豪華すぎる「愛がなんだ」上映会主催の女子大生に、「愛ってなんだ」と聞いてみた

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皆さんはもう、映画「愛がなんだ」を観たでしょうか。

好きなのに、付き合えていない。そんな切ない関係性をリアルに描き出したこの映画は、多くの人々の話題となりました。

【あらすじ】

28歳のOL山田テルコ(テルちゃん)。マモル(マモちゃん)に一目ぼれした5カ月前から、テルコの生活はマモル中心となっていく。しかし、そんなテルコの熱い思いとは裏腹に、マモルはテルコにまったく恋愛感情がなく、マモルにとってテルコは単なる都合のいい女でしかなかった・・・

そんな「愛がなんだ」の上映会が、今度東京大学で公開される…んですが!あああ宣伝記事だと思ってページ閉じないで!!!

 

登壇者の顔ぶれが、あまりに豪華すぎるんです。

 

映画「愛がなんだ」の監督、今泉力哉氏。

映画の原作となった小説の作者、角田光代氏。

東京大学・先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎准教授。

全員、来ます。 びっくりするでしょう?

 

しかもこれ、たった1人の女子大生の思いつきで開かれた上映会なんです。

・・・ウソだろって思うでしょう?

はい。私もそう思います。

ウソだろって思って、本人に聞いてみました。

  1. お名前:田川 菜月 さん
  2. 所属: 東京大学理学系研究科生物科学専攻修士1年
  3. 好きなこと:恋愛について考えること

 

・・・本当にこんな豪華な上映会をするんですか?

田川:します。今泉監督も、原作者の角田さんも、熊谷先生も、皆さん来てくださいます。

―――でも元々は田川さんがひとりで企画した上映会なんですよね?学生ひとりで企画するにはあまりに豪華すぎて、取材しているわたしのほうが引いてるんですが。

田川:まさかこんなに豪華になるとは、わたしも思っていませんでした…(笑)

平成も終わるころに「愛がなんだ」の上映を観て、もともと持っていた恋愛のもやもやとした悩みが、この映画にぴたりと当てはまる感覚がして。

「愛がなんだ」という映画を大きなスクリーンで色んな人と一緒に観て、そしてなにかを一緒に考えたり、感じたり、ができる場が欲しいなって思ったんです。

・・・そこで思い切って、今泉監督に連絡を取ってみました。公式SNSに連絡先が載っていたので、まずはそこのアドレスに、と。

そしたらなんとその日のうちに、本人から返事をもらえたんです。

―――思い切りの良さにも展開の速さにも、すでに頭が追い付いてません。

田川:自分でもびっくりです(笑)そこで今回の上映会についても快諾してくださいました。

取り次いでいただいた配給会社の方も好意的で。

その配給会社の方に「お呼びしてみたら」とアドバイスを頂き、原作者の角田さんにも思い切ってご連絡したら、まさかのOKを頂くことができたんです!

―――淡々と語ってますけど、そのノリで一流の芸術家である2人を自分のイベントに呼べてしまえるなんて・・・ちょっとよく分からない・・・

―――その上東大教授まで登壇されるんですよね?熊谷教授はどのような経緯でお呼びしたんですか?

田川:熊谷先生は先端研で、当事者研究を専門にされている方です。これまで支援者が決めがちだった障害者のありかたや病気を支援していく方針を、障害や病気などと向き合っている本人自身が自分の困りごとを言葉にしつつ向き合っていく活動をしています。

対象こそ違えど、自分自身の割り切れない感情を言葉にする場にマッチするだろうと思い、登壇をお願いしました。

「愛の当事者研究」!みたいな。(笑)

お三方ともご多忙で予定調整が難航しましたが、熊谷先生の全面的なご協力もあり、ようやく9月5日に今回のイベントが東大で決行できることになりました。

―――びっくりするほどの行動力を見せて今回の上映会が開催されるわけですが、そもそものきっかけは「愛がなんだ」という一本の映画を観たことですよね。

田川:そうですね。

大学に入って人間関係が広がり、年を重ねていく中で、「彼氏・彼女」や「友達」という名前で割り切れない関係性が増えてくる。その一つひとつの関係性がどれも特別でかけがえのないはずなのに、恋人という関係性にばかりプライオリティーを置いてしまう自分がいたんです。

それは「彼氏・彼女になることこそ恋愛のゴール」とでもいうような、恋愛の規範に囚われているからではないか。そんなことがずっと気にかかっていたんです。

そんな時、映画「愛がなんだ」がすぱっと割り切れない恋愛関係をテーマにしていると聞いて、今の自分に響きそうだと感じて観に行きました。

そこで出てきた登場人物同士の恋愛、というか人間関係が、それこそ「彼氏・彼女」と一括りにはできないもので。

 

ーーー登場人物の中で、誰に一番共感しましたか?

田川:やっぱり主人公のテルちゃんかな。テルちゃんは「好きな人と同化したい」と思う女の子のなんですけど、私も好きな人ができるとその人が全世界!ってなってしまうので、そういう視野の狭さとか分かるな~って。(笑)

テルコは大好きなマモちゃんと一緒にいるために大きな選択をするんだけど、その選択肢を選んでしまうテルちゃんの気持ちもよく分かる。

そういう選択しちゃうよね、でも辛くない!?って。

 「この映画に出てくる登場人物たちが、豊かだと思った」

田川:でもテルちゃんはお世辞にも恵まれたとはいえない状態なのに、あんなによく食べて、めっちゃ明るくて。

ーーーそれでマモちゃんを好きでい続けるんだからあっぱれですよね。

田川:そこが爽やかに描かれているのも、すごく好きだったし、 あといいなと思ったのが、この映画に悪い人が出てこないところ。

たとえばマモちゃんって「クズ男」と表現されがちだけど、そうは言い切れない、とわたしは思います。

テルちゃんは彼にとって、居心地のよい、大事な存在のはずで。彼女に対してなにか感じるものがあるからこそ、マモちゃんは彼女を誘ってしまうし、切れない関係でいると思う。もちろん彼のずるい面が出ている部分もあるのだろうけれど。

ーーーたしかにそうですけど、葉子が「あんな男やめなよ」という注意も、的を射ているように思えるんですが。

田川:普通はそう言うと思います(笑)

2人の関係性は、周りが「そんな男と付き合うのやめなよ」なんていわゆる正しさを振りかざせば、一刀両断されるかもしれない。「彼氏・彼女」という規範にはめようとすれば、マモちゃんは彼女を大事にしていないんだろうし、きっと「クズ男」という言葉で片づけられちゃう。

でもそこで「そうだよね」って簡単に関係を切れないのが人間だな、と思うんです。

たとえそれを幸せとは言えなかったとしても、わたしはこの映画に出てくる登場人物たちが、豊かだと思いました。「彼氏・彼女」だけじゃない関係性の中で生きていこうとしていて、「愛がなんだってんだよ」って規範や理論をけとばしそうとする、強さを持っていて。

・・・でももちろん、彼らも好きな人の恋人になれないことに思い悩んでもいて。そこでもがいているのも、人間らしいんだけれど。

―――その人間らしさがあるからこそ、映画の登場人物が抱える痛みが、リアルに迫ってくるようにも思えます。

田川:恋愛って他でもない「その人」とどうにかなりたいし、だから当の2人が導き出した結論じゃないと、全部不正解というか、意味をなさない。

だから映画に出てくる登場人物みたいに、もがいちゃうし苦しんでしまう。

それにきっと苦しさって、好きな人と恋人になれたら綺麗に消え去るものにも思えないんですよ。付き合った後だって、また別の「満たされない思い」に悩むこともあるじゃないですか。

でも「なんかかっこいい」「一緒にいて居心地がいい」なんて思える相手と、肩書をとっぱらってありのままで一緒にいられるのってすごく素敵なことだから恋愛をやめようとは思えない。・・・そうやって、わたしは真剣に恋愛に悩んでたわけです。

―――難しいですよね。

田川:うん。難しい。

「誰だって気持ちを言葉にする機会を欲しがってるはず」

田川:でもそういう恋愛の悩みって、いざ人に言おうと思っても、おちゃらけて話すしかなかった。

―――おちゃらけて?

田川:恋愛に限った話ではないとは思うんですけど、日頃交わす会話には当意即妙さだったり、分かりやすいユーモアが求められがちですよね。特に恋愛になると分かりやすい下世話な話ばかり盛り上がりだちだな~って。

これまでは、普段友達の真剣な悩みを受け止める余裕なんてなくて当たり前だし、自分としてもシラフで真面目に恋愛を語るのはなんか恥ずかしくなって、真剣に話すことを放棄して、笑い話にしながら恋愛の話を聞いてもらってた。

ーーー真剣に話したいのに話せない・・・たしかにありますよね。

田川:でもそこからは零れ落ちてしまっている、「愛がなんだ」に出てくるような、割り切れなかったり、もやもやしていたりと、自分がうまく言葉にすらできないような悩みこそ、言葉にできる場があればいいのに、ってずっと思っていたんです。

今はいくらでも個人で発信できる時代だけど、結局そこで自分から気持ちを発信したり、共感してもらうことができるのって、強い言葉を持っていたりだとか、自分の思いを言葉に昇華できる技術を持っている人な気がしていて。

でも誰だって自分の気持ちを言葉にする機会を欲しがっているはずだし、そこで他人と分かち合えることで救われることだって、きっとある。そう思って、今回の上映会を企画したんです。

「この映画にはなにかを語りたくなる力があると思う」

田川:「愛がなんだ」って、なにかを語りたくなる力がある映画だと思います。現にSNSを見ると、たくさんの人が「愛がなんだ」を観た感想を言葉にして発信しようとしてるんです。

そうやって自分の言葉で、映画を観て感じたことを、たどたどしくでもいいから考えられるような場にしたいし、そうして編み出した言葉の中にこそなにか大事なものがある気がしています。

今回お呼びするのは、そもそも「愛がなんだ」のテーマを小説にして表現しようと思った角田さん、それを映画にして表現しようとした今泉監督、そして当事者研究に携わる熊谷先生の3人。もやもやした思いにまなざしを向けて、掬いとってくれる方々だと思っています。

――そうするとこの上映会は、映画からちょっとでも救いを求めている人に向けてのイベント、ということでしょうか。

田川:うーん・・・救いって言葉が正しいかは分からないです。

そもそも恋愛にずっと悩んでいた、というわけでなくとも、「愛がなんだ」という映画に興味を持って参加してくれる方ならだれでも大歓迎です。あの映画になにか惹かれるところがあるのなら、実は自分でも気づいていなかった、もやもやしたしこりがあるのかもしれないし。

それに今回のイベントって、正解を与える場ではないと思うんです。

正解がぽんと与えられるほど世界は単純化できないから、苦しみは続くかもしれない。でも他の人の言葉を聞くことで、同じ苦しみ続けるでも、苦しみやすくなるっていうか。

なにかしらの形で、悩みを言葉にできるってことは大きなステップだと思うので、そういうことができたらいいなって思うかな。

ただイベントに参加するからといって、自分のことを語らないといけないわけでもないです。「その場にいて、他の人の言葉を聞いていたい」でもいいし、そのスタンスは色々でいいと思う。

言葉って洋服を選ぶ時みたいに、「これいいなあ」と思ったものを自由に身にまとえばいいと思うんですよ。上映会で誰かが使っていた表現の中から、映画を観て感じ取った何かを上手に表現する言葉が見つけられたら、それだけでいいと思います。

もちろん話したい人には、プライバシーが守られた安全な空間の中で、安心して話せるような場を作ることは大事にしたいですね。

また、このイベントをきっかけに素朴に恋愛を語ることのできる場をもっと増やせて行けたらな、とも考えています。

―――最後にひとこと、記事を読んでいる皆さんに向けてお願いします。

田川:恋愛で悩んだときのどうしようもない自分をさらけ出すのって、すんごく恥ずかし~、ってなりますよね。

東大の友達には「よくそんなに恋愛のこと考えられるよね」と言われることも多々ありますが、そもそも理性がきかなくなるような恋愛に身を置けない、ということが悩みになっている人も少なくない気がしています。

恋愛の悩みといっても奥深くて、行き着く先は恋愛以外の人間関係や自分の生き方になることもあるなあと自分としては思っていて。

 

今回のイベントでその悩みへの正解が得られるわけではないけれど、ちゃんとじっくり考えられる場にしたいと思っています。

答えをもらえるというよりは、登壇する3人の言葉も借りながら、とことん一緒に悩んで、丁寧に言葉を編んでいけるように。

興味があれば、ぜひいらしてください!

今回田川さんが企画した上映会イベントへの参加は抽選制とのこと。

興味のある方は、こちらから8月26日(月)までに下のフォームから予約をお願いします!

https://docs.google.com/forms/u/3/d/e/1FAIpQLSeCs97XDlxnWOd5bQulxGtAHT1qow7ocBkOoQA5k55yDwOtxg/viewform?usp=sf_link

※イベントについての情報はこちらから↓

https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/news/events/page_01090.html

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