くもないですけど。

少し特殊だなと思うのは、女の子の集団で遊ぶことはないです。多くても3人とかで、こじんまりしています。

男子数人と私ひとりで遊ぶこともありますね。他の女の子があまり飲み会に積極的ではないこともあって、そういった場では女子が私ひとりになってしまうこともあります。

筆者
筆者

学科を選択する上で、家族や周りの人からの反対はありましたか?

マロンさん
マロンさん

両親から反対されることは全くありませんでしたね。

私の周りでも、止められたという話は聞かないですね。

「東大女子」というステレオタイプで見られる就活

筆者
筆者

男女比に関して、社会に期待することはありますか?

マロンさん
マロンさん

そうですね。東大の女子率を上げることは大事だと思います。

私自身、学生時代というよりも、就職活動で女子が少ないことの弊害を感じました。

筆者
筆者

どんな弊害ですか?

マロンさん
マロンさん

東大女子というレッテルでフィルターをかけられていると感じる場面がありました。

OB訪問を何度かしたんですが、例えば「可愛げがない」だったり「世渡り下手」だったり、そういった東大女子のステレオタイプに基づいた先入観を持って見られることが多かったです。

筆者
筆者

やっぱり今でも偏見ってたくさんあるんですね。

マロンさん
マロンさん

そういったイメージを変えてもらえないと、そのイメージに当てはまる話しか聞いてくれないんです。弱みを打ち明けてもまともに聞いてもらえなかったり。

就活のときに初めて東大女子であることのしんどさを感じたかもしれません。

筆者
筆者

東大女子を増やすことで、そういった偏見がなくなると嬉しいですね。

筆者
筆者

最後にひとことお願いします!

マロンさん
マロンさん

進路に迷っている高校生に伝えたいのは、進路は興味で選ぶ方がいいということです。女子率が低いことなどにためらいを感じるかもしれませんが、勇気を持って自分の気持ちに正直になって欲しいと思います。

筆者
筆者

ありがとうございました!

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CASE4:工学部航空宇宙工学科→情報学環・学際情報学府の佐野翔子さんの場合

学生証
  1. お名前:佐野翔子さん
  2. 所属:東京大学情報学環・学際情報学府修士2年

やりたいことを吟味して決めた進路

筆者
筆者

佐野さんは、学部時代に工学部の航空宇宙学科、修士課程では情報学環・学際情報学府に進まれたということなんですが、それぞれの男女比はどれくらいでしたか?

佐野さん
佐野さん

航空宇宙学科は、全体が60人ほどで、そのうち女子が5人でした。

筆者
筆者

インタビューした航空宇宙学科4年生の原野さんも、女子が5人って言っていました。

佐野さん
佐野さん

私が入る前は1人か2人だったので、増えてきているのかもしれないですね。

情報学環・学際情報学府は、体感としては男女が半々くらいです。実際のところはよく分からないですが……

筆者
筆者

女子が多いんですね!それでは、学部時代を中心にお話を聞ければと思います。

まず、学科・院を選択した理由をお聞かせください。

佐野さん
佐野さん

そもそも私は工学部の推薦生として入学したんです。

なので、大学に入った時点でぼんやりと航空宇宙学科を希望していました。

筆者
筆者

航空宇宙学科を希望されていたのはどうしてですか?

佐野さん
佐野さん

高校のときのプログラムがきっかけで、人の価値観は多様だと思うようになったんです。

一方で、小さい時に多くの人が持っていた「これいいな」という気持ちが、大人になるにつれ価値観が統一されていくような感じに違和感を抱いていて、将来的にはそういった方面で力を発揮したいと考えていました。

筆者
筆者

それが航空宇宙とどうつながるんですか?

佐野さん
佐野さん

まず、私自身が宇宙飛行士に興味があったので、自分の興味に従ったというのがあります。また、現代社会で力を発揮するには、技術的なものを持っていた方がいいと考えて、エンジニアリングを学べる航空宇宙学科を選択しました。

ただそれが私がやりたいことど真ん中ではないと気づいたので修士課程で所属を変えたんですけど(笑)

筆者
筆者

どういうことでしょう?

佐野さん
佐野さん

やっぱり、宇宙工学は私の関心のある「人の感情」にアプローチする領域ではないんですよね。ソリューションとしてのテクノロジーに関心があったんですが、問題解決よりも先にある目標設定に自分はもっと関わりたいなと考えるようになったのが大きいです。

現在はコーチングを学び、コーチとしても活動しています。

「コーチング」が何か分からない方は、佐野さん本人のnoteで説明があるのでそちらを参照ください!

筆者
筆者

本当にやりたいことに近い領域を吟味して進路を選択されたんですね。

「お嬢様」と呼ばれることが嫌だった

筆者
筆者

学部時代、女子が少ないことに対して思うところはありましたか?

佐野さん
佐野さん

今考えると少なくて寂しかったり、疎外感を感じていたりもしたと思うんですが、当時はできるだけネガティブに捉えないようにしていました。

女子が少ないのはどうしようもないので、声を上げても仕方ないというか、それが悪いことのように感じてしまって。

筆者
筆者

具体的に寂しさを感じるような出来事はありましたか?

佐野さん
佐野さん

男子が目を合わせてくれなかったり、業務連絡しかできなかったりして、気軽につきあえる相手ではないんだなとは感じていました。

筆者
筆者

男子と女子ではやはり違いますかね?

佐野さん
佐野さん

そうですね。仲良くしてくれる男子も2、3人いたんですが、心を通わせられるような人はいなくて、前期教養のときはほとんど高校のときから仲が良かった人と交流していたように思います。

筆者
筆者

クラスの女子との関係はどうでしたか?

佐野さん
佐野さん

私の他に2人いたんですけど、2人ともあまり授業に来なくて、私と共通のテーマで会話できるような雰囲気でもなかったので、仲良くはなれませんでした。

佐野さん
佐野さん

ただ、当時所属していた航空部は、女子の人数こそ少なかったんですが、女性だからということで特別視されるような環境ではなかったので、とても居心地が良かったです。

例えば、重いものを持つのが得意な男子・女子もいるし、苦手な男子・女子もいるので、性別でジャッジされることなく活動できるのはありがたいことでした。

筆者
筆者

そういった場があるのはいいですね。逆に、女子だからということで偏見を持たれたりしたことはありますか?

佐野さん
佐野さん

ポジティブな意味で言ってくれていたと思うのですが、「お嬢様っぽい」とか言われることがしばしばあって、そういうのは好きではなかったです。私の何を見て言っているんだろうという気持ちになってしまって。

ただ、今は、それはその人の考え方であって、私には私の別の考え方があると思えるようになったので、昔ほど気にすることはなくなりました。

「女性」という特性を活かせる場もある

筆者
筆者

他に学部時代、辛かったことや苦しかったことはありますか?

佐野さん
佐野さん

全てをポジティブに捉えようとしていたので、苦しんだりした思い出はないです。

ポジティブということで言えば、積極的に学外の活動や他の大学のプログラムに参加したので、そこで女子学生と交流できたというのはあります。

佐野さん
佐野さん

例えば学部2年の秋には、東大のガールズハッカソンに参加して、そこで電気電子工学科の女子の友達ができました。

東大ガールズハッカソン:東大の女子学生を対象としたアプリケーションの開発コンテスト。プログラミング初心者でも参加可能なのが特徴。

筆者
筆者

そういったプログラムには、女子の友達を作りたいという思いを持って参加されたんですか?

佐野さん
佐野さん

いえ、そういうわけでは全くなくて、むしろ「初めての人でも大丈夫」という参加の心理的なハードルの低さが大きかったです。

学科はプログラミングに強い人ばかりが集まっていますし、周りにヘルプを出しにくい環境でもあったので、安心できる環境であることが外から見ても分かるところに惹かれました。

佐野さん
佐野さん

学部2年生の終わりには、国外の女子学生10人をアメリカに送り出してくれるプログラムに参加したのですが、そこで、自分がひとりじゃないということに気づくことができました。

佐野さん
佐野さん

それがきっかけで、次第に自分の「女性」という特性をネガティブに捉えるのではなく、身長や声の高さと同じようなある種のラベルとして活かしていきたいと思うようになりました。

そこから、プログラムにもより積極的に参加するようになりましたね。

女子にも安全な環境であると外に示すことが必要

筆者
筆者

進路を選ぶ上で、家族や周りの人から反対意見はありませんでしたか?

佐野さん
佐野さん

東京に出ることに対して軽い抵抗を受けた気もしますが、ほとんど覚えてないくらいのものですね。学科や院の選択は完全に私に任せてくれていました。

筆者
筆者

周りに、女性だからという理由で進路を制限された人などはいますか?

佐野さん
佐野さん

親に直接反対されてというよりも、本人が親の価値観に染まってしまって、女性ならこうあるべきという進路を選択しているのは、多く見てきました。

筆者
筆者

大学や社会に期待することはありますか?

佐野さん
佐野さん

大学というよりも、高校の分布に問題があるような気がします。

私が所属していたのは、中高一貫で女子にほとんど顔を合わせてこなかった人が多くを占めるコミュニティなんですよね。

そこで女子に対して、「違う生き物が来た!」という反応をしてしまうのも仕方ないと思います。ただ、そういった人たちがあまりに多いから全体として固定の雰囲気ができてしまうだけで。

なので、共学は増やした方がいいのではないかと感じますね。

筆者
筆者

割合の問題はやはりありますよね

佐野さん
佐野さん

人をラベルでジャッジしないことを入学の判断基準のひとつにできれば面白いかもしれません。

佐野さん
佐野さん

大学は女子学生にお金を配ったりしていますが、ただお金を配ればいいわけではないと思います。

大事なのはむしろ、入ったときにちゃんと人としてみてもらえるかどうかという点で、そういった意味での安全性が外部に示されていると、女子学生も入りやすくなると思います。

筆者
筆者

確かに、安全性を外に示していくというのも大事な活動かもしれませんね。

佐野さん
佐野さん

推薦制度の枠も、もっと増やしていいと思います。環境があれば人はある程度勉強できると思うので、別の評価軸も欲しいです。

筆者
筆者

最後に伝えたいことがあればお願いします!

佐野さん
佐野さん

男女比とあまり関係ないかもしれませんが……

記事を読んでいる高校生に伝えたいのは、どんな環境にいても大変なことはあるということです。そして、道によって凸凹だったり平坦だったりはあるけど、辿り着くところは大体同じだと思っています。

わからない先のことを考えるよりは、自分がやりたいことをまずは自分が信じてあげるのはどうかな、と伝えたいです。

佐野さん
佐野さん

それと、しんどくなったときはSOSを出せる自分を大切にしてあげるといいと思います。傷ついている自分を受け入れてあげることが大事です。

予想通りにいかないことがあったときは、新しい人生のネタができたくらいに考えられるといいと思います。

筆者
筆者

ありがとうございました!

終わりに

4人の方にインタビューを行いましたが、それぞれ体験も考え方も異なっていて、実際に当事者の声を聞かないと分からないことが多くあると感じました。

一方で、女子率を高くすべきだという点では4人の意見が一致していたのも印象的でした。大学も様々な取り組みをしていますが、社会全体としても東大理系の女子学生が増えるような取り組み・風土づくりができると良いと思います。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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