東大を卒業した新入社員の人たちって、どうやって会社を選んで、今どんな気持ちで働いてるんだろう? 何が楽しくて、何がつらいんだろう? 第一回は多くの東大生が気になるはずの「官僚」になった先輩、アカペラバンドサークルLaVoce元代表さんに聞いてみました。
初めまして。林 田直樹と申します。
今年の3月に法学部を卒業し、4月から総務省で働いています。
私は地域の潜在力を生かした日本を作りたい!と意気込み、総務省に入省しました。
私がそもそも「地域」に関心を持ったきっかけとして、3つのエピソードあります。
共通点は、「気づき」。
では、順にご紹介していきたいと思います。
私は幼い頃から海外に憧れていて、NASAに入ってロケットを開発したいと言っていた時期もあれば、UNESCOに入って世界遺産に携わりたいと言っていた時期もありました。
高校時の夢は、外交官。そこで、外交官を数多く輩出している東京大学を目指すことにしました。
大学進学してからも海外への想いが消えることはなく、大学初めての夏休みは海外一人旅を決心。どうせ行くなら刺激のある面白い旅が良いと思っていたところ、生協で一枚のパンフレットに出会います。
それは、「外国人と一台のバンに乗って、15人でアメリカ西海岸を3週間旅しよう!」というもの。
英語に不安はありましたが、とりあえず飛び込んでみよう!と思い、参加を決めました。
夜のグランドキャニオン公園で鹿に囲まれながら迷子のチームメイトを探したり、知らず知らずのうちにゲイの方々に囲まれながらディナーを楽しんだり、ラスベガスのカジノで稼いで大騒ぎしたり、ホームレスの方々にひたすら声をかけられたりと、日本人向けツアーでは決して体験できない、ひたすら濃い日々でした。
この旅を通して体感したのは、海外の文化、そして魅力。しかしその一方で、日本をとても恋しがっている自分に気付きました。予想以上に、私は日本文化の中で生まれ育っていて、日本が大好きだと気付いたのです。
これからの時代、海外を把握することは必要不可欠だと考えています。海外勤務や留学することは全くためらいませんし、むしろチャレンジしたいと思っています。
ただ、人生の大半は大好きな日本で過ごしたい、日本の良さをもっと知りたいという想いが強くなってきました。
そうして、アメリカでの旅を終えた後、故郷の鹿児島へ帰省。
祖父母の住む鹿児島県指宿市の高齢化問題や交通弱者問題という地方問題の重大さを実感しつつも、驚きだったのは、これまで当たり前だったために気付かなかった鹿児島の素晴らしさ。
なんて人が温かいのだろう。なんて食事が美味しいんだろう。なんて桜島はきれいなんだろう。
上京するまでは、故郷のことを何もない田舎だと思っており、東京に出たい!海外に行きたい!と、鹿児島にはない魅力を持つ、東京や海外に憧れていました。
しかし、いざ東京や海外に行ってみると、確かに各々に素晴らしい点はありますが、鹿児島にも他にはない良さがあることに気付いたのです。
なぜこれまで「気づき」がなかったのかを、自分なりに考えると、以下の2つの理由があると思っています。
1.「東京の強み」を基準とした評価軸で見がちなこと
まず1点目。日本においては、メディア等も基本的に東京を基準としているせいなのか、私は、「東京の強み」を基準とした評価軸で、〇か×かという判断を下していた気がします。
2. 住んでいる者にとっては、当たり前すぎて自分の地域の強みに気付かないこと
その土地の良さを一番理解しているのは、もちろんそこに住む方々。しかし、当たり前すぎて気づかないことも多々あるのではないかと思っています。失って初めて気づくものってありますよね(笑)
大学進学による上京をきっかけに、色んな価値観に触れ、一歩離れた場所から故郷鹿児島を見ることが出来たため、評価軸が実は無限大に存在し、鹿児島は強みがあるという「気づき」があったのではないかと思っています。
この鹿児島での「気づき」以来、私は自信と誇りを持って、はっきりと「鹿児島出身です。」と言うようになりました。
鹿児島の魅力に気づいたことをきっかけに、日本各地に興味を持つようになりました。
そこで、参加を決めたのが、大学3年生時の東京大学の体験活動プログラム。
学年・学部・国籍がバラバラの5人のメンバーで、石川県加賀市の観光課の方々に受け入れていただき、加賀百万石の文化を堪能し、意見提言を行いました。
鹿児島同様、地方問題はありましたが、私にとって、加賀は本当に魅力的な場所でした。美味しい日本酒、美しい棚田、九谷焼の文化、そして何より片山津温泉、山代温泉、山中温泉の3つの温泉。
しかし、加賀の方に伺った言葉に衝撃を受けました。
それは、「加賀には大したものはない。東京が羨ましい。」という一言。自分がかつて鹿児島で抱いた思いと全く同じ。
実は、全国には鹿児島や加賀のような地域がたくさんあるのではないか、まだまだ魅力が隠れているのではないかと思い、日本各地にさらなる興味が湧いてきました。
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