こんにちは!ライターのゆうなです。
夏学期が終わりに近づいてきた今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
思い返すと東大では4月頭からオンライン授業が始まっていました。
正直めっちゃ対応が早かったです。
どうしてこんなにも早くオンライン授業を始めることができたのか。
その秘密をオンライン授業開始の立役者である田浦先生に聞いてきました。
殺人的な3月の忙しさを乗り越えオンライン授業開始に漕ぎ着けるまでの壮絶ストーリーをぜひご覧ください!


本日はよろしくお願いします!早速ですが、いつ頃からオンライン授業について考え始めていたのでしょうか?

最初の始まりは3/2ごろでしたね

かなり早いですね…!


その頃今やっている学内の会議をオンライン化しましょうという話が降りてきてまして。
情報基盤センターからオンライン会議のやり方を学内の人たちに向けてレクチャーする機会があったんですよね。

情報基盤センターとはなんでしょうか?


一言でいうと、全学のために情報のインフラを整えたりシステムを整えたりというところですね。
例えばITC-LMSの管理とかを担当しています。
(ITC-LMSって何?という方はこちらの記事をご覧ください)

それでオンライン会議についてのレクチャーを終えた後、学科の先生たちと話している中で新学期の授業はどうすればいいのかという話になりまして。
その中で、もしオンライン授業をやるなら、情報基盤センターとしてサポートをしなければならないのではないかということを考え始めました。
これがオンライン授業を意識し始めたきっかけでしたね。

そこからはどういう風に動かれたんですか?

とりあえず3/6に情報基盤センターの中で会議をやりまして、そこでオンライン授業に向けて準備しましょうということを決めましたね。

ということは大学から指示があるより前に、自主的にオンライン授業が開始したらという想定の元で動き出していたということですか?

そういうことになりますね

それって結構すごいことじゃないですか!?


あの頃ってなんとなく待っていれば普通に授業開始できるかもっていう雰囲気が少なからずあったんですよね。

確かに学生側もそんな雰囲気だったと思います。

でも自分はこのまま放っておいて、ずるずると授業ができない状態が長引いて、気がついたら6月7月になっていて、この学期全然授業できてないやんっていう事態が起こることを一番危惧していました。
そうなったら大変だからということで、まぁこの先どうなるかわからないけれどもとりあえず始めようという考えでしたね。

そこで自分が動き出そうってなるのがすごいですよね

確かに情報基盤センターってさっきも言ったように、情報のシステムを整えるっていうところがメインで、オンライン授業に関していえば必要なソフトを準備することが業務になってきます。
実際に授業をどうするかっていうところに口を出すような機関ではないですね。

でもそこで情報基盤センターがやるのはここまでで、あとは上の方の人達が解決してくれるっていう考え方だと絶対にうまくいかないと思っていましたね。

それはなぜですか?

ある程度大学で年を取って来た中で、大学内で伝わるべきことが伝わらず、その結果全体としていい動きができないっていう経験はあったんですよね。
それは部局間の小さなミスコミュニケーションの積み重なりによって起こるんですけどね。
そんな状況のなか、短期間でオンライン授業の準備をしようとしても、自分の仕事だけやるというスタンスでは何もできないだろうと思っていました。

なるほど…

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3/6に情報基盤センターの中でオンライン授業の準備をしようと決めてからはどのように動かれていたのですか?

3/6が金曜日だったんですけど、その週明けの3/9(月)から大学教育のIT化など取り組んでいる大学総合教育研究センターの人たちと一緒に大学の理事のところに会いに行きました。


何を話しに行ったんですか?

情報基盤センターも大学総合教育研究センターも大学の意思決定をできる機関ではないので、理事の人たちとオンライン授業の準備をやっていこうということでまず合意しました。
また、その場で3/13に情報基盤センターから学内の先生方に向けて説明会を開こうということが決まりました。

説明会というのは?

この時はまだオンライン授業化は決まっていなかったですけど、もしオンライン授業をやるとなったらどんな授業になるのかということを先生方に説明する会でした。

具体的にはどんなことを説明したんですか?

今から思うと当たり前すぎることを説明していましたね(笑)
授業開始までにはテレビ会議を開いておきましょうとか、自分がミュートしたまま話していないか学生に確認しましょうとかそういうことを説明していました。

かなり当たり前ですね…(笑)


あとはITC-LMSはそもそも何かとか、どこが便利なのかとかいう話もしていました。
本郷の先生のうち半分くらいはITC-LMSを使ったことがなさそうだったので…

(確かにITC-LMSをこのアルファベット順で言えない先生結構いる…)

先生方からの質問も今思うと時代を感じるものが多かったですね。

例えばどういったものがありましたか?

出席はどう取るのかとか双方向の授業は可能なのか、どんな機材が必要なのかという質問がありましたね。
先生方もまだイメージができていなくて、YouTuberみたいに黒板の前で喋っている映像を流すことを想定している方がたくさんいたのかなと思っています。

確かにオンライン授業というとそのイメージ強いですよね。


そういう先生たちに画面共有で資料を見せながら話すのが、わかりやすいし見やすいしで一番いい方法なんですよということをお伝えしていました。
これを浸透させるのには結構時間がかかったかなという感じがしています、黒板の前で話したいという先生は多いので。
3/13日の詳しい説明会の内容はこちら↓
https://utelecon.github.io/events/2020-03-13

説明会もまだオンライン授業開始が決定していない段階で行ったということでしたが、実際にオンライン授業化が決定したのはどのタイミングだったのでしょうか?

空気感としては説明会をした3/13ごろからオンライン授業になるだろうという感じがありました。理事と話をしていても総長はオンライン授業開始に積極的という話だったので。
決定事項として大学全体に伝わったのは生徒の皆さんに総長からのメッセージが出された3/18ですね。教職員側にも同じタイミングで決定事項として伝わりました。

実際に動き出した3/9からオンライン授業開始が決定された
3/18までの間、他にされていた仕事はありますか?

3/19に教養学部長の太田先生から新入生に向けたメッセージというのが出されたんですよね。
3/19の教養学部長のメッセージはこちら↓
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/zenki/newstudentsandfamilies.pdf

そのメッセージの公開前までにuteleconというサイトを完成させる、これがオンライン授業化において第一の山場となる仕事でした。

uteleconとはどういったものでしょうか?

ここに書いてある手順を踏めば、東大のオンライン授業を受ける用意が整いますよっていうサイトですね。
uteleconはこちら→https://utelecon.github.io/

このサイトを3/19の教養学部長からのメッセージと共に新入生に提示するために一生懸命準備していました。

どういう経緯で準備しようという話になったんですか?

まずこの3/19の新入生が必ず見てくれるメッセージを逃すと、ずっとオンライン授業の準備をせずに新学期を迎えてしまう新入生がいるのでは無いかという懸念がありました。

確かにそうですよね…

あとは、放っておくと、各学部がそれぞれ独自のオンライン授業に関する情報を集めたページを作るのでは無いかということも考えられました。
それは重複した努力になりますし、学部によって異なるやり方が提示されて混乱を招くということが想定されます。そこで, ここを見れば大丈夫というサイトをどこよりも先に作ることが必要かと考えました

およそ10日くらいでサイトを完成させたということになるかと思いますが何人くらいで作業をされていたのでしょうか?

1回でもページを触ったことがある人ということでいうと20人くらいですね。
ですが、中心的に作業をしていた人ということで言うと6人ですかね。情報基盤センター, 大学総合教育研究センター, そして教養学部の初年次部門の人中心でやっていました

6人でできるものなんですか!?

まあ殺人的な忙しさであった事は間違い無いですね(笑)

凄すぎる…


作っている最中はどのようなことを意識されていましたか?

まずは全く前提知識のない人が見て理解できるように作るということを意識していましたね。
あとは、各学部の情報サイトへのリンクを貼ることで、
大学全体に関わる情報はutelecon、詳細は各学部のサイトという棲み分けも意識しました。
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その殺人的な忙しさを乗り越えられた3/19以降の動きというのはどのようなものだったのでしょうか?

何かわからないことがあった人のために、utelecon内に質問用のメールアドレスを1つ載せておいたんですよね。
今までほとんどパソコンを触ったことのない新入生もいると考えていたので。

それは助かりますね!

まあそしたら問い合わせがわんさかわんさか来るんですよね。

わんさか…


教養学部長のメッセージが出た3/19が木曜日で、翌日の3/20から3連休があったんですよ。
その連休中から授業開始にかけて、たくさん来るメールに必死に答えていました。
あれが二つ目の山でしたね。

どのくらいの方が作業にあたられていたんですか?

大学総合教育研究センターの先生や情報基盤センターの先生だけではなく、普段ITC-LMSの問い合わせを担当してくださっている職員さんも協力してくださって、一同総出でやっていました。一生懸命、休日返上で答えていたという感じですね。

本当にハードですね…
いつごろが一番忙しかったですか?

一番は授業開始の前日ですかね。
その1日で120通以上のメールのやりとりがありました。


学生からの質問としてはどんなものが多かったですか?

我々もuteleconを見るだけで学生が正確に全てマスターしてくれるとは思っていなかったので、uteleconの説明の中にチェックポイントを作って、学生に実際に色々なページに行ってみてもらうようなシステムを作っていたんですよね。

色々なページとは?

例えば、ITC-LMSのページを経由してオンライン授業のURLを取得するだとか、Zoomに入ってみるといったことを試しにやってみてもらっていました。あとは学内者しか見れない設定にしたスプレッドシートを見れるかというチェックも作りました。

確かにこのページにいけたら設定はオッケーというものを作ってもらえると安心できますよね。

そういう経緯があったので、一番多かった質問としては、このチェックをやってみてくれた新入生からの「書かれた通りやってみたんですが動かないんですけど…」系ですね。

それを解決するのなかなか大変そうですね

そうですね。
こちらとしても最初は何がありがちなトラブルなのかということすら分からなかったですし、メールを読んでいても問題が何かを読み取れないようなメールもいっぱいあったので…(笑)


実際新入生の方ってどの程度、学内システムやZoomについて授業前に理解できていたとお考えですか?

それは我々も完全にわかっていないのでいつかの機会に調べたいと思っているんですが、1つの指標として、チェックのひとつになっていたスプレッドシートへのアクセス数をみていました。
最終の総アクセス数としては5000~6000くらいで全学生の人数には及ばないんですが、新入生が中心でやってくれていたと考えると、1学年の3000人は優に超えていたので結構な数の1年生は理解してくれていたかなと考えています。
あとはそのスプレッドシートに自由に学生の方が書き込めるページを作って、その書き込みを見て学生がたどり着いているというのを実感させてもらったりしていましたね。

質問対応以外で3/19以降に行っていた作業はありますか?

先生方向けに3/19と3/26に説明会を開きました。
詳しい説明会の内容はこちら
3/19→https://utelecon.github.io/events/2020-03-19
3/26→https://utelecon.github.io/events/2020-03-26

ざっくりいうとどんな内容でしたか?

3/19の方はZoomの使い方説明会で3/26の方はURLの渡し方説明会でしたね。

URLの渡し方…?

今思うとそんなことのために説明会を開いたのかという感じがするんですけどね(笑)

ただ、どこにZoomのURLを貼るのかというのは結構揉めまして、※UTASかITC-LMS かGoogle のスプレッドシートかといった議論がありました。
※UTAS:東大の学務システムで履修登録や成績確認、各授業のシラバス確認をすることができます。

結局今はUTASに書いてありますよね?

そうですね。
UTASは授業を持ったことがある教員だったらシラバス登録とか成績入力とかで触ったことがあるはずだからという理由で決まりました。

なるほど一番知名度があるということですね

でもUTASのURLを載せるところに文章しか載せられなかったりとか、授業開始前にアクセスが集中して重くなってしまうという問題が発生してしまったので、それを改善する作業もしていました。

そういえば4月当初UTAS重いっていう話題は学生の間でもかなり盛り上がっていました

それを改善したいということを話していたら、UTASの簡易版でオンライン授業のURL検索に特化したUTAS Liteというサイトを中村文隆先生という方が2日くらいで作ってくださいましたね。

2日ですか!?しかも1人で?
すごい人がいるんですね…

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実際に授業が始まってから見えてきた問題点はありましたか?

先生方の課題が重くなりがちだったり、パソコンで目が疲れると言う話だったり、精神的に塞ぎ込んでしまって授業に全く出てこない生徒を把握しづらいといった問題点はあるかなと思います。

(課題重い…わかる)
逆に良いところはどこだと思われますか?

学生からしたら大人数の講義であれば, 対面授業よりは余程いいのではないかと思っています。見えやすいし、質問しやすいし録画も残るしで。
(UmeeTで聞いた学生のオンライン授業に対する感想はこちら)

我々としても生徒の出席率が高いことや、対面の時よりも質問数が多くなっているのをみると、意外といいところもあるなと感じています。

今後コロナが収束してもオンライン授業を併用していこうという話は大学内で出ていたりするんですか?

はい, 私も出しています(笑)

そうなんですか!

対面のマス授業で、後ろの席からは見えづらい黒板を使って説明するよりはオンライン授業のほうがいいだろうと思いますね。
大学としてオンラインを併用していく方針かどうかということは全く何も決まってないですけど、理事クラスの先生が何人もいるようなオンライン授業についての検討会でもそういう話は共有されています。

障壁があるとしたらどういう点でしょうか?

まず今までの時間割から、実験や実習の日がまとまっているような時間割に変更しなければならないというところがあるかと思います。これはかなり手間がかかる作業なので、やるとなったら意思を強く持ってやらないといけないかなと思ってます。

確かに実験とかあったら結局学校に行かないといけないのでオンライン授業の意義が半減しますよね。

学生は好きなときに大学に来て, その場合は大学でオンライン授業を受けられるという状況を整えなければならない
学生に大学に来ないように言うのはナンセンスなので。
例えば、多くの学生が大学内の同じ無線のアクセスポイントに繋ぐと授業が見れないという事態は避けなければならないかなと思います。

ということは学生は大学に来てもパソコンの前で授業を受けるのがスタンダードになるということでしょうか?

オンラインでも家でも受けられるようにしようと思うならそれが基本になるのではないかと考えています。またはパソコンは無しで教室でプロジェクタを見る、ということも考えられます。
教室で先生が授業している様子を中継するという可能性もありますが、それだと家から受講している人が見づらいと言う問題点がありまよね。

確かに…

今は色々な可能性を検討していければいいかなと思っています。


最後に激動のオンライン授業化だったと思いますが、振り返ってみていかがですか?

今となっては、やったことは当たり前のような気がしていますね。
それでも大学という組織の中で、実際に自分がこうしなきゃって思うことが実際に起きるまで見届けないと実際には何も変化が起きないまま終わってしまうんじゃないかっていう思いが常にあったかなと思います。
大学全体のためにおきなきゃいかんと思ったことはほんとにおきるまでやるっていうつもりでやっていた気がしますね。
オンライン授業を学生がたくさん体験した後で問題が色々と出てくると思うのでそこにも極力対処していければと思っています。

本日は貴重なお話をありがとうございました!
いかがでしたでしょうか?
私は、大学がいい方向に進むようにという熱い思いをもち、オンライン授業への移行を進めてくださった田浦先生に感謝の気持ちが止まりませんでした。
今この状況でも授業が受けられているということに心から感謝したいですね。
最後までお読みくださりありがとうございました!
