こんにちは、苔です。
AT自動車の仮免許実技試験に3回落ちました。
1回目は、S字カーブで縁石に乗り上げてしまい、20秒で試験が終わりました。
2回目は、カーブを曲がる時に大回りをして反対車線に突っ込み、1分で試験が終わりました。
3回目は、完走しましたが最後の安全確認を怠って落ちました。
このように車の運転を苦手とする東大生もいる一方で、車をイチから作っている東大生がいることを皆さんはご存知でしょうか。
僕はこの団体の存在を知った時、「仮免を取ることさえこんなに難しいのに、車を学生だけでイチから作っているなんて一体どんなヤバい団体なんだ。」と思い、この度取材に赴きました。
その名も東京大学フォーミュラファクトリー(The University of Tokyo Formula Factory)通称UTFF。取材に行って、さらにそのカッコいい姿にただただ引き込まれてしまいました。
取材の待ち合わせ場所へ向かうと、1台の車を囲む3人組がいました。
—本日はよろしくお願いいたします。
みなさんが囲んでいるこの車はなんですか?
3人:これ、僕たちが作りました。
—え、これ本物の車ですよね?車って、学生だけで作れるものなんですか?
3人:はい。主に1、2年生10人の力で去年1年間かけてこれを作りました。
—作るっていっても、ただ出来上がったものを組み立てただけですよね?
3人:設計、部品の調達、資金の調達、溶接、配線、コンピュータ制御、塗装、全て僕たちがやりました。
—………………………………………………。
スゴすぎてちょっとよく分からなくなってきたので、詳しくお話を聞かせてください。
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—それでは改めて自己紹介をお願いします。
お名前:岡﨑 大地さん
所属:東京大学工学部機械工学科内定2年
役職:代表・車体設計
好きなもの:車
お名前:上田 朝陽さん
所属:東京大学工学部航空宇宙工学科内定2年
役職:エンジン周り
好きなもの:航空機・レシプロエンジン・ラーメン
お名前:前田 利基さん
所属:東京大学法学部内定2年
役職:マネジメント
好きなもの:車・写真・ネコ
—前田さん、すみません、今法学部って聞こえたんですけど、工学部の間違いですよね?
前田:法学部です。笑
ちゃんとこの前試験も受けてきました。
周りの人からもよく聞かれるんですが、別に文系がやっちゃダメなんてことはない。設計やエンジン周り以外にも僕にできる仕事はありますし、実際クルマの知識も、スポーツと同じ感じでやっていれば身につくものだと思います。
そうやって文系と理系が混ざって一台の車を作る環境も、学生ならではの魅力ではないかと思っています。
—(己の浅はかな質問に恥を隠せない筆者)
…それではまず東京大学フォーミュラファクトリーが一体何をしている団体なのか教えてください。
岡﨑:フォーミュラレーシングカーを自作している、東大生のレーシングサークルです。
自作した車で毎年9月に開催される全日本学生フォーミュラ大会に出場し、そこで優勝することを目指して活動しています。
学生フォーミュラ大会とは、学生が自ら構想・設計・製造した車によってものづくりの総合力を競う大会のことです。
性能やかかったコスト、実際のレース走行の結果から、車の安全性・デザイン・スピードが総合的に審査されます。
上田:F1のようなレースとは違って、あくまでものづくりコンペティションなので、大会で勝つためには車の製造面と実技レースのどちらにも力を入れないといけないんです。
ただ車を作るだけじゃなく、大会のためのプレゼンテーションやコスト報告にも労力を割かなければなりません。
前田:これが去年のコスト報告の書類です。
全てのコストの内訳や、部品の一つひとつのサイズと原価を記したものですが、厚みは法学部のレジュメとどっこいどっこいくらいですね。
岡﨑:また、車は人の命を乗せるものであるが故に、安全性が第一です。
そのため車を作る上で守るべきレギュレーションが細かく設定されていて、例えば車の部品のサイズはどれくらいだとか、人が座った時その人の頭が規定のラインから何cm未満でないといけない、というように非常に細部まで及んでいます。
180ページのレギュレーションのうち一つでも違反すると大会に出場することすらできません。99点は不可なんです。
その上、このレギュレーションは毎年変わっていくので、毎年必ず熟読してそれに合わせて車を作る必要があります。
—もしかしてレースの運転も皆さんがやるんですか?
上田:そうです。レース中の車は80km/hまで加速するんですが、このマシンは座高が低いので体感スピードは2倍の160km/hと言われています。
ヘルメットの下では歯を食いしばって運転しています。
上田:まず、前年の反省点を踏まえて、次の大会で作る車のコンセプトを話し合って決めます。こういう車を作りたい、という大まかな考えです。
うちは部員が少ないので、今年のコンセプトは工数の削減というところに重きを置いており、製造の際も役割を細分化せずに全員が一台を見るという体制を取っています。
大まかなコンセプトが決まったら、そのような車を作るためにはどのような部品を用いて、どのような設計をすれば良いかということを考え、実際に骨組みや部品を用意します。
—リアルな話、部品とかってめちゃくちゃお金がかかると思うんですが、自腹なんですか?
前田:エンジンなどの一部の部品などは渉外を通して企業様から提供していただいています。今年は10社以上のスポンサー様からご支援を頂いています。
作りたいマシンが決まったら、「このようなマシンを作りたいので、このような部品を提供していただけませんか」という風に企業様と交渉して、ご厚意で提供していただいています。
スポンサー様との信頼関係なしには成り立たないんです。
上田:設計と部品の調達が終わると、自分たちでパイプを溶接して骨組みを完成させます。
上田:骨組みができるとその土台にエンジンや配線、タイヤなどの部品を組み付け、やっと動く車が完成します。そこからは調整と試運転、走り込みを経て、大会となります。
—サラッと説明する割にやっていることが高度すぎるんですが、そういう技術って先輩から教えてもらっているんですか?
岡﨑:本当はそうなるんですが、僕たちがUTFFに入った当時サークル自体が潰れかけで、先輩がいなかったんです。なので、初心者ながら自分たちでサークルを立て直して、イチから技術を勉強していきました。
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今日の取材、驚きすぎて疲れてきたので一旦休憩挟んでいいですか?
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