「かるたで負けると人として負けた気がする」東日本王者になった東大院生・坪井寛行さんが語る競技かるたの魅力とは

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子音で音を聞き分ける

──かるたってやることが本当に多岐に渡るんですね。そもそも札を取るときのスピードが速すぎて何が起きてるかわからないんですが、どうなってるんですか?

 

そうですね。札を取るときの動きはざっくりいうと大きく3つに分けられます。

音の認識力とそれへの反応力、反応してから札に到達するまでの手の動き

まず音の認識で結構差が出ます。決まり字をいかに早く聞き分けるか。

例えば僕なんかは子音で聞き分けます

 

──子音で聞き分ける……?

普段の会話ですら聞き取れない時もあるのに…。

例えばサ行だったら、s音が聞こえた時点で「さしすせそ」のどれなのかを判断するっていうことです。

あとは母音でも違いがあって。

例えば、「うら」と「うか」の札だと、僕にとっては「うか」の「う」の方が派手で、「うら」の方が地味パンチの強さというか僕の中での感じ方の違いがありますね。

みんなそれぞれ違う感覚を持ってると思います。

だから、音とかも考えながら作戦をたてるんです。自分が反応しやすいかとか相手から取りにくいかとか。そこから戦術が広がっていく感じですね。

 

──ものすごく繊細な聞き分けが一瞬で行われているんですね。

 

そうですね。このとき、いかに暗記できているかも大事です。どの札が残っていて、どれを聞き分けなきゃいけないかを把握しておく。

かるたって札がどんどん変わっていくので、基本的には短期記憶なんです。長期記憶だとむしろ残りすぎちゃう。

早く覚えて、すぐ忘れてをずっと繰り返さないといけないんですね。

まず、何がどこにあるかは、15分の暗記時間のうち僕の場合1〜2分で覚えます。

 

──1〜2分!?

 

映像記憶に近い感じですね。でもそれだと早くは取れないんで。そっからこの音に対してどう動いていくかっていうのも暗記する。

 

──動きも暗記するんですね。

 

そうですね。こういう狙いをつけて動こうとか。

あと、
試合中は暗記を全部振り返ってる時間はないというのもポイントで。自分の暗記が弱そうなところを察知してそこの暗記を試合中に回してくのが大事です。

そこに力の差が出ますね。

自分の暗記の弱いところにいかに気づくかっていうのが結構難しい。

一手一手が戦略


──音を聞き分けた後の動きについてはどうですか?

 

音に反応するときにもいくつか段階があるような気がします。感覚ですけど。

あとは札の取り方ですね。

大きく2種類あって、札を読まれてから決まり字がわかるまで近づいていくか、それとも待つか。

すぐに手を出すと自分も触っちゃうかもしれないけど、相手もつれる。そういう微妙な駆け引きを戦略的にやることもあります。

──一手一手が戦略なんですね。

 

そうですね、そこに個性が出ます

もちろん事前研究もするし、初めて対戦する相手でも、序盤の5枚くらい札を読まれたところで、相手がどういうタイプかを察知して、作戦変更をしていく

 

──試合のなかでも、相手を分析しながらやっていく感じなんですね。

 

そうです。うまくいくかどうかをひたすら試して試して。それを回していく感じですね。

あとはこの三つの連動ですね。音を聴きながら反応しながら身体動かして取るっていうこの連動がすごく大事です。

初心者と上級者では三つの段階のそれぞれに差があります。ほんの一瞬の積み重ねが大きいんです。0.1秒遅いだけでも、圧倒的な差で取られてることになるんです

 

──一瞬の世界にそれだけやることが詰め込まれてるんですね。

 

そうですね。一瞬一瞬でかなりの判断が求められる。

坪井さんとかるた

──かるたは中1から始めたとのことですが、ご出身はかるたの強豪校ですよね。もともとかるたをやろうと思って進学されたんですか?

 

いや、全然笑

小学校の頃はスポーツが好きで、サッカーとか野球とかやってて。中学からも運動部入ろうと思ってました。

でも、たまたまかるたの勧誘を受けたのでとりあえず顔だしてみるかって見に行ったら、これスポーツじゃんって。

あとは、もともと頭を使うの好きだったんで。頭使うゲームでスポーツでって両方を満たしてたので入部を決めました。

始めたらのめり込みましたね。やればやるほど楽しい。中高は夢中で部活ばっかやってましたね。

 

──中高と大学でかるたの関わり方に違いはありましたか?

 

大学に入って自分の目標に自己責任で向かっていくっていう意識が強くなりました

僕が入ったときは大学の団体があまり強くなくて。周りも強い人ばっかりだった高校時代とは違って、団体の力にしがみつくっていうのが自然とできなくなっていて。

結果を出すには、まず自分が強くなって、仲間を引っ張ってチームを強くするっていう道しかなかった。そこで意識が大きく変わりましたね。

 

──それで個人戦に集中するようになったんですね。

ただ、予選が終わってから個人戦にはあまり出られていませんね。かるたはしばらくお休みされてたんですか?

 

いや、実は団体戦に力を入れてました。名人戦が終わって、個人戦に対する気持ちが一瞬切れて。そうしたら団体戦で優勝してなかったなって気づいて。

結果、大学3年から4年の2年間で、団体戦の三大大会を一通り優勝しました。

同じチームで全部優勝できたのは東大史上でも初めてじゃないですかね。

まさに有言実行ですね。

特に東大かるた会が一番の目標にしている大会で優勝できたときが一番嬉しかったですね。東大でも8年ぶりとかで。

そのぶん個人戦はほとんど出てなかったんですけど、2月ぐらいから復帰しようかなと思ってます。

団体戦での目標は達成したし、また名人を目指そうかなと。

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