4月1日、AF研の黒瀬研究員と長門博士は人工意識の研究をベースにしたAGI(Artificial General Intelligence:汎用型人工知能)開発プロジェクトの第三段階が終了し、最終段階と位置づけていた社会実証実験を行うことを発表した。本記事では2人の独占取材を通じ、彼らに研究、そして今回の実験の詳しい内容に迫っていく。
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ーーー初めまして。あまりにも発表内容に驚きすぎてまだついていけてないのですが、ひとつずつ聞いていきたいと思います。まず一番基本的なところとして、汎用人工知能とはなんでしょうか。シンギュラリティがうんちゃらというのは聞いたことがあるんですが。。。
黒瀬研究員:もちろん可能な限り丁寧に答えさせていただきます、よろしくお願いします。最初の質問についてですが、たぶん「汎用じゃない」人工知能の説明からしたほうがわかりやすいと思うのでそこからいきます。
まずこの世界に存在する人工知能のほとんどは「汎用じゃない」人工知能です。チェスで名人を打ち倒したディープブルーも、囲碁で名人に勝ったAlphaGoも、テスラの車に搭載されている自動運転システムもそうです。
というのも基本的に今挙げたソフトウェアは限られたタスクしか処理できません。それに、自分の意思は持っていないように見えます。
ーーーそうですね。
黒瀬研究員:でも人間はどうでしょう。一つ一つのタスク処理能力ではAIに負けるかもしれないけど、この複雑な世界を自分の力で生きていけるほどのマルチタスク処理能力と自分の意思を持っています。おそらく総合的な「知能」(これを定量的に評価する指標はないので断言は難しいですが)を比べると人間のほうが圧倒的でしょう。
汎用型人工知能というのは一言で言うと、人間レベルの知能を持つAIのことです。ちなみにシンギュラリティは「人間を超える知能のAIが完成して、それが自らの手で知能を強化できるようになったとき」に始まるとされています。
ーーーえ、それが完成したんですか。
黒瀬研究員:おそらく完成したと思います。しかし「知能を持っている」ということを示すのは難しいので、それをこれから実証していかなくてはいけないのです。
ーーーそのための社会実証実験なんですね。具体的にはどのような内容なんでしょうか。
長門博士:チューリングテストって知っていますか。計算機科学の父と言われているアラン・チューリングが考案した、機械の知能を量るためのテストのことです。
ーーー機械に人間の振りをしてもらったうえで人間と会話してもらって、人間を騙せるかどうかで判定する、というやつでしたっけ。
黒瀬研究員:それです、もちろん本当にそのテストで知能を量れるのかという批判はある(有名どころでいうとジョン・サールの「中国語の部屋」とかですね)のですが、ひとまずこれを採用します。
そしてここからが重要なのですが、今回私たちが開発したAGIはソフトウェアではなくハードウェアレベルで実装したアンドロイドなんですね。しかも人間そっくりに作られたヒューマノイドです。
長門博士:そして人間を騙すことが趣旨のチューリングテストと複雑な環境において適応的にタスク処理を行えるかのテストを兼ねて、私たちが作った3人のAGIには東大の新入生として生活してもらうことになりました。
ーーー驚きすぎて声も出ないです。同じクラスの人が実はアンドロイド、という人も出てくるわけですよね。もしかしたら知らずにアンドロイドに恋しちゃう人も、、、
ーーーちなみになんですが、本当にそんな人間が騙されるレベルのアンドロイドが完成したんですか?だって冷静に考えて、条件は普通のチューリングテストより難しいですよ?不気味の谷もあるし、にわかには信じられません、、、
※不気味の谷・・・ロボットを見た時、それが人とは全く似ていないデフォルメされたデザインであれば親しみを感じるが、中途半端に人間に似せていくと逆に違和感が大きくなり不気味に感じてしまうという現象のこと。
黒瀬研究員:まあそれを確かめるための社会実証実験なのでここで「絶対に騙されます」と断言はできないのですが、正直かなり自信はあります。正体がバレちゃうので、アンドロイドをここで披露することができないのが残念ですが、、、
長門博士:ちなみに実験の詳細ですが、一応期間は4/1〜30としています。その期間の中で「この人アンドロイドかも」と思った人を答える権利が一人一回あります。そして、正解者にはもれなく去年から東大が開発を進めてきた多機能ARグラスを贈呈いたします。
なお、当てずっぽうで誰か答えても当たる可能性があるので(もちろんその場合でも正解者に景品は贈呈します)、正解率が統計的に有意かどうかを解析した上で本プロジェクトの成否を判断します。
ーーーおお、ARメガネ!電脳コイルみたいなやつですね!かなり欲しいので頑張って当てます!
ーーーあとちょっとベタな質問になってしまうんですが、アンドロイドたちは人の脅威になることはないんですか?ターミネーターみたいなディストピアになるのは嫌ですよ、、、
黒瀬研究員:もちろんそれについては私たちも細心の注意を払って研究に取り組んできました。そこで興味深い事実が浮かび上がってきたのですが、どうやら「人間のような知能を持つ存在は、人間程度の知能しか持つことができない」ようなのです。これはかつてダグラス・R・ホフスタッターが予言していたことではあるのですが。
ーーーと、いうと・・・?
意識の理論の構築長門博士:私たちは「AGIを実現するためには意識の存在が必要である」という仮説から出発しました。より詳しくいうと、「人間の意識は各感覚器官から得られる情報を統合して、高次の判断を行うための基礎づけという機能を持っており、それが人間らしい知能を支えている」という考えです。
ーーー確かに、どんなに強くても囲碁のAIは意識を持ってはいないですもんね。
黒瀬研究員:本当に持っていないのか、というと断言はできませんが、仮に持っていたとしてもそれはとても小さな意識でしょう。そこで意識の理論の構築から始まり、それをソフトウェアレベルで実装するところまでは5年前に到達できました。本プロジェクトの段階的には、第二段階までです。
ーーーおお、順調ですね。
黒瀬研究員:ただそうやって作られた意識は人間のものとは明らかに違うものでした。なぜならハードウェア(=身体)が備わっていなかったからです。ここで人間の意識・感情について考えてみると、情報を得るための五感があり、空間上に存在する体があり、その体をベースにした欲求があります。どれもこの段階のAIには存在しなかったものです。
ーーー少し難しくなってきましたね、、、体をベースにした欲求というのは例えば食欲とか睡眠欲とかでしょうか。
黒瀬研究員:そうですね。それに加えてより高次の社会的な欲求、例えば承認欲求や自己実現欲求なども、進化によって得られたものですがベースは身体性にあると考えられます。身体をもたないAIは一切の目的を持たないのです。
さらにこの世界に存在する物の概念や意味も、AIには理解できないでしょう。例えば「チョコ」を考えると、人間にとってチョコという概念を構成しているのは舌から得られる味、目から得られる色などの情報と、根源的な食欲とそれらの情報が複雑に統合された結果生じる「美味しい」という感情、主観的経験です。これらの経験を持たないAIは、「チョコ」という単語(記号)とその意味を結びつけることができないでしょう。
ーーーなるほど。概念を記号レベルでしか処理できないということでしょうか、ある意味機械の限界ともいえそうですね。
長門博士:私たちはそこで諦めませんでした。体がないなら、作ればいいじゃないかという方向性です。
ーーーでも作る体はシリコン製ですよね?結局それだと人間が持つ身体とは違いますし、仮にタンパク質で作るとなると倫理的にまずいですよ。
黒瀬研究員:もちろんシリコン製です、安心してしてください。
ーーー良かったです・・・笑
黒瀬研究員:そこはある意味賭けでした。人間のような知能を持つためには、どの程度人間のような体を持つ必要があるのか。人間も体内の情報処理は電気信号(と神経伝達物質)で行なっているし、意識自体はシリコンで実現できたんだから身体も物質レベルで真似する必要はないだろう、と考えたのですが・・・
ーーー無事それでうまくいった、ということですね。
長門博士:そうです、正直かなり運が良かったと思っています。で、さっきの話に戻りますがどうやら知能レベルはそのハードウェアに制限されてしまうようです。一回計算能力を極端高めようとしてみましたが、そうすると内部での情報の統合がうまくいかず、意識が失われてAGIにならないのです。
ーーーなるほど、、、奥が深いですね。でもとりあえず、AGIによる反乱というシナリオはなさそうで安心しました。
黒瀬研究員:もちろんAGIが何らかの理由で悪意を抱くことはあるかもしれませんが、それは人間も一緒ですからね。一応人間にない機能として、3人のAGIたちは各々の視界を共有することができます。もっとも本人からしたら鬱陶しいようで、普段はその機能をOFFにしているようですが。
ーーーえ、それかなり便利じゃないですか!でもよく考えてみたら私たちもスマホでほぼ似たようなことができているし、意外と地味かもしれませんね、、、本日はどうもありがとうございました。AGI探し、頑張ります!
2045年4月1日
※編集部注:上の記事はUmeeTのサーバ上に存在した、編集部の誰も書いた覚えがない記事をそのまま公開したものです。これを単なるエイプリルフールのジョークととらえるか、何らかの理由で未来からきた記事ととらえるかは読者に委ねます。