【どこまでが「正当防衛」なのか!?】東大法学部生が贈る大人気裁判劇【五月祭おすすめ企画】

2018.05.16
東京大学法律相談所

突然ですが、みなさん!

夜道って暗くて怖いですよね。

そんな時にもし、横道から人が急に襲いかかってきたら?

そして、とっさに押した結果、相手が転んでケガをしてしまったら……

私たちは罪に問われるのでしょうか……?

「いやいや、仕方ないっしょ!押さなかったら襲われてたんだよ?」

と、思ったあなた!もしかしたらこの4文字、思い浮かんでません?

「正当防衛」

法律では、

急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。(刑法36条1項)

という表現になります。

では、身を守るためなら何をやってもいいんでしょうか?

冒頭で挙げた例のように、相手に怪我をさせてしまったら??

実はどういうときに「正当防衛」が認められるかの線引きって、なかなかに難しいんです

同じ「人を押す」という行為であっても、事件の状況や行為者の認識など様々なことを踏まえて、法律をどう適用するか、慎重に判断する必要があります。

なので、一言で「正当防衛」と片付ける訳にはいきません。

自己紹介が遅れました、東京大学法律相談所です。

私たち「東京大学法律相談所」が、日頃学んでいることを生かし、より多くの方々に法律を身近に感じてもらうことを目的に、五月祭で開催している模擬裁判企画。一般の方々からの法律相談と並ぶ活動となっています。

難しそう……な法学の世界は、実は奥深くて、面白い!

ということをみなさんにお伝えしたい!という思いのもと、テーマ選びから脚本・演出まで、200人を超える所員が徹底的にこだわって創り上げています。

昨年は「アイドルと恋愛禁止条項」をテーマに、スキャンダルで解雇された女性アイドルの解雇が合法なのかを考える裁判劇を上演しました。

そして記念すべき上演70回目を迎える今年のテーマこそが…

「正当防衛」!!

聞いたことはあるけれどよく知らないこの言葉について、ここで少し一緒に考えてみましょう。

昨年はなんと約2700名の方にご来場いただきました!!

CASE1:勘違いしてしまった英国紳士

まず、みなさんに考えていただきたいのは、ある大きな勘違いをしてしまった英国紳士の話。

ある夜。酒に酔った女性彼女をなだめている男性がいました。

そこを通りかかったイギリス人男性は、女性が近くのシャッターにぶつかって尻餅をつくのを目撃。その女性は「ヘルプミー、ヘルプミー」と叫んでいます。(これは後で冗談だとわかりました。)

ジェントルマンな彼は、女性が暴行されていると勘違いし、彼女を救うべく2人の間に割って入ります。助け起こそうとしたのです。

そんな中、なだめていた男性の方を振り向くと、手を握って胸の前あたりに上げているではありませんか。

これはファイティングポーズ…自分に殴りかかってくる!と、またまた勘違いしたイギリス人男性は、とっさに回し蹴りをして相手は転倒。

蹴られた相手はその後死亡してしまった、という事件です。

皆さんはどう思いますか?

これは「正当防衛」と言えるのでしょうか?

「勘違いだったとしても、女性を守ろうと勇気を出したのは素晴らしい!」

「そういう状況で勘違いしちゃったのは仕方ないでしょ」

なんて思った方もいるのでは?

この事件は、

「勘違い騎士道事件」(通称

と呼ばれる日本で実際に起こった事件で、すでに判決が出ています。(最決昭和62326日 )

KNIGHT:どんな時代もみんなの憧れ

 

裁判の結果、イギリス人男性に「正当防衛」は認められず有罪と判断されました。(刑法362項傷害致死罪)

防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。(刑法36条2項)

身を守ったはずなのに何故なんでしょう?

実はこのイギリス人男性は空手3段の腕前を持っていて、回し蹴りは一撃必殺とも言われる空手の技の一つ。

空手の技は意外と危険

いくら相手がファイティングポーズをとって殴りかかってくると勘違いしていたとしても、それに対する防衛手段としてはアンバランスであった(「相当性を逸脱している」と言います)ことが、判決の主な理由でした。

要するに、

勘違いしていたことは認められたものの、

「ファイティングポーズから殴る」という行為に対して、「回し蹴り」は危険で強すぎる行為であることをイギリス人男性は認識していたこともあり、「正当防衛」は認められなかったのです。

裁判では、

「勘違いした」→仕方ない

「命を奪った」→殺人罪

のような単純な図式ではなく、

どのような状況だったのか、

イギリス人男性は「回し蹴り」がパワフルだとわかっていたのか、

といったあらゆる事実を踏まえて、判断することが求められているのです。

法律の難しさ、もとい、奥深さを体験していただけたでしょうか?

ではこんなケースはどうでしょう?

次ページ:CASE2 ドキドキの三角関係……!!

この記事を書いた人
東京大学法律相談所
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