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生理に関する「当たり前の我慢を疑う」~東大発学生団体の挑戦

2024.09.17

「当たり前の我慢を疑う」。

いま、社会ではジェンダー格差を埋める様々な努力がされていますが、まだまだ課題は多く残っています。

それは、「生理」に関しても例外ではありません。生理の問題の多くは「当たり前の我慢」だとされて、重要視されていない現状があります。

そのような課題に立ち向かうべく活動されている「#当たり前の我慢を疑う~みんなで生理をはなそう~」さんに、今回はインタビューを行いました!

学生証
  1. お名前:太田さん(左)
  2. 所属:医学系研究科国際保健学専攻修士課程2年

学生証
  1. お名前:栗林さん(中央)
  2. 所属:医学系研究科公共健康医学専攻修士課程2年

学生証
  1. お名前:亀岡さん(右)
  2. 所属:医学系研究科公共健康医学専攻修士課程2年

「生理のある人」「ない人」がオープンに話せるように

──本日はよろしくお願いします!さっそくですが、この団体の活動の目的を教えてください。

太田さん
太田さん

東大では女子学生がマイノリティになっていて、その中で、「生理」に関する問題を話せる環境があまりないのではないか、と私たちは考えました。そこで、問題を解決するところまで行かなくても、まずは解決策を話し合えるような環境をつくろう、と思い、このことを目標に活動しています。

──確かに、今の東大の男女比って8:2ですもんね。

太田さん
太田さん

そうなんです。私は現在東大の大学院に在籍しているのですが、ここも男性の比率が高いところで…そういった環境だと、男性に関する話題は女性も一緒に話すけど、女性に関する話題は話しづらいところがあるんですよね。特に健康問題、生理のことについては話しづらいです。

栗林さん
栗林さん

女性比率を上げるために、大学も女性の活躍を押し出していて、補助金などの制度を展開しているのですが、一方で健康に関する話って全然出てこないんですよね。健康の面からもアプローチすべきだと思うので、私たちはそこにフォーカスしたいなと思っています。

──自分は男性ですが、男性の身からすると、女性の健康問題については普段あまり意識することがないな…と思います。どんな配慮が必要なのか、どういった状況で特に困るのかなど、わからないことが多いです。

太田さん
太田さん

男子学生がどれだけ理解しようと思っても、男性から話しかけるのは抵抗があるのはすごくわかります。そういった壁を壊していくために、男女双方向で話せる環境が必要だと思っています。

栗林さん
栗林さん

一つ言っておきたいのですが、我々の中での区分は「男性と女性」ではなくて「生理がある人とない人」というくくりで考えています。セックス(生物学的な性)は女性でも性自認は男性という人などもいらっしゃいますので。生理がある人とない人が、互いに理解していけたら良いなと思っています。

亀岡さん
亀岡さん

最初は「男性」と「女性」で考えていたんですが、他の学生団体の方と話した時に性的マイノリティの方に対する配慮が足りないのではないかとご指摘をいただいて、確かにそうだと感じて変更しました。

──生理の問題がある人を一人残らず支援したい、ということなんですね。

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「生理のある人」の間でも声を出しやすいようにする

──具体的にはどういった活動をしているんですか?

太田さん
太田さん

公式のアカウントを作り、Xとインスタを用いて、生理の問題に関する声集めを行っています。まずは活動内容の周知を始めているところです。Waveboxという声集めのツールを使用して、匿名でも投稿できるようなシステムを作っています。こちらはXとインスタの両方からアクセスできるようになっています。

亀岡さん
亀岡さん

#MeToo(※)のようなムーブメントを目指していて、集めた声を意見として、大学に働きかけていきたいと思っています。

(※ 2017年に世界的に広まった運動。SNSを通じて著名人含む様々な人が今まで告発されてこなかった性的暴行の被害を告発していった。)

太田さん
太田さん

まずは声を出しやすい環境を作り、その次のステップとして、集まった声をもとにして女子学生がキャンパスでより過ごしやすくなるような環境整備に繋がったら良いなと思いますね。

──なるほど。活動に関して具体的なイメージが湧きました。

栗林さん
栗林さん

生理って、女性どうしでも家族や近しい友達とくらいしか話せない話題になってしまっているんですよね。誰にも話せないと、その次のアクションに繋がらなくなってしまう。そういう意味でも、とにかく最初に話せる環境をつくることが大事だと思います。もっと声に出して良いんだよ、ということを伝えていきたいです。

亀岡さん
亀岡さん

困りごとの話だけでなく、例えば生理用品をオーガニックのものに変えてみたら結構よかったよ〜とか、プラスになった意見の交換もできると良いなと思います。

──確かに、生理のある方同士でも話がしづらいと、そういったお役立ち情報のようなものも手に入りづらいのか…

太田さん
太田さん

生理に対する対応の仕方って人それぞれで、ピルを飲む人もいれば飲まずにただ我慢する人もいるし、ピルにもいろんな種類があるんですよね。なので自分の身の回りの人から直接情報を聞くことで、そんな方法もあるんだな、と選択肢を増やすことにつながると思います。

日本は性に関してクローズドすぎる?

太田さん
太田さん

日本って性と生殖に関する話題がタブー視されているような風潮があって、特に男女間でそういった話はしづらい、壁があるんですよね…。

亀岡さん
亀岡さん

保健体育の授業でも、男女別で教えたりしてるじゃないですか。「男子は女子のことについては触れるな」みたいな。習慣的に身についてしまってるところもあるのかな…と。

栗林さん
栗林さん

身体的な話題については男女一緒に授業してたとしても、じゃあその先の、生理用品をどうするかというような話は男女別になってる学校もあるみたいで。

──自分は男女共学の出身ですが、確かに教科書的な内容以上のことは教わらなかったし、女子のことについても「まあ言わなくてもわかるでしょ」みたいな雰囲気があったように感じます。

栗林さん
栗林さん

結構昔から根付いている国の文化みたいなものが関わっているところなんですよね…。もちろん、何でもかんでも話せというわけではなくて、今があまりにもクローズドすぎるから、もう少しオープンに話して良いんじゃない?と思うんですよね。

──思えば、骨折みたいな怪我については普通に話せるのに、生理の問題になるととたんに話すのが憚られるのって確かにちょっとおかしいですね。社会的な配慮があってしかるべきだと思うのに…。

栗林さん
栗林さん

生理がないことにされてるんですよね。ないことにしてるのに「男と一緒に働け」とか、「男と一緒に活躍してね」ってなんかおかしくない?って。

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生理がない人からの意見も重要

──この活動をはじめたきっかけは何ですか?

亀岡さん
亀岡さん

きっかけはある授業のグループディスカッションで、公衆衛生上の課題を一つテーマとして決めてその対策を考えるという活動をしていました。そこで女性の健康について取り上げたときに生理の話をしたら、みんな自分事として話が盛り上がって「そんなことしてるんだ!」とか「ピルってそんなに楽になるんだ!」みたいに情報を共有できたんです。こうして気楽に話すことで自分の中の選択肢が増えて良いな、と思ったのが始まりですね。

──なるほど。ちなみに、栗林さんは男性でいらっしゃいますよね。

栗林さん
栗林さん

そうですね。僕は生理がない立場の人間ですが、女性が多いグループの中では自分って活きるな、と感じています。生理のないマイノリティな立場として意見を発信できるので。

太田さん
太田さん

こういった問題で生理のない人の存在もかなり大事だと思うので、栗林さんはとてもありがたい存在ですね。

栗林さん
栗林さん

私たちが目指しているものが「生理がある人とない人の相互理解」なので、私たちのグループの中でも相互理解を深めていくことを意識しています。僕は教えてもらってばかりですけどね(笑)。あとは妻に聞いたりもしています。

──グループの中にいろんな立場の人がいる、というのは大事ですよね。

亀岡さん
亀岡さん

栗林さんが奥さんに「生理だから機嫌悪いんだね」といったら逆にキレられた、みたいな話もしてくれましたよね。

栗林さん
栗林さん

はい、キレられました。あとは妻の話だと、僕の妻は生理になると野菜をやたら刻むんですよね。

──野菜を刻む!?それはまたなぜ…?

栗林さん
栗林さん

理由はわからないんですけど、急に野菜をやたらと刻んで手の込んだ料理を作り出すんです(笑)。あとは物をよく落とすようになったり、もの忘れが多くなったりします。昔はそれを妻に指摘してしまってよく怒られたので、今はそっとしておいたり、料理を手伝おうか?と声をかけたりしています。怒り始めたらもうどうしようもないんで(笑)。

栗林さん
栗林さん

でもこうした経験って男性はそれぞれあると思うんですよね。生理のない人の我慢だってあるので、それももっとオープンに話せるようになれば良いなと思います。

太田さん
太田さん

今みたいな、生理がない人たちの経験談も活発に集めていきたいです!

生理に関する知識不足・社会問題

──今回の活動は特に大学生をターゲットにしていますが、その理由ってなんですか?

亀岡さん
亀岡さん

大学生の性教育ってぽっかり空いてると思うんですよね。高校生までは一応授業があるし、社会人になるとお金もあるし知識も増えていて、病院に行くといった対策もとりやすいと思います。一方で大学生ってなかなか情報も得られないし、行動も起こしづらいんですよね。実際私もそうでした。

亀岡さん
亀岡さん

私は親からの教えで「とにかく我慢しろ」と言われてきたので、いつも市販薬を常備してなんとか耐え抜く…という日々を送っていました。我慢するものだ、という考えがしみついちゃっていたんですよね。でも今思うと、迷わず産婦人科に行っていればよかったな…って思います。

亀岡さん
亀岡さん

現在、女性診療科という、女性の健康に関して相談できる場所が駒場にも本郷にもあるんですけど、あまり周知されていないようで…。

──自分も初めて知りました。

亀岡さん
亀岡さん

そこでの相談内容も生理のことが結構多いようなので、もっと情報が広まって、気軽に行ける場所になれば良いなと思っています。生理についての正しい情報を持つことができれば、自分の対処の手段も増えるので。

栗林さん
栗林さん

女性診療科の人は、生理のことは何でも相談してねというウェルカムな姿勢なのですが、待つ事しかできないんですよね。相談しに来てくれる人というのはどうしても限られてしまいます。

──実際に相談しにいくとなると、どうしてもハードルがありますもんね…。

栗林さん
栗林さん

ハードルもありますし、そもそも存在を知らなかったり、「内診されなきゃいけないの?」「痛そう」「男性医師だったら診てほしくない」みたいにちゃんと正しい情報が伝わっていないという問題も大きいですね…。

太田さん
太田さん

声集めを通して男女間で話しやすくなるだけではなく、生理のある人の間でも差がある話なので、生理のある人の間での意見交換、痛みの共有も行っていきたいです。私の母は痛みがないタイプだったので、私が痛いと言っても理解してくれなかったんですよ。我慢するのが当たり前でしょ、って認識の女性もいるので、女子間でも痛みの共有ができて労わりあえたらなって思います。

──亀岡さんも母から我慢しなさいと言われていた、という話がありましたもんね。単純に「母親に相談すればいいじゃん」という話でもないんですね…。

栗林さん
栗林さん

社会に出て働き始めるといろんな世代の人と出会えるんですけど、特にこの東大女子だけに限定すると狭いネットワークになってしまって、教育を受ける機会もないのでなかなか情報を得るのが難しいよね、というところがありますね。

栗林さん
栗林さん

もちろん痛みには個人差があるので誰かと話すだけで解決できる問題ではないんですけど、話した上で自分なりの解決策を考えてほしいなと思っています。ピルも今たくさん種類があるので。

──ピルについてですが、正直あまりよくわからなくて、避妊薬なのかな…くらいしか知らなかったです。

栗林さん
栗林さん

そうですね、一般的には避妊薬のイメージがありますが、中身はホルモン剤なので、生理痛の改善には効果的です。ただピルは「性におおらかな人が飲むもの」みたいな偏見があったりもするので、正しい情報を知ってほしいです。

亀岡さん
亀岡さん

私も最初、ピルは避妊薬ぐらいに思ってしまっていました。

──そういった偏見があるせいで、生理の改善のためにピルを飲むことにためらいが出てしまうということもありそうですね。

太田さん
太田さん

もちろん人によって副作用の差もありますし値段の問題もあるので、全員が飲むべきだというわけではないですが、こうした正しい知識の共有をしていくことも活動の目的にしていけたらいいなと思っています。

栗林さん
栗林さん

そのためにもタブー視をなくしていきたいなと思っています。

栗林さん
栗林さん

あとはピルに限らず生理用品が高くて買えないという「生理の貧困」という問題も現代の日本で実際に起こっているものなので、それについても話しあえたらいいなと思っています。生活必需品と言っていいようなものですから。

最近教養学部のトイレ(男女どちらも)に生理用品が設置されるようになりましたが、男女ともちゃんと使われているそうなので。必要としている人がいるんじゃないかって思います。

──なかなか当事者じゃないと意識しないですよね。誰が使っているのか、なんてことは考えたことがなかったです。

──知り合いに聞いたのですが、先日の能登半島地震の際に、母親が生理用品を必要としていたけれど、なかなか言い出しにくい雰囲気があったそうで…

栗林さん
栗林さん

当たり前に生理用品が手に入る環境をつくるためにも、生理がない人たちの意識も変えていく必要がありそうです。

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さいごに

──最後に、記事を読んでくれた方にお願いしたいことはありますか。

太田さん
太田さん

まずは私たちの活動を知って欲しいです。そして活発に声を出して欲しい。匿名か非匿名かを選べますし、男女関わらず、自分のエピソードや自分の周りの人の話などなんでもいいのでどんどん話して欲しいです。声が集まってくれば何が必要なのかも見えてくるので、それを踏まえて大学への提言に繋げていければと思います。

太田さん
太田さん

私たちのSNSのリンクから、ぜひ声集めに協力してください!

公式X:https://x.com/_nomorepatience

公式Instagram:https://www.instagram.com/ut_no_more_patience/

あとがき

いかがでしたでしょうか?

筆者としては、生理というのは、ある人にも、ない人にも、等しく重要な問題なのだなと痛感させられたインタビューでした。

この記事を通して「#当たり前の我慢を疑う~みんなで生理をはなそう~」さんの活動が少しでも伝わると幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

この記事を書いた人
筆者��のアバター画像
あけ
ライター初心者です。
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