「東大法学部」と聞いて、皆さんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。
優秀。真面目。官僚養成機関。エリート予備軍。どのイメージも、間違ってはいないかもしれません。でも、そんな立派なイメージを誇る東大法学部は、実は法学部生の間では「砂漠」であるとまことしやかに囁かれている場所なのです。
さて、私もまた、そんな砂漠に迷い込んだひとり。法学部生はみんな自虐的に「砂漠」って言葉を使うけれど、実際どうなのよ、なんて思いながら法学部に内定してはや2ヶ月。全面オンライン開講の週12コマ、他学部の友人たちが対面授業でどんどん友達を増やしていく中で一人も増えない知り合い、迫りくる高難度の試験への恐怖…早くも砂漠の洗礼を受けています。
とは言え私たち2年生にはまだまだわからないことばかり。そこで今回は、法学部砂漠の真の姿を知り生存策を練るべく、2年生3人が法学部の先輩2人をお招きし、砂漠の実態とそこで生き延びる術を探ります。
法学部に関わる全ての人、必見です。
今日はよろしくお願いします!
早速本題です。法学部は砂漠と言われていますが、実際それってどういうことなんでしょう?
聞いた話だと、主に「大教室での一方通行な講義」「勉強漬けの毎日」「コミュニティがない」の3点からそう呼ばれているのかなと感じたのですが…
私のイメージだと、対面時代は授業への出席率が低くて、駒場の900番講堂(編注:2年次に開講される法学部専門科目の会場だった大教室)に人が全然来ないことが「砂漠」だなあって思ってましたね。ひどい時だと数人しか来ないこともあるぐらいで。
(編注:法学部には大規模なシケタイ制度があり、その優秀な制度ゆえに授業の出席率が低いという噂がある。)
ええ…(驚愕)
そんな驚きます?
みんなコロナ禍で、2年次の持ち出し科目をオンラインで受けてたので…
あ、そっか…!
今日ここにいる中で、オフライン時代の法学部を知ってるのは望月さんだけなので…!2年生は本郷の教室にも入ったことがないんです。
そっか、下の代ってそんなことになってるんだ…
900番講堂って、最近改修されましたけど、昔は空調がよくなかったんですよ。夏は暑くて冬は寒い。人も全然来ない。
リアル砂漠じゃないですか。
砂漠だなあって思ってました。あと、法学部の教室って、机と椅子が固定されてる教室が多いんですよ。だから顔を突き合わせてグループワークとかができない。
はなから講義形式の授業しか想定されてないんですね。思った以上に砂漠ですね。
人との関わりは本当にありません。教室の最前列に座ってる人たちが謎に仲良くなったりはしますけどね。
コミュニティは本当にないですね。自分から動かないと何もない。孤独。シケプリだけがやって来る。
法学部は相対的に砂漠なんだと思うんですよね。医学部、文学部、農学部、…どれをとってもみんな「うちの研究室で〜」とか言うんですよ。
あ〜。
でも法学部生には研究室がない。小さい居場所みたいなものがないから、親密な繋がりが生まれにくいんです。コロナ前でも教室に溜まる文化はなかったし、一応法学部ラウンジはあるけど(現在はコロナ禍で閉鎖中)、ゼミの打ち合わせくらいでしか使わないし。
例えばこの座談会だって、もしコロナ前だとして、かつ私が既に法学部に進学してたとしても、「法学部ラウンジでやりましょう〜」とはならなかったわけですね…?
ならないと思います。
寒い安田講堂の前でやるしかないですね(笑)
なんか…キャンパスに居場所ないですね。
ないですね…来ないことが前提になっているのかも…
法学部生は図書館に籠もって勉強に明け暮れがちって聞いたことがあるんですが、図書館に行くのは他に居場所がないからなんですね…
居場所がないから勉強しかすることがなくて、結局勉強漬けになってるのかもしれないですね…
自分たちはオンラインで可哀想だと思ってたんですが、そんなことはない気がしてきました。むしろオンラインのおかげで孤独感が紛れてるかもしれません。
そうですね。コロナ禍の前の2019年の12月25日、クリスマス当日に必修の憲法の授業があったんですが、出席率が異様に高くて。
(爆笑)
砂漠というか…みんな、なんていうか、その、孤独なんだなって思いましたね。まあ、それを知ってるのは私も出席してたからなんですが。
砂漠というのは、2年生の終わりあたりの学部ガイダンスで、教授自身もおっしゃってました。法学部は砂漠と言われていますが、砂漠になるか一面の青緑となるかはみなさんの行いにかかっています、みたいな。
それを学生に委ねられるのはしんどいですね…
なんか重い雰囲気になってしまいましたね。
法学部砂漠、意外と根深いですね…
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明るい話をしましょう!そんな砂漠の中でも生まれる交流とか、ありますか?
さっきも言いましたが、教室の最前列の常連で謎に仲良くなるとかですかね。あとは、同クラの繋がりも大きいです。同クラの知り合いと知り合いになる、みたいな。
僕と福田くんも同クラの高校同期って関係で知り合いですし。
ここにいる人たちはみんな文一から法学部に進学してるから、特にクラスの繋がりは生きてますよね。
でも、文一以外から法学部に進学した人たちの「法転会」ってコミュニティもあるので、文一以外だからといって孤独というわけではないかも。
その案内見た!あれ見て、文一以外の出身の人たちの方がコミュニティ力強くない?って思いました!!
めっちゃ思った。マイノリティって仲良くなりますもんね。
そう考えると、推薦生のコミュニティがあったから恵まれていたのかも。
あとは、ゼミの仲間たちで旅行してる話とかも聞いたことがあります。今はコロナでそんな話も聞きませんが…
コロナ前に取ってたゼミでは、班に分かれて活動して結構仲良くなれました。でもコロナ禍で取ってたゼミは完全オンラインで、仲良くなるとかはなかったですね…オンラインで、顔も見えない状態で議論すると、必要以上に緊張感があったりすることもありましたし…
ゼミはオンラインだとなかなかやりづらそうですね。
既に対面授業が始まっているような、後期教養の30人くらいしかいない学科の人とかと話してると、「〇〇さんがうんたらかんたらで、〇〇くんがうんたらかんたらで〜」みたいな話してて。同じ学年とは思えないなって思います。
今の2年生(2020年度入学)はコロナ禍の煽りをもろに受けて、一番可哀想な世代なんて言いますけどね。学部に内定して2Aが始まってからは学部間格差を感じることも結構あります…
同期に限らず、学部の先輩との交流ってあるんですか?おすすめのゼミとか就職に関する情報とかを教えてもらえるような繋がりとかできるものでしょうか。
ぶっちゃけ、繋がりがあるのは上クラかなあ。
あ〜。
でも、これはオンラインのせいだと思うけど、上クラとの繋がりってそんなにないよね…
ない!!
あっ…オリ合宿とかもなかった…!?
なかったですね…だから上下間もそうだけど、同クラでも喋ったことない人とかいます。クラスにもよると思うけど。
やっぱりクラスのつながりがあると生きやすいものですか?
だと思いますね…同クラと同じ授業取って助け合うとかもそうだし、上クラから教科書もらったり、過去問の傾向教えてもらったり、かなり助けられてました。法学部は新しい繋がりができにくい分、駒場時代のクラスの繋がりをうす〜く引き伸ばして生きてる感じです。クラスは本当に大切にした方がいい。
結局、砂漠の中でのコミュニティっていうと、クラスと高校の繋がりくらいなんですかね。
あとは、法学部生の多くが入る「法律相談所」ってサークルも聞きますね。学年100人くらいいる大きいコミュニティで、先輩に履修や進路の相談をしている人もいるみたいですよ。
法学部400人中100人はすごいですね。
就活って話で言うと、法学部って、弁護士志望とか官僚志望には強いけど、一般就職する人のコミュニティ力が弱いと思うんですよね。経済学部とかと比べると情報格差を感じます。
すごくわかる。後期教養の人とか、友達同士でエントリーシート見合ってたりしてますもん。
そういう雰囲気は確かになさそうですね…第2類(法律プロフェッションコース)をはじめ、資格や国家試験の勉強をする人が圧倒的に多い気がします。
他の学部って、学部全体としてはコミュニティになっていなくても、学科ごとの繋がりとかあるじゃないですか。法学部にも第1類〜第3類ってあると思うんですが、類ごとの交流ってあるんですか?
ほぼないですね。
第3類はあるって聞いたことあります。
そうですね、第3類は一応あって、山上会館で教授をお招きして…みたいなイベントはありましたね。でも参加のハードルが高くて…
唯一、類ごとに分かれるのは、卒業アルバムの写真撮影の時くらいですね。「第1類」って括りで、知らない人たちと並んで写真を撮る。
え、私それ呼ばれてない…
え…
砂漠エピソードがまたひとつ。
ショック……
砂漠では、こういう情報の漏れが起こるんですよね…学科のコミュニティとかがあったらこんなことないじゃないですか。誰かが言ってくれる。
情報が行き渡っていない感じはありますよね…
僕の友達にも類登録を忘れてる人いましたし。それも何人も。
法学部は情報格差がひどいですよね…自分からホームページを見に行かないとわからない。
履修を組むだけでも難しかったです。上クラとも繋がりないし、友達もよくわかってない人ばっかりだったしで、サークルの繋がりで先輩に色々聞いてようやく組めました。
今年は学部便覧(編注:履修の規則等が書かれている)がもらえなかったから全然わかりませんでしたね…
本当に何もわからなかった。なんだか放っておかれてる感じがしますよね。
一応、学部公式ではありませんが法学部のお知らせを流してくれる緑会委員会のTwitterアカウントはあります。
砂漠を生き抜くにはマストアイテムですね。
試験対策という意味では、法学部には優秀なシケタイ制度がある分、他学部よりも楽だという見方もできると思いますが、どうなんでしょう。
うーん。他学部、例えば後期教養とかの評価方法って、学生同士でのフィードバックをした上での発表だったり、学生同士の話し合いだったりと、最終評価までに他の学生たちと考えを交わす機会があることが多いと思うんですよ。でも法学部って、シケプリで情報をもらうことはあるにせよ、結局一人で試験を受けることになるわけで。個人にもよると思いますが、勉強のモチベーションが続きにくいですよね。
他学部と比べると、成績も取りにくいものが多いような。
海外の大学院も「東京大学法学部はGPAをあげにくい」と認識していると耳にしたこともあります。
ってことは、法学部の中でも東大は特にってことなんですね。法学を学ぶなら仕方ないのかと思ってた。
東大が特にってことなのか、他大の法学部のことも気になります。
それから、成績について現状、不服申し立てはできるのですが、条件が厳しい上に説明する義務もなく、『評定の変更は行わない』前提なんです。これは少し、うーん、違うんじゃないかなと思ったりもしました。
それはだいぶ深刻な問題ですね…!成績って将来に関わりますもんね。
試験についてもう一つ困っているのは、解答にボールペンか万年筆しか使えないことです。2時間ペンだけで書き続けるのは辛い。
校正しながら書くってことができないのは辛いですね。一発勝負しかできない。そこまでできる理解が求められているんだろうなとは思いますが。
今から試験が怖いです…
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やっぱり、授業が対面だったらもう少しモチベーションが保たれたのかなと思うことはありますよね。強制力になるから。せっかくキャンパスに来たんだから単語の一つでも聞き取って帰ろうって気持ちになるし。
わかります。今、2年生の専門科目は全授業オンラインで。今日もA先生の授業を受けてきたんですが…
あ〜!A先生って授業前とかによく映画の話しない?
うーん、聞いたことないですね…
オンライン授業だと雑談って減る気がします。
それもオンラインの弊害かもしれないですね。授業の前後に教授が雑談してたら、ただ授業をするされるの関係だけじゃなくて、この先生はこういうことが好きなんだとか、こういう分野で頼れる人だとかわかる。オンラインになったことで教授と学生の距離が開いちゃったのかも。
砂漠化か…
(笑)
対面授業だったらやっぱり、授業後に教授のところに行って質問とかもありますよね?
あるある!列ができてたりもします。まあオンラインでも質問はできるけど…ハードルは上がりますよね。
対面時代は、ぽつぽつと人がいる中にたまにカップル受講者がいたりして、みんなでそれを遠巻きに眺めてるなんてこともありました。
でもそれって…法学部でできたんじゃなくて、前期からの生き残りかもしれないですね。
砂漠の中に咲いた花ではなかったか…
砂漠の中で枯れないだけ偉いです。
(笑)
法学部のここを変えてほしいってところとかありますか?
まあ…オンデマンド授業をなかなか上げてくださらない先生とかがいらっしゃるのを考えると、先生方への監視はもう少し強化していただきたいですね…
あとは対面活動の規制緩和をお願いしたいです。
うんうん。法学部ラウンジも開けてほしいですし。
集まって勉強できる場所は欲しいですよね…居場所を作ってほしい。
法学部は対面活動に関しての規制が他学部に比べて厳しい感じがしますよね。2年生の持ち出し科目も、対面が全くないところって法、経済、農、理くらいだと思うし。大人数が同じ授業を受けている都合上、難しいところではありますが…やっぱりオフラインにしてほしいってところに落ち着くんですかね。
オフラインにするなら、全面オフラインがいいですよね。
ハイブリッドとかにされても行かないですもんね。長いコロナ期間のせいで、外に出るのが面倒になっちゃって。
ハイブリッドだと、教室に行くのには少しハードルがあるから、結局対面参加するのは一部のガチプロだけになっちゃいそう。
確かに。それなら雑多な数十人が混ざってる全面オフラインの方が行きやすそうですね。「最前列組」しかいない授業には行きづらいですもん。
オンラインにしろオフラインにしろ、教授と学生とのコミュニケーションがもっとできるようにしていただきたいですね。授業を聞いてテストを受けて一方的に評価されるだけ、じゃなくて、教授からのフィードバックをもらうタイミングがほしい。
評価の変更は行わない前提っていうのも一方的ですしね。
砂漠の改善にあたって、学生間の問題に終始せず、教授と学生との関係も考えていただきたいですね。教授から反応があったらモチベーション上がると思うし。
絶対そうですね。
学生はクラスやサークルのコミュニティというサバイバルグッズを装備して、学部としては学生間・学生と教授間のコミュニケーションを図ることで砂漠に少しずつ水をやっていけたら、法学部砂漠はもう少し生きやすいものになるんじゃないでしょうか。
みなさん、今日はありがとうございました!
−−残り2年半、私たちの砂漠の旅が始まる。