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失敗ばかりなのに、なぜ旅はやめられないのか?【脅威の中毒性】

2016.02.02

4学期制が導入されて、年始の試験を終えた東大生の多くはこれから、3ヶ月もの長すぎる春休みを迎えます。他の大学でも、もうすぐやってくる長期休暇を待ちきれないでいる人たちの声が聞かれます。
長期休みといえば、やっぱり旅行! 特に海外旅行を計画する「タフでグローバルな」みなさんも多いのでは?
そんなわけで、UmeeT「海外支局」では留学・休学体験に引き続き、東大生の旅行記を掲載していきます。
まずは第一弾、編集長の杉山から、「下手の横好き」で飛び回ってきたドタバタな旅行記をお届けいたします。

オランダ・フランダースの犬で有名なアントワープ

旅をしていると、失敗ばかりする。

それも、日本で普通にしていたらまずしないような失敗をする。今となっては笑い話だ。まずはちょっと、バカな僕を笑ってもらいたい。
長距離バスでフランクフルトから10時間ほど、明け方ヘロヘロになって着いたパリの北駅。待ち合わせ場所が駅から離れていて、間に合わせようと必死だった。仕方なく重たいトランクを駅前に置き去りにした。もちろん鍵はかけた。自転車用の、あのチューブ状の鍵で柱にくくりつけた。
お察しのとおり、戻ってきたときにはトランクはなく、代わりに露店が開かれていた。露天商のおじさんはそ知らぬ顔。着いてきてくれた待ち合わせ相手は愕然。「不用心すぎる! ここはTOKYOじゃないんだぞ!」
まったくそのとおり。いや、東京でもダメだろう。
さて、青ざめながら周りを見渡すと、数メートル先に見覚えのあるものが。いやまさかと思いながら近づくと僕のトランクである。トランクのトランクたるゆえんの部分、あの引いて歩くための取っ手が、無残にももぎり取られていた。自転車の鍵など無意味だったようだ。
肝心のトランク自体、さすがに中身はもぬけの殻だろう、パソコンもクレジットカードも、もしものときの現金も入っていたのに……
 
と思いきや、何も盗まれていなかった!!
恐ろしい幸運である。トランクの鍵を開けるのをあきらめたらしい。取っ手をもぎり取ってまで盗んだのに!?
パリの北駅といえば、盗人がたくさんいることで有名だそうだ。そこに並み居る盗人たちも、壊れかけたスーツケースの中身はどうせ空だと判断して放置したらしい。ありがとう最初に盗んだ人! あなたが盗んでくれたおかげで盗まれませんでした(?)
待ち合わせ相手はもはや僕を賞賛した。「北駅にトランク放置して戻ってきたなんて、パリ中で自慢できるぞ。」

フランス ヴェルサイユ宮殿


帰国してからはとっておきのネタになったものの、運が良かっただけで、本当は恐ろしい失敗談である。実はこの数日前、ブリュッセルではパスポートをすられたのになぜかすった本人が返してくれた。訳が分からない。
もちろん幸運の女神を飼いならしているわけではないので、なんともならなかった話も多々ある。カンボジアでホテルにパスポートを預けたままベトナム行きのバスに乗ったり、ドイツのロマンチック街道で1日1本のバスを逃して取り残されたり。数えればきりが無い。

中国・北京 前門の周辺市街


一番最近の長期旅行だと、行ってから帰るまでに「パスポート・携帯電話・財布」の3種の神器を順番に紛失した。(最後の財布以外は帰ってきたけど。)一緒に旅行した友達はあきれ返っていたが、一番あきれていたのは自分自身だ。
まぁとにかく失敗ばかりなのだ。

ナイアガラの滝(カナダ側)

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じゃあ何で旅をしているのだろう。

ありふれた問いだ。でも、旅について書くのだから、自分なりにこの問いに答えなくちゃならないだろう。
実際何度も自問した。なんでだろう。せっかくの休みに、重い荷物を背負って、高いお金を払って飛行機に詰め込まれて、目的地に着いたら着いたで普段考えられないような失敗をたくさんして。
それでも、僕は何度も旅に出た。
僕が旅に出るのは、「ありえない」ことが起きるから。次々現れる、考えもしなかったような出来事が、どうしようもなく好きだからだと思う。

チェコ・プラハ


もちろん、ありえないような失敗もする。でもだからこそ、ありえないような幸運で助けられたりするし、出会わなかったであろう人たちと出会い、それが忘れられない瞬間になったりする。
カナダではロッキー山脈のふもと、ジャスパーのトレッキングコースのちょうど中間地点辺りで盛大に捻挫した。誰も通らない。ほとんど転がりながら何とか車が通る道までたどり着いて、藁にも縋る思いで手を振った。するとバンに乗った夫婦が僕を見つけてくれた。
ちょうど街で親戚みんなでディナーを食べることになっていたらしい。乗せてくれただけで十分ありがたいのに「良かったら一緒に食べないかい?」と旦那さん。「高速道路でヒッチハイクしようとする日本人なんて、なかなか会えるもんじゃないからね。もちろんおごるよ。」
結局親戚のみなさんと一緒に、おいしい、あったかい夕食をともにした。僕を見て、親戚の皆さんは口を揃えて、「食べれるだけ食べておきなさい」と言った。それくらい空腹そうに見えたらしい。実際ぺこぺこだったお腹に、はちきれんばかり食べさせてもらった。
その後さらに、ついでだから、と言ってアサバスカ滝という、街からは車じゃないと到底たどりつけない隠れた名所に連れて行ってくれた。捻挫したはずの足の痛みを忘れるほど、美しい風景だった。
たとえばこれが、旅でこそ起きる、「ありえない」ことだ。

カナダ・ジャスパー・アサバスカ滝

赤の他人に、頼りきる。

旅をしていると、貰い受けるしかない状況に陥る。助けてもらうしか方法が無い。そしてお返しする手立ても無い。そんな体験を何度もしてきた。
ホーチミンを車で案内してくれたベトナム人の友達は、ベトナム戦争のゲリラ戦で生き残ったおじいちゃんを紹介してくれた。チュチ・トンネルというゲリラ戦の戦跡に連れて行ってくれて、彼しか知らない当時のことをたくさん教えてくれた。もちろん戦跡では彼のおかげでVIP待遇だった。
ミラノで友達の紹介で泊めてもらった時は、家族総出で歓迎してくれた。地元のお祭りに一緒に参加して、別れ際にはお父さんの自慢のチーズを分けてくれた。
パリで僕を泊めてくれて、ご飯も作ってくれて、観光地からの送り迎えまで買って出てくれたのは、友達の教授の息子、つまりほとんど他人だった。

アメリカ・自由の女神の前で自由なことをする人


他人にこんなに頼り切るなんて、普通は考えられない。でも、失敗に懲りず、不確実な状況に自分を投げ出すからこそ、旅はそれを可能にする。そして、まじりけのない純粋な善意は、こんな状況でこそ身にしみてありがたく、心地いい。
きっと世界中の誰だって、この感動を理解できるだろう。きっと世界中の誰にでも、この善意はあるだろう。
そんな単純で、でも最も大切な信念を、旅は僕に与えてくれた。
今もきっとあの場所にいる、名も知らぬあの人たちに恩を返すには、僕も名の知らぬ他人を助けるしかない。めぐりめぐってあの人たちに届きますように。
この感覚を僕に教えてくれたのは、間違いなく旅だ。

カンボジア・アンコールワットでも逆立ち(どこに居るでしょう?)

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東大生の旅行記、募集開始!

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僕なんかよりヤバい経験をしてる人、ヤバくなくても素敵な旅をしてきた人、きっとたくさん居るはず。
ぜひぜひ、お寄せください。書いてみてもいいかも、って方、ぜひ下のフォームからご連絡下さい!
そして僕の旅行記は後半に続きます!

オーストリア・ウィーン
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杉山大樹
初代編集長です。今でも執筆記事数が1位という老害ぶりですが、PV人気記事は大体他の人が書いてます。昔のも今のも、見てみてくださいな。。。!
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