平成29年度より始まったフィールドスタディー型政策協働プログラム(通称:FS)は、
東大が10県の自治体と連携して、50名 の学生がフィールドワークに赴き、各地域の地域課題の発見から政策提言までを行う
地方 × 東大
の可能性を模索する活動です。
南は鹿児島、北は青森まで、それぞれの地域課題に取り組んだ8ヶ月間。
今回は、その活動をもっと多くの人に知ってもらいたい。そして地域の魅力も発見したい!
そんな想いから五月祭で地域のいいとこ展(@農学部一号館一階新会議室)を開催することにいたしました!
今回はその予告として、青森と宮崎の活動を特集します!!
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こんにちは!青森県十和田市で1年間活動してきたかすみです。
みなさん、突然ですが、ネイチャーガイドってご存知でしょうか?
ネイチャーガイドとは、その土地の自然環境を活かし、旅行者に季節に合わせた様々なアクティビティを提案し、自らも指導することを言います。
私は十和田国立公園で実際にガイドツアーに参加し、ガイドの現状と役割について学んできました。
その活動の中で、体験を通して学んだ話を少しでも多くの方と共有できればと思い、ちょこっと紹介したいなと思います。
「自然と人間との共生」において、先人がどのように生きてきたでしょうのか?
そしてネイチャーガイドの役割とは何なのでしょうか?
現地では、奥入瀬渓流ホテルでアクティビティツアーのガイドをしている方に蔦沼散策コースをガイドしてもらい、十和田国立公園を支えているブナ林の働きについて自分の目で学びました。
ブナは、「橅」とも書くことから、昔から「用無し→役に立たない木」とされてきました。水分を多く含んでいることから、腐りやすく、木材として扱いづらかったためと言われているそうです。
では、何故十和田や白神山地には無数の原生林が広がっているのでしょうか?
ブナの葉は厚く、多くの水分を含んでいます。それが地面で貯水の働きをします。
そしてその地面を無数の菌類がネットワークを構築し、ブナ林の腐朽と再生を担っているのです。
これが、ブナ林が「何も手をつけなくても再生できる森」と呼ばれる所以です。
人々は昔から、「人に近い木」には地方名をつけて愛着を持って呼ぶことで、自然と「母樹を残す」「大きな木は切ってはいけない」という考えを持ち、「原生林を後世に残す」ことを選択してきたそうです。
ブナ林との生き方には、先人達の知恵があったのです。
奥入瀬渓流で苔散歩のツアーガイドをしている方は、そんなブナ林を支えている苔や菌の偉大さについて、「水量が多かったこの地に、苔がまず岩について、そこからブナをはじめとした様々な生命が誕生した」と語っていました。
ブナ林の中を歩いていると、気づいたことがあります。
ブナ林では、どんなに林の奥深くへ歩いていっても、何故かずっと明るいのです。
「ブナ林は母性を感じるような明るさを私たちに見せてくれる」
ガイドの方が、僕がここで一番好きな木です、と言って見せてくれたブナの木です。
そして気づきました。ブナの木は幹が白いから温かい印象をツアー客に与えてくれるのです。
太陽に向かって枝を伸ばしている姿は、まるで森を包むように天を仰ぎ腕を伸ばしている母のようにきらきらしていました。
あるガイドが、ネイチャーガイドの役割とは、「来る人のミスマッチを無くすこと」と言っていました。
自然の中に必要以上に人を踏み込ませないために、「最高の景色だけど見せないようにしている」「まだまだ隠している景色はたくさんある」と考えているガイドは多かったです。
「ただ綺麗ですよ」と人を呼ぶのではなく、「じっくり滞在して自然を見て行ってくれる人に来てほしい」。そのために、ガイドは「しっかりと伝えるサポートをしたい」と言っていたのが、印象に残っています。
ガイドツアーを通じて、人間のあるべき生き方を教えてもらったような気がしました。ネイチャーガイドツアーに参加するというのは、人生を少し豊かにすることへの投資なのではないかと感じます。
自然の「生きるための生き方」こそが、地域で昔から伝えられ大切にされてきた価値観であり、先人が長い間実践してきた生き方なのでしょう。「後世に伝える」ことを選択したことで、現代に生きる私たちも、その恩恵を享受することができるのです。
どうでしょうか?
少しでも、奥入瀬のブナ林について、ネイチャーガイドの方々の思いは伝わったでしょうか?
地域のいいとこ展では、ネイチャーガイドの魅力や、現地で出会った面白い方々や取り組みをご紹介させていただきます!是非、お越しください!