「ゴミ屋敷に暮らす東大生がいて、”ゴミ屋敷マン”との異名をもつらしい」
「その部屋の汚染具合は凄まじく、足を踏み入れた者はみな喉をやられるらしい」
「もはやあの黒い”G”すら息絶えるらしい」
そういう噂を聞いて、取材に行ってまいりました。
場所は、東大のある本郷三丁目から10分ほど電車に乗った所にある、あんまり有名じゃない駅。
駅前にて、ゴミ屋敷マンと待ち合わせます。
ちょっと表情が硬くなってきました。
ゴミ屋敷マンはまだでしょうか・・・
あっ
ゴミ屋敷マンことにっしーさんです!
いよいよ彼のお家に向かいます。
変です。めちゃくちゃ高級感のあるマンションです。
しかし聞いている噂が噂だけにためらう取材陣。
本当に人間が入ってもいい空間なんだろうか。
でも大丈夫。
俺たちにはマスクがある!マスクが守ってくれる!
多分ね!
いよいよ、突入します。
取材班「あ」
取「これ、載せたら苦情が来るレベル」
取「すでに喉が痛い」
にっしーさん(以下、に)「僕は平気です」
取「冷蔵庫なにこれ。ステッカー全部はってるんすか・・・?」
に「可燃か不燃か分からなくて、捨ててないです」
取「ティファールがコンロに置いてあるのも、わりとわけわからないですね」
取「部屋中の床に新聞紙敷いてるんですね」
に「歩けるようにしておきました!」
取「噂にたがわず凄いですね、これは。立派なゴミ屋敷です・・・!」
取「あの、”G”すら生きれなかったって聞いたんですけど、本当ですか?」
に「・・・本当ですよ」
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に「あそこに、エアコンあるじゃないですか」
に「あそこから、ボトッって落ちてきたんです」
取「・・・」
取「昔からこうだったんですか?」
に「いや、違いますね。僕は関西出身で、上京して一人暮らしを始めてからこうなりました。上京したばかりの頃は寂しくて、泣いた夜もありましたね。
歯止めがきかないです、一人暮らしは」
取「なるほど。確かに、本棚はキレイですね。やろうとすればやれる感があります」
に「あまり部屋全体は掃除しようと思ってませんね。
自分にとっては最適な環境なんです。経済学用語でいえば、片付けコストが異常に高いけど、許容度が異常に高いことによる効用の均衡点」
取「困ることないんですか?」
に「別にないですね・・・。強いて言うなら、部屋の鍵なくしちゃって、スペアキーで一年間対応している状態なのでそれかな。そういうのは困る。人が来るときも掃除しなきゃいけなくて困る」
取「これ掃除したんですか?」
に「多少。飽きっぽいのが原因かもしれません。掃除じたいも1時間で飽きてしまって。本も連続して読めないし」
取「でもにっしーさん、高校時代めちゃめちゃ頭良かったと伺ってますが。」
に「うーん・・・、勉強は好きだったんですね。勉強そのものが・・・。とくに受験勉強はパズルみたいで飽きませんでした。
だから、なんとなく東大入ってしまって・・・。他の人みたいに、”弁護士になるから” とか “社会においてこういう役割を担いたいから”というのはなくて。就活は辛かったですね」
取「就活においては、とりあえず”自分はこれをやりたいんです!”ってハッキリさせないといけない、というのがあって、辛いと感じるの分かる気がします。ある程度、思い込まなきゃいけないというか」
に「就職留年1年のすえ、無事職を得て、故郷で仕事することになりました」
取「良かったですね!・・・そしたらこのゴミ屋敷もお別れですね。スッキリしますか?」
に「むしろ、寂しいです。ゴミ屋敷は自分のアイデンティティなので失いたくないという思いが強いです」
取「失いたくない」
に「そうです。ゴミ屋敷だからこそ、人が見に来たり、集う場になってきていたというか・・・」
そろそろ喉が限界になってきたのでこの辺で・・・
にっしーさん、尋常ならざる哲学と強靭な精神の持ち主でした(そしてとても良い人でした!)。
取「ディープだったね」
取「ね」
取「ゴミ屋敷マンの家ツアーとかやったら、流行るかな」
取「かもね」
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というわけで
ゴミ屋敷に行ってみたい人は連絡ください!
✳︎ 見学料千円とります(にっしーさんのおやつ代になります)