みなさん突然ですが、11/1に東大からリリースされた全東大生必携のアプリ「MOCHA」をご存知ですか?
え?知らない?
Withコロナ時代のキャンパスライフをサポートするために開発された、たくさんの超すごい機能が搭載されているアプリなのに?
知らない?
アプリをインストールするだけで学内の混雑状況の把握に役立つことができて、接触確認もしてくれるし、教室の予約もできるのに?
…大丈夫です。
そんなみなさんのために、MOCHAのPRチームでは、開発チームを主導している、工学系研究科の川原圭博教授にお話を伺いました。コロナ禍で生まれたアプリ「MOCHA」ですが、インタビューからは、コロナ禍にとどまらない、将来の大学を見据え、今の大学の強みを生かしたプロジェクトの姿が見えてきました。
本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
まずは、今のMOCHAでできることを読者の人に知ってもらうことから始めようと思います。
MOCHAのHPにアクセスをすると、iOSとAndroidそれぞれのダウンロードリンクが表示されているので、MOCHAをインストールしてください。
MOCHAを開き、画面の指示に従って初期設定を行うと「チャンネル一覧」画面が表示されます。
「空間統計チャンネル」は、MOCHAを利用する上で必ずフォローしてほしいチャンネルです。このチャンネルをフォローすることで、プライバシーを保護した形で端末の位置情報が集約され、学内の混雑状況の分析に使われます。そのため、より多くの人がMOCHAを利用することで、より正確な情報を表示することができます。
MOCHAをインストールしてチャンネルをフォローするだけでも、学内の混雑状況把握の役に立つことができるんですね。
プライバシーの保護については、また後で詳しくお話しします。
MOCHAには「滞在履歴」画面もあります。
この画面では、これまでの教室への滞在履歴を確認することができます。
新型コロナウイルス感染症の感染が判明した場合は、所属学部・研究科等に対して、二週間の行動履歴を報告する必要があります。しかし、履歴を常に記録しておくことは難しいでしょう。
MOCHAを利用していれば、自動で行動履歴が記録されます。また、学部・研究科等によっては、MOCHAのデータを使って、接触した可能性のあるユーザに通知をすることもできます。
MOCHAに対応している教室では教室の予約を行うこともできますね。
学部・研究科ごとに、少しづつ対応する教室を増やしています。教室を利用したかどうかも自動で判定されます。
他にも、キャンパスへの入構申請もMOCHAからできますね。
キャンパスに入構するたびにWebページを探す手間を、MOCHAを使えば省くことができます。
自分が大学に行く時にもとても役に立っています。
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これまで紹介してきたように、MOCHAの機能は位置情報をもとにしていますね。同じようなアプリとして厚生労働省のCOCOAが思いつきますが、COCOAとMOCHAの違いはどこにあるのでしょうか。
その説明のためには、まず位置情報システムの基本を説明しないといけません。
そもそも位置情報システムは、基準点からの距離を測ることが基本です。周囲に基準となるものがある場合は、位置情報は手元の端末でわかります。GPSなどがこれにあたりますね。この場合、位置情報は自分しか見ることができません。
そうなんですね。
一方で、手元の端末から基準となる信号が出ていて、周囲のデバイスがそれを検知する場合、位置情報は周囲のデバイスに保存されます。プライバシーの保護が重要となる方法で、記名式Suicaや携帯電話の位置情報がこれにあたります。
ひとことで位置情報システムと言ってもさまざまな種類があるのですね。
COCOAはユーザーが基準となる信号を出しているので、後者の仕組みと言えるでしょう。
プライバシーはどのように保護しているのでしょうか?
COCOAでは、一定間隔で信号を変えることでプライバシーの問題を解決しています。これは発想としてはシンプルなのですが、Bluetoothの基本的な仕様を変える必要があったので、今までは実現していなかったのです。この点でCOCOAは非常に優れたシステムと言えます。
初めて知りました。一方のMOCHAはどうなのでしょうか?
COCOAは日本中のどこでも機能するように設計されていますが、その分、精度には不安があります。そこで、管理できる区域内で組織として構成員を守る、別の設計思想に基づいたシステムがあってもいいんじゃないかと考え、MOCHAのコンセプトを作りました。
そうすると、先程の説明でいう前者の仕組みになっているということですか?
その通り、MOCHAは前者の仕組みです。教室側にビーコン(編者注: 信号を発信する機械)を置き、学生は手元のスマートフォンでその信号を受け取ります。そのため、ユーザーは手元でプライバシーを完全に管理できるようになっています。
しかしこの仕組みは、環境中に信号を出すたくさんのデバイスが必要なので、限られた空間でしか実現できません。
つまり、MOCHAはキャンパスという限られた空間内だからこそ実現できる仕組みなんですね。
MOCHAのプロジェクトは、いつ頃始まったのですか?
話を始めたのは5月くらいです。工学部長と話をしていた時に、自分たちの研究でキャンパスの大変な状況を改善できるアイデアがあれば出してくださいと言われました。
自分の専門であるユビキタスコンピューティング、特に自分が10年前研究をしていた位置情報技術で、ウィズコロナだけでなく、アフターコロナにも対応するものを作りたい、というのが最初の思いでした。
何か前例のようなものはあったのでしょうか?
確か、1990年代の教育用計算機システムには「friends」というコマンドがあって、各端末の利用状況や友人の着席位置がわかるようになっていました。今となってはプライバシーが問題になりそうですが、当時は物の貸し借りなどで結構利用されていましたね。
MOCHAにも、自分の登校情報をシェアする機能があれば便利かもしれませんね。
そうですね。現在の大学は、人と会う機会が少なくなっています。しかし、大学には新しい出会いがたくさんありますし、学部時代の出会いは一生ものです。私自身、学部時代の友人と仕事をする機会も少なくありません。大学で出会った人とは、卒業後も特別な信頼関係が生まれます。そんな環境を早く取り戻したい、という思いもあって開発を進めています。
開発はその後どのように進んだのでしょうか。
実はMOCHAだけでなく、さまざまな研究室で同じようなシステムの計画が進んでいました。そこで、それらをまとめた全学的な枠組みが立ち上がり、協調した活動を行うようになりました。
プロジェクトは研究室から始まるんですね。大学からの号令があったのかと思っていました。
大学はボトムアップの思想を守り続けてきた組織です。総長はビジョンを発信されますが、強制はしません。それぞれの構成員が自分のできることを考え、それを実現できるのが大学の特徴です。
そのため、MOCHAのプロジェクトはさまざまな専門の先生や学生と協力して進んでいます。工学部の人がシステムを作り、法学部の人が規約をつくり、さまざまな人がそれぞれの専門で関わっていることが、MOCHAの特徴と言えるかもしれません。
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学生がプロジェクトに参加していることも、MOCHAの特徴の一つだと思います。どのような経緯で学生が開発に関わることになったのでしょうか?
大学にはたくさんの学生がいるからです。20年前のことになりますが、自分も学生の頃はウェブ開発でバイト代を稼いでいました。社会で通用するスキルを持ち、大学の役に立ちたいと思っている学生はたくさんいます。
MOCHAチームは、アプリの開発だけではなく、PRやベータテストなど、多くの場面で学生の声を聞きながら開発を進めていますね。
それはMOCHAに関心をもつ学生を増やすことにも繋がっていると思います。実際に使う人が自分たちが使いたいと思えるものを作るのが一番大事です。ユーザーである学生自身がアイデアを出し、手を動かす。自分達が関わったサービスに愛着を持ってもらえたら嬉しいです。
デザインも、チームの一人がたまたま前期過程のデザインの講義(編者注: グラフィックデザイン概論)を受講していた繋がりで、前期教養の学生や講師の先生にも協力を頂き、良いものを作ることができました。
MOCHAの今後についても教えていただきたいです。直近では教室の予約機能がリリースされましたね。
はい。工学部では教室の予約システムとしてMOCHAを利用してもらっています。他の学部・研究科等でも活用してもらいたいですし、将来的には食堂の予約にも活用できないかと考えています。
食堂の予約ですか?確かに、コロナ禍以前の昼休みの食堂は常に大行列でした。
そうなんです。みんな同じ時間に授業を受けるので、食堂や図書館などの施設は混んでしまいます。自分が学生だった時からの問題です。
物理的な場所のキャパシティはそう簡単には増えませんが、ITの力を使えば、それを空間的、時間的に分割して有効活用することができます。新しいシステムを作るのなら、今直近にある問題を解決するだけでなく、将来にわたって役立つものを作りたいと思っています。
また、将来的には混雑状況確認や予約だけでなく、さまざまにMOCHAのシステムを拡張していきたいと考えています。
拡張というのは具体的にどのようなことなのでしょうか。
例えば以前、建築の先生と研究の相談をした時に、「安全な空気」を作ることができると聞きました。MOCHAと連携をして、教室の空気の状況をMOCHAで表示、管理するということもできるかもしれません。
今のMOCHAチームがどうしたいということではなく、いろいろな人がMOCHAというプラットフォームを使い,いろいろな情報を載せてくれると,思いもしなかった使い方が出てきて、さらに良いキャンパスを実現できるのではないかと考えています。
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最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
MOCHAをインストールすると、混雑状況の確認や予約機能などの便利なツールが使えるだけでなく、大学の感染症対策に役立つこともできます。
コロナ禍のキャンパスをより良いものにするためには、皆さんの積極的な取り組みが重要になります。まずはMOCHAをインストールして使ってみてください。そして、みなさんの力でMOCHAを育てて欲しいと思っています。
Twitter(@UTokyo_MOCHA)も運営しているので、意見や提案などあればぜひ寄せていただきたいですね。
今日はお忙しい中、ありがとうございました!
ありがとうございました。