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【本屋の危機を救え!】理系東大生が提案する新しい本屋のカタチ

2021.10.15


デジタル化が進む今日このごろ、紙の本の立場は日に日に危ういものになっています。

これも時代の流れ……でも紙の本を販売する本屋がなくなっちゃうのは寂しい!

こんな風に考えている方は多いのではないでしょうか。かくいう筆者もそのひとりです。

そんな中、ふたりの東大生が「新しい本屋のカタチ」を提案すべく、去る10月9日、10日に本郷のイベントスペースで企画展示を開きました。

入り口の案内

新しい本屋のカタチ……一体なんだろう?

企画展が行われる前に展示内容について伺ったところ、「当日までのお楽しみだけれど、8つある展示のうちの1つが「真っ白な本屋」である」ということを教えてくださいました。

真っ白な本屋、ますます期待が膨らみます。UmeeT編集部が実際に現地を訪れ、企画者のおふたりから説明を伺ってきました。

学生証
  1. お名前:谷浦翔紀さん(左)
  2. 所属:東京大学学際情報学府先端表現情報コース修士2年
学生証
  1. お名前:川口りほさん(右)
  2. 所属:東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程2年
筆者
筆者

おー!すごいたくさんの人が集まってる!

川口さん
川口さん

予想以上にたくさんの人に来ていただいて、とても嬉しいです。

真っ白な本屋

筆者
筆者

早速ですが、事前に紹介されていた「真っ白な本屋」はこちらでしょうか?

川口さん
川口さん

はい。本の表紙をとって白い紙に統一することで、タイトルや装丁などのラベリングをあえて隠し、内容だけで本を選んでいただけるようにしています。

筆者
筆者

本の中に記されているタイトルまで消しているんですね。すごい徹底ぶり。

谷浦さん
谷浦さん

実際のところ、タイトルや装丁は作者やデザイナーの想いが込められた作品の一部だと思いますし、それを隠してしまうことはある種作品を棄損してしまうことだとも思っています。

でもそれを承知した上で、あえてラベリングを取り外すことで生まれる自由な体験を模索しました。

川口さん
川口さん

もし気になった本があれば、挟まっている白い栞をレジまで持ってきてもらいます。それをこうして光に当てると……

筆者
筆者

おー!ブルーライト!真っ白な栞でどうやって判別するのかな、と思っていたんですが、そういうことか!

川口さん
川口さん

ラベリングとなる情報を取り払ってみて、内容に集中してもらえるように工夫しました。実際に来てくれた人の感想を聞いてみると、普段哲学書を読まない人が、エーリッヒ・フロムの『愛するということ』を気に入ってくれたり、意外な結果に私たちも驚いています。

何の本屋?

筆者
筆者

次はなんでしょうか?

谷浦さん
谷浦さん

「何の本屋?」です。本を4冊ごとにグルーピングしてまとめています。

左側の4冊(『デザインの小骨話』『毎日写真』『grapefruit juice』『僕の人生には事件が起きない』)に共通する特徴は何か分かりますか?

筆者
筆者

えー何だろう……

谷浦さん
谷浦さん

正解は……

谷浦さん
谷浦さん

「”書かない人”の目線」です。文章を書くのが本業ではない人の本を集めました。

筆者
筆者

 なるほど!

谷浦さん
谷浦さん

本はジャンルや出版社でまとめられていることが多いですが、1冊の本にも色々な切り口があると思うんです。関係なさそうな4冊を一緒に並べることで、無限の見せ方ができるのではないかと考えました。

筆者
筆者

あと、4冊まとめて並べられていると、もともと自分が興味を持っていた本じゃないものにも手が伸びそうです。

谷浦さん
谷浦さん

みんなすぐに答えをめくってしまうのかなと思っていたんですが、予想以上に長い時間、4冊の本の繋がりについて考えてくださいました。自分だけでなく、他の人がどんな4冊をグルーピングするのかも気になります。

とびら

筆者
筆者

次はずらーっと並んでいてインパクトがありますね。本の横に置いてあるのは、写真ですか?

川口さん
川口さん

はい。次は「とびら」です。それぞれの本と写真が1対1対応になっています。この写真の女性は誰だかご存知ですか?

筆者
筆者

いや、分からないです。誰でしょうか?

川口さん
川口さん

これはアメリカの大統領、アイゼンハワーの妻であるマミー・アイゼンハワーです。彼女はピンクが好きだったのでよくピンクの服を着ていたんですが、その結果、社会全体としてピンクが「女の子らしい色」とされるようになってきました。

筆者
筆者

へー、そんな経緯があったんですね!

川口さん
川口さん

それぞれの写真は本の内容に関連したものになっています。今回、棚にはジェンダーに関する本を並べてみたんですが、社会問題に関する本って、なかなか手に取りづらいこともありますよね。

筆者
筆者

確かに、きっかけがないとなかなか読みはじめられないものだと思います。

川口さん
川口さん

なのでこの「とびら」では、写真で目を引いて、できるだけライトに本を読んでもらえるように工夫しました。

SNSの台頭で”発言”に重きが置かれ過ぎていると感じることが多いです。発言することも”行動”だとは思いますが、本を読んで教養や知識をつけることも”行動”だと思っています。私は本を読むという、「自分に向けた行動」も同じくらい立派な行動だと思っていて、「とびら」をきっかけにこれまで関心を持っていなかった人が本を読んでくれるようになり、一歩目を踏み出してくれることを期待しました。

×本屋

筆者
筆者

次は服やCD、お酒なんかがおいてありますね。

谷浦さん
谷浦さん

これは「×本屋」といって、本を他のものと一緒に販売することでライフスタイルを提示する本屋です。

筆者
筆者

曲のテーマや服の雰囲気などに合わせてあるんですね。香水というのもいいですね。

川口さん
川口さん

ぜひ、こちらの本の香りを嗅いでみてください。

筆者
筆者

わっ!!すごい香り!!……えっ、別のページからは別の香りがしますね!!

川口さん
川口さん

はい、作品に登場する4人の女性をイメージして、ページごとにそれぞれ異なる4種類の香りをつけてあります。

筆者
筆者

これは今までみたことがない試みですね……

川口さん
川口さん

展示しているものの中で唯一五感で楽しめるというのもあってか、「香水×本屋」が一番人気ですね。

本屋は前へ進む

筆者
筆者

次は何かおしゃれな雰囲気ですね。

谷浦さん
谷浦さん

「本は前に進む」です。左半分に現代についてまとめた本、右半分に過去についてまとめた本を並べました。

筆者
筆者

時代で分けて並べたのは何か意図があるんですか?

谷浦さん
谷浦さん

今、世界が色々と変化しているなか、自由な価値観が認められるようになっています。それはもちろんいいことでもあるんですが、一方で、行動の指針がなくて行き詰まってしまうという問題もあります。

そんなときに、昔の本のなかに答えを探し求めることを提案したくて、このような本屋をつくりました。過去の本は、今に生かすことができるようなあたたかい本を選びました。

古いから良い本屋

筆者
筆者

次は「古いから良い本屋」ですね。置いてあるのは古本ですか?

谷浦さん
谷浦さん

はい。汚れてしまった古い本はマイナスなイメージがありますが、「誰かの元に所属していた」ということは良さでもあると思うんです。そこでこの本屋では、過去の本の持ち主の感想と好きなフレーズをまとめた栞を挟んで、古さをリフレーミングしています。

筆者
筆者

確かに、「過去の持ち主はこういう読み方をしたんだ」と知ることができると、本の読み方も変わりそうですね。個人的に、この『星の王子さま』の感想に心動かされました。

谷浦さん
谷浦さん

実はそれは僕の本なんです(笑)こういう自分の体験が他の人に伝わっていくと素敵ですよね。

本と再会する

筆者
筆者

次はタブレットですね。

川口さん
川口さん

はい、「本と再会する」です。質問なんですが、昔読んだ本を読みかえすことってあったりしますか?

筆者
筆者

うーん、あまりないですね。1冊読むのにも時間がかかるので、なかなかきっかけがないと読みかえさないです。

川口さん
川口さん

きっとそういう方は多いですよね。この「本と再会する」では、過去に読んだ本を登録して、スライドショー形式で流すことで、本を思い出すきっかけにしてもらって、再読を促しています。

筆者
筆者

たしかに、小さい頃に読んだ思い出の本とかが流れてきたら、読みかえしたい気持ちになりそうです。

川口さん
川口さん

自分の思い出の品と一緒に並べて、アナログの良さも生かしました。

「私の本屋-sHelf-」

筆者
筆者

次で最後ですね。これはVR空間に本が飾られているという感じですか?

谷浦さん
谷浦さん

はい。「私の本屋-sHelf-」です。ここには僕の友達の本が並んでいます。自分と仲の良い人が好きな本だけで本屋を作ってみたくて、VRで実践してみました。

筆者
筆者

自分の友達の本で本屋を作るというのは、たしかにワクワクしますね!

谷浦さん
谷浦さん

今、Amazonとかでは不特定多数の人がオススメしている作品がAIによって分析されて、レコメンドされます。でも、自分に近い人がオススメしている作品がレコメンドされるのも面白いと思うんです。

筆者
筆者

あの人が読んでいるんだったら自分も読んでみよっかな、って思うこともありますよね。

谷浦さん
谷浦さん

今回の企画にあたって色々な人に本を紹介してもらったんですが、面白いことに、その人らしい本が半分くらいある一方で、もう半分は全く想像もつかなかったような本なんです。好きな本を知ることはその人の新たな一面を知ることにもつながると思いました。

企画者のおふたりから直接お話を伺ってみた

筆者
筆者

企画展示、どれも面白いアイデアで楽しませてもらいました。おふたりはどういう経緯でこの展示を行うことになったんですか?

谷浦さん
谷浦さん

もともと僕が所属している学科でデザインについて学んでいたんです。実は、研究する過程で捨てたアイデアが今回の企画の元になっています。

筆者
筆者

えっ!捨てたアイデアだったんですか!

谷浦さん
谷浦さん

はい。でも何かに生かせないか気になっていたアイデアでもありました。

川口さん
川口さん

もともと私と谷浦は就活コミュニティで知り合ったんですが、あるとき、他に就活で知り合った2人を含めて4人で、自分たちの好きな本10冊を紹介するオンライン企画をやったんです。

谷浦さん
谷浦さん

「私の本屋-sHelf-」の原型です。

川口さん
川口さん

それがとても盛り上がり、何か新しい本屋のカタチを考える企画展示をやりたいねという話になりました。

筆者
筆者

かなり個人的に始まったプロジェクトだったんですね!

谷浦さん
谷浦さん

そうですね。友人の紹介でこのイベントスペースを使えることになったりと、かなり縁に助けられての開催でした。

筆者
筆者

展示内容はどのように考えられたんですか?

谷浦さん
谷浦さん

ブレストでたくさん案を出したあと、一旦それを抽象化してグループに分けました。そのあとにまた具体化するという過程を繰り返して、実際に展示する内容を決めていきました。

川口さん
川口さん

今回の企画展示でも、そのブレストが体験できるようになっていて、参加者のみなさんにも「新しい本屋のカタチ」を考えていただきました。

筆者
筆者

うわっ!すごくたくさんのアイデアがある!

参加者の皆さんが考えた「新しい本屋」
谷浦さん
谷浦さん

今回いただいたアイデアもまたグルーピングしてまとめる予定です。

筆者
筆者

実際に企画展示を開催してみていかがでしたか?

谷浦さん
谷浦さん

まず、期待以上にみなさんじっくりと本を読んでくれるというのがあって、嬉しかったです。開催前は「30分持つかな……」と不安だったんですが、始まってみると、平均で45〜60分くらい滞在していただけました。

川口さん
川口さん

オフラインの空間で何かを見るという体験が久しぶりで楽しいという声もありました。

谷浦さん
谷浦さん

人によって好きなアイデアも違うんですよね。普段本を読むかどうかだったり、性別だったりで傾向が分かれるのは面白かったです。

筆者
筆者

最後に、これからの展望を教えてください。

谷浦さん
谷浦さん

今回の企画展示を行った背景に、縮小傾向にある本屋は日々の業務のことを考えるのに手一杯で、何かを模索する余裕がないという現状があります。だから、ゆとりのある学生の僕たちが代わりに新しい本屋の価値を見つけたいと思いました。そういった課題意識があるので、最終的には僕たちのやっていることが何か形になると嬉しいです。スモールビジネスでも、ちゃんと収益を上げて運営可能な店舗ができるといいなと考えています。

川口さん
川口さん

新しいカタチの本屋を実現させるだけでなく、今回のように実験を行うための本屋を作るという方向もあると考えています。

谷浦さん
谷浦さん

あと、これは夢なんですが、僕たちの経験を書籍化してまとめてみたいです。とりあえず、今回の企画展示の結果については、WEBサイトを作成してそこでまとめる予定です。

筆者
筆者

おふたりのこれからの活躍が楽しみです。本日はありがとうございました!

運営をサポートされた徐聖子さん、日比萌咲さんと一緒に

インタビューに応じてくださったおふたり、そして最後まで記事をお読みくださった皆さん、ありがとうございました。

谷浦さん、川口さんはいつでもコラボレーションをお待ちしているとのことなので、今後の活動になにか関わりたい、関心があるという方は、ぜひ以下のメールアドレスに連絡してみてください!

flying.bookstore2021@gmail.com

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チロル
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