皆さんは街で募金をしたことはありますか?災害の多い日本では、街角の募金箱に優しい気持ちと小銭が投じられる機会は多いといえます。
しかし、そのお金が被災地へ届かないとしたら…まして、誰かの私腹を肥やすために使われていたとしたら…
「当然許されることではない、法律で罰せられるべきだ!」と考えたそこの貴方。では、詐欺に関わった人が、自分はこの義援金が詐欺だとは知らなかった、本当に義援金だと思っていたとしたらどうでしょう?
東京大学法律相談所がお送りする第72回模擬裁判『濡れた紙飛行機』では、そんな義援金詐欺事件を扱います。
私たち東京大学法律相談所は、今年で創立75年を迎える歴史ある団体です。 法学部の学生を中心とした200名以上が所属し、「学問的研鑚」と「地域社会への貢献」の二大理念のもと、週4回の無料法律相談活動などを行なっています。
模擬裁判とは、当相談所の創立以来続く伝統ある活動であり、今年で72回目を迎えます。 社会的に関心の高い問題をテーマとした裁判劇を通じて、多くの方にとって縁遠い存在となりがちな「法律」を、身近に感じていただくことを目標としています。
本年度も五月祭で「みどころ企画」として選ばれていることに加え、例年来場者数が2000名を超える人気イベントです。
この模擬裁判の人気の秘訣は、リアルとエンターテインメントが調和した裁判劇である点にあります。
模擬裁判の脚本と判決文は、裁判実務に忠実なものとなるよう推敲を重ねて作成しています。また、裁判官役が判決文を読み上げるまでは、役者さえもその結果を知りません。結末を知らされないまま進行する舞台で、役者の演技も迫真の熱を帯びます。
被告人は有罪なのか、無罪なのかーー。
緊張の瞬間を、リアリティ溢れる法律エンターテインメントとしてお楽しみいただけます!
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ここで、本年度模擬裁判のテーマである「義援金詐欺」について詳しくご説明します。
義援金詐欺といっても、自分には縁のないものだと思うかもしれません。
しかし、義援金詐欺を含む特殊詐欺は、年間認知件数1万5千件、被害総額は300億円を超え、大きな社会問題となっています。
地震や台風といった災害の多い日本において、近年、信じられないほどの大きな被害を受ける地域が増えてきています。そのような中では、お互いを信頼し、助け合っていくことがより重要になります。そして、義援金は、被災地域を助けたいという相互の思いやりにより、送られるものです。
しかし、世の中には、そのような人々の気持ちを利用してお金を騙し取り、私腹を肥やす非道な詐欺師がいるのも事実です。
信頼は人々が助け合いをする上で不可欠な要素ですが、義援金詐欺はそのような人々の善意につけ込んだ犯罪であり、人の信頼を裏切るものであるといえます。
そのため、義援金詐欺が行われると、誰も信じて義援金の寄付をしてくれないという事態を招く恐れがあります。たった1件の義援金詐欺事件が、他の誠実なあらゆる組織をも疑わしく思わせてしまい、将来的な義援金制度、ひいては人々の思いやりや相互扶助の精神に基づく支援活動そのものの動揺をもたらしかねないのです。
本年度の模擬裁判では、この悪質な犯罪を扱うことで、近年の日本に潜む社会問題に迫っていきます。
「被災地の人々のために、義援金を送りませんか?」
時は2018年、東日本大震災から7年近くが経ち、未だ復興の道半ばである被災地の現状もあまり報道されなくなっていた頃のこと。
今回の被告人である首藤蘭は、幼馴染の鳥井峻とともにNPO法人フィデースを立ち上げていました。被災地の現状に心を痛めたことから、震災被災者を支援すべく、資産家たちから義援金を集めるためでした。
7月某日、ベンチャー企業社長の高萩優介のもとを首藤が訪れます。フィデース設立の趣旨に共感した高萩は、1000万円あまりを義援金としてフィデースに託しました。
しかし、集められた義援金が、被災地に送られることはありませんでした。
義援金を管理していた鳥井は、自分と首藤、そして鳥井のアルバイト先の同僚であった東堂麗子の口座に山分けして振り込んでいたのです。
「自分こそ鳥井に騙されていた」と主張する首藤。義援金の使い道について、そして自分の口座にも大金が振り込まれていたことについて、彼女は本当に何も知らなかったのでしょうか。
2020年9月20日、ついに、首藤・高萩・東堂・鳥井が一堂に会する法廷が開かれます。そこで突然、黙秘を続けていた鳥井が語り始めた内容とは…。
法廷の行方やいかに――。
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本年度の模擬裁判では、義援金詐欺を題材に、証言から事実を認定しようとする過程について知ることができます。
法律といってもなかなか馴染みがなく、劇の内容も難しそうに思われるかもしれません。 しかし、模擬裁判は冒頭で法律解説の時間を設けているため、その場で法律について学ぶことができます。さらに、法律について学べるだけでなく、一つの本格的な舞台としてもお楽しみいただける裁判劇となっており、法律にあまり馴染みのない方にも楽しんでご覧いただける内容です。
また、本年度の模擬裁判では、人を騙して起訴された被告人が法廷で「自分は被害者だ」と言い出すなど、裁判が進んでいくにつれて新たな事実が次々に発覚していきます。 演者すら知らない結末に向かって、リアルタイムで激動する法廷劇をお楽しみください。
頻発する災害や新型コロナウイルスの影響により、当たり前に信じていたものが簡単に崩れかねない不安定な現状においては、人々の相互の助け合いがますます重要になっていると言えるでしょう。
本年度の模擬裁判では、信頼を揺るがす義援金詐欺をテーマに、信じていたものが崩れていく社会で、人は一体何を信じるべきなのか、観客の皆さまと共に考えられる裁判劇をお届けします。
また、本年は初のオンライン開催となり、遠方にお住まいの方など、普段はご来場になれない方にもお気軽にご覧いただけるようになりました。また、3つのカメラを用いた視点の切り替えにより、役者の演技や表情をより近くでご覧いただくことができます。観客の皆様には、例年よりさらにリアリティを伴った緊迫感を味わっていただけると、確信しております。
長い歴史を持つ東京大学法律相談所が、自信を持ってお届けする「模擬裁判」。 法律が身近でなくても、本格的な法律エンターテインメントとしてお楽しみいただけます。
また、法的問題を超えて、「信じたものが崩れていく現代社会で何を信じるべきなのか」 という問題についてもじっくりと考えていただけます。
被告人は有罪なのか、無罪なのかーー?
この現代社会において、私たちは一体何を信じれば良いのかーー?
その答えを見つけるのは、他でもない貴方です。
私たちと一緒に、法律の世界へ足を踏み入れてみませんか?
9月20日の10時15分から12時15分、YouTube Liveにてお待ちしております。
こちらよりご覧いただけます。