
こんにちは。教養学部3年の高島りさこです。
2015年7月末から、全学交換留学でチリの首都サンティアゴにあるチリ・カトリック大学に留学しています。
1学期目と夏休み(南半球なので)を終え、2学期目が始まったばかりのところです。ちなみにサンティアゴは、あの細長いチリの真ん中ちょっと上くらいに位置しています。
チリなんて言われても「???」という感じだと思うので、まずはチリでの生活を少し紹介しようと思います。
チリ・カトリック大学に寮はないため、私は女子だけのボーディングハウス(のような所)に住んでいます。
住人は30人ほどで、その内5人以外はチリ人です。といっても外国人4人の内訳はボリビア人、エクアドル人、エルサルバドル人、メキシコ人、日本人(私)なので、私以外は全員スペイン語ネイティブです。

通学は地下鉄です。
安全に利用出来て、大体5分くらいの間隔で電車が来るのでそこそこ便利です。
サンティアゴは広い街ではない上に、地下鉄図も東京のそれに比べたらスカスカに見えますが、地方出身者や同じ家の外国人にとってサンティアゴは巨大都市で地下鉄図もものすごく複雑に見えるそうです。
地下鉄には物売りや音楽を演奏する人やダンサーが乗り込んできます。まぁまぁ迷惑ですが危害は加えられないので問題ありません。
実害があるのは乗客をネタに歌詞を作る即興ラッパーくらいで、一度「YO!そこのピンクのTシャツのネーチャン!」みたいに標的にされて、頼むからやめてくれと思いました。

チリは南米で一番安全な国だそうです(殺人発生率が一番低い)。
そうは言ってもスリや強盗事件の情報は頻繁に耳にするので「南米で一番安全」なんて言われたところで何の気休めにもなりませんが。
事実1学期目にも同じ家のチリ人2人が携帯電話を盗られたと騒いでいました。
しかし事情を聞くと、片方はお尻のポケットにしまっていたのを地下鉄で盗まれた、もう片方は大学のキャンパス内でおばさん(誰?)に携帯電話を一瞬預けたら盗まれた(なぜ預ける?)という話で、さすがに不用心すぎるだろうと呆れるしかありませんでした。
私はどんな軽犯罪にも遭いたくないので常に気を張っています。この姿勢だけでもチリ人に見習ってもらいたいです。
服装はいつでもダッシュで逃げられるかどうかを基準にしていて、道路や地下鉄では絶対に携帯電話を取り出さないし、道を訊かれても最低限の発話で逃げます(ちゃんと道は教えます)。
実際のところ街が危険な雰囲気かと訊かれたら全くそんなことはないのですが、自分の身の安全を守れるのは自分一人なので用心するに越したことはないはずです、たぶん。
チリのご飯は、残念ながらお世辞にも美味しいとは言えません。
というかはっきり言ってまずいです。
家では朝昼晩すべて出してくれるのですが、基本的に味が濃いです。「なにこれ、塩辛い…」と私が思った料理に、チリ人の住民は塩をさらにかける!しかも味見する前に。
家で観察してみたところ、塩を振りかける時間は平均5秒以上でした。
さらに恐ろしいのは、サラダにまで塩5秒+ケチャップどばどば+マスタードどばどばすることです。
もちろん全員がそうするわけではないですが、平均的に味オンチなのは間違いありません。
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ところで、私は小さい頃メキシコとタイに住んでいました。
というわけで私は所謂帰国子女ですが、友だちと話していてその話題に触れられることが当然ありました。
ところが「メキシコとタイに住んでいたんだよ」と言っても、相手の反応はイマイチ。これまで「前に住んでいたのはトルコだっけ?」「エジプト?」「インド?」などと幾度となく間違われました。
地理的に全く擦ってもいない国と間違えるってちょっとやばいんじゃないの…と内心ちょっと怒っていましたが、フツーの中学生ならあまり耳にしない国を言われても具体的なイメージが湧かないし、それなら仕方がないと不本意ながらも受け入れていました。
しかしそのような反応をする人々は、フランス帰りの人を見れば「すごい!おしゃれ!」、アメリカ帰りの人を見れば「かっこいい!羨ましい!」と返すわけです。じゃあ彼らがフランスやアメリカについて詳しく知っているかと言えば、そういう訳でもなさそうでした。
そのうち、周りの人々は外国を「すごい欧米&よく分からないその他」程度の曖昧な認識で捉えがちなのではないかと思い至りました。
そのような人たちにとってはメキシコだろうがトルコだろうが同じことだったのです。
「その他」の国が自然に興味を持たれることは稀で、例えば私のように個人的で特殊な事情がない限り、中々目を向けられることはないのではないかと私は思います。これといった根拠は出せませんが、とにかく中高生の頃はそんなことを考えていたような記憶があります。
運命的(?)にも「その他」の方に思い入れが出来てしまった私は、後期課程ではラテンアメリカ研究コースに進みました。語学が重要な専攻の性質もあって、進学先を決めたのと留学を決めたのはほぼ同時で、中南米への留学は自然な流れでした。
では数ある中南米の国々からなぜチリを選んだのかというと、これが訊かれると痛いところで、東大の中南米の協定校はチリにしかなかったから、としか答えられません。東大とチリごめんなさい。

日本の文化について尋ねられるのは海外に住む日本人あるあるだと思いますが、チリに着いてから私も日本に関して様々な質問を受けました。
同じ家の住人はほぼ全員が相当の世間知らずで「日本にサッカーってあるの?」「日本にワインってあるの?」といった小学生レベルの質問をされるので、もう何も訊かないでほしいのが本心ですが…。
例えば日本の食習慣について尋ねられ、説明したとします。返ってくる相手の反応で多いのが「ふーん。西洋とは随分違うんだね。」といったものなのですが、私にはこの「西洋」という言い方がひっかかります。
第一に、「西洋」の範囲としてどこを想定しているのかが不明確で(たぶん本人たちもよく分かっていない)、第二に、日本人の私とチリ人のあなたとで話しているのに、なぜ日本と西洋の比較になっているのかが分からない。
さらに、彼らが西洋とその他の地域とでは断絶された全くの別世界であるかのような言い方をするのが、とても気になります。

「日本にワインってあるの?(いやいやないでしょ!)」という質問にしてもそうで、自分たちが日常的にsushiを食べているのなら、日本でワインが飲まれていてもおかしくないだろうという考え方が出て来ないのです。
「私たち西洋人とあなた、異世界の人間なのであなたの奇妙な文化を理解するのは難しいです!無理です!」という態度で接せられている様な気がして、いい気分はしません。
真面目な文章にして書こうとすると上の様になりますが、平たく言ってしまえば「そんな幼稚な態度で来るなら質問しないで、めんどくさいし…うざ…。」なんてムカついていたってことです。そういうわけで、チリに来て最初の数ヶ月はずっとこのようなことを考えていて、モヤモヤ(ムカムカ?)とした気分で過ごしていました。
加えて、留学先がチリでなければならない動機がなかったこと、冬のサンティアゴは陰鬱な雰囲気だったことが追い打ちとなって気分が沈み、ちょっとした精神的放浪状態でぼーっとしていました。

それでも「今考えていること、「その他」の国への無関心さを突きつけられた中高生の頃に考えていたことと似ているかもなぁ〜」とこれまたぼーっと思いを巡らせているうち、「もしかしたら自分の問題関心はこんなところにあるのかもなぁ〜」と曖昧ながらも思うに至りました。
深い理由もなく来てしまった国だけど、少なくとも昔考えていたこと(そして実は慌ただしい大学生活の中で忘れかけていたこと)を思い出すきっかけになったことで、1学期目が終わる頃にはちゃんとぼーっと状態も脱却しました。
決して輝かしい1学期目ではなかったけれど、これも必要な遠回りだったということにして納得しています。
留学体験記と呼べるほど立派なものではありませんが、もし誰かの参考に少しでもなっていれば嬉しいです。読んで下さってありがとうございました。