あなたは「ミスコン」について、どんな印象を抱いていますか?
東京大学でも、毎年ミスコンが開催されていますが、「ジェンダーステレオタイプ」や「ルッキズム」の観点から批判されることも多いです。2019年には有志の学生団体が、「ミスコン&ミスターコンを考える会」として、抗議活動を行いました。
それでは、ミスコンの出場者がミスコンの問題についてどのように考えているか、その意見を聞いたことはあるでしょうか?
ミスコンについて様々な議論がなされている一方で、当事者の声を聞くことはあまりないのではないでしょうか。
実は現在、「ミスコン出場者によるミスコンへの考えをまとめたフォトエッセイ」が、東大の学生によって作成されようとしています。そのプロジェクトはクラウドファンディングによるものです。
一体どうしてこのようなプロジェクトを始めたのか、今回、UmeeT編集部は、プロジェクトの代表者の1人である時田桜さんにお話を伺ってきました。
―ミスコン出場者によるフォトエッセイを作成されるということですが、プロジェクトを始めるきっかけはなんだったんですか?
プロジェクトを発案したのは、代表者の1人である東京大学院1年の永井志帆です。
永井は「東大生」なのに頭が良くない、「美女図鑑」参加者なのに可愛くないと、自信のなさを感じていました。
それがあるとき、その自信のなさは「ステレオタイプ」によるものだということに気づいたんです。
―確かに東大生は、「東大生は頭がいい」という世間のステレオタイプに苦しめられることがありますよね。
はい。悪意はなくとも、人は他人から勝手にラベル付けされることで苦しめられることがあると思うんです。
それはミスコンも同じで、出場者には「かわいい」だったり「明るい」だったりと、様々なステレオタイプが付き纏います。
フォトエッセイを作ることで、それらのミスコンに纏わるステレオタイプについて考えるきっかけを与えたいと思ったのが、プロジェクトの動機です。
私自身は、ネット上で文章を書いて投稿しているのですが、文章をたくさんの人に読んでもらう機会が増えてから、自分のキャラクターや文体のイメージを強く意識しすぎて、自分を見失う時期がありました。その時に、「たくさんの人に見られている」という自らの意識自体が、ステレオタイプを形成して、自分自身を苦しめていると感じました。例えば、こういった話を、ミスコンに出場している方達と話し合ったら、どうなるんだろうという興味があります。
私以外のプロジェクトメンバーの二人も、ミスコンと東大美女図鑑の参加者ですが、打ち合わせで話していてすでに面白い発見もありました。さらに、他のミスコン出場者の方達とフォトエッセイを作り上げていきたいと思ったのが、私がこのプロジェクトに参加する動機です。
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―確かにステレオタイプとミスコンは根深く結びついていますよね。でも近年は、いわゆる「ミス」らしくない自分をアピールする出場者も多いように感じます。
はい。ステレオタイプ的なミスコンが問題視されることも増えてきたため、出場者自身も意識的に「ミス」らしくない面を出すようになってきました。しかしそれでもなお、ミスコンで出すことのできる「自分らしさ」と出すことのできない「自分らしさ」があるように思うんです。
例えば、恋人の存在や、ネガティブな感情です。どちらも、その人の大事な一部だと思いますが、ミスコンでは表に出されることは少ないと思います。ミスコンでそれらを表現することの是非は置いておいても、どうしてそれらが表現されにくいのか、ミスコンのステレオタイプと絡めて考えることはできるのではないでしょうか。
―フォトエッセイでは、ミスコン出場者にどのような質問をする予定なんですか?
「ミスコンのイメージと自分に乖離はなかったか」や「自己PR投稿でどのような『自分らしさ』を表現したかったか」など、ミスコンのステレオタイプとどう向き合ってきたかについて聞こうと考えています。
投稿しようとしてできなかった投稿や勇気が必要だった投稿など、ミスコン出場者という立場ゆえに見せることのできなかった自分の側面についても、話していただくつもりです。
―ミスコンに纏わるステレオタイプがミスコンの出場者たちにどのような影響を与えてきたかが、はっきりと分かりそうですね。
また、ミスコン批評やルッキズム批評に対しての率直な意見も聞く予定です。
―確かに、当事者がどのように考えているのかは気になります。
私たちは「ミスコンを内部から定義し直すフォトエッセイ」を作りたいと考えているんです。
見せることのできなかった一面が出場者にあるのなら、それはなぜなのかということを考えるきっかけにしたいです。今後のコンテストについてを考えるためにも、重要なことだと思います。
―出場者の声を聞いてみて初めて分かることもありそうですね。
そもそもステレオタイプをなくすためには、他者に対してある程度興味を持つ必要があると思うんです。”ミスコンの舞台に立っていない”ミスコン出場者について知ることで、それまで彼女たちに対して持っていたステレオタイプについて、初めて自覚的になれる部分が、必ずあるはずです。
またこのフォトエッセイが、ミスコンだけでなく、他者に対するそういうスタンス自体を振り返るきっかけになれば嬉しいです。このプロジェクトでは東大のミスコンを題材にしていますが、根本的なところでは、ミスコンはメインではありません。ミスコンを叩き台にして、少しでも、「ステレオタイプ」という抽象的で掴みにくいものを、具体的に私たちが考えられるレベルまで落とし込んでいくことが最終的な目標です。
私たちが、「ステレオタイプを考えたい」と言っているのを聞いていて、胡散臭いと思う方達もたくさんいると思います。私も、最初は、その文言を聞いて胡散臭いと思いましたが(笑)、具体的な内容や目標を話し込んでいくうちに、ミスコンは文字通り「具体的にステレオタイプを考える」ためのとてもいいきっかけになるんじゃないかと確信していきました。
だから、より多くの人の目に触れてもらえたらと思い、今日は取材していただきました。ありがとうございました。
ミスコンでよく話題に上るステレオタイプの問題ですが、決してミスコンだけの話ではなく、日常の差別や偏見など、私たちの生活に深く関わっています。
「ステレオタイプをなくすためには、他者に対してある程度興味を持つ必要がある」という言葉が印象的でした。
「#見せたい自分で魅せたいプロジェクト」支援のリターンは、『フォトエッセイプラン』2000円、『PDFプラン』1500円、『東大美女図鑑セット』4000円、『オフショットプラン』500円のほかフォトエッセイで実際に質問して欲しいものをきくことができる『質問セットプラン』3000円などがあります。
集まった資金は、撮影スペースレンタル費用、写真印刷費、カメラマンやデザイン費などに使うそうです。
目標金額は50万円で達成ずみですが、もっと多くの人に読んでもらい議論の機会を増やすために、ぜひフォトエッセイを手にとって欲しい、ツイートの拡散や思ったことをツイッター上などでシェアして欲しい、と呼びかけています。
クラウドファンディングの詳細は、 こちらから見ることができ、期限は10月31日まで。