【進学選択を徹底解説】経済学から読み解く進振りの生き残り方【前編】

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少年エの夢

少年エには、大きな夢があった。

……それは、混沌にまみれた現実世界を、経済学を使って正しく整理すること、そして、「人間社会は物理学のように、単純な理論を用いて説明できる」としてその混沌の原因となっている「歪んだ経済学」の闇を暴き、また混沌を逆に利用してマネーをどこまでも儲け続ける魑魅魍魎どもを退治して、今の資本主義の中でいつの間にか「人間社会」からあぶれてしまった貧困にあえぐ人たちを救うことだ。

「経済学で世界を変えてやる」

これからの自分の人生、世界の未来に思いを馳せながら、キラキラした目で東大へ入学した。夢の第一歩として経済学科に進学するため、日頃から努力を続け、テスト勉強も頑張っていた。1位を取れるポテンシャルもあった。

しかし、運命の女神のなんと非情なことか。少年エは、テスト期間中体調が悪くて、本来の実力を発揮することができずに、結果として経済学科への道は閉ざされてしまった。

金融学科は彼の目的ゆえ気に入らず(ディスってるんじゃないよ)、経営学科には何としても入っておきたかったが、それも従来の内定方式に阻まれてしまい、このまま留年するならと、彼は泣く泣く金融学科へと進むしかなくなってしまったのだ………

策士・少年イ

一方の、少年イ。

彼には、少年エのような壮大な夢はなく、ただ、グローバリズムの波に取り残されないための手段として、東大に入学。経済を学ぶ上で、ゲーム理論面白いな、との感想のもと、経済学や数学をやろうとする気概(だけ)はあったんだ(やろうと思うだけで、あとでやらないタイプ)。

でも、語学がそこそこできた少年イは、英語や、第二外国語として選んだフランス語でのコミュニケーションに逃避しちゃって、思うように経済学や数学のための時間が取れなかった…。

外国語の点数はまあまあ高かったんだけど、経済学部の学科で主に評価対象となる科目の点数は激ヤバ…。経済学でせっかく少しは興味を持てたゲーム理論をやるため、経済学科に行きたかったのに、この点数じゃ無理だよ…。

でも、留年はしたくない…。経営学科か金融学科に行くしかない…

留年はやはり嫌!

経営学科ではゲーム理論も結構扱うらしいけど、金融学科に関してはゲーム理論を扱っているイメージがない……(実際にはゲーム理論はいかなる分野でも活躍しています)。そもそも、数学まみれの金融学科でやっていける自信がない!!(重ねて言いますが、金融学科を貶める意図はありません)

そこで、少年イは一計を案じたんだ………

内定方式は、志望順のプライオリティがあるらしいじゃないか! 経済学科と比べて人気の少ない経営学科をあえて第1志望にすることでそちらへ内定できれば、金融学科には行かなくて済む!

……そして、彼の目論見は成功し、金融学科を回避することができたんだ。

以上を踏まえてみて、どうでしょう。従来の内定方式では、少年エのような、正直で、夢のために努力するような学生よりも、少年イのような、少々一貫性にかけるものの、重要な局面で策士ぶりを発揮する狡猾な学生を有利にする場合が存在してしまうのです。

……もし、少年イの計画が、ふとしたことをきっかけに、少年エにバレでもすれば、人間関係に亀裂が入るどころじゃ済みません。真っ赤な夕日を背に、汚れちまった多摩川の河原で、少年エ対少年イの不毛な殴り合いが勃発しかねないのです…

喧嘩別れした二人……

②受入保留(DA)アルゴリズム(基本形)

「受入保留(DA)アルゴリズム」は、あの謎説明を再々掲して、「二つの集合の要素間のマッチングにおいて、安定かつ最適なマッチングを見出すことのできるアルゴリズム」のことです。

そして復習ですが、「安定かつ最適なマッチング」が成立している状態とは、

  1. ブロッキングペアが存在せず、マッチングし得る最高のペアとマッチングしている
  2. 耐戦略性があり、嘘をついてもより良いペアとマッチングすることはない
  3. どこかのペアを崩せば、必ずどこかのペアが不幸になってしまう

のこと。

この状態を実現する受入保留アルゴリズムでは、志望しない学科とマッチングすることはありませんし、志望学生が未内定であるのに定員に空きがあることもありません。

分かりやすく言えば、「片思いは果たされないけど、両思いの相手がいるのに、別の相手とマッチングされることはない」ということ。

「安定かつ最適」ゆえに、少年エのように、成績がある程度高いにも関わらず経営学科への内定がブロックされ、泣く泣く金融学科に進むしかなくなるということはなく、また、ずる賢い少年イのとった、「志望順序偽りの戦略」は排除されるわけです。

受入保留アルゴリズムの仕組み

ここまで確認したところで、受入保留アルゴリズムによる問題解決の手順を書いておきます。

ステップ(1):まず、学生側が進学希望を出す

各学生は、志望する進学単位(ここでは学科)すべてに、志望順位をつけ志望登録する。

ステップ(2):次に、学科側が学生の評価順位を定める

各学科は、その学科に志望登録した全員について、その学科の独自の評価尺度によって、順位をつける。

ステップ(3):学科は、評価順に、第1希望の学生たちへ仮初めの席を与える

各学科は、まず、その学科を第1志望として登録した学生たちについて、ステップ(2)で高い順位についた学生順に、定数の範囲まで「暫定的に」席を割り当てる(この「暫定」に、受入保留の由来がある)。

ステップ(4):席を与えられなかった学生たちは、第2、そして第3希望へと順々に回る

席を割り当てられなかった学生たちは、それぞれ志望順位が次に高い学科に回る。

ステップ(5):学科側は、仮初めの席を与えた学生たちと、新たに回ってきた学生たちを比較。評価の高い順に仮初めの席を与える

各学科は、ステップ(3)で「暫定的に」席を割り当てた学生たちと、新たなステップ(4)の学生たちの両方を、ステップ(2)で高い順位についた学生順に、定数の範囲まで「暫定的に」席を割り当てる。

ステップ(6):ステップ(4)(5)の繰り返し

以降についても、ステップ(4)とステップ(5)を繰り返す。

 

さて、この手順通りに進めていけば、少年たちの内定はどのように変わるのでしょうか。夢を追う少年エ、そして小賢しい少年イの運命はっ!?

(ここで突然後編へ続く。しかしイッキ見を推奨)

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UTEA

UTEA(The University of Tokyo Economics Association)は、高校生や進学選択前の駒場生に経済学の面白さを知ってもらう機会を提供する東京大学公認の学生団体です。現在、東京大学経済学部3, 4年生が中心となって運営に携わっています。 経済学に関心を持つ学生を増やすことで、東京大学経済学部をよりアカデミックな魅力溢れる場にすることを目指すとともに、社会における経済学のプレゼンス向上にも貢献すべく活動しています。

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