「サークルって、なにやってるの?」
初対面同士の大学生がする、世間話の代表格。
ここでかつて国際系団体という答えを返していた私は、知っている。
これを言うと、かなりの人がカンマ3秒くらい表情を止める。
言いたいことは分かってる。
「意識高い系のサークルでしょ?」
「出会いとか求めてるやつでしょ?」
こんな言葉が、相手の顔にはり付いてみえる。
一つ言っておきたいのだが、私は意識高い系でも出会い厨でもない。
国際系団体に入ったのは、他でもなく新歓のアフターが焼肉だったからである。ちなみに焼肉新歓をしていたほかの団体は、派手さに気後れしすぎて新歓にさえ行けなかった。
ふつうの、ふつうの大学生である。
つまり「国際系団体」という言葉自体に、「難しいことを意気揚々と話す派手な集団」という強烈なイメージが含まれているのである。
はたして国際、という言葉を人々は分かっているのだろうか。
こくさい【国際】:複数の国家に関係していること。世界的であること。
コトバンク
よくもここまで「国際」的な要素皆無のイメージが形成されたものである。
「国際系団体」なんて星の数ほどあって、国際系団体全体の共通点なんて、それこそ「国際」的であること、つまりなにかしらで国を超えた活動をしていること以外、ほぼないだろうに。
一体何をやらかしたら、そんなイメージの偏りが起こりうるのだろうか。
そんな邪念を抱いたまま、私は「国際系」の人間たちに会いに行ったのである。
今回協力戴いた団体紹介
菅野さん:TFT-UT(食機関へのメニュー提供・アフリカへ寄付活動)
広瀬さん:日英学生会議(日英間での会議運営)
坂東さん:ADYF(アジア途上国へのリサーチ団体)
石橋さん:BizJapan(プロジェクト企画)
福田さん:AIESEC東京大学委員会(海外インターンシップ運営)
ーーー「国際系」というくくりって、「意識高い」やら「敷居が高い」やら、グローバルとは無関係なイメージと結びつきがちだと感じます。
また「国際系」の団体の中にも、あまりに色々な団体がありすぎて、結局「国際系」全体としてのイメージが湧かないんです。
「国際系」って、ぶっちゃけ何をするための団体なんですか?
広瀬(日英):視野を広げたい、自分の世界をもっと広げたいっていう気持ちが強いヒトが集まるんでしょうかね。
菅野(TFT-UT):今の時代、結局誰だって、何かしらの形で世界とつながっていますからね。
福田(AIESEC):単純に自分と違う価値観の人と関わるのが好き、というのは一番大きいかもしれません。
石橋(BizJapan):とくに出会ったことのない、自分とは全く違う人と話したいって気持ちは強いのかもしれないです。
大学の枠組みにとどまりたくないひとが大半だと思うんですよ。
それが、分かりやすく地理的な境界として、日本を出たいというような感覚に変化して、「海外に行きたいんだ」という強い思いが、国際系に来る要因になるのかもしれませんね。
「国際系」というとグローバル的な要素ばかりが押し出されがちですが、「国の違いだけが大事だ」という感じは、あまりしていなくて。
国を超えて集まって、国を超えて何かを一緒にやって、国を超えてインパクトを出していくのも当たり前。
でもそれは国だけでなく、取り組む問題の分野や、年齢、性別、文化についても同様だと思うんです。
国、というくくりも、地理的で分かりやすい境目であるだけで、様々な境目のなかのひとつの種類でしかないのかな、と思っています。
ーーー「国際系」、という言葉には、「境界を超えて他人と関わりたい」という意味まで広く含まれている、ということなのか。
でも自分と違う人間と出会う事って、結局自分にどんな意味があるんでしょうか?ただ知って終わり、だと勿体ない気がします。
坂東(ADYF):実際に国外へ渡航する団体であるからこそ感じるのは、視野を国際的に広げることが、結果的に日本を再発見することにもつながっていている点です。
私たちの渡航する先は、東南アジアなどのアジアの途上国が多いんです。
だからこそ、言葉が正しいかは分からないですけれど、渡航先の環境って「カオス」であることが多いんですよ。
もちろんそこで日本では得られない体験や、カルチャーショックは得られるんですけど、結果的にでもそれって、日本を再発見することにつながっているんです。
昨年インドネシアに行ったのですが、ショッピングモールに遊びに行ったときに、シャワー室がトイレに併設されていたのを見ました。
祈祷の時間のときに、シャワーを浴びる風習があるからだと聞いたのですが、日本にはこのような、宗教に配慮した設備が全然ないことに、初めて思い至りました。
日本ではない異国に行ったからこそ、排他的な日本の一面、イスラム教の人たちの立場で感じる日本の暮らしづらさを体感しました。そういう意味では、日本を捉える視野が広がったかな、と思います。
ーーーーああ。結局、自分を振り返るための比較材料として、海外があるのか。
「すごい、海外だ、違うんだ」と表面的な違いをみつけて満足するだけじゃなくて、そこから自分を知れるのか。
福田(AIESEC):僕の中では、むしろ違い、というより、結局どこの国の人でもあんまり変わらないんだな、という印象が強いです。
同じことで楽しめるし、下らないことで盛り上がれるんです。
今まで知らなかった国の人と、1人でも仲良くなったことで、ニュースでその国の話をきいたときに、仲良しの1人がきっかけで、その国に親近感が湧くこともあるんですよ。
とても新鮮な経験でした。
広瀬(日英):フリートークでの恋バナも盛り上がりましたよ。(笑)
石橋(BizJapan):カラオケ一緒にいくと楽しいですよね。
留学生にも、マイクを離さないやつはいる、と。(笑)
ーーー国際系団体で活動していくモチベーションは、サークルに入る前から自分の中にあるものなんですか?
石橋(BizJapan):入るときにはそこまででも、というメンバーもいましたね。
うちの団体は、たまたま説明会へ行ったのが、団体に興味を持ったきっかけ、という人もいる気がします。
広瀬(日英):私たちの団体は、小規模であることも影響してか、個人個人が目的意識を持っているんです。
他人から誘われて興味を持った、っていうのは、私の団体に限って言えば、ないかな、と。
団体の説明会を開いても、水戸とか、群馬とか、各地でアンテナを強く張っている人がキャッチして、個人で参加してくる人が多いんです。
坂東(ADYF):うちの団体は結構間口が広いというか、敷居が低く、自分も特別意識して国際系団体を選んだ人間ではなかったように思います。
大学入ったし海外には行きたかったのですが、元々ただ旅行するだけじゃ嫌だな、と考えていたところがありまして。
サークルの選び方は消去法に近いものではありましたが、活動していくうちに、国際系団体として活動していきたい、という思いが固まってきたのかな、と振り返ってみると思いますね。
どうやって入るのかは結構、多種多様だと思います。
ーーー入りたいと思う理由は、別にそこまできっちりとしたものである必要はないらしい。
実際に団体に入ってからの生活で、考え方が変わることもあるんだろうな。
ーーーそれにしても「国際系」って、単に国を超えた交流をする、ってことではないんだ。
全然自分と違うヒトに会うのは、確かに楽しい。
自分にはできないような発想や価値観を持ち合わせている人には、きっと誰しも、どうしようもなく魅かれてしまうのだろう。
ではその理念とやらに乗っ取って、彼らは一体なにをしているのだろうか。
「意識高い系」といわれるような活動の正体って、いったいどのようなものなのだろうか。