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地方創生は、誰のものか。~「地方嫌い」な東大生が見た地方という現実~(前編)

2016.11.18

命題;地方

2016年現在、地方と呼ばれる場所には厳しい冬の時代が訪れている。

人口減少、税収減、高齢化による医療費増大、ビジネスモデルの崩壊と1次産業の担い手不足、・・・。もはや昔ながらの牧歌的な安定した暮らしは砂上の楼閣と化し、緩やかな死へと知らず知らずのうちに沈んでいく。

翻って「東京」に目を向けてみよう。地方創生がブームとなりUターンIターンVターンといった概念が生み出され、次々とビジネスコンテストが流行った時代は過ぎ去ったように思える。いったいどれほどのゆるキャラが生まれそして消えていったのだろうか。

戦争以外で、都市が消滅する可能性もあるんです。

もう、地方創生は終わりなのか各県、各市、各村が金太郎あめのように「おいしい空気」「暮らしやすい老後」「地域ぐるみの付き合い」を売りにするしか道はないのか。

否、断じて否。地方にこそ、ビジネスとして解決できる課題はたくさんある。

そう唱えたのが、「情報革命で人々を幸せに」を唱えるソフトバンクである。

かわいい名前とは裏腹に、どこまでも生々しい現実を突き付けられました。

【ICTを使って地方の生々しい課題を解決する】をテーマに

全国各地のみならず海外からも学生を集め、

長野県塩尻市に送り込んだ一週間のプログラム「TURE TECH」。

地方と僕たちをつなぐ”トンネル”となったこの企画、

そこで見た地方という現実、そして新たな可能性をお伝えしたいと思います。

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「地方創生」への違和感

ここで筆者の略歴を簡単に。

小学校は大阪、中高は石川、浪人は名古屋と各地を転々としてきた背景があり、

とりわけ中高時代を過ごした石川は(発展しているものの)「地方」だと感じていました。

閉じた人間関係、(若者的に)魅力の欠く就業環境、斜陽的な風景。

当時の私の目にはとても退屈に映り、早く抜け出して東京に来ることばかりを考えてました。

いつか摩天楼でフィーバーするんだ!が合言葉だった時代も。 (画像元

翻って東京に来てからは、縁あって地方創生に関わることもありました。

そこで感じた違和感が「地方が好きな人しかできない地方創生」という枠組み。

「この商店街が好きだから活性化させたい!」「この街並みが好き!」という理由は素敵なのですが、特に学生はボランティアベース。

おいしい空気・豊かな自然。そんなの聞き飽きた。(画像元

果たして、地方が好きな人だけに地方創生を任せっきりになっていていいのでしょうか。

地方創生にしろ、障害者雇用にしろ、原発の廃炉にしろ国政にしろ、 世の中考え出すと面倒で時間のかかることにあふれているように思えます。

見ないようにして次の世代、次の世代へと時限爆弾を送るババ抜きゲームをしているこの日本ですが、 もうその爆弾は爆発寸前。

けれども今回のソフトバンクインターンは、「地方のことが好きな人によるボランティアとしての地方創生」という物語を壊し、ビジネスチャンスとしての地方を捉えるという可能性があると感じたので応募してみることに。

ご縁があり選考を通過できたので、塩尻に挑戦することができました。

課題はどこまでも生々しく・・・

インターンが始まる前に与えられたのが「仕様書」。なんだこれは。

”このような状況を踏まえて、本プロジェクトでは、~(略)~

40歳代、50歳代を中心とする

国保加入者の特定健康診査の実施率を現状40%から目標値の60%まで増やす

方法論について、IT を活用した官民協働施策を提案いただきたい。”

・・・ん?

40代、50代の検診率を上げる

これが「地方創生」インターンの課題なのか・・・!

健康診断と、地方創生・・・?(画像元

しかも追加のお題として

特定健康診断の受診率が40%から伸び悩んでいる理由、その背景にある本質課題を明確にしていただきたい

・対象者、関係各者へのヒアリングなどにより多面的に課題の本質をえぐっていただきたい

・その際、40 代・50 代のなかでも受診している層と受診していない層の本質的な違いは何かを、

強く意識して分析いただきたい

 40 代、50 代の特定健康診査実施率を60%に向上させるために必要な施策と、IT を活用した方法論について提言をいただきたい

・提言内容には、IT の力を活用した官民協働スキームを組み込んでいただきたい

・既成概念に捕らわれない大胆な発想での提案をお願いしたい

これまで地方創生といえば、

イケてるビジネスプランをつくって産業をもりあげる、

とりあえず地方に住む人を増やす、みたいなものだと思っていました。

それは東京に住む人からみた幻想でしかなかったわけですね。

本当の課題は、いつだって複雑で、人間的。これを真の意味で知るのは、塩尻へ現地入りしてからだったのですが・・・。何はともあれ、インターンスタートです。

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東京での2日間:仮説を立ててみたものの

丸々一週間のプログラムでしたが、最初の2日は汐留にあるソフトバンク本社での研修とリサーチ、仮説設定の時間。

どうせソフトバンクの素晴らしさをプレゼンされるんだろうなー、と考えていましたが、その予想は大外れ。

「これら課題は、すべての地方自治体が抱えるもの。塩尻という普通の自治体で解決できれば、日本中に広げられる。」

「学生は時間があって、世間知らず。だからこそなんでも言えるんだ、期待しています!」

「この際ソフトバンクのことは忘れてください。インターンということも忘れてください。世の中を良くすることだけを考えるプログラムです。」

熱量高めな参加者。1400人ほど応募があった中の30名ということで、精鋭部隊のような雰囲気でした。

アツい、アツいぞ。テンションとやる気が上がってきた。長野県塩尻市、その課題俺らが鮮やかに解決してみせるぜ!

砂糖菓子のように甘い考えを抱いた筆者が、現実の壁にぶつかるのは時間の問題でした

解けない課題、息詰まる議論、沈黙するチーム。

チームメイトとディスカッションを始めたはいいものの、対象者となる自営業者のイメージが全く浮かばない。八百屋のおっちゃん?まだ存在しているの?

健康診断の受診率、なんで低いんだろ。糖尿病とかのイメージないからじゃないのかな。

イメージビデオをCMで流せば解決じゃない?みんな怖くなって受けるでしょう。

・・・そういったことを、ああでもないこうでもないと議論していました。

ただ如何せん、「何が受診率を低いままにしているのか、本当の理由」をつかめていないため、アイデア大会に終始している感覚。

インターンあるあるな風景。 元手となる情報がない限り、分析しても話が進まない。

そのうちチーム内で議論が進まなくなり、お通夜のようなまま初日が終了

その後2日目に突入し、リサーチや仮説案を立てるも結局しっくりこないまま東京での二日間を過ごしました。

まあ、明日から長野でしょ。現地に行けば見えるものあるよね。さくっと終わらせてズバッと提案すればいいか。

そんな甘い気持ちのまま過ごすことができた、最後の夜は静かに更けていきました。

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次回予告:絶望の長野

現地入りして30秒で崩れる仮説、対立する関係者それぞれの正義、難航する「真の課題」探し。

チーム仲も悪くなり刻一刻と迫る中、どう向き合い、答えを出すのか。そして見えた希望とは。

次回、この課題に対して決着をつけます。

地方創生は、誰のものか。~「地方嫌い」な東大生が見た、地方という現実~(完結編)
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きゅん
2017-03-03
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