八月某日、UmeeTの元へ「東大生や東大の卒業生などが運営している場所が渋谷にあるので遊びに来てみませんか」との依頼が来ました。
あ〜〜〜!!フリースペースみたいなやつね!!!アレね!!!あのよくあるやつね!!もうそういう記事たくさんあるので大丈夫です!!!!!!
と返信しようと思ったのですが続きを読んでみると、その場所の説明がどうも変なのです。それがこちら。
「洞窟というか、可塑性の高い器をつくった程度で、そこでいまビオトープが生まれてるみたいなイメージです。」(原文ママ)
この世の胡散臭さを全てかき集めたような一文。
ここまで怪しいと逆に行ってみたいと思うのが人間の性ということで、怖いもの見たさで「取材させて頂きます」と返信をしました。
そして、取材当日。
そこにあったのは・・・
♩♪♬〜(民族儀式っぽい音楽)
結果:予想より怪しかった。
???:ようこそお越しくださいました。
───は、はじめまして!!私UmeeTの者で、あの、その、全然敵の黒魔術師とかじゃないんですけど、あの、あなたは…?
???:このスペースの運営をしている者です。ただ顔や名前は出したくないので、今回は羊のぬいぐるみが案内役ということでお願いします。
───????????
───??????????????
羊さん:外観なんですが、このスペースの創案者が少し変わった方なのでかなり怪しいんですけど、私たちは怪しい団体ではないのでご安心ください。笑
───羊に言われても説得力がないのですが、ちなみにこの丸い照明器具は何を表しているんですか?
羊さん:業(カルマ)を表しているらしいです。
───??????????????????????
───気を取り直して、このスペースについての基本的な情報から教えてください。
羊さん:はい。この場は「学問や芸術に真面目に取り組んでいる人のための居場所が少ない」と思ったことをきっかけに、半年の準備期間を経て去年の12月に始まりました。
そのため利用者にとっては、自分の研究室やアトリエのような空間だと思います。
───学問や芸術などに真面目に取り組んでいる人のための居場所が少ない・・・?
羊さん:はい。以下は創案者の考えなのですが、
多分、自分の名前とか作品が既存の枠組みによって分類され切らず、そのまま固有の概念になってしまう、というような人がそれに当たるんだと思います。
そういう人たちって、もはやそれだけで一つの世界観をつくっていくと思うんですが、今はそういった人たちが自分の手の届く範囲をこえて知的に旅をするご縁が生まれにくい状況になっていると感じています。
ここは、そのような知的な旅ができるような空間にしようとデザインされたため、一見するとよく分からない不思議なものもありますが、それらはこのスペースを設計・企画した人が意図したもので、実際我々も特に気にしていません。そんなものです。
───だから、このような空間になったというわけですか・・・。
羊さん:そういうことですね。「学問や芸術の魅力的なあり方」を概念、実装ともに純粋に突き詰めたらこうなったのだと思います。
───具体的にどんな方が利用しているんでしょうか・・・??
羊さん:ドラえもんをつくろうとしている人や、部屋に砂を敷き詰めて生活している人や、自分の細胞から作品をつくっている人や、地理学で博士一年の時に史上最年少で日本学術会議のメンバーになった人などがいます。
───・・・・・・・・・・・・・・・・・??(部屋の空調の音だけが聞こえる)
羊さん:ちょうど一人来たので、お話を伺ってみますか?
───めっちゃ緊張してきたんですけどお手洗いお借りしていいですか?
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現れた利用者の1人は、筆者の前に座り、おもむろにラーメンをすすり始めた。
───ラーメンを食べているところすみません。よろしくお願いします。
ラーメン:よろしくお願いします。(ラーメンをすする音)
───どんなことをされている方なんでしょうか?
ラーメン:私は会社でも働いていますが、自分の体の組織を使った作品をつくっています。いわゆるバイオアートというものです。この前は自分の髪の毛と好きな人の髪の毛から醤油をつくりました。(ラーメンをすする音)
───ちなみにその醤油は食べましたか??
ラーメン:断ち切れなかった思いを整理しようと思い、無精卵でつくった目玉焼きにかけて食べました。(ラーメンをすする音)
───なるほど……………………ッ……………!!!!!
(10秒間の静寂)(ラーメンをすする音だけが聞こえる)
……………………実際この施設を使ってみてどうですか?
ラーメン:はじめは「カルマ」とか「洞窟」とかいうスピリチュアルっぽい言葉を聞いて不安だったのですが、入ってみるとそういう趣味は創案者だけのもののようで、
ただただ快適な環境と、お互いに寛容で誠実な利用者たちのおかげですごく居心地は良いです。
一般的なフリースペースって、私にとっては少し利用者がギラついているイメージがあって苦手だったんですよね。ここならそういう心配もなく、違和感なく存在できる感じがしますね。(ラーメンをすする音)
───ありがとうございました…!ラーメンを食べている中、失礼致しました。
ラーメン:いえいえ、ご苦労様です。(ラーメンをすする音)
───次は、実際このスペースに何があるのか見せてもらっても良いですか?
羊さん:では、一服がてらスペースを一周ご案内しましょうか。
利用者の要望に応えて、本やコンピュータ、楽器などが自然に手にとれるようになっており、キッチンスペースなどもあります。
(どんな本が置いてあるのか気になった方はこちら)
───こんな快適な環境を、本当にタダで使って良いんですか???
羊さん:はい、もちろんです。「儀式」を通過すれば。
───??????????????
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───いったい「儀式」ってどんなプロセスを経るのですか?
羊さん:自らの存在に紐付いたことについて、普段の利用者(過去の通過者)と共に5時間以上語り合える場が設けられます。
───5時間って300分の5時間ですよね?
羊さん:はい、そうですね。
世界観をつくり込んでいるひとたちが楽しく過ごし、わくわくし続けるためには、共鳴を確かめる時間と場が必要なのです。この儀式を楽しむためにはそれ相応の熟成が求められますしね。
儀式を通過しているひとたちに関しては、「5時間では全然足りない」と言ってくれることもありますね。
羊さん:ですから、こちらとしては儀式を通りさえすれば特に利用者の制限はしていません。駄菓子屋のおばあちゃんとか来てくれると嬉しいんですけどね。
───5時間以上語れる駄菓子屋のおばあちゃんってこの世に存在するんですか?
───ここでは「組織」を作るのではなく、あくまで「場」を作ることを目的としているということですが、場を作るとはどういうことを意味しているのでしょうか?
羊さん:おっしゃる通り、組織をつくっているという意識はありません。「組織をつくる」と言うと、つくり手の意図や目的意識みたいなものが支配的になると思うのですが、
この場のように時間と空間からなる、言わば「土壌」を醸成するという場合には、利用者同士の相互作用によってその雰囲気が思わぬ方向に変わっていくわけですね。
そうやって文化が染み込んだ土壌、すなわち「風土」には、外側から無理に色が入らないようにしているので、内側から自由に彩られていくといいなと思っています。
───常に変化していくわけですね。
羊さん:そういうことです。今こうやってインタビューされていますが、半年後は全然違うものになっているかもしれませんし、そもそも風土とはそういうものだと考えています。
───洗脳とかしてそうだなと思ったら真逆だった。
最初胡散臭いとか思ってしまってすいませんでした!!!
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私も最初のメールとその空間デザインで少し面を食らってしまったのですが、入ってみると本当に好きなことを極めている人が好きなように没頭できる環境、安心して自分の世界を探求できる環境が整っている空間でした。
そしてまた、一見怪しいからと言って話も聞かず拒絶するということが、知らず知らずのうちに未知との出会いのチャンスを奪っているのだなと身をもって感じました。
僕も入りたいなと思い、自分の研究について時間を計って話してみたら45分にも満たず、まだまだだなと痛感しているところです………が、
みなさんの中には「5時間余裕で語れるぞ」という方もいるのでは…ない…でしょうか…?あれ…?いない…?
そういう方は以下の連絡先に①好きな本②欲しい本の二つだけを書いて送ると、招待状が来たり来なかったりするらしいので、勇気を出して送ってみてはいかがでしょうか。
その先には、きっと予想外の出会いが待っているはずです。
メールアドレス:welcome2lab+fromUmeeT@gmail.com
Twitterアカウント:@lab_tter
追記:本文中にも記載あるように、この土壌が彩られた結果として、洞窟は上野へと移転しました。 それに際し、儀式の手筈などが記事にあるものから変わっております。 なお記事末尾の連絡先等に関しては変更はございませんので、好きな本や欲しい本をお送り頂けることお待ちしております。