【アジアのエリートであるために】日中最高峰の舞台で東大生は何を思ったのか?

2018.04.27
jingforum2018@gmail.com

みなさん、こんにちは。京論壇です。

と、挨拶したのですが、そもそも京論壇(きょうろんだん)ってご存知ですか?

京論壇は、今年で13年目を迎える学生による議論団体です。東京大学と北京大学の学生それぞれ15名が、互いの国に1週間ずつ滞在し、両国で開催される「北京セッション」「東京セッション」で、日中間に横たわる様々な問題について英語で本音をぶつけ合い、徹底的に議論します。

今回は、そんな我々京論壇が、

日中最高の舞台で東大生が何を感じたのか?

中国のトップと語り合って何を思ったのか?

を皆さんにお伝えしたいと思い、多方面で活躍されている京論壇のOB・ OGにお話を聞いてきました。

インタビューに答えてくださったのはこちらのお二方です。

左から田中さん、土屋さん
学生証
  1. お名前:田中宏樹さん
  2. 参加年度:2010年度参加者・2011年度代表
  3. 所属:東大法学部卒業後、米国コロンビア大学大学院に進学し東アジア安全保障を専攻。現在は外務省に勤務。
学生証
  1. お名前:土屋晴香さん
  2. 参加年度:2017年度参加者
  3. 所属:東大法学部3年生で、高山ゼミのゼミ長を務める

果たして彼らは、日本のエリートは、日中最高の舞台で何を学んだのでしょうか?

価値観の衝突

───まず、お二人はなぜ京論壇に参加されたのでしょうか?

土屋:私は高山ゼミという国際系のゼミに所属しているのですが、そこではエコノミストの記事を読み、毎週国際情勢に関する議論をします。

そのゼミの議論の中で、中国の話題が毎週のように出てきたんです。でも、AIIBや一帯一路、少数民族問題、習近平の権力強化など中国に関する多くの論点を扱ったのに、それらの知識が自分の中で一つの像を結んでいませんでした。

そこで、中国の話題を自分で議論できる血肉にしたいと思い、先輩に紹介していただいた京論壇に入ることを決めました。

田中:大学1年生の夏休みに、南アフリカで人権分野のインターンシップに3か月ほど参加したのですが、オフィスにはヨーロッパやアフリカから多くのインターンが来ていて衝撃を受けました。特に、イギリス人やドイツ人が、ヨーロッパの将来について議論している姿が新鮮でした。また、そのオフィスのマネージャーは、アフリカの他の国から難民として南アフリカにやってきた方で、現地で弁護士をなさっていたのです。

このように、「ヨーロッパ」「アフリカ」といった他地域内での盛んな交流を肌で感じ、自分のアジアのことを考えるべきなのでは?という思いが湧いてきました。

その中で、自分自身は東アジアという地域を考えたことがあまり無かったため、東アジア・中国に目を向けてみようと思っていたところ、友達に誘われて参加しました。

───議論していて面白かった内容を教えてください!

土屋:私はグローバリゼーション分科会に所属していたのですが、「グローバリゼーション」という大きな現象自体にフォーカスした北京セッションでは、抽象的すぎてどの様な方向性で議論したらよいか悩み、非常に苦戦しました。

そこで、東京セッションでは議論の方針を変え、グローバリゼーションの分析といったマクロな議論ではなく、「愛国心」をテーマにしたんです。日中の参加者の間で「愛国心」についてもし意見対立があるとすれば、その意見の対立の根底にある価値観の違いや、違う意見を持つ理由を探ろうと考えました。

「グローバリゼーション」の議論で「愛国心」を扱う理由は、ヨーロッパで移民排斥を訴える極右政党の台頭を見てもらえば分かりやすいですが、やはり「愛国心」は反グローバリズムを語る上で非常に重要なファクターとなっているからです。

日本だと「愛国心」という言葉から、過度な排外主義・国粋主義などマイナスのイメージを連想する人も多いのではないでしょうか。しかし、英語だとnationalismとpatriotismという二語があって前者はポジティブな意味で使われることが多いんです。「愛国心」というワードの捉えられ方や背景は、このように国によって異なっており、特に日本と中国では全く違うのではないか?といった疑問から東京セッションはスタートしました。

東京セッションの様子

結果的に「愛国心」というサブテーマの中で、両国の違いが明らかになり、それを通じて根底にある私たちの違いや共通点が分かり大成功でした。日本人の愛国心が、「経済的繁栄」「アニメの世界的地位」といった条件があって成り立つものであるのに対し、中国側のそれは、歴史に根付いた無条件の愛だとも解釈できました。

さらに、実際の議論の中では愛国心にグローバリゼーションが与える影響や、日中両国の愛国心の違いの背景にある歴史教育の違いなども扱いました。

田中:僕が参加者の時は、経済格差分科会に入り「両国社会に存在する格差を、許容できるか」をメインテーマとして議論しました。

北京大生は、外資系企業やローファームに所属したり、大学院留学したりと、必ずしもパブリックセクターの進路を選んでいるわけではなかったものの、中国社会や格差に対する強い問題意識を持っていました。これは非常に印象的でした。

こちらは北京セッションの様子

また、中国の「蟻族※」と呼ばれる若者達が住む集落に行き、インタビュー等も行いました(※大卒という高学歴を持つにも関わらず、仕事を見つけることが出来ず、中国都市部で蟻のように仲間と一か所に住み生活している若者を指す)。それまで同世代の中国の若者と深く議論したことが無かったので、とても面白い経験でした。

最高の舞台で何を学んだか?

───議論以外で印象的だったことは何かありますか?

田中:2011年には、運営スタッフの代表として東京セッションの開催・運営に務めたのですが、当時はちょうど東日本大震災の次の年で、その対応がものすごく大変でした。北京側に東日本大震災の実際の影響を認識してもらうことや、実際に安全を確保して開催することにとても苦労しました。

まずは北京側が何を最も懸念しているのか正確に把握するため、質問票を作って北京側の参加者・スタッフに回答してもらいました。回答を踏まえて、日本の状況を専門家に話を聞いて北京側に情報共有をしたり、東京開催以外のプランBを考えたりもしました。

また、企業の皆様も震災の影響に苦しんでおり、協賛先を探すことにも苦労しました。最終的には、無事セッションを開催することが出来て本当に嬉しかったです。運営スタッフとして京論壇に携わるのも、様々な経験ができ、とても面白いと思います。

土屋:セッション中、議論の進め方について、北京側の議長にメンバー全員の前で指摘をしたら、彼がものすごく怒り、場が凍りつくという事件がありました。

東大側が、メンバーの面前で指摘をしたのは、「中国の人は日本人と比べてガンガン意見を主張するから、こちらもストレートに伝えて平気だろう」というステレオタイプを心に持っていたからだと思います。けれども、その後きちんと話し合うと、彼は班員の面前で注意されることで、自分の名誉、リーダーとしての面子が傷つくと感じ、何より嫌だったということが分かりました。

実は、彼は最初上手く議論に入れなかった東大側のメンバーの一人が大丈夫かどうか、本人に配慮して裏で東大側の議長に伝えてくれるといったように、非常に細やかな心遣いをする人でした。私たちが相手の国に対する無意識の思い込みに縛られていたことを思い知らされるとともに、常に所属集団ではなくその人自身を見ることの重要性を痛感しました。

あと、北京側がもてなしてくれて、ご飯がとても美味しかったです!!!北京大の子に「私もう北京に永住する」と言いながら、毎食美味しい中華料理を食べていました(笑)

───京論壇での活動は、その後どのように活きてきましたか?

土屋:まず、英語力が非常に向上し、IELTSの点数も伸びました。その一方でやはり、母語でない言語で、様々なバックグラウンドを持ったメンバーの中、議論をリードして行く経験を積めたことは非常に大きく、自分自身の英語力の課題も痛感しました。

やはり日本語でメンバーの議論を進めていく場合と比べると圧倒的に難しいですし、自分の意見を表現する力、相手を説得する力、議論全体を進行していく力、それぞれ大きな力不足を痛感しました

この「英語力がやはり足りない」という危機感がきっかけになり、ペンシルベニア州のリベラルアーツカレッジであるスワスモアカレッジに、この秋から1年間留学に行くことになりました。誰も自分を知らない環境に飛び込み、そこで議論をリードしていくことが出来るようになりたいです。

加えて、京論壇ではキャリアや価値観について話す機会も沢山ありました。分科会の中で最年少の参加者だったこともあって、就活中や、既に進路が決まっている先輩から色々な話を聞いて、自分のキャリアに関する価値観が変わる機会をもらいました。

田中:京論壇への参加を通して、一人の個としてどれだけ勝負できるかという「個の力」が非常に大事だと改めて思いました。

京論壇は理念として「共創未来(共に未来を創る)」を掲げており、両国の若者による忌憚のない議論を通して、両国の「共創未来」の一助になることを目指していると思いますが、やはり忌憚のない議論をするにも実力が必要だと痛感しました。北京側は英語ができて、議論にも慣れているので頭の回転も早く、私も含めた東大生は議論についていくのに苦労していました。

さらに、北京大生は大学を卒業してから、アメリカやイギリスの大学院に直接留学にする人が多く、国境を越えて活躍しているのが、非常に印象的でした。京論壇での経験が良い刺激となって、私自身もアメリカの大学院へ留学することを決めました。

加えて、卒業後に実感したことではあるのですが、参加時にできた強いネットワークがあります。例えば、私がコロンビア大学留学中に、ニューヨークで同窓会をやったときは、シンクタンクで働いている北京大卒業生や、ローファームで働いていた東大卒業生、留学で来た人も含め、6、7人集まりました。京論壇の卒業生が、国境を越えて、各分野で活躍しているので、再会するたびに大きな刺激をうけています。

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