どうもUmeeTライターのはせべです。
突然ですが、
当たり前をぶっ壊した世界に興味はありませんか?
こう言うと、ちょっと語弊があるかもしれません。
改めて言い直しましょう。
一旦立ち止まって、
現在の当たり前を壊して、
テクノロジーの未来を覗いてみたくありませんか?
「あたりまえをこわしたら何が見えてくるだろう」
そんなテーマの下、東京大学大学院情報学環・学際情報学府が開催する、テクノロジーの過去・今・未来をアートで表現する制作展に事前潜入してきました。
まずはこちらの作品をご覧ください。
※11月15日からの制作展に関する情報はこちらからどうぞ。
もし人間の感情を操作できたなら。
怒りや憎しみを取り除くことができたなら。
もしテクノロジーでそんな破壊的な技術ができたら、あなたはどうしますか?
要らない感情を取り除くのでしょうか?
どんな感情を捨て去るのでしょうか?
そんな当たり前をぶっ壊す作品について語ってくださったのが、制作展プロデューサーの大杉さん。
もし他人とか自分の感情をもう少し制御できたら人は救われるんじゃないかなって。
人には原始的な感情がいっぱいありますよね。他人を殺すほどの怒りとか、自分を殺してしまうほどの否定感とか。そういったものを救えるのではないかと。
──確かにマイナスの感情を取り除くことができれば、救われる人も多いですよね。どうやって感情を操作するんですか?
来場者の方には、なくしたい感情に相当するピンを脳の模型から抜いていただきます。
自分がなくしたいって思った感情を抜くんだけれども、その感情をなくすことによって人間がどんな結末を迎えてしまうのか、観察できるようになっているんです。
具体的には、選んだ感情に応じて『こころ』を基にしたストーリーがその感情を失われた物語として展開していきます。
──『こころ』というと、夏目漱石の『こころ』ですか?
はい。『こころ』では、「先生」という人が主人公である「私」に対して、一人の友人のKを裏切ったことを独白するんです。
「先生」は過去に一人の女性を巡って友人Kと争い、結果的に友人Kを自殺に追い込んでしまったということを。
──その女性をめぐる争いから特定の感情を消してみるわけですね。
そうですね。例えば、そこから闘争心を抜くとその物語はどうなってしまうのか。もしかしたら、友人Kは死ななくて済んだかもしれない。
『こころ』の物語は悲劇だと思うんですが、もしもテクノロジーによって人間の人格に影響を与えて、アンハッピーエンドがハッピーエンドになったとして、それはいいことなのか。
そういった疑問を投げかけていきます。
テクノロジーで感情を操作できるようになったら。そんな未来を見据えて私たちの感情の当たり前を破壊する。
果たして、感情を操作できる世界はどのような世界なのでしょうか?
私たちにとって「善い」未来が待っているのでしょうか?
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ここで、「あたりまえをこわしたら何が見えてくるだろう」という今回のコンセプトについて尋ねることにしました。
制作展のコンセプトについて語ってくださるのは、左からデザイン班のリチャードさん、コンセプト・デザインのリーダーの中原さん、そして、コンセプトを決めた眞鍋さん。
筆者:今回のコンセプトについて教えてください。
中原さん:みんなでやりたいことを話し合っていた時に、今までなかったものを表現したい、そして、テクノロジーがもたらしたものついて考えたいという話になりました。
眞鍋さん:それと、案を出し合ってる時に、「今に対して疑問を投げかけたい」「今を一旦壊してみたい」そう言う声も多く上がったんですね。
中原さん:そこで、テクノロジーが築き上げてきた当たり前みたいなものを壊すような作品を、テクノロジーを使って作ったら何か見えてくるんじゃないかと思い、今回のテーマを定めました。
筆者:「テクノロジーが築き上げた当たり前を壊す」とは?
中原さん:テクノロジーがもたらすのは破壊的な進歩だっていう話があります。テクノロジーが我々の日常を劇的に変えていく。例えば、自動車が生まれたら交通の概念が変わったのは有名な話で。
我々は今、テクノロジーによるパラダイムシフトの連続の中にいるんじゃないかなって。
パラダイムシフト(英: paradigm shift)とは、その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することをいう。パラダイムチェンジともいう。
(引用元:「パラダイムシフト」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2018年5月5日 (火) 14:17 UTC、URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/パラダイムシフト)
そんなパラダイムシフトの中で、「どうせ壊されるなら、いっそ自分たちで壊してこの先の未来を覗いてみよう」、そう思い至ったんです。
中原さん:今回の「Dest-logy」という標語にそのコンセプトが凝縮されていると思います。
筆者:「Dest-logy」????
中原さん:「Dest-logy」は3つの意味を込めて造った言葉なんですよね。
DestroyとTechnology、そして、Destination。
「破壊」と「テクノロジー」、そして「行く先」。
眞鍋さん:Destroyだけだとすごい破壊的でマイナスなイメージがあると思うんです。でもそれだけじゃなくて。
ポジティブに未来のことを考えたいから壊される前に一回壊してみてみようという、「Destination」を見据えた前向きな思いが込められています。
筆者:「Dest-logy」にはポジティブな想いが込められているんですね。この卵?電球?のデザインもコンセプトと関係があるんでしょうか?
中原さん:このデザインは、昔のパラダイムシフトのきっかけとなった電球がモチーフになっているんです。
そして、外を壊してみないと中身が見えない卵の性質や、殻を破っていこうという意気込みが反映されています。
リチャードさん:人工的なものと自然に存在するものが融合しちゃうような表現を目指してるってこともありますね。
中原さん:そうですね、それでちょっと当たり前じゃないものをモチーフにしようと。
中原さん:と、色々抽象的な話をしたんですが、「今までにない」ことを目指してるところが、ある程度共通しているところですね。今までにない考え方をアートとテクノロジーで表現するという。
筆者:そんな「今までにない」魅力の詰まった制作展、来場者はどのように楽しめばいんでしょうか?
中原さん:まず、体験型の展示を行っているので、来場者の方も参加して楽しめるということがありますね。先ほど紹介した、『こころ(edited)』もそうですし。
そして、我々制作者と来場者の方との間でインタラクションがある点も魅力です。
単なる作品展示ではなく、制作者が作品のそばにいるので、来場者の方は自由に意見を交換できる。我々からすれば、来場者の方のフィードバックを得て、作品に反映できるんですよね。
筆者:お互いが学び楽しめるなんて魅力的ですね!お話ありがとうございました!
では、引き続き作品をいくつか紹介していきたいと思います。
もうちょっとだけ当たり前をぶっ壊していきましょう。
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