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超小型衛星が世界を変える!東大航空宇宙学科・中須賀先生に直撃

2020.02.10

はじめまして。UmeeT初投稿ライターのユーキです。

みなさん、宇宙は遥か遠いところにあると思っていませんか?
実は意外とそうでもないんです。
宇宙を身近に感じられる時代はもうそこにある・・・。

そんなわけで、東大で最も宇宙との距離が近い(諸説あり)航空宇宙学科の中須賀研究室に伺いました。

実際にインタビュー

筆者:今回はよろしくお願いします。まずは、現在どういったことをされているか教えてください

中須賀先生:大まかに言うと、多様なミッションを通じて超小型衛星を広めることで、人工衛星を使った宇宙利用に対する敷居を下げることを目指して研究を進めています

現状では、費用や機会の少なさといったの障壁があるために、宇宙開発への意欲が削がれてしまっていますが、超小型衛星を利用すれば、宇宙開発の可能性が大きく広がります

筆者:教授はなぜ研究者を志したのでしょうか?

中須賀先生:少年の時から航空機が大好きだったんです。よく戦闘機の図面を書いて遊んでいました。それと、少年の時に見たアポロ11号の着陸は心に刺さるものがありましたね。それからはずっと一直線に、航空宇宙の道を進んできました。

筆者:小さい頃からの興味関心がそのまま、研究テーマとなったのですね。

中須賀先生:そうです。そういう点では、小さい頃に心に響くものがあったことはとても大きかったです
大学に入ってからも、宇宙論に関する本を読んだりしていました。宇宙について他の学生と語り合うのはとても楽しかったですね。

Next…   超小型人工衛星がどのように世界に影響を与えるかについてみていこう!

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超小型人工衛星が世界へ羽ばたくために

(超小型人工衛星 Nano-JASMINE)

筆者:そもそも航空と宇宙はどのように関わっているのでしょうか?

中須賀先生:ロケットや人工衛星の製作においては、様々な学問が統合し、一つの技術を作り上げています。航空と宇宙の関わりもその一環です。これはシステムインテグレーションというかたちになります。

システムインテグレーションとは航空や宇宙の中における様々な分野を巧みに組み合わせて、1つのミッションをより良いものに作り上げることを意味しています。その際に、システムエンジニアリングが重要になってきます。

ここでワンポイント解説!

システムエンジニアリングとは?

システムはこの世に多く存在します。人間の体や企業の仕組みだって一種のシステムです。
その中で、工学におけるシステムエンジニアリングとは、限られた費用や時間、人材の中で複数の学問の専門知識が最大限に生かされ、かつ理想にできるだけ近いものが作れるように、技術や日程の調整を行うことです。
    (ものすごく大雑把な説明になっています。ご容赦くださいm(__)m)     

筆者:その中で、中須賀先生は超小型衛星の製作に尽力されていると思います。超小型衛星の魅力は何ですか?

中須賀先生:まず、普通の人工衛星よりはるかに安価、かつ開発期間が短い(普通の人工衛星は5年程度なのに対し、超小型衛星は1年程度)ので、多くの人が利用できるということです。

スマホを想像してみてください。昔、高度なパソコンは一部の人しか持っていませんでしたが、現在はスマホが低価格で販売されるようになり、世界中の人の手に渡っていますよね。

中須賀先生:私たちの目的は、高価すぎる、そして開発期間が長すぎるために一般の人の手に届かなかった人工衛星を、超小型衛星というかたちで広め、より多くの人に宇宙への進出する機会を与えることです

宇宙に興味を持ち、宇宙で何かをしてみたいと思う人は多くいるはずです。しかし、それを実現する方法がないと頓挫してしまいます。小型衛星は、そういった人たちに大きく役立ちます。

筆者:実際にどういう人が超小型衛星に目をつけているのでしょうか?

中須賀先生:それは、本当に多くの人です。それだけでなく、多くの国からも注目を浴びています。

人工衛星は、アメリカやロシア、ヨーロッパで開発が進んでいるイメージですよね。

でも、実は貧しい国にこそ、人工衛星を利用する価値があるのです。
例えば、貧しい国は、インフラが整っていないこともあり、なかなか国全体を把握できない。でも、人工衛星を使えば宇宙から国を把握することができます。

普通の大型衛星は莫大な費用がかかるため、使うことができないかもしれません。
しかし超小型衛星は、安価で利用できます。

実際に、ルワンダやベトナムなどの国が参加するプロジェクトで、つい昨日(11月20日)ルワンダの小型衛星が打ち上がったのですよ。
(ベトナムの衛星は2019年1月18日に打ち上がりました。)

筆者:昨日ですか!?

中須賀先生:そう、それくらい超小型衛星が世界に広まってきているんです。

筆者:でも、普段宇宙にあまり関わりがない人は、どうしても大きな人工衛星に目がいってしまうと思います。

中須賀先生:たしかに、日本ではまだ大きな人工衛星に注目する傾向があるかもしれないですね。政府もまだ、大きな人工衛星を重要視している感じがします。また当然のことではありますが、超小型衛星は一つ一つの機能という点では、大きな人工衛星に劣ります。

でも、超小型人工衛星ははるかに安価であり、機能的にも十分宇宙で運用できるだけの能力を持ちます。小型人工衛星を利用することにより、宇宙を利用する機会が格段に増えるのです。

(超小型衛星 TRICOM-1R  2018年に打ち上げ)

中須賀先生:超小型衛星への興味関心は着実に高まってきていると感じます。

例えば、普段宇宙と関わることのない建設会社も、月や火星での開発を見据えて、超小型衛星の利用を使った宇宙開発に興味を示しています

筆者:すごい、めっちゃロマンありますね・・・。

中須賀先生:また、安価な超小型衛星を使えば、多くの取り組みを宇宙で行うことが可能になります。

油田の発見、漁獲量の予想、植林のための計画、宇宙天気予報、将来的にはゲリラ豪雨の観測など、本当に多岐に渡って小型衛星を利用することができるんです。

筆者:超小型衛星を使えば、宇宙から社会問題を解決できるんですね。

中須賀先生:宇宙から地球の社会問題を観測する、こういう大きな視点を持つことができるのも、小型衛星の魅力の一つです。

超小型衛星を使った社会問題の解決が一般的になれば、より多くの人が社会問題の解決方法について考えてくれるのではないかと思います。そしたら、より社会問題を解決しやすくなりますよね。

筆者:超小型衛星を取り巻く環境作りも、大切になってくるのではないでしょうか?

中須賀先生:環境作りという点では、大きく3つの課題があります。
1つ目は、人材育成です。途上国で超小型衛星を作ろうとしたときに、最初は私たちが教えることができるのですが、その後さらに飛躍した研究を行うためには、現地の人たちだけの力で人工衛星を作れるようになる必要があります

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中須賀先生:2つ目は、小型衛星を宇宙に送り出すためのロケットの開発です。
小型人工衛星をより多く打ち上げたいとなれば、当然ロケットが必要になってきますよね。

ですが、そのロケットがとても高い。この点については予測も難しいですが、最近は多くのベンチャー企業が乗り出しているので、いずれ価格競争が起こり、ロケットも手軽に利用できる時代がくるのではないかと思っています。

3つ目は、周波数の問題です。通信に必要とする周波数の申請に少なくとも2年かかるという時間的制約と、周波数の割り当てが難しくなっているという問題があります。ですが周波数の数については、光で代用することで解決できる見込みがあります。

最後に学生へ伝えたいこと

筆者:中須賀先生は、小さい頃からの興味がそのまま研究内容に繋がったということなのですが、それについて学生に伝えたいことはありますか?

中須賀先生:何か「自分の心にビビっとくること」を若い時に体験することが重要だと思いますよ。そういう体験がないと、人生面白くないと思うんです。

筆者:でも、ビビっとくるものを見つけるのって、結構大変だったりするんですよね。

中須賀先生:そこは常にアンテナを張って、自分から能動的に行動していくしかないと思います。
受け身では、いつまでたっても何かしらの意図が含まれている情報しか得られません。

能動的に行動することによって、真にニュートラルな情報が得られると思います。

若いときの1、2年はそれほど重く考えず、どんどん行動し、合わなくなったら次に切り替えるという精神で、何事にも果敢に取り組んでいくべきだと思います。

また、東大には世界を知るためのプログラムが多くあるので、そういう機会を活かすというのも良いと思います。       

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最後に

小型衛星を利用すれば、宇宙開発において最大の壁となる、費用の問題を解決することができる。

そうすれば、宇宙開発の幅が大きく広がり、社会問題の解決や学問的な進歩が生まれる・・・。

これってすごいことって思いませんか?
まさに、最近のインターネット技術の発展に似ています。

インターネットが現代社会にもたらした影響を考えると、小型衛星が未来の社会にもたらす影響は計り知れません。

だって宇宙ですよ!?(全然、理由になってないですけど・・・。)

今回のインタビューを通じて、未来の社会を垣間見れた気がします。

最後に、インタビューに応じていただいた中須賀先生、本当にありがとうございました!

この記事を書いた人
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むっさん
教養学部1年 何でも軽いノリで取り組んでいきたい
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