人文学がなくなるかもしれない…?学問の危機に立ち向かう駒場祭企画に迫ります

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問われる人文学の必要性

───人文学が廃止ってどういうことですか?

 

廣川さん:2015年に文部科学省が「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」という通知を出したのが発端なんですけど、

中でも、

特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、18 歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする。

という一文が人文学を軽視した国の判断だと人文界隈から批判の声が上がりました。

本来の文部科学省の意図とは異なる見解が広まっているっていう説もあるんですけど、とにかくこの通知を皮切りに人文学は必要か否かという議論が盛んになって。

この件で「理系の学問は役に立つが、文系の学問は役に立たない」っていう認識が国民に結構浸透しちゃってるってことが分かったんですよね。

もしこの認識がどんどん広まっていったら、文系学部が廃止されるだけじゃなくて、高校の授業科目から、少なくとも今ある形での国語や社会がなくなってしまうなんてこともあるかもしれない。

 

───深刻な状況なんですね……。そんな風に人文学が役に立たないと見なされてしまうのはどうしてなんでしょう。

 

原田さん:一つには、人文学のアピール不足があると思います。

五月祭を見て回ったとき、理系の、それこそ工学部の展示だと、人工知能を使って画像を処理してたり、機械作ってたり……。
単純に面白いなって思ったんですよね。全然知らない分野ですし。

それに、これだけ面白かったら学生って集まるよねって

AIとか自動運転とかってメディアに露出する機会が多いし、みんな興味持つじゃないですか。

最新の技術ってやっぱり惹かれますよね。

そう考えると、文系学部廃止って結局、人文学がアピールする機会が少ないのが理由の一つなんじゃないかなって。

ジンブンとジブンをつなぐ

───確かにあんまり人文学の展示って見ないですね。ではジブン×ジンブンではどのように人文学をアピールしようと考えているんですか?

 

廣川さん:まず、企画の目玉の一つに『ジンブンアトラス』という企画があります。

文章とか絵画とかに対して、考えたことをみんなで書き込んで展示するというものなんですが……。

 

同じ院生でも、一つのものを見たときに考えていることって全然違うんですよ。

各人が一つの物を見て、どんな風に面白さを引き出そうとしているかを見せることで、物事を面白くさせる方法がいっぱいあるよっていう可能性を示したいなって思ってて。

 

───物事に対するアプローチの仕方を見せることで人文学をアピールしていくんですね。

 

原田さん:そうですね。そもそもアピール不足以前に、人文学ってどんな学問なのかがそもそも分かりづらいという問題が根底にあると思うんですよね。

理系の学問って名前から何をやっているかが想像つきやすいんですけど、人文学はどういうアプローチをしているのか学問名からは想像がつかない。

廣川さん:そういうイメージのつきにくさが人文学離れにつながっているんだとも思います。

例えば高校生にとっては、自分の興味が人文学にあてはまると気づくことのってまず難しいと思うんですよ。

国語、数学、理科…って区切られてた世界からいざ一歩出て、自分が抱えてる疑問がどの学問に通じるかってなかなか分からないじゃないですか。名前からイメージがしにくい人文学は特にそう。

知らずに進学しちゃって進振りのあとに、あんな研究室あったんだとか思うのもあるあるな現象で。

思い当たる東大生も多そう。

だから、今回の企画では、人文学にはこんなに色々なアプローチの仕方があるということを伝えることで、大学であの扉を開けば自分の知りたいことが知れるかもしれないっていうひと筋の光明だけでも与えられたらいいなって。

 

これは世間の議論が渦巻いている、この状況だからこそできることだと思ってます。

高校生以外にも、人文学が危機に立ってるってことは報道で何となく知ってるけど、自分には関係ないかもとか、そんなに危機でもなくない?とか思ってる人に、自分ともちょっと繋がってるかもしれないなっていう道筋を見出してもらって、自分ごととして考えてもらう機会にしたい。

そういう意味で「ジブン×ジンブン」というタイトルが効いてくるのかなと思います。

 

───タイトルにそんなに深い意味が込められていたんですね……。

 

廣川さん:あと、人文学そのものだけじゃなくて、文系の大学院がどういうものかっていう実態も伝えていきたいと思ってます。

一般的にも、やっぱり研究って聞いてまず思い浮かぶのって、試験管とか白衣とか理系の研究のイメージだと思うんですよね。

確かに、「研究」と検索すると圧倒的な試験管の登場率…。

でも一言で研究っていっても各研究科によって内容が全然違うんです。

そこで「人文学の大学院では何をしてるか」を伝えたくて考案したのが、『文学部長賞を奪取せよ』というカードゲームです。

論文の中間報告会を場面に設定して、誰が一番うまく良いカードを集めて最初に上がれるかを争います。
批判カードとか、図書館焼失カードとか、実際に中間報告会と口頭試問やそれに至る過程で使うものをカードにして、論文を先生たちに読んでもらう現場を楽しみながら想像してもらえたらなと。

カードゲーム面白かったって思うついでに、人文学を学ぶって面白そうかもなっていう気持ちを一緒に持って帰ってもらえるような工夫をしています。

 

───人文学だけでなく、人文学の研究についても伝えていく企画なんですね。

 

次ページ:「人文学とは何か」を熱く語る。

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美味しいものが食べたいです。

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