海をそのまま切り取って陸に持ってきた東大OBがいるらしい!!
海を、︎切り取る⁉︎
そんなドラえもんじゃあるまいし……
調べてみると、
ほんとだ!!
なんだかホームページがかっこいい……
私たちはそんな株式会社イノカの高倉葉太さんにお話を伺いに行きました。
イノカのオフィスに伺うと、さっそく環境移送技術を見せていただきました。
(高倉さん)「ここのサンゴは生きている本物です。知らない人が多いんですが、実はサンゴって動物なんです。」
ええ!植物だと思っていた……
取材班3人中誰も動物だと思っておらず、さらにそのうち1人は生き物だとすら思っていなかった始末…
近くにはモニターがあって、水の中の物質の濃度を管理しているようです。
「生態系って非常に繊細なバランスでなりたっているので、これらを誰でも簡単に管理できるようにしようという技術で、「環境移送技術」と呼んでいます。」
サンゴの海を再現した水槽だけでなく、マングローブ林を再現した水槽もありました。
「実は満潮干潮も調節できて…」
ヤドカリが水を嫌って木の上に逃げていきます。
ヤドカリって水嫌いなんだ!?
木に登れるんだ⁉︎
ごめんね、私たちが取材に来たから……
このように、東大の教養学部生ですら生物に関する知識は名前や見た目しか知らない様子。サンゴが生きている動物であることや、ヤドカリが水を嫌いなことなど、実際の生態や性質は自分の目で見てみないと考える機会すらありません。とは言っても、海洋環境が近くにある人は限られています。そこで、株式会社イノカでは環境移送技術を利用して、本物をみせて面白さを伝える教育事業も行っています。
イノカのもう一つの事業は、研究開発事業です。
「ここでは、日焼け止めクリームがサンゴに与える影響について調べています。実は、日焼け止めは生物たちにとって毒になっているんです。しかし、実際にどの日焼け止めがどういうサンゴにどのくらい影響を与えるのかはよく分かっていないので、この水槽で日焼け止めを入れて対照実験を行い、海洋生物に悪影響を与えない日焼け止めの開発に役立てています。これは、資生堂さんなどの企業さんと一緒に取り組んでいる事業になりますね。」
あの資生堂さんと!?
環境移送技術恐るべし……
サンゴや海藻、マングローブ林は今、絶滅の危機に晒されています。イノカではその危機的状況を回避する方法を、この実験のように、水槽の中で探しています。環境移送技術がなければ日焼け止めの実験をすることもできませんでした。環境移送技術はただサンゴを育てるだけではありません。とても奥の深いものです。
サンゴなどが絶滅の危機に瀕していることを知っていながらも、考えることを放棄して何もしていなかった自分が恥ずかしくなってきました。世の中には、自分の知識を使ってこんなにも生物のことを考え、実践している人がいるのだなと……
そんなすごいことを成し遂げている高倉さんは学生時代に何を考え、どんな活動をしてきたのでしょうか。きっと授業もたくさんとって、意識の高い学生だったに違いない!!
「東大を選んだのは一種の逃げみたいなものでした。」
小さい頃から親には、医者になったら将来安泰だと言われてきた高倉さん。そのためなんとなく阪大医学部を志望していたそうです。
しかし、医学部受験はしんどいものです。
灘の人たちには勝てないし…(高倉さんの出身高校は甲陽学院です)
倍率は同じでも、千人くらい受ける阪大の医学部の方が、一万人くらい受ける東大よりも当日の体調や問題の相性に結果が左右されやすくてリスクが大きい…
そう考えた高倉さんは東大の理科一類を受けることを決心します。
ここで理科一類を選択した理由は、ものづくりが好きだから。当時から水槽でのアクアリウムだけでなく、電気系のものづくりをしていました。例えば、ドラクエのゲーム機を改造してギターのエフェクターを作ったり、ももクロが好きで5色に光るペンライトを作ったり…
この時点で「好き」へのすごい情熱を感じますね。
[広告]
「東大に入ってまず感じたことは、天才たちがいっぱいいるということでした。」
高倉さんは東大に入ってさまざまな試験を受けるうちに、周りのすごさと同時に自分は頑張りきれないタイプだと気づきます。
頑張りきれないタイプだということを印象づけるエピソードを話してくれました。
友達3人と一緒に下北沢のマクドナルドで勉強していたときのこと。最初は全員で集中して勉強していましたが、高倉さんは途中でもういいやとなり帰ってしまいます。それでも残りの2人はずっと勉強し続けていました。それを見て、「ああ、自分では敵わないな」と感じたそうです。
進振りにおいても基本平均点(東大における成績評価、基本平均点の高い順番に希望の学科に進学できる)をあげるために努力する気にならず、基本平均点はそこまで高い方ではありませんでした。
そんな中、とあるオムニバスの授業で暦本純一先生に出会いました。
(暦本先生→https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/faculty/rekimoto_junichi)
高倉さんは、この授業を東大に入って一番衝撃的な授業だったと振り返ります。
暦本先生はその授業で「素人発想、玄人実行」の大切さを話しました。普通だと「玄人発想、玄人実行」をやりがちです。つまり、100あるものを110にすることを目指す作業です。一方で、暦本先生は0から1を生み出すことに重きをおいていました。
VRやドローンがとても流行っていた当時でもイノベーションを重要視し、常に未来から逆算して行動します。SFをいかに実現するのか、この技術が生まれたからこそどんなことができるのか。常にこのように考える暦本先生に惚れ込み、絶対にこの研究室に入りたいと思うようになりました。
後期課程の学科を決めるときには、機械工学科(機械A)と機械情報工学科(機械B)の2つの選択肢がありました。
興味が近かったのはAIやロボットを扱う機械B。
しかし、ここで素直に機械Bにいかないのが高倉さんのすごさです。
「暦本研究室にいくために自分に必要なスキルはなんだろう?
ソフトウェアや電気系に関しては学科で学ばなくても独学でなんとかなるのでは…
ただハードは設備や資金がないと勉強できない!」
このようなことを考え、機械Aに進学します。(実際、高倉さんは2年生の頃からインターンでアプリやWebサイトもつくっており、昔から電子工作も自分でやっていました。)
一緒に勉強した友達2人は機械B(機械Bの方が底点が高く、人気な学科)に進学しました。自分で機械Aを選んだものの、ここでも自分は一番にはなれないのだと劣等感を感じます。
「機械工学科では実習で「寿司バズーカ」をつくりました」
ん?寿司バズーカ!?なんだそれは…
なるほど…
シャリを飛ばして空中でネタとシャリをくっつける機械のようです。
これはバズったに違いない…!
しかしツイッターに挙げても、26いいねしかつかなかったと悲しそうな様子の高倉さん。
まだ世間に見つかっていないならば、これはUmeeTの出番(??)全力で拡散させていただきます!
この実習で寿司バズーカが評価され、Top3のうちの1人に選ばれたため、人生初めての表彰台に輝きます。
ここまでの話を聞くと、高倉さんは要領はいいけれど一番になるための努力をしきれない人のようです。競争社会には向いていないのかもしれません。
「サークル、インターンばかりをずっとやっていたので研究室の先生によく怒られていました(笑)」
音楽がずっと好きで、サークルでサックスをしていた高倉さんは3年生の時にジャズの武者留学へ行きます。行動力には自信があると語る高倉さん。師事していた先生に自分で約束をとりつけ、1人でニューヨークへ向かいました。
BLUE GIANTみたいなことをする人が実際にいるとは…
(※BLUE GIANT・・・中学生のときにジャズに心打たれた主人公が世界一のサックスプレイヤーを目指す物語。作中で主人公は単身でドイツに乗り込む。)
本当に高倉さんの行動力には尊敬します。
音楽は好きで熱心に取り組んでいましたが、ここでもあと一歩が足りない、練習しきれないことに気づきます。BLUE GIANTの主人公のようになりたいけれども、彼ほど熱心に練習することはできませんでした。
また、その他にもインターンでアプリ開発に取り組みます。
インターンでは、株式会社ジェックス(日本のアクアリウムメーカーの中で最大手の会社)に1人で飛び込みで営業に向かい、その結果一緒に共同開発をすることになります。これが高倉さんが1人でとった最初の仕事です。
ここで初めてアクアリウムと仕事の接点ができます。
さらに、高倉さんは在学中に起業をします。
東大で出会った友人たちを見て、天才には敵わないと思った高倉さん。真正面から戦うのではなく、普通はやらない方面から勝負しようと心に決めました。
起業については前々から考えていました。目立ちたがり屋だという高倉さんは入学式でのテレビのインタビューで「アップルを超える会社をつくる」と発言しています。(もちろん、これはニュースで放映されました。)目立ちたがりで行動力のある高倉さんには会社で働くより起業する方が向いていそうです。
「こんな天才たちにはなれないから普通の人がやらない道で勝負しよう」
そうして、なんとなく考えていた起業をすることに至りました。当時、起業をする人はとてもめずらしかったため、東大の中で仲間を見つけるのではなく、リクルート主催の起業ハッカソンで出会った仲間と一緒にものづくり支援を行う会社を設立します(イノカとは別法人)。
この会社では、町工場の自動化を手助けしたり、現代アーティストの技術支援をしたり、アプリ開発を行ったりしました。
サークル、インターン、会社経営と外部での活動ばかりやって、大学での勉強が疎かになったのではないか…
読者のみなさんはそんな心配をしてきた頃でしょう。
安心してください(?)
きちんと疎かになっています。
研究室そっち抜けで活動していたため、研究室の先生にはよく「なんで来ないんだ、真面目に研究しろ」と怒られたそうです。
高倉さんは当時の先生には申し訳ないことをしたなと語ります。
[広告]
このように、学生時代からさまざまな活動をしてきた高倉さん。どのような過程を経てイノカ設立に至ったのでしょうか。
暦本先生のようにイノベーションがしたいと思いつつも、自分にしかできないことが見つからず悩んでいました。
そんな中、大学4年の3月頃からMAKERS UNIVERSITY(起業家育成塾)に通い始めたことで転機が訪れます。
それは、株式会社リバネスの丸幸弘さんとの出会いです。
(丸幸弘さん→https://univ.lne.st/board-member/maruyukihiro/)
「台風で風力発電」、「人の便は宝だ」などの一見意味の分からないことを言いながらも、それを実現していく丸さん。
そんな丸さんに衝撃を受け、これこそ自分の目指すイノベーションだ!と思い、丸さんのゼミに入ります。そして、丸さんと話す中で自分のアクアリウムへの熱に気付き、これで起業しようと決心します。
この辺りのお話はイノカさんのnoteにも書いてあります。興味のある方は是非読んでみてください↓
https://note.com/takakurayota/n/n3b97b2914bdf (note)
「サンゴが好きでAIを知っているのは世界で10人、その10人の中だったら1番になれる。」
高倉さんが医学部受験をあきらめた理由の一つは、受験人数が少なくシビアな戦いになってしまうからでした。高校生時代にそんなことを考えていた人が今では10人の世界で戦おうと決心しています。そこには今まで、灘の人たちや東大生に劣等感を感じてきた高倉さんだからこその理由がありました。
「まだこの分野で表立っている人はいない、自分が一番早い。」
「だからこそこれは自分にしかできない。」
今までは身の周りに天才たちがいました。しかし、ここでは見たこともない人たちとの戦いです。天才たちを散々見てきて、戦ってきた高倉さんにとって、見たこともない人たちには勝てる自信がありました。
さらに今までは決められたルールの中での戦いです。しかし、会社経営ということは自分がルールをつくる側に回ります。自分のつくるルールの中なら、天才たちにも勝てる。そんな自信もありました。
天才たちを見て戦いを放棄するのではなく、戦い方を考え、実践するところに高倉さんの成功の秘訣が隠されているように感じます。
私もこうなりたい!!
筆者のように、なんとなくで東大に入ったけれど特にやりたいこともない東大生に向けてアドバイスをいただきました。
「なんでもいいからやってみるといいと思います。ただし、大志のあるものにしてください。
自分の志があるものであれば、とりあえず手段はなんでもいいからやってみる。手段はなんであれ、たどり着くところは一緒なはず。えいやっと決めてしまって、決めたことに後悔はしない。あとは、ご縁やタイミングに任せてみる。
ただし、志がないとただの流される人になってしまいます。自分の大志ある道に進みましょう。」
このように話してくれました。
では大志を抱くためにはどのようにすればいいのでしょうか。
「すごい人たちと一緒に過ごすことです。すごい人たちと一緒にいないと、見えているつもりでも全然見えていない。自分の視野を引き上げるためには一流に触れることが大切です。そうすれば、新しい景色が見えてきます。
幸い、どんな分野であれ、東大には一流がいます。気づいていないだけ。私にとっての暦本先生のような存在を探してください。
頑張ってくらいついていきたいけど、絶対に追いつけない。でも一緒にいることで自分の視野を広げてくれる。そんな存在です。」
なるほど。かっこ良すぎます…
私も楽単ばかりをあさってないで、オムニバス授業を取ればよかったかな。もう遅いけど。(筆者は2年なので、もう前期課程が終わろうとしています。)
最後に高倉さんが大事にしていることを聞いてみました。
「まず一つは暦本先生からいただいた言葉である、『素人発想、玄人実行』です。
もう一つは『好き』を信じて生きることです。これは、好きなことを仕事にするというわけではなく、自分の『好き』を軸に見直しをするということ。僕はアクアリウムが好きだけど、水槽のメンテナンスを仕事にしているわけではありません。でも、アクアリウムに関わる大事な仕事をしています。
今流行っているものではなく、心のうちから出てくる感情を大事にしてください。自分にしかないものが誰にでもあるはずです。」
ありがとうございます!!
『好き』を大事にしてきた高倉さんだからこそ言えることですね。
お話を聞いていると、目立ちたがりで、要領はいいけれども自分は一番にはなれないという劣等感を抱いている、一見よくいる東大生です。
しかし、普通と違うのは自分の『好き』をとても大切にしていること。大きな志を常に持っていること。
そこに高倉さんのかっこよさが現れていました。
高倉さんをはじめイノカの皆さま、本当にありがとうございました。
[広告]
そんなイノカさんがインターン生を募集しているそうです!
「イノカは、世の中にたくさんいるはずの、全ての生き物好きたちと一緒に世界を変えたい!
その夢を一緒に追ってくれる、熱い人を待っています!!」
とのこと!
興味のある方は見てみてください!↓