地方創生は、誰のものか。~「地方嫌い」な東大生が見た、地方という現実~(完結編)

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【これまでのあらすじ】

「地方創生は、誰のものか。」

地方で青春時代を過ごし、地方が嫌いになってしまった筆者。

ところが東京に来て感じた、”地方好き”な人による地方創生に対する違和感。

そんな折に参加したICTを用いて地方の課題を解決するインターンシップ「TURE TECH」。

40代、50代の検診率を上げる」という命題の下、東京で様々な仮説を立てるも・・・?

いよいよ現地に入り、追い込まれていく筆者たちがたどり着いた真実とは。

前編はこちら:http://todai-umeet.com/article/15817/

1:塩尻戦線異常しかなし

「いや、全然言ってる意味わからないんだけど。」

「そっちこそ、議論の進め方大丈夫?細かいところにこだわりすぎ。イシュー*がブレてるから、先にそこをやるべきじゃん。」(*=本当に解くべき課題)

 

—長野に来て2日目の夜。議論は紛糾し、チームは崩壊まで秒読みに入っていました。

暗中模索のさなか睡眠不足が重なり、ギスギスした雰囲気が部屋を覆う。他のチームのメンターも様子を見に来る始末。

どうしてこうなってしまったのか?ひとまず、時計の針を数日分戻してみることにします。

塩尻戦線、突入。

塩尻戦線、突入。

 筆者たち予防医療グループは「40、50代の健診率を上げる」というお題の下、東京でのリサーチと仮説形成を終え長野に新幹線で移動していました。優雅な旅・・・からはほど遠く、もくもくと追加資料の作成、ヒアリング項目洗い出し、アポイントのためのメール作成をしていました。酔いそうになりながらも、なんとか到着。

 

 ここからの行動は、主に二つです。すなわち

①関係各所へのヒアリング②課題の発見、解決策の立案。

そのうち前者には相当の時間(1日に最低3-4件)が割かれ、夜(というか夜中)に自主的に②を重点的に行うことになりました。

 

 なぜ、ヒアリングがそこまで重視されるのでしょうか?

 それは、この課題がそれだけ地域に深く根ざしているから。

 

 今回の最終アウトプットは、現場で奮闘する市長さんはじめ市の職員さんに解決策を提示することそれが本当に良い案であれば、市として予算をつけ実行して頂けるのです。

 だからこそ、大学の授業でケーススタディを扱うように机の上のみで終わらせない。関係している人の生の声を拾って、そこに潜む真の課題を見つけねばならない。そういう意図を込めてのスケジュールでした。

本当の課題は、ネットを探しても出てこない。

本当の課題は、ネットを探しても出てこない。

 今回インタビューさせて頂いたのは、塩尻の開業医の方、市の健康づくり課の皆さん、ICT課のみなさん、Barのママ、レストランのオーナーさん、スーパーにいらっしゃった方、ソフトバンクの社員さんなど総勢80名近い方々。

 この場をお借りしてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 次章で、インタビューから浮かび上がったそれぞれの立場の「正義」を紹介します。

 

2:対立する正義

証言①:健康づくり課の職員さんの場合

「私たちは、市民の皆さんの健康を守ることが使命なんです。」 

 そう語り始めて頂いた職員の話は、私たちにとって衝撃的な内容でした。

「40代50代の自営業の方は忙しいことは、百も承知。でもここで検診を受けておかないと、60代以降になって生活習慣病で体を悪くする方が本当に多いんです。それを見るのが苦しい。」

生活習慣病という、ある種ふわっとしたイメージを与える病気を、長年見続けてきた人の言葉は重い。

 加えて、未受診者一人ひとりにハガキを出したり(何度かデザインは変更され見やすくなっている)、電話での声かけ、さらには訪問での声かけまで行っていると伺いました。 

 それに対する市民の反応は必ずしも芳しくなく、時には

「なんであんたらに指図されなきゃいけないんだ」

「どうせ数字をあげたいだけだろ」

「検診は混むから、まずそこを何とかしろ!」

と言われることも。

 それでも市職員の方たちは、月1で勉強会を開いたり、年4-5回開催される有料の外部の勉強会にも熱心に参加し意識を高く保ち、知識を仕入れていらっしゃるそうです。

市民の健康を守るという思いが本当に強い方ばかりでした。

本当に熱心で素敵な職員さんでした

本当に熱心で素敵な職員さんでした

 僕たちは東京で、「課の人たちの努力が足りないんじゃないの?さくっとイケてるフレームワークで提案すれば万事OK!」とすら考えていたのですが、それは大間違い。

 僕らが東京で思いつく程度のことなんて、とっくの前に実施されていたのです。

それでも解決せずに困っているからこそ、今回のような場がある。その事実を改めて突きつけられました。

 

 ですが、果たして、市民はただ面倒だから行かないという怠惰な存在なのでしょうか。

 実際の声を紹介します。

 

証言②:とあるレストランのオーナーさんの場合

「いやまあ、僕は受けないかな。まだ元気だし。」

ある種予想通りの答えから始まったものの、そのリアルな生活は想像の斜め上。

 

「僕らレストランは、東京と違って、常連さんで成り立ってる。だから基本的に毎日空けるんだよ。信頼のために。」

「休み?そうだなぁ、子供の誕生日のときくらい。」

「嫁さんにお尻叩かれたらいくけどさ、まあ気になったら気になったところだけ病院いくよ。検診じゃない。」

 

 「キャバクラにあったらいくかもね!」と冗談を交えながらほがらかな顔で話すオーナー。それでもその言葉には、「俺がこの店と家族を背負っている」という気迫が、節々に滲み出ていました。確かにこの気負いの方に電話一本で、待ち時間や往復の移動を含め半日ほどかかる検診を進めても、効果は薄いのかもしれません。

 じゃあ、往診すればいいのかな?

 診察する側のお医者さんに聞いてみました。

 

証言③:地域の独立開業医の場合

 「正直、健診は大変です。

え、あんなに項目が少ないのに?

お話を聞くと、医療側の事情も何やら複雑。

 「僕らみたいな個人病院は、健診時のオペレーションが大変なのよ。」

なるほど、確かに大病院とは異なり大勢のスタッフもいるわけではなく、科も分かれていない。

普通の患者さんを診察しつつ、異なるオペレーションで健診を行うのは、相当大変だと思われます。それでも、悪くなってからくるよりは嬉しいという気持ちから続けていらっしゃるそう。

 

 これらインタビューの結果をそれぞれが持ち帰って、夜のディスカッションが始まりました。 
 それぞれが痛感した正義を、救う答えとは果たして。

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ABOUTこの記事をかいた人

場をつくることを専門に。 workshop design や空間設計などを用いて、TEDxなどのイベントや国際フォーラムを手掛けてきました。 「ファースト・ペンギンズ」という、分野を超えた天才たちの楽園をデザインし様々なものをジャックしている最中です。

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