突然ですが、
団体運営ってめちゃくちゃ難しくないですか?
毎年代表が代わって、
それぞれ目的が違うメンバーをまとめなければならない。
難易度「鬼」です。
経験したことのあるみなさんもまた、さぞ苦しめられたことでしょう。
今回、そんな試練を経験した7人の侍ならぬ、7人の代表に集まっていただきました。
「サークルの初代代表から現役7代目代表までが勢ぞろいして団体について語り合う座談会」が始まります。
会社を含めたあらゆる組織に共通する問いの答えを明かしていきましょう!
11月都内某所
今回集まってもらったのは、お笑いサークル笑論法の初代から現役までの代表7人。
笑論法はコントや漫才でライブ活動をしている、東大生を中心とするサークルです。
2012年に結成され、今年で創立7年目。その歴代代表は何を思って団体を動かしてきたのでしょうか。
左から順に
初代 杉山大樹さん 2代目 山田智希さん 3代目 両國龍英さん 4代目 武政雄大さん 5代目 中塚隆太さん 6代目 西田青波さん 7代目 内田充紀さん
まずは、どうやってサークルが作られたのか、どんな工夫があったのか、その過程を聞かせてください。
俺は落研(落語研究会)に対抗して、「もっと面白いことをやりたい」と、笑論法を立ち上げたんだよね。
そのぶん勝負意識が強くて、面白い漫才をやるということを突き詰めていたよ。
そんな経緯があったんですね・・・。
意識してやったのは、しっかりした代替わりのシステムを作ること。
大学のサークルは特殊だからね。一年ごとに代表が交代していく団体なんて他にないよ。脂がのる間も無く変わらなきゃいけないからね。団体として続けていくためにもその枠組みを作ることが最優先だと思った。
だから2年生で代表を交代して、3年生で引退の流れを作りました。駒場をメインに活動する以上、それより長くいても老害だしね。(東京大学の学生は基本的に1、2年生が駒場キャンパス、それ以上は本郷キャンパスで学びます。)
初代が、団体の枠組みを作ってくれたのは、本当に助かった。そこが初代の唯一評価できる点だよね。
唯一・・・?
そうそう、2代目の僕はとことん初代に対抗していったからね(笑)。
初代のやることなすこと、否定していきました。
初代からするとどうでしたか?
本当にいつも対立してたからね(笑)。でも実は、今だからこそ言えるけど本当にありがたかった。
上の代の人の意見が絶対になると、団体として発展していくのは難しいよね。2代目で、下の代が上の代に意見を言える環境を作ってくれたのは大きかったと思う。
続く3代目はどうでしょうか?
次の僕たちの代も団体を長期的に存続させるためにいろいろと工夫しましたね。例えば合宿、忘年会を始めたのは僕たちの代でした。あとパ長(コンパ長)を作ったりとか。
それは定例になっていて今でも続いていますね。
1代、2代の時はサークルといった感じじゃなかったんですよ。ただ漫才をする集まりというか・・・。漫才をするためだけに集まってたというか・・・。
確かにそうだね。僕らは同じサークルのメンバーであったけど、友達ではなかった(笑)。
あと、笑いのあり方についても新しい流れを作りましたね。シュールギャグを入れました。
俺は最後まであの良さがわからなかったけどね。でもまあウケてたし。
上の代にこだわらず色々してみるのは大事ですよね。僕らの代までは彼女いないネタとかばっかりやってましたから。
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3代目までは運営は順調なように感じるんですが、大変な時期はなかったんでしょうか。
4代目は、大変そうだったよね。
はい。4代、僕以外ことごとくフェードアウトしちゃったんですよね。
フェ、フェードアウトですか?!
うん。完全に辞めたわけではないんだけど、僕から働きかけてようやく活動に参加してくれる感じ。
実際コントとか漫才とかも他の学年の人とばかりやってた。
それは団体運営の上で大ピンチですね・・・。どうやって切り抜けたんですか?
想いですね。僕は笑論法を残したかったし、次の代に何かを渡したかった。
だから、駒場小空間(駒場にある劇上映などに使える建物)を使い始められるように交渉したり、僕なりにできることをしました。
次の僕たちの代は4代の武政さんが頑張られていたを見ていたので、みんなで力を合わせて想いを受け継いでいこうという雰囲気ができていました。
3代の方々が定期的な合宿等を作ってくださったので、僕たちの代ではちゃんと「サークル」らしくなったんです。一緒に旅行に行ったりもしました!
5代目のみんなが部室に来てくれて、一緒に活動できたのは本当に嬉しかった。
他にも、熱量があって路上ライブを定期的に行うコンビも出て来たりしました。落研に勝つことを目標にして頑張ってましたよ!
原点回帰じゃん。
団体も順風満帆ですね。
それがそうでもなくて。1つ下の6期が少し元気がないように感じたんですよね。
そうですね。他の代と比べると私たちの代は少し元気がなかったように思います。
それもあって、一時サークル解散の危機もありました。
一体どうしてそんなことになってしまったんですか?!
私と副代表の連携がうまくいかずに、悩んでしまって。だから仕事も分担できず、駒場祭ライブの準備が間に合わなくなってしまいました。
そしてライブを中止にするしないの話から、サークルを続けるべきかの論争に発展したんです。
あの時は大変だったね。代表を退いていた5代もフォローを入れました。
代表から外れた上の学年が下の学年の運営に対して口を挟むのは違うと思うけど、明らかに問題が発生してる時は手を貸すのも大切だと思う。一度代表を経験したものだからこそしてあげられることもあると思うし。
結局ライブはできたんですか?
なんとかやりきりました。
僕はそのライブを見たんだけど、うまくまとまっているいいライブになってたよ。話を聞くまで裏でそんなことになってるなんて気がつかなかった。
ただ気になったのは、揉めた時に『団体をなくした方がいい』という意見を出したのは団体活動に真面目に取り組んでいる人たちだったということです。
やる気がない人が『なくしたらいい』と言うんじゃないんですか?
やる気がない人は団体があってもなくても、どちらでもいいんじゃないでしょうか。
やる気があるからこそ中途半端な気持ちでやりたくないという思いがあって、もしそんな団体になってしまうくらいならなくした方が良いと考えるのだと思います。
なるほど、考えてみるとそうですね・・・。
僕はやる気がなくなるから団体がなくなるのだとばかり考えていたのですが、必ずしもそうとは言えないですね。様々な葛藤がありますよね。
お笑いをやること自体に熱量があっても、団体運営に熱量がある人がいないということもあり得ますし。
少なくとも運営に対して興味がある人がいなくなると団体存続は難しいと思います。
僕はまだ代表になったばかりなので何も言えないんですが・・・。
そうだよね。まだ1ヶ月もたってないよね。
ただ今回、上の代の人たちの団体に対する熱い思いを知って、これから頑張っていこうと思いました。
8代をいっぱい入れて外部に出て活動したいです!
やっぱり代によってスタンスは異なるものの、みなさんが笑論法に対して強い思いを持っているということが分かりました。
次は団体のあり方についてみなさんに聞いていきたいんですが、運営の上で団体自体がうまく機能しなくなっていくこともあると思います。こんな団体ならなくしてしまった方が良い、ということもまたあるはずです。
そもそもどうなったら団体をなくすべきだと思いますか?なくしても良いものなんでしょうか?
やりたい人がいなくなったらじゃないでしょうか。
所詮サークルなんでね。好きでやってるんですよ。やりたい人がいなくなって形骸化したらやめていいと思いますよ。ゆるくていいです。
僕の場合はやりたい人が自分だけになってしまったんですが、なんとか続けられました。1人でもいれば団体は続くんだということを身をもって証明しました笑。ただ、僕の場合は仲間もいない代わりに逆風もなかったんでね。6代みたいに対立が生まれてしまうとなかなかきついんじゃないかと思います。
でもまあ、どんな理由にせよ責任のある立場の人が仕事をしなくなっちゃたら団体としては難しい。各代がそれぞれ意識を持って、それぞれの特色を出していこうという意識が必要だと思います。
特にうちの場合はお笑いサークルなんでね、変わっていこうという意識が大切。変わらないお笑いなんて絶対面白くないでしょ。
みなさんの話をまとめると、やりたいという思いと実際に仕事をする行動力のある人が1人でもいれば、団体は残していくべきだということですね。
では明らかにサークルに対するやる気がなかったり、悪影響を与えたりするような人に対してはどう思いますか?そういう人は団体存続の足かせになると思うんですが。
いや、僕はそういう人をやめさせるという考えはない。だってサークルだから。好きでやってるんだもん。
僕らお笑いサークルの場合は、極端に面白くない人が問題になったりしますけど。あまりにも面白くないから、『本当にステージに立たせていいのか?!』となることはありますね。ただ演目の目立たない位置にその人の漫才、コントを配置することで全体としてはうまくいくことが多いんですよ。それぞれの扱い方の工夫次第ですね。
でも僕は本当に面白くないときは作り直させたりもしましたよ。やっぱりつまらないものは出したくないんでね。
俺も出演できるかどうかの基準は厳しくした。いくらサークルとはいえ、お客さんがいるものだからね、つまらないものは出したくない。落研にも勝たなきゃいけないし。
そうです。落研に勝たなきゃいけませんからね。
対落研スピリッツものすごい受け継いでいますね・・・。
そもそも今までの話を聞いていて、団体の存続についての考えもみんなと違うと感じた。
俺は質の高いものを作りたくて団体を作ったから、やりたい人がいなくなったらじゃなくて、お客さんのことを考える人がいなくなった時点でこのサークルはなくすべきだと考えてる。
創始者と継承者はそこが違うんですよね。創始者は自分が作ったものだから団体をなくしてしまうことに抵抗がない分、なくすハードルを低くできますが、後の人は積み重なってきたものがある分そう簡単にはなくせないですよね。
こんな高々7年しか続いてない団体に伝統も何もないけどね。落研ならまだしも。そう考えると落研もすごいな・・・。
伝統という話が出たので最後の質問をさせていただきたいんですが、団体の伝統に対してはどんな風に考えていますか?守るべきでしょうか?壊すべきでしょうか?
やっぱりお笑いは枠にとらわれないほうがいいよ。伝統はどんどん壊していくべき。僕も上の代には思いっきり歯向かってたからね。
そうだね。戦い大事よ。上の代のやることを壊していこうとするやる気と行動力がないと団体は続いていかないと思う。
初代、2代の方がそう言われると下の代の方の団体についてのスタンスも変わりますよね。それを受けて、最後に7代の内田さん!団体の伝統に対する思いを聞かせてください!
うーん、こんな上の代の方がおられる場所じゃ話しにくいですね・・・笑。
僕は伝統は理解、確認すべきだが守るべきではないと思います。伝統というのはこれまでの試行錯誤の積み重ねの結果生み出されたものだから、必ず参考にする上で役に立つものだとは思いますが、ただ盲目的にそれに従っているだけだと形骸化してしまうと思うんです。大切にしながも批判的な目を持つことが必要だと思いますね。
それ正解や・・・。
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みなさんいかがだったでしょうか。
座談会をしてみると、それぞれの所属している代や本人の気質による、団体の見えかたの異なりに気づきました。
ものの見方が異なる個人が集まってできているからこそ、団体には葛藤や軋轢が生まれます。
団体という枠にとらわれずに、一旦その団体から抜け出した自分というものも検討した上で、団体との関わりを考えることも必要です。
とはいえ、団体に関する問いには一つの答えはありません。
この記事をきっかけに団体について考えてくださると幸いです。
取材に協力してくださった笑論法のみなさま、そしてここまでこの記事を読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました。
4代目代表が率いる「四期卒業ライブ」
斜に構えてる奴ほど漫才は面白い傾向にあります。曲者揃いの彼らが、全力のネタをお届けするとなると、期待です。12月22日(土)@駒場 駒場住区センター 目黒区駒場一丁目22番4号
12月23日(日)@本郷 シメンソカ 文京区本郷6-26-9 MRビル3階詳細と4期漫才師たちが勢揃いのTwitterアカウントはこちら!