東大生が頭を大怪我して、ひらがなも読めなくなった話

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事故で頭を大怪我して、2週間意識が戻らない。

目を覚ましたと思ったら、自分が今まで学んできたことが全部消えていて、ひらがなも自分の名前の書き方も分からなくなっていた。

そんな映画のような経験をした東大生がいると聞き、話を伺ってきました。

 

…というか、その東大生はUmeeT初代編集長・杉山大樹さん。UmeeTの記事を昔から読んでくれていた方はこの顔に見覚えがあるかもしれません。

UmeeT編集長以外にも、お笑いサークル・笑論法を立ち上げたり自宅で食堂を開いて手料理を振舞っていたり大学生向けのファシリテーション講座を作っていたり

そして就活をやめて東大を2年間休学し、現在フリーランスのファシリテーター・編集・漫才師として活動しています。

自らの言語センスとツッコミ力、人をまとめる力をフル活用して活躍し、数々のコンテンツを生み出していた杉山さんです。(そしてそのコンテンツを余すことなくUmeeTでネタにする)

一般社団法人Fora 学問ファシリテーター育成講座にて、メインディレクターを務めています。

【UmeeTDishes vol.1】超ドケチ東大生がやってるワンコイン食堂・すぎ山食堂があるってマジ?【スタバでは水を頼め】

今回「事故で頭を大怪我してひらがなすら読めなくなった」という経験も加わったそうです。

そしてもれなく、「この経験を記事にほしい」と頼まれたので取材に行ってきました。

 

今ではこの経験について明るく話し、ブログまで書いている杉山さんですが、取材してみると

東大に通っていたはずなのに、ひらがなも読めない、自分の名前も漢字で書けない自分、

今まで自由に扱っていたはずの言葉が思うように出てこない自分、

周りの期待になかなか応えることのできない自分。

事故前と事故後の自分のギャップへの苦悩が見えてきました。

 

あなたが誇りに思い、頼りにし、自信を持っている「能力」が消えてしまったとき。

あなたはどうしますか?

☞学生証

  1. お名前:杉山大樹さん
  2. 所属:経済学部卒業
  3. 仕事:フリーランスのファシリテーター・編集者
  4. ブログ:「本当に死ぬかもしれなかった、大怪我の話」

事故の原因は、運動エネルギーをケチったこと

編集部:まず、どんな事故に遭ったんですか?

 

杉山:自転車事故ですね。自分で自転車を運転していて、坂で1人でこけた。

 

編集部:おお…。どういった経緯で?

 

杉山:うーん。事故ったのは2017年の12月11日なんだけど、そもそも僕、その日の記憶ないんだよね。

編集部:え、転ぶ前も?

 

杉山:うん。前日の記憶はあるんだけど、事故当日は全部飛んじゃって。だから後で親から聞いたり、自分で調べた情報しかないんだけど。

親によると、銭湯に行こうとしていた時に事故に遭ったらしい。これは転倒した自転車のカゴに銭湯グッズが入ってたから分かったことなんだけど。

でなんで自転車で事故ったかというと、僕は非常にケチなんですね。

 

編集部:ケチすぎて大怪我…?

↓杉山さんのケチとは、こういうレベルです。

取材班「めちゃくちゃケチケチ言われてますが、実際のところどうなんですか?」

杉山「ドケチだね。カフェで待ち合わせするのとか本当嫌い。お金勿体ない。フラペチーノとか絶対頼まない。お金払うならお腹にたまるものを頼むから、仕方なくスタバに行くときはケーキと水を注文するよ

(引用:超ドケチ東大生がやってるワンコイン食堂・すぎ山食堂があるってマジ?【スタバでは水を頼め】)

杉山:ケチっていうのはお金についてだけでなく、運動エネルギーも含まれてるんですよ。

僕が事故った根津の交差点は、きつい下り坂の後すぐきつい上り坂がある地形なんだけど、

僕は坂を降りた時のエネルギーを無駄にしたくなかったので、全力で坂を下ってそのエネルギーで次の上り坂を登るっていうことをずっとしていたのね。

でまあ、何万回目かの「坂道高速チャレンジ」で失敗しまして。

問題の根津の交差点

編集部:スピードを出しすぎてバランスを崩してしまったんですか?

 

杉山:それも分かんないんだよね〜。覚えてないから。とりあえず宙を飛んでたっていう目撃証言はある。

それで救急車で運ばれて、親にも連絡がいって。親が着く頃には手術は終わってたんだけど、「手術が成功したとしてもこれからどうなるかは分からない」ってお医者さんに言われたんだって。

 

編集部:植物状態になる可能性があった…?

 

杉山:そうそう。結局そのまま2週間くらい意識が戻らなかった。

ICUで管に繋がれている杉山さん

杉山:年末くらいに意識は戻ったんだけども、さらに1週間くらい、夢と現実がごっちゃになってる状態が続いて。

その時僕はよく暴れてたらしくてちょこちょこ拘束されてたらしいんだけど、それが僕の中では「陰陽道の特殊な縛り方で縛られてた」とか「金縛りみたいな術に遭ってたら、魔法看護師がきて助けてくれた」とかみたいな解釈をしてた。

 

編集部:すごい世界…。

 

杉山:意識がはっきりしてからその看護師さんを見た時、「あ!魔法看護師だ!」ってなりましたね…。

ひらがなが読めなくなった東大生

杉山:起きてから1週間、2018年になったくらいから、だんだん自分の状況が理解できてきた。

最初は右足と右手が動かなくて、動くようになってからも右手はめっちゃ弱くて、自分の手だと思えなかった。最初に測った時握力7だったからね。

 

編集部:それって小学校低学年にも勝てないレベル…

杉山:あと、喉が切開されてて喋れないから、文字を指して意思疎通できるように文字盤を渡されたんだけど、読めなかったんだよね。ひらがなが読めなくなってたの。

 

編集部:ひらがなが読めない、ってどういうことですか…?イメージがつきにくくて。

 

杉山:日本語の音はかるんだけど、それがひらがなの形と結びつかないのよ。まったく知らない外国語の文字みたいな。

「あいうえお」だけはあった気がしてたけど、他の愉快な仲間たちについては、「初めまして、自己紹介お願いします」状態。

 

編集部:日本語が外国語状態になるって、想像ができん……。

でもその時、「前はひらがなを読めたはずなのに」っていう意識はあったんですね。

 

杉山:あったあった。東大とまでは意識してなかったけど、難しい大学に行ってた気はしていて。それなのにひらがなすら読めないってヤバすぎん?ってずっと焦ってた。

リハビリが始まってからも、とにかく早く元に戻りたくて、リハビリじゃない時間にも看護師さんに「なんでもいいから問題を出してくれ」って口パクでお願いしたりして。

その時のメモ。字がふにゃふにゃ…

編集部:はじめはどういうリハビリをされてたんですか?

 

杉山:超簡単な漢字の書き取りとか、動きづらい手を頑張って動かす練習とか、最初は車椅子だったけど歩く練習もしたな。

最初は小中高大通ってた学校の名前も思い出せなかったし、あと何度聞かれても病室番号が読めないんだよ。数字の認識めっちゃ難しい。焦りましたね。

文字盤を見ながらひらがなの練習をする杉山さん

杉山:入院中に母親がすごいショックを受けたことがあって。

母親が病院の自販機の前に連れて行ってくれて、僕に「どれがいい?」って聞いた時に、僕が「あの1200円の」って言ったんだって。

もちろん0の数を間違えて本当は120円なんだけど、母親は「うちの子が!!!!!プラスで間違えるの????12円ならまだしも!!!!!」ってめちゃめちゃショックだったらしい。

 

編集部:…はい?

 

杉山:あ、うちの家族は全員ドケチなので。

「そんな120円を1200円と間違えて、それを買うだなんて、これからどうするの?」と思ったらしくて、実家の父と妹にも報告したって言ってた。

 

編集部:ショックを受けるところもっと他にありませんか?

 

杉山:でも、そういう時も親は本当にすごかった。

「これからどうなるか分からないけど、まあもう一回育てれればいいし。東京に行っちゃってもう愛知には帰ってこないと思ってたけど、また一緒に住めるしね」

とか話してたらしくて。

ICUにて、杉山さんを見つめる親御さん

1日を振り返って、2人が話したことが、母の日記に残されています。

「大樹が生きていてくれて感謝。たとえ障害が何か残ろうと、大樹は大樹。大事な大事な私たちの子。
もう一度子育てできるなんて幸せじゃないか。東京に行って帰ってこないと思っていた息子と、また一緒に居られるんだよ
一緒にキャンピングカーで旅しながら過ごそうか」

ようやく東大を卒業するはずだった子供に、「どうなってももう一回育てる」なんて言えるでしょうか。親の覚悟は想像を絶します。

あまりに幸せな子供なんだと、思い知らされます。

杉山さんのブログより引用)

編集部:その状況でそんなことが言えるんですか…。

 

杉山:もちろん不安だから敢えてそれを言ってるんだけど、それでもこれを言えるのがやばいよね。本当に恵まれていると思った。

 

次ページ:自信の源が打ち砕かれて

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りほ

美女とイケメンとお酒が好きです。

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