「ひらめきは、汗と涙でできている。」東大院卒の広告クリエイターに聞くアイデア論。




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こんにちは、苔です。

 

東大生はクリエイターに向いていないのでは?

 

広告クリエイターといえば、パーティ三昧な毎日を送りながら、天性の才能とひらめきだけでイケてる仕事している… というイメージが私には勝手にありました(偏見)。

そんなクリエイターのイメージは、慎ましくもコツコツ勉学に熱く励む東大生の姿と一見かけ離れているように思います。
ましてや客観的な点数のないセンスの世界に、東大生が足を踏み入れるのは自殺行為なのではないかと(偏見)。

 

しかし、ある東大院卒の広告クリエイターさんにインタビューしたところ、私の固定観念は、ぶっこわされたのです。

 その一部始終をご覧ください。

  1. お名前:小竹海広(おだけみひろ)さん(Twitter:@0dake
  2. 所属:東京大学工学系研究科を卒業後、外資系広告代理店でコピーライターとして勤務。
  3. 好きなこと:ツイッター。水樹奈々さんのLIVEに参戦すること。 

 

──本日はどうぞよろしくお願いします!

 

よろしくお願いします。

 

商品が売れるように、万策をつくす仕事。

 

──まずはじめに、広告代理店が何をしている会社なのか教えていただけますか。

 

クライアントの企業の商品が売れるように万策をつくす仕事です。

総合広告代理店は、基本的になんでも屋です。

 

──CMを作るだけじゃないんですね。

 

もちろんCMも作りますけど、SNSやイベントで話題作りをしたり、商品のネーミングやパッケージデザインをしたりしますね。業界では360度でクライアントの課題解決を行うみたいな感じで言うこともあります。

商品や企業の課題を解決をして、イメージをより良いものにしたり、ときには社会課題そのものを解決したりします。受験勉強と実は似ていて、問題があるからには”正解”がある仕事だと僕は思っています。 

 

──その中でコピーライターという業種はどのような仕事をしていますか?

 

代理店のコピーライターは、キャッチコピー、ステートメント、SNSのハッシュタグ、歌詞などの言葉の開発、 CM開発、イベントアイデア、マーケティング戦略の開発などを行います。
過去に僕が関わった仕事だと、例えばこんな事例があります。

https://twitter.com/mcdonaldsjapan/status/980565475745783810

いちばん長いポテトが、いちばん偉いわけではありません。/McDonald’s

 

#助手席孝行 親の運転を見守る合言葉「#みぎあしは」/NISSAN

 

岡崎体育÷JINRO 『今宵よい酔い』Music Video /JINRO

 

──マックフライポテトの中の人、小竹さんだった。

 

クリエイターに必要なのは「リアルタイムな教養」 

 

──率直な印象として、広告業界って前時代的な認識があるように思えて、そのせいで度々広告がSNS上で炎上したりするのも目にします。

現在の広告業界について何か思うところはありますか?

 

まず炎上案件の99%が、リアルタイムな教養が欠けているせいだと思います。

フェミニズムが積み上げてきたアファーマティブアクションを無視して「女の時代、なんていらない?」と謳ったり、マイルド貧困層が増えているなかで「毎月50万円もらって毎日生き甲斐のない生活を送るか、30万円だけど仕事に行くのが楽しみで仕方がないという生活と、どっちがいいか」と言ったり、抑圧を受けている方の神経を逆撫でする広告ですよね。

 

そういう広告案に対して、GOを出せちゃう感覚の制作責任者が未だにいることに驚きます。

いま世界中で抑圧的な価値観を正そうという流れは加速しています。そんな状況で社会動向に無頓着な広告を制作するというのは、目をつぶって車を運転するような自殺行為に近いと思います。

 

──その人たちは危機感とか抱かないのでしょうか?

 

こんなことを言う人に出会ったことがあります。「Twitterなんてやってる人は一部の人だからさ。これからは高齢化社会じゃん」と。

あ、全く危機感がないんだなと。確かにTwitterは日本では4000万人程度のユニークユーザーと言われており未だにマイノリティと言えるかもしれませんが、ワイドショーの話題なんて殆どSNSの後追いですよね。つまりSNSが情報流通の最上流なわけです。それを理解せず自分の不勉強を正当化するロジックを立てて、耳を塞いでいる状況なのかなと思います。

 

あるいは、ある企業が時代に逆行した広告を作っても、その企業が消費者向けの商品を作らない会社だったり、官公庁系だったりする場合、炎上したとしても殆ど実害が無いんですよね。消費者との直接の接点がないから。新卒採用がむずかしくなるぐらい。

この前、育休をとった社員を地方に飛ばして実質クビにした企業が”法律的には問題ない”や”コミュニケーションの齟齬”という釈明をしたという出来事がありました。
あるいは駅名を人気投票させておいて、130位の案を採用しちゃうみたいな事がまかり通ることもありました。そういう殿様商売的な姿勢に対して、SNSの影響力だけでは限界があるとも感じています。

 

──それじゃあ、現時点では我々に何もできることは何もないということですか? 

 

ぶっちゃけ、ある程度は仕方ないと思っています。パラダイムシフトの概念を提唱したトマス・クーンは「新しい言説が定着するようになるまでには、古い人が死ぬまで待つしかない」という過激な発言を残しています。

でも最低限、私たち世代は古い言説が再生産されないように努めないといけない

例えば、某Youtuberがパワハラ・セクハラ告発を装ってMVを発表して大炎上しましたが、その際に彼の炎上商法の巧妙さを賞賛したり擁護したりする若者もいたんですね。ひとの良心を踏みにじるようなキャンペーンが正しいわけがない。
そういう時に、しっかり論点をずらさず異議を唱えるような発想が重要なのではと思います。

 

話が逸れましたが、多くの人の目に触れる広告をつくるクリエイターは、過去の価値観や独善的なセンスよりも前に、まず社会動向をしっかり注視して勉強する必要があるということです。

 私が東大生は広告クリエイターに向いていると考える理由はそこにあります。東大生は勉強が普通よりは得意なはずですから。

 

──なるほど。広告を作るときはまず社会のことを勉強しておくのが重要だということですね。

 

はい。広告を作っている時に、「この表現をオンエアしたら賛成する人と批判する人がいるだろうな」、ということを事前にきちんと想定できるリアルタイムな教養を身につけることが必須だと思います。

 

──でもたとえ教養を身につけていたとしても、人によって社会の見方は違うので、批判されたり炎上したりする可能性は常にあり得ますよね。
そういう時はどうしますか?「批判される可能性が少しでもあるから公開するのをやめとこう」となってしまうんでしょうか?

 

そのときは炎上するかもしれないけど、その広告の社会的意義や企業の存在意義を考えて「言うしかない」と思ったら言うしかない主義や信条のような領域の話だと思います。信じて言い続ければ仲間は増える。 
その意味で、広告は政治的ですね。誰を味方にするか、誰を敵にするかということに対して自覚的にならないといけないです。

例えばアメリカのジョージア州の妊娠中絶禁止法の施行に反対のNetflixが、ジョージア州での撮影を中止することを検討すると明言したみたいに。

 

ブラック広告業界は、ホワイト化できるのか?

 

──広告業界といえばブラックな働き方という印象もあるのですが、それについてはどう思いますか?

 

撮影や編集が入る時は、どうしても長時間労働になりがちですが、うちの会社ではホワイト化に向けた動きもあります。

うちの会社では、新入社員は月20時間までしか残業できない・受注する案件を会社として絞る・電話会議を増やす・第二金曜は休み、などが行われています。

 

──具体的にどのような状態を「ホワイト」だと考えていますか?

特にクリエイティブの仕事って、好きで仕事をする人も多い印象があります。

そういう人は仕事時間だけ見ればブラックと言えるかもしれないけど、好きでやっているのならブラックではないですよね。そういう意味で、残業時間などの数字でホワイト具合を定義するのも少し難しい気がします。

 

2種類のひとがいますよね。ワークライフバランスな人。ワークアンドワークな人。

後者の人は、副業や個人活動を増やせばいいと思っています。法律的に業務ではなくても、個人のネットワークを増やしたり、コンテンツを開発して知的財産ホルダーになってみたり。

いずれにせよ、「1つの会社」からの仕事量を減らしていく方向に向かっていくんじゃないかなと。

 

──でも、そのような改革って小竹さんの企業が外資系で比較的クリーンな環境だから可能になりつつあるのであって、一般の日系の伝統的な広告代理店で実現していくのはかなり難しいんじゃないでしょうか…。

 

痛いところを突かれた…(笑)

めちゃくちゃ痛いところを突かれている

一概には言えないけど、そうだよね。未だに長時間労働の話はニュースでも耳にするよね。ただ、日系の大企業も頑張ってるところは頑張ってると思うよ。

 

──頑張るって言っても、一体どうやったら変えていけるのでしょうか…?

 

 やっぱり「連帯していく」しかないんじゃないかな。それこそ、君たちのような若者世代がSNSやメディアで声をあげて少しずつ変えていくのも地味に効いてくると思うよ。

広告代理店で働いていた高橋まつりさんが過労死してしまった事件は本当に心が痛んだけど、SNSにログが残っていたことが結果としてメディアでの議論を加速させたことにつながっていた。#Metooだってハッシュタグを使った連帯で、フェミニズムを一気に世の中に浸透させたよね。

 

──そうやって少しずつ変えていくとして、それでも古い体制が変わるのはとても時間がかかりますよね。その間はひたすら我慢するしかないんでしょうか…?

 

また痛いところを付くな…(笑)

めちゃくちゃ痛いところを突かれている(2回目)

 

正直、今はタネを蒔くしかないと思う。ちゃんと仲間から信頼を勝ち取っておく、SNSを頑張ってインフルエンサーになってみる、影響力のある色んな人に会っておく、あるいは自分の専門領域を確立して発言力を磨いておく。そして来るべき時に備える。

平成は誰もが働き方への問題意識を持っていたけど、どうにもならなかった時代だった気がする。ただ同時に、SNSを手にいれて人と簡単に連帯できるようになった時代でもある。SNSは俺ら世代に与えられた必殺技だよね。

 

あと、違う業界の友達と話してみるのもいいかもしれない。他の業界も他の業界で良いところもあればダメなところもある。「今の自分の環境」に慣れないように、冷静に客観視し続けることが大事だと思います。

 

──未来を見据えながら「今何をすべきか」を考え、周囲と話しながら「自分の環境はどうであるのか」を考えるべきということですね。

 

そういうことです。「今の自分」を広い視野で捉えることが必要だと思います。

 

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苔

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