東大生が海外留学する記事はいくつも掲載してきましたが、ついに、「東大に」留学した人の声を聞いてみることにしました! 「逆留学記」、トップバッターは、イギリスから東大に来て、僕と一緒に漫才漬けの日々を過ごしたアレックスです! (導入とまとめ=編 集長:杉山)
日本に行くことが決まってから、3年間ずっと勉強してきた日本語。僕は日本に住んで、国内で一番いい大学で勉強することにとてもわくわくしていた。 そもそも、一人で海外に行ったことすらなかったのに、いきなりイギリスから最も離れている地域に1年間すごすなんて信じられなかった。 せっかくだから他の留学生よりもっとユニークな異文化体験したかったと思っていた。こんなチャンスは人生一度しか来ないから、できるだけ楽しみたいと思っていた。 とは言っても、最初から東大で漫才をしたかったわけではなかった。僕が日本語を勉強し始めた時から、友達が「ガキ使」やいろんなお笑いの動画を送ってくれたから、ずっと日本のお笑いには興味を持っていた。
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でも、そもそも東京大学に漫才サークルが存在しているかどうかは不安だった。 「みんな毎日勉強しているから、絶対つまらないでしょ?」「こんなに忙しい学生なら、趣味をする余裕なんてないでしょ?」 現実はすごく驚きだったな。駒場は他の大学のキャンパスとだいぶ似てるなと思ったんだ。 門に入った瞬間から、もし息が少しでもうるさかったら図書館員が黙らせに来るぐらい「緊張度が高い」「重い」環境だと想像していた。 本郷ならちがうかもしれないけど、入ってみたら東大は普通に見えた。だから「これなら漫才サークルとかがあるかもしれない」と思って周りに声かけてみた。 それが始まりだった。
お笑いサークルはいくつかあった。東大に入ってからたったの数週間だったのに、知り合いのおかげですぐ笑論法という漫才サークルの部長と会うことになった。 「よし、生で漫才を見る機会だ」と思ってそのまま入ってしまった。 最初は見て楽しんでいただけだったのに、2週間後にいきなり部長がサークルのメンバーの前で言った。 「アレックスさ、、そろそろネタしてもらいたいと思ってるけど?」 。。。え、マジか!? 誰か相方と組んでネタを作って欲しいだと?! 正直怖かったわ。お笑いなんてネイティブでも苦労するものだし、僕がそもそもできるかどうかわからないのに参加して欲しいの? メンバーのネタを見た時でも、僕は2割ぐらいしかわからないよ! 無理、無理。 だけど、考えてみればこれってまさに僕が望んでいた留学体験だろ? いつまでも観客として見て満足できるわけがないだろ? 僕だってパフォーマンスを見たら舞台に出たいと思っていたし。 他の皆はまだ知らなかったけど、自分のネタも考えてたし、練習さえすればうける自信も持っていた。 結局、部長の山田とコンビを組むことになった。
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それから僕たちはネタを作るために会う時間を決めた。さすがに緊張してたけど、ネタを作ることって実際漫才の中で一番楽しいかもしれない。 「何でアレックスがそんなこと知ってんだよ!てか、百人一首の曲は歌えるのにドラエモンは知らないのかよ。アホかよ、お前?」と、数えきれないほど言われた。 その時、僕がどんなキャラができるかと気づいたんだ。 僕は突っ込みはそこまでクリエイティブじゃないけど、バカ外人のふりをして、実は日本に詳しすぎる外国人キャラならできるんじゃないかなとつかんできた。準備は万端だ。
東大での交換留学はイギリスの大学の学位と全く関係なかったから、したいことばかりをする暇があった。 結局、時間は本当に必要だったんだ。 山田がスクリプトを送った時に、漢字が多すぎてネイティブの早さで読むことはできないと確実にわかってきた。 最初のハードルが一番きつかったかな。漫才っていうのはタイミングが何よりも大事だから、スピードを合わせないと無理だから。 マジで「Why Japanese people?!」と思ったけど、諦めずに自分の部屋でスクリプトを全部翻訳してふりがなをつけた。ちゃんと練習ができるように、自分が話す間隔を開けながら相方のセリフを読んで録音して、漫才ができるスピードでセリフが言えるまで練習しまくったんだ。 どんな言語でも面白いことはいつもすぐ記憶に残るから、そこは運がよかったかな?
そのおかげで、ネタ見せをした時に、相方と自分を含めてメンバー全員驚かせちゃったとはっきり覚えてる。 いけてたんだ! もしかしたらできるかなと自信をもらった。 すると、またいきなり衝撃がきた。 漫才サークルに入って初ネタをやったばかりなのに駒場祭で披露してもらいたいって言われた。舞台に出て、本物のオーディエンスの前でパフォーマンスして欲しいって。無茶だと思ったけど、ここまできたら、いけるんじゃないかなと本気に思ってた。 だって、人気のある外国人の芸人って、誰がいるの? ボブサップ? パックン? くらいしかいないよね。え? 厚切りのアメリカ人? 知らないなー。 漫才サークルに参加したことで、すごくいい思い出ができた。駒場祭でネタをやったあと、お客さんが僕に近づいて褒めたり、サークルにお金あげたり、五月祭を含めて他のイベントでも僕のキャッチフレーズの「ありがたき幸せ」を言ってくれたりした。
(初舞台の動画。英語解説付き!)
東大に行くことの中で漫才サークルに参加するのが一番楽しかったと思ってる。 どんな日常会話でも、誰かが必ずボケようとするし、必ず他に誰かが突っ込んであげるという環境が最高で、笑論法の皆には感謝してる。 意外と就活にも役立った。漫才サークルに入った時、「これで就活楽になるなー。どんだけ面接官に好かれるんだろなー」なんて考えてたわけじゃないんだけど、履歴書を見た時は一人残らず爆笑してくれた。 まあ、そりゃそうかもな! それで、先月のキャリアフォーラムでいくつか内定がもらえて東京で働くことになった! 決まった瞬間に、笑論法を作った人、そしてこのサイトの編集長、前の相方の杉山大樹に連絡して、また漫才しませんかと声かけてみた。そしたら、杉山が僕に記事を書いて欲しいって言ったんだ。他にこの記事を書く理由はあるか?笑 だから、今はできるだけ早く日本に戻って生活したい! できれば、東大にまた遊びに行きたいと思ってる。毎日毎日勉強してた、そのすばらしい学びの環境をもう一度味わうために。(本当にもう一度味わいたいのは一食のねぎ塩唐揚げ。笑)
(杉山とのネタ「寿司屋」)
ありがとうアレックス! 改めて物凄いストイックな奴です。「考えてみればこれってまさに僕が望んでいた留学体験だろ?」って、カッコいい。しびれますね。彼のネタは本当に面白いので、是非記事内の動画見てください! 彼とまた漫才ができるのが、僕は本当に楽しみです。