突然ですが皆さん、タイでのホテル立ち上げってイメージできますか!?
私は2012年に文学部を卒業し、アクセンチュアで約4年弱戦略コンサルティングに従事した後、今年からタイでホテルを立ち上げ、そこで総支配人を務める、というちょっと一風変わったキャリアを選択しています。(ホテルのホームページはこちら)
「一旦就職してから、次のステップとしてキャリアをどう歩むか。」多くの人が抱えるこの悩みについて、私がホテル事業を通してやりたいことと、実現への挑戦の話が、ヒントになればと思い、筆を執りました。
東大生でホテルといえば、現役東大生ながらホテルの経営をしている龍崎さんだと思います。彼女は昔からホテル王を志していたといいますが、私は元々はホテル業界に関心はありませんでした。
学生の時に、ビジネスコンテストの運営に関わったり、東南アジアの日本人起業家の話を聞いて回る体験をしました。そういった経験の影響からか、粗削りでも熱気の残る新興国で、若いうちから主体的な行動が求められるベンチャービジネスに挑戦したいと、なんとな~く考えていました。
そんな中で、まずは成長が早いと言われ、様々な業種に関われ、ベンチャーとは全く異なる経験ができるだろうと思ったアクセンチュアに入社し、3年一区切りでキャリアを見直すことを考えました。もしかしたらコンサル業界に関心のある学生には同じような人が多いかもしれません。
アクセンチュアには、自分のやるべきことをきちんとやれば、各人のやりたいことを尊重し、最大限チャレンジさせてくれる環境がありました。私自身は、ブラジルやインドオフィスとチームを組み、元々関心を持っていた新興国関連の案件に数多くかかわることができました。現地に滞在して仕事をする機会にも恵まれました。
しかし、新興国関連の案件をやることで、「新興国市場で、自ら事業主体となってベンチャービジネスをやりたい」(コンサルティングではなく)という気持ちはむしろ強くなりました。また、他国オフィスとのビジネス経験等を通じ、多様な価値観を持つ人とのコラボレーションといったテーマにも強い関心を持つようになりました。
そんな中で、新興国のベンチャービジネスの種を探し始め、周りの人への情報発信を始めました。すると縁とは不思議なもので、アクセンチュア時代の先輩がタイでのホテル立ち上げを企画している、という話が絶妙のタイミングで舞い込んできました。当初はホテル業界への関心はなかったのですが、数か月かけて熟考し、ホテル業界で成し遂げたいビジョンがおぼろげながら浮かんできたため、参画を決意しました。
大企業でのキャリアや収入を捨てることには想定以上の不安を感じましたが、とにかく色々な人に相談したことで自分が目指す道は8割方間違っていないと感じた瞬間が訪れ、そこからは、不安に思っている時間があれば、その時間で0.1%でも成功する確率を上げることをしようと開き直っています。
レイ・クロックは50歳を超えてマクドナルドを設立していますし、人間いくつになっても挑戦はできると思いますが、若ければ若いほど挑戦することへのリスクは低くなると思います。
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少し話が脱線しますが、タイのホテルの前に、私がホテル事業を通してやりたいことをお話しします。
1つ目は、“ほぼ”全自動ホテルの展開です。
テクノロジーの発達は、自動化・効率化による「業務の生産性向上」と、人が提供できない「顧客体験の向上」の両面で変化をもたらしています。
ホテル業界でも、この両面を向上させるテクノロジーを使って、”ほぼ”全自動ホテルを10年以内に生み出し、展開することは技術的に不可能でないと思います。
例えば、清掃・フロント等の基本業務は人型ロボット・専用機器が代替して行い(=業務の生産性向上)、デジタルアート等の技術を使って季節・時間帯によってロビーや客室のデザインを変え(=顧客体験の向上)、そこに地域ならでの個性あるイベント等を企画する人材を数名配置する、といったイメージです。
こういったホテルとしての普遍的価値をテクノロジーの力で提供し、その上で、ごく少数の人が地域の個性という付加価値を上乗せする”ほぼ”全自動ホテルを展開したいと考えています。
2つ目は、コミュニティ創出の場としてのホテル&レジデンスの展開です。
先の”ほぼ”全自動ホテルが完成すると、ホテルのサービス品質とレジデンスの価格を両立できる可能性があります。
ホテル毎にコンセプトを絞り、それを”コミュニティ創出の場”に進化させたいと考えています。各分野での新価値が創出される場とするのです。
例えば、シンガポールの様な国際都市で、起業家や留学生にはレジデンスとして、出張中の投資家や大手企業関係者にはホテルとして部屋を提供することで、”新規ビジネス”というテーマに関与する多様なプレイヤー、国籍の人を集めます。その上で、商談会やカクテルパーティ等のイベントを通して相互交流を促し、新たなアイデアや提携が生まれる場所にするというイメージです。
既に、コンセプトを絞ったシェアハウスやシェアオフィス等はかなり生まれてきていますが、ホテルとしての側面を持たせることで、コミュニティの新陳代謝がうまく生み出されることを期待しています。
全自動ホテルについて、例えば変なホテルが、テクノロジーを使い生産性を極限まで高めるホテルを提案しています。しかしながら、まだ人が必要な作業は多く残っていますし、完全なる自動化とそれに伴う圧倒的なコスト競争力の実現は、少し先になりそうだと個人的には考えています。
一方、コミュニティ創出については、特定の状況では既に十分なニーズがあると考えています。ここからまずチャレンジを始めることにしました。
その「特定の状況」こそが、僕が参画しているタイ・シラチャにおける駐在員向けのホテル&サービスアパートメントなのです。
周辺に日系企業の製造拠点が集積しているシラチャは、首都バンコクから車で約1時間の小さな町ながら、約1万人の日本人が居住していると言われており、単身で駐在している方も少なくありません。
日本人向けホテル・飲食店は多数存在しますが、日本食や日本語対応可能な接客の提供に留まっているのが現状です。長期の海外滞在時には、何かあった時に助けあったり、普段の生活の中で気軽に飲んだりできるコミュニティが重要にも拘わらず、シラチャにはそういったコミュニティが少ない。
よって、コミュニティ創出についてホテルが果たせる役割が大きいのです。
こういった状況の中で僕たちは、
等、駐在時に目指したいライフスタイルを各々が見つけ、コミュニティの中でそれが磨かれるようなホテルを創っていきたいと考えています。
ビジョンと比べると、タイのホテル事業というスタートは遠い道のりと感じるかもしれませんが、タイ事業に向けての準備もまた、一歩ずつコツコツと、といった表現がピッタリです。
具体的には、アクセンチュアを辞めてから色々なホテルにお世話になり、フロント業務や清掃業務、レストランのホール業務等、ホテル実務の修業をひたすらに積んでいます。慣れないことばかりのため、肉体的な疲労は当然あります。
タイでの出来事についても、初めてのことだらけで、失敗したり遠回りしながら前に進んでいます。日本人との感覚も全く違い、「日本人向けに裸足で上がることができる仕様の客室なのに、靴を脱ぐ玄関が建設段階で作られていない!?」等の考え難い事態も平気で起こります。(もちろん修正しましたが)
そんな中でも、(これまでもそうだったように)大体の方向性を見失わずそれに向かって進んでいけばチャンスが見えてくることを確信しているので、充実した日々を過ごすことができています。
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就活を前にして、自分の人生をかけるべきビジョンを模索している人。ぼんやりとビジョンは見えてきてはいるが、具体的な道筋が見えない人。僕がそうだったように、こういった悩みを抱えている学生は多いと思います。
学生の内には、ある程度考えたら一旦やることを決めて、決めたことに対しては最大限情熱をもってチャレンジするのが良いと思います。ビジョンへの道筋についても、色んな人に話を聞きながら、まずは一歩一歩やっていくことで偶然が重なりチャンスが生まれるのだと思います。
このような長文をここまで読んでくださった方は、どこか共感できる箇所があるのだと思います。インターンとしてタイのホテル事業に関わりたい、これまでにない新時代のホテルについて意見交換したい等、何かあれば遠慮なく連絡いただければと思います!(ご連絡はUmeeTのメールアドレスまで)