ペンキ塗りのファサードに、アフロパリジェンヌの彼女がキメているこの写真。どこで撮った写真だと思いますか?
実はこれ、日本、それも東京・町屋で撮ったんです!!!
そう、今回の舞台は千代田線町屋駅から徒歩数分の仕立て屋さん。荒川区に、こんなアフリカンスポットがあること、みなさんご存知でしたか…?
こんにちは、スイミーのゆうこです。東大を卒業した後、今は京都大学でアフリカ現代美術を研究しています。連載形式で「東京に息づくアフリカ」、東京の中の「小さなアフリカ」を紹介していくことになりました。
初回のテーマは「下町アフリカ」。
下町の仕立て屋さんとの出会いを掘り下げていくと、アフリカの布がアジアに持つ意外なルーツ、さらには布をめぐる地球規模の交流史が見えてくるんです!
東大生も知らない「新しい東京」からは、今日本で広く持たれているアフリカのイメージを覆す「新しいアフリカ」の姿が浮かび上がってくるのです。
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「アフリカ地域研究専攻、現代美術がテーマです」
こう言うと、9割方、「想像がつかない」みたいな反応をされます。そう、イメージがないですよね。私も初めてパリやニューヨークと行き来しながら国際市場で活躍するアフリカ出身作家のことを知ったときは「イメージないなぁ」と思ったものです。
アフリカ現代美術を勉強する動機の底にある思いは、本連載のテーマと一緒のところにあります。
「日本で一般的な偏ったアフリカのイメージ以外にも触れたい!発信したい!」
「アフリカはもっとクールでもっとポップでもっと身近なのに!!!」
キラキラしてちゃらちゃらしたアフリカ研究も、ありでしょ??
真面目な話をすると、欧米系よりもっとアフリカとの関わりが遠い日本では、同じ今を生きる具体的な姿としてのイメージがなかなかありません。こうした認識に変化をもたらすことは、全ての問題への重要なアプローチでもあります。
【アフリカ現代美術についてはこちらで詳しく→パリで出会う最新のアフリカアートシーン。デザイナーから日本にゆかりのある陶芸家まで、インタビュー! 】
そんな想いを発信するために東京の中のアフリカを見つける連載を開始したのは、Little Africaというパリのベンチャー企業のアプローチに共感したからでした。そして本連載は、この Little Africaの協力の元、お送りいたします。
そもそもLittle Africaとは?
Little Africa
・「文化の力でアフリカのイメージを豊かにする」ためのプロジェクトを、パリを中心に国際的に発信するスタートアップ企業。アート・ファッション関連のイベント企画・参加だけでなく、自社製品として文具ブランドを展開するなどカルチャーブランドとしての地位を確立。フランス国内だけでなく、ニューヨークやリスボン、さらにはアフリカ本土のダカール、バマコ、マラケシュなど世界諸都市で活動を展開。
・その多岐に渡る事業展開の第一歩目は、「パリの中の小さなアフリカ」を紹介するガイドブックとガイドツアーから始まった。現在も中心的なサービスとして社を支え、社名のLittle Africaもここから来ている。
私はパリでの調査中にこのLittle Africaに出会い、「私が日本でやりたいことをもうやっている!!!!!」と大変な衝撃を受け、同時にその最初のアプローチに感銘を受けました。
アフリカ文化をそれ単体でアピールするのではなく、すでに人気な「パリ観光」の中に織り込むから、フランス人にも外国人にもとっつきやすい。さらに海外でイベントをする際も、その国にすでに息づくアフリカの歴史からアプローチするから、身近に感じられて成功しやすい。
「なるほど、そうやればいいのか!」
こうして、日本のみなさんに身近で新鮮なアフリカを感じてもらうために、「東京」のお出かけスポットから世界を覗く企画がスタートしました。ではさっそく荒川区のリトルアフリカに飛び込んでみましょう!
Zoom in Cover Girl!
表紙の写真の女性、Honorine はLittle Africa の共同経営者の一人でカメルーン系アフロパリジェンヌ。ソルボンヌ大学で歴史学を専攻後、経営を学ぶため現在北京大学に留学中!
中国資本のアフリカ進出が話題になって久しいけれど、もっと文化や人を通じてアジアとアフリカが交流できたらいいのに!というビジョンを持ち、アジアでも活動の幅を広げています。
今回紹介するのは、千代田線町屋駅から徒歩3分でたどり着ける下町「リトルアフリカ」。
1994年創業、現地直輸入の布を使った仕立て屋さんです。
「アフリカ屋」を経営されていらっしゃるのは、茂木佐和子さん。1980年代、ニューヨークに滞在中、アフリカの布に出会い、恋に落ちます。この素晴らしい文化を日本にもっと伝えたい!と一念発起、アフリカの布でお仕立てまで行う、このお店を立ち上げます。
アフリカの多くの国では、布の柄や色に意味があって、それを送ったり身に着けることがコミュニケーションの一部になります。これは日本の織物・反物などにも当てはまることでして、布の使い方やその文化的意味に、日本とも共通することを見つけられることも多いのです。
実はこのお店は佐和子さんのご実家で、もともとははきもの屋さんだったとのこと。下町のはきもの屋さんが、「アフリカの布を取り入れる」というイノベーションによって再生したとも言えます。
それを可能にしたのは、他でもない和装とアフリカの布の高い親和性ではないでしょうか?
アフリカ屋の素晴らしいところは、テーラーメイドなので、自分に合った小物や普段づかいできる洋服を作ってもらうことができること。そして佐和子さんご自身は、和の文化とアフリカの布の融合というテーマに取り組みながら意欲的な制作を続けていらっしゃいます。
アフリカの布で仕立てた和服・和小物の写真を以下にご用意しました。意外なほどにしっくりきませんか?
▲トーゴの市場にて。西アフリカの布による浴衣は驚くほどしっくりくる
▲元はきもの屋さんだけあって下駄や草履には素敵な作品がいっぱい!
織ったり、染めたりする行為自体がユニバーサルなものであるということを、アフリカ屋さんの作品たちからは感じることができます。
それにしてもこの妙にしっくりくる感じ…それもそのはず!これらの布のルーツは、実はアジアにあるのです。
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