こんにちは。ライターのゆみです。
今回は、「東大生姉弟が起業し、LGBT就活サイトを作った理由・前編【誰もが自分らしく働けるように】」に続きまして、
LGBT求職者への情報提供サービス、求人サービスを運営する「JobRainbow」の方々のインタビューの後編をお届けします。
後編では、
「LGBTフレンドリーで有名なところって大企業ばかり。結局高学歴の人しか入れないのでは?」という疑問をぶつけてみたり、
「危うさを併せもつLGBTブームをどう考えるか」
といったお話を伺ってきました。
LGBTの学生も、そうじゃない学生も、熱い信念と賢い戦略を兼ね備えた、「JobRainbow」さんの話を聞いていってください!
ー 2016年の1月に会社を立ち上げるまではどういった活動をされていたんですか?
賢人さん:僕は大学2年生のころから、サイバーエージェントとかMicrosoftとかでインターンをしていて、ウェブサービスの新規事業を立ち上げたり、スタートアップの開発手法を学びながら、実際にプロトタイプを作ってくみたいなことをやっていました。
それで、3年生になって就活を始めたんですが、その時に気づいたLGBTの就活に関する情報が少ない、足りないという問題を、いままで身につけてきたWebサービスの知識やスタートアップの手法で解決できないかなと考えました。
姉には自分がゲイであることを20歳くらいの時にカミングアウトしていたので、もうその頃からいろんなアイディアを姉と二人でブレストしていましたね。
真梨子さん:もともと、弟は「社長になりたい」って小学生の頃からずっと言っていたんです(笑)
私たちもともとすごい仲が良かったんですけど、カミングアウトしてもらったことで、ますます距離が近くなりました。
「こんなことしたいよね~」って夜中2時3時とかまで、半分妄想、半分本気みたいな計画をずっと2人で話しちゃうんですよ。そういう話の中で「JobRainbow」も出てきて。
賢人さん:名前は真梨子が考えたんだよね。
真梨子さん:そうそう。私はビジネスのこととかよく知らなかったけど、弟が外で学んできたことを私は「うんうん」って聞いたり、「ここはこうしたらいんんじゃない?」って意見したりして。
だから、実家のトイレの前でずっと立って話してたことがだんだん形になっていったみたいな感じですね。
ー でも、実際会社を作るってなると、結構ハードル高いですよね?
賢人さん:そうですね。自分にはビジネスの知見が全くなかったですし。社会人をやったこともなかったので。
でも、その時にビジネスコンテストに参加して、元マッキンゼーの方などにアドバイスを頂いたりして、コンテストは優勝できまして。
ー え、すごい!!
賢人さん:そのビジコンには経営者の方とかがいっぱいいらっしゃったので、「君がこのサービスを本当にやるんだったら僕たちは賛同してサポートする」って言われたりもして。じゃあ会社として立ち上げようとなりました。
ー ビジネスコンテストやインターンでの経験が、ビジネスとしてLGBT就活サイトを運営することにも活きているんでしょうか?
賢人さん:そうですね、特にミニマムバリュープロダクト(MVP)を用いた仮説検証のやり方は活きてますね。
例えば求人サイトである「ichoose」を始める時も、突然サービス開発に着手したわけではなく、それもまず求人機能をテストしてみて、ニーズがあるってことがデータでわかってから実装しました。
「社会貢献としてこれをやります!」というよりも、まずはテストを出してみて、ユーザーのニーズにこたえていくというスタートアップ的な手法を使っています。
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ー 先ほどお話に出てきたMicrosoftとか、LGBTフレンドリー企業っていわゆる「いい会社」が多いような気がします。
でも、そういうところに入れる学生ってそもそも限られていませんか?
賢人さん:そうですね。いわゆる「いい大学」ではないLGBTの学生、あとは地方にいる子たちにとっては、すごく難しいと思います。
新幹線に乗って、わざわざうちのイベントに来てくれる子たちもいるんですが、なんでかっていうと、地方だとそもそもLGBTフレンドリー企業という選択肢がないところもあるから。
あと、都心にいても、そういうLGBTフレンドリー企業に、学歴の面で入れないっていう学生もいます。
でも、実はフレンドリーな企業って本当は大企業だけじゃないんですよ。ここでも情報が行き届いていないのが問題だと思っています。
大企業は、プレスリリース一本打てば、yahooニュースにのって、みんなにどんな取り組みをしてるか知れ渡ります。
例えばサントリーとキリンが同性婚を容認したってことはすぐニュースになりました。でも、東大出たってそういう会社って入れなかったりもするわけです。
私たちがサービスにおいてこだわっているのは、そういうLGBTフレンドリーであることが知られているけど入社するのが難しい大企業だけでなくて、掘り出し物みたいな企業さんを紹介することです。
例えば、8月5日にある合同会社説明会も、みんなが知ってる大企業もいらっしゃいますが、それほどまだ知られていない企業もいらっしゃることになっていて。神奈川にある、世界展開してる50名くらいの精密機器会社とか。
もちろんそういう大きくはない会社さんたちとも私たちはしっかり話をしているし、LGBTの受け入れ態勢がしっかりした会社だけを選んでいます。
真梨子さん:でも同時に、大きな会社さんと組んだり、イケてる雰囲気を作ったりしていかなきゃいけないとも思っています。東大とか早慶とか、高学歴の子も巻き込んで、企業にとって魅力的に感じてもらわなきゃいけない、とも。
企業と自分たちとwin-winの関係のビジネスを築いていくには、困っている人たち「だけ」、地方にいる学生「だけ」、高学歴ではない学生「だけ」に向けたサービスではやっていけない。
こういうのは、NPOではなく会社としてやっている私たちだから持てるバランス感覚だと思っています。
賢人さん:LGBTのサービスの中で戦ってるっていうよりも、大手就活サイトと戦ってるサービスだと思ってる。
弱者の目線を持つっていう面と、大きな市場経済の中でビジネスとして戦っている面、2つがありますね。
本荘さん:企業の規模の他に問題なのは、業界によってすごく偏りがあるんですね。ウェブサービス系の会社はLGBTフレンドリー企業が多いけど、メーカーとか商社とかは本当に少ない。
そういう少ない業界にもLGBTフレンドリー企業を増やしていきたいと思っています。
多くの就活生は、「自分がやりたいこと」と、「受け入れてもらえる場所」っていう二つのトレードオフを意識していると思います。LGBTの学生は特にそう。
でも本当の理想は、自分のやりたい業界に自分を受け入れてくれる会社がたくさんあることですよね。
その理想を実現するために、私たちが研修をしに行って、LGBTフレンドリーな企業の母数を増やしていこうとしています。
調べてみると、日本に500、600社くらい「LGBTについてちょっと発信している、でも具体的には何もしていない」みたいな会社があるんですよ。そういうところに入っていって、もっと制度を整えていきたいと思っています。
真梨子さん:商社とかもっとやりたいなと思ってるんですけどね。でもめっちゃ体育会系なんですよね…。
でも会社としてまだやる気はなくても、社員さんの中には関心の強い人もいるので、東大生のネットワークを生かして、東大のOB/OG社員や経営者の人たちに個人的に声をかけたりと、地道に研修できるようにしていってます。
本荘さん:そうですね。あと、会社の方ではLGBTとかに一切触れてなくても、LGBTフレンドリーになる素地がある会社には声をかけていってます。
ー 素地があるかどうかってどうやって見分けられるんですか?
本荘さん:女性が多いところとか、スタートアップの会社とかは結構LGBTフレンドリーな雰囲気がありますね。
小さい会社だと、社長さんにお話を聞くと、会社全体の雰囲気がわかったりするんです。
賢人さん:中小とかだと、特に社長の一声で一気に会社の雰囲気が変わりますね。
LGBTフレンドリーのポテンシャルがあるところは、あと一歩でLGBT就活生と繋がれそうなのに、繋がれていないところは、本当にもったいないと思います。
お互い必要なところに情報が行くようにしていきたいなと思っていますね。
ー 企業での研修では、具体的にどういったことをされるのでしょうか?
真梨子さん:とにかく、「考える力をつけてもらう」っていうのを重視しています。
「このケースにはこれ!」って1つの答えがあるわけじゃないし、対応の仕方も会社によってその色が出ます。
いろいろなケースを提示して、会社が提案してきた解決策に対して、それぞれコメントしていくやり方を取っています。
賢人さん:意外と私たちが研修する会社って、向こうから声をかけてもらうことが多いのもあって、
もうある程度「LGBTに理解があるつもり、知っているつもり」のところが多くて。「いやわたし友達にLGBTいるし」とか「社内にカミングアウトしてる人いるし」みたいな。
でもLGBT当事者の社員って、いたとしても、わざわざ弱みとか困ってることとかそんな言わないじゃないですか。
具体的なケースについて説明すると、意外と対応が分からなかったりとか、「こうやって対応するんだ」とか初めて知ったみたいな方も多いですね。
ー 2015年に渋谷区でパートナーシップ条例が制定されたあと、LGBTに関する世論が盛り上がった印象があります。そのブームについてはどう思われますか?
真梨子さん:そうですね。東京オリンピックに向けてっていうのもあって、いろんな会社さんがLGBTに関して何かやらなきゃいけないっていう雰囲気になっているので、お話を通しやすい部分はあります。
賢人さん:先ほど話したように、就活ではLGBT関連の情報収集ですごく困ったし、受け入れてくれない企業も確かにありました。
ただ、一方でLGBTをポジティブな武器として使えたこともあって。
やっぱり「LGBT」ていうのがバズワードになっているので、ゲイだとカミングアウトすると、面接官たちも「お、LGBT知ってるぞ!」みたいに食いついてくるときもありました(笑)
ー へえ〜!!ブームによって変わってきている部分もあるんですね!
真梨子さん:でもそのLGBTムーブメントの盛り上がりって危うさもあるなと思っていて。
日本って結構ブームになるとばあっと盛り上がって終わると一気に立ち消えたりするので、「LGBTか〜、そんな話あったね、懐かしいね」ってなったらすごい怖いなと。
オリンピックが始まるまではLGBTムーブメントが盛り上がっても、オリンピックが終わったらなかったことになっちゃうんじゃないかっていう危機感があります。
ー ブームが終わっても、当事者の生活は続きますもんね。
真梨子さん:はい。でもそういう危機感があるからこそ、私たちは会社として、ビジネスとして継続的にいろんな会社に働きかけ続けて、ブームで終わらない取り組みになるのかなと思っています。
とはいえ今は本当に、LGBTっていうだけですぐニュースにしてもらえちゃうから、ラッキーなタイミングではあるんですけどね(笑)
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ー 最後に、読者へのメッセージをお願いしたいです。
まずは、東大OB/OGで会社に勤めている方、経営している方も読んでいらっしゃると思うので、ぜひ企業へのメッセージを!
賢人さん:1人の声でも会社って結構変わることを実感しています。
企業って個人の集まりなので、その個人が会社に対して動ければ、会社も変わります。
大きな企業でもそういう話をいっぱい聞きます。
「変える」って言うと、ハードルが高く聞こえるかもしれません。トイレをLGBTフレンドリーに作り変えるとか、制度をたくさん作るとか。
でも、一番大切なのはソフト面です。
たとえ、誰でも使える多目的トイレがなくても、同性パートナーシップを認める制度がなくても、その会社が一人ひとりの価値観を認めあって、何か問題があったときに、社員それぞれが相談できる人がいれば、当事者社員の大きな勇気や安心に繋がる。
私は、そういった一歩を踏み出し、継続的、段階的に取り組む姿勢を持っているのなら、胸を張ってLGBTフレンドリー企業って言っていいと思っています。
何もやらないでくすぶっているなら、何かしらの取り組みをまず一つでも行ってみてほしいです!
ー ぜひ学生にもメッセージをください!
賢人さん:LGBTの学生に一番伝えたいのは、
まず自分がやりたいことが何なのか、自分のパッションがどこにあるのかを大切にしてもらいたい。
LGBTをハンディキャップみたいに感じないで、会社を選んでほしいと思ってる。自分らしく働ける会社が見つかるように、私たちももっと頑張っていきたいと思っています。
あと、LGBTフレンドリーな企業、多様な価値観が認められる職場って、結局誰にとってもいい職場だと思うんです。
だから、LGBTじゃない学生にもそういうところを意識して会社を選んでほしい。そうすれば、企業も変わらないといけなくなってくる。
真梨子さん:あと、実際にサービスを使ってほしい!
LGBT、LGBTってすごく言ってるけど、私自身はいわゆるストレートで。
インターンを今している子たちの中にもストレートの子もいるし。私たち「JobRainbow」は、LGBTだけじゃなくて、いろんなマイノリティの人が生きやすい世界を作るっていうのが最後の目標にあります。
LGBTの人だけが集まってるというわけでもないので、気軽な気持ちで門戸をたたいてほしいです。
8月5日にいろんな会社が集まって合同説明会をやるので、気軽に来てほしいなと思います。あと、JobRainbowでもインターンを募集しているので、応募お待ちしております!
前編・後編にわたるJobRainbowさんのインタビュー、いかがでしたか?
「LGBTフレンドリーな企業、多様な価値観が認められる職場って、結局誰にとってもいい職場だと思うんです。」という賢人さんの言葉が私はすごく印象的でした。
LGBTの学生も、そうではない学生も、JobRainbowやichooseを使って、「多様な価値観が認められる職場」を探してみてはいかがでしょうか?(私も早速ichoose使おうとしています)このインタビューが、企業選びや就職活動について考えるきっかけにもなったら嬉しいです!
(ライター:ゆみ、編集:りほ)