こんにちは。ライターのりほです。
みなさん、お酒はお好きですか?飲み会が苦手だとしても、自分の好きな美味しいお酒を味わいながら飲むのは好き、という方は多いのではないでしょうか。
今回取材したのは、日本酒の魅力を国内・海外に広く伝えることを目的としたコンテスト「ミス日本酒」の2018年大会で茨城県代表に選出された、
東大大学院農学生命科学研究科・修士2年の宮内菜奈子さん。
わたしは日本酒がお酒の中で一番好きなので、「最高やん絶対取材したい」と思い留学先のアメリカから電話取材を申し込んだのですが、
この方、単なる「日本酒が好きな人」じゃありませんでした。思った以上にめっちゃガチでした。
わたしのように日本酒が好きな方はもちろん、そうじゃない方もこの記事を読んだら日本酒を飲みたくなるんじゃないかと思います。単に酔うためではなく、味わうために。
筆者:まず最初に、どんなきっかけでミス日本酒に応募されたのか教えてください。
宮内:父が日本酒が好きで小さい頃から身近にあったのと、自分の味覚にも合っていたので、飲み始めた頃からずっと日本酒は好きでした。日本酒って同じお米と水から作っているのに、銘柄によって幅広い味があるのにもびっくりして、面白いなと思って。和食居酒屋さんに行っていろんな銘柄を飲んでいました。
<そもそも日本酒とは?>
日本酒(にほんしゅ)は、通常は米と麹と水を主な原料とする清酒(せいしゅ)を指す。…同法において「清酒」とは、次の要件を満たした酒類で、アルコール分が22度未満のものをいう(3条7号)。
引用:「日本酒」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2018/3/1、URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/日本酒
宮内:わたし、進学振り分けの時に何が自分にとって一番大事かを考えた結果、「食べることが自分にとって一番大事なんだな」って気づいたんです。それで農学部に進んで、今は大学院で稲の土壌の研究をしているくらい、お酒を含めた食事自体が大好きで。
といっても学部時代は水泳部に所属していて、筋肉第一だったのとあと朝練があったりしたのであまり飲んでいなかったのですが、部活を引退してからは、「好きなだけ飲めるじゃん!」って思ったんですね(笑)
居酒屋さんで飲むだけでは物足りなくなって、自分でオンラインで取り寄せたり、酒屋さんに行って買ってきたり、旅行先で地酒を楽しんだりするようになりました。
筆者:え、酒屋さんにまで行かれるんですか!すごい。でもそれ、友達とかに「めっちゃ飲んでるね」とか言われません?
宮内:すっごい言われます(笑)特にミス日本酒の活動を始めてからはSNSにお酒の写真ばっかり投稿してるので、特に言われますね。
そもそも周りの人で日本酒が好きな人が少ないのが悲しいなあ、と思ったのがミス日本酒に応募した理由のひとつで。
なんだかほとんどの大学生にとっての日本酒って、居酒屋とかで安く売っている、美味しくない、酔うためだけのお酒なのかなって思ったんです。だから、日本酒はもっと美味しくて奥が深いお酒なんだっていうことを伝えたい、というのが応募した理由の1つです。
宮内:ミス日本酒に参加した大きい理由はもう1つあって、それが「日本酒の国内の消費量が減っている」ということです。
日本酒以外の選択肢が増えていること、あとは学生にも手が届きそうな安い日本酒は初心者は飲みにくい辛口のものが多いことが原因かと自分では思っているのですが。
ただ反対に、海外での消費量・輸出量は増えているんですね。インターナショナル・ワインチャレンジというワインの世界大会で、日本酒部門が新設されたりして、注目が集まっていて。
筆者:確かにわたしも、「1年日本酒とはおさらばだ…」と覚悟を決めて留学に来たんですが、意外とお店に置いてあって拍子抜けしました。
宮内:ですよね。とはいっても、日本酒って輸出する時には冷蔵しなければいけないので、冷蔵コンテナでの輸送と関税の関係で大体3倍くらいの値段になってしまうんですね。
輸出時の手間がかかる割には酒蔵さんにとっての利益率は国内で販売するときと変わらないので、新規参入はなかなか難しいんです。
そこから考えると、「外国人の方に、日本国内で日本酒を消費してもらう」っていうのが、日本酒を存続させるために大事なんじゃないかと考えていて。特に酒蔵さんは地方に点在しているので、有名な観光地だけでなく地方にお金を落としていただくことにも繋がりますし。
ミス日本酒としてそのPRができたらな、日本酒の種類や飲み方を国内だけでなく海外にも伝えられたら、と思ってるんです。
筆者:となると、ミス日本酒の活動は海外でも行われてるんですか?
宮内:グランプリを取ると、振袖で海外を巡って日本酒をPRすることが仕事の1つになります。歴代のグランプリの方々は全部で14カ国に行っていらっしゃいますね。
筆者:14カ国!めちゃめちゃ多いですね…!
宮内:今はトレーニングプログラムというのを週末に受けていて。ミス日本酒としてふさわしい女性になるために、華道の先生からお話を伺ったり、振袖を自分で着られるような訓練を受けたり、和髪も自分でできるように練習したりしていて、他の日本文化についても学べるので楽しいですね。
宮内:あとは茨城は東京から近いので、実際に茨城の観光名所に足を運んでSNSで宣伝したりとか、茨城の酒屋さんやアンテナショップにお邪魔してこんなお酒があってこういう思いで作られていますよ、っていうのをインスタグラムに書いたりもしています。
筆者:取材の前に宮内さんのSNSを拝見して、「わー酒屋さんたくさん行ってらっしゃるなー」と思ってたんですが、あれは運営の方のほうからここの酒屋さん行ってお話聞いてください、という風に言われるんですか?
宮内:いや、あれは自主的に回ってます!
もともと日本酒好きで酒屋さんに行ってたので。茨城行ったついでにふらっと立ち寄ったところで写真撮らせていただいて。
筆者:酒屋にふらっと立ち寄ることってそんなあります???
宮内:気になる銘柄を味見させてくれたりとかして楽しいですよ!
店員さんももちろん、全然わたしなんかよりもお酒に詳しいので、おすすめ聞いたりとか、こういうタイプのお酒飲みたいんですけど、こういう料理に合わせたいんですけど、っていう風に答えると快く答えてくれるし、自分の知識も増えるしでおすすめです。
筆者:確かに、日本酒のプロですもんね。どこかおすすめの酒屋さんとかってありますか?
宮内:谷中のあたりは酒屋さんがたくさんあっておすすめです。店頭で味見させてくれたりとかします。街並みも古き良き商店街、って感じで風情がありますね。
あと自分はやっぱり茨城の日本酒に詳しいので、銀座にある茨城のアンテナショップに行って、地酒をよく買っています。逆に茨城の酒蔵さんに行った時に、東京にアンテナショップがあるか聞いて行ってみたりとか。
宮内:酒蔵さんとかアンテナショップって生産者の方の思いを聞ける貴重な場でもあるので、そういうところでお酒を買った時は、味だけでなくそういった思いも発信するように心がけています。
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筆者:ここからは宮内さんおすすめの日本酒の銘柄や飲み方などについて伺っていきたいと思います。まずはおすすめの飲み方について。
宮内:わたしは最近日本酒のタイプによって飲む酒器を変える、っていうのをおすすめしていて。
筆者:酒器?
宮内:はい。みなさんだいたいお猪口で飲まれるかと思うんですが、そのほかにも色々な酒器があります。
まず日本酒のタイプっていうところを説明すると、日本酒は味や香りで大きく分けて、以下の4つに分けられるんですね。
それで最近、日本酒をワイングラスで飲むのが流行っているんですが…
筆者:①の華やかでフルーティーなお酒をワイングラスで飲むのがおすすめってことですか!
宮内:そうです!何がいいかっていうと香りが広がるんですね。見た目もおしゃれだし。
②のスッキリ爽やかな日本酒は夏に飲むのが多いと思うので、見た目が涼やかなガラス酒器とかが合うと思います。あとはシャンパングラスみたいな、細いワイングラス。
宮内:③と④は味わいの厚みを感じて欲しいので陶器の酒器で飲むのがおすすめです。ぐいのみとかお猪口とかですね。ただ④の古酒に関しては琥珀のような綺麗な色のものも多いので、その場合はガラスの方がいいかもしれないです。
筆者:わたしは熱燗がすごく好きなんですけど、向いてるお酒とかってありますか?
宮内:それは②のスッキリ、爽やか系、③純米系ですね!
特に②は、がらりと印象が変わって、味がまろやかになって、ふくよかさが感じられるようになります。ただ、ほかのタイプのお酒も、お燗には向いていないと一概には言えません。自分の好きな飲用温度を追求するというのも楽しいですよ。
おかんの温度も5度刻みで名前が付いているんですよ。名前もいちいち面白くて、人肌燗とか日向燗とか、確かにって思うネーミングです。
宮内:あと茨城の宣伝をさせてもらうと、茨城には笠間焼っていう江戸時代からある焼き物と、日本最古の現存する酒蔵「須藤本家」さんっていう酒蔵さんがあるんですよ。
筆者:最古の現存する酒蔵というといつくらいになるんですか?
宮内:1141年、つまり平安時代には存在していたことがわかっているっていうレベルです。いつ創立されたのかっていう史料が今の所見つかっていないので、それよりも古い可能性もあります。
その須藤本家さんの大吟醸酒はコンテストで金賞を取っているくらい美味しいので、その大吟醸酒を、江戸時代から続く笠間焼の器で飲んでみてほしいっていうのを最近言っています。歴史を感じられて絶対楽しいと思います!
筆者:日本帰ったら茨城直行します。
アメリカのスーパーで日本酒があったりすると、友達が「大吟醸酒」ってでっかく書いてあるラベルを指差して「これなんて意味?」とか聞かれるんですけど、いつもわからなかったんですよね。勉強になります。
宮内:ざっくり説明すると本醸造酒は醸造アルコールが入っているもの、純米ってついているものは醸造アルコールが入っていなくてお米と米麹だけで作られたお酒ですね。
でもわたしも知識がなくて答えられない経験を何回かして悔しかったので、利き酒師の資格をとりました。
筆者:利き酒師ってなんですか?!
宮内:わかりやすくいえば日本酒のソムリエです!試験では先ほど説明したような純米酒はなに、大吟醸はなに、といった説明だとか、あとは相手の心情とかシチュエーションに合わせて日本酒をどうおすすめしていくか、みたいなことが聞かれました。
でもやっぱり英語になると難しくて、外国人の方に説明できなかったのが悲しくて。それでつい1週間前に国際利き酒師の資格も受けてきました。まだ結果は出てないんですけど。
筆者:いやもうほんとに凄すぎる。愛だけじゃなくて行動力も。
※後日「国際利き酒師、合格しました!」とのご報告をいただきました。
筆者:日本酒は苦手で〜という大学生も多いと思うので、そんな方たちにおすすめの日本酒を教えてください。
宮内:そうですね、好きなお酒によっておすすめしたい日本酒が変わります。
まず、ビールや酎ハイのような、甘くなくて度数の低いお酒が好きな方には、度数が低くて飲みやすいスパークリング日本酒がおすすめです。
宮内:ワインや紹興酒のようなフルーティーなお酒が好きな方には、香り豊かでスイーツのような香り豊かな貴醸酒をおすすめしたいです。
あとはマッコリが好きな方、お米の甘みをしっかり感じたい方にはにごり酒をおすすめします。にごり酒は白いにごりが花吹雪みたいに見えるので、お花見の時にもおすすめです!特に冬から春にかけては、新酒と言って火入れをしない、フレッシュな酵素が生きているタイプのにごり酒がよく出てきます。
筆者:にごり酒って初めて知りました。お花見の時におすすめって風情があって素敵ですね…!
でも、銘柄を覚えるのって難しくありませんか?わたしは美味しいと思っても何を飲んだか忘れてしまうので、結局いつまでも銘柄の知識が増えなくて。
宮内:あ、それすごいわかります。わたしも最初それで悩んで、日本酒メモアプリとか使ってました。
あと居酒屋さんで日本酒を頼んだ時に、グラスで出てきたら「瓶を見せてください」って言って持ってきてもらって、その写真を撮ってインスタとかツイッターに投稿するのはおすすめです。
筆者:SNSに投稿!なるほど。
宮内:SNSすっごいおすすめです!あと、ツイッターだとお酒アカウントというものを持っている方が結構いて、 どこの酒屋さんに行ってどんなお酒をどう手に入れたとかを結構詳しく書いているので情報収集に役立ちます。
宮内:あと実は東大も日本酒を出していて、それがこちら、「淡青」です。
筆者:どうやって作ったんですかこれ?!
宮内:東大卒の蔵元さんって結構いらっしゃるんですよ。ホームカミングデーとかに東大蔵元会っていうのを開かれていたりして、行くと安く飲ませてくださったりするんですけど(笑)
その東大蔵元会のメンバーの方々の中でオーディションをして、決められたそうです。
わたしもこの前いただいたのですが、上品な香りで、冷やでも純米らしいコクが感じられまいした。人肌燗くらいにあたためると、ふくよかな味わいが花開いてさらにおいしいです。食中酒に最適だと思います。
筆者:買って家で飲むお酒のほかに、東大の近くでおすすめの日本酒のお店とかってありますか?
宮内:本郷キャンパス竜岡門近くの「縁(ゆかり)」っていう和食居酒屋さんが、日本酒の種類がすっごく多いんですよ!値段も優しくて、1合500〜600円とかなので学生におすすめです。
あとは上野や駒場、渋谷などにある、日本酒を原価で飲める居酒屋さん「日本酒原価酒蔵」によく行っています。ご飯も美味しくておすすめです。
筆者:いや〜〜〜最高すぎる。さっさと日本帰って飲みに行きたいです…。
宮内:日本酒を作る時に使うお米って、私たちがいつも食べているお米とは違うって知ってましたか?
筆者:え、知らなかったです!
宮内:酒造好適米って言って、大粒で背丈の高い、香りやすい稲を使っているんですが、育てるのがすごく大変なんですよ。
つまり日本酒をつくるのには、よい品質のコメと、あと綺麗な水、何百年と続いてきた技術が不可欠なんですね。だから日本酒は、その3つを守ることができた平和な世界、文化が日本にはあったこと、脈々と受け継がれる文化の象徴だとわたしは思っています。
だから日本酒ってある意味贅沢品なんです。それなのに他のお酒よりも安い値段で楽しむことができることに感謝したいですし、
ミス日本酒の活動を通して、その文化の貴さと感謝の心を伝えて、さらに世界の経済や人々の心に力を与えることができたらうれしいです!
穏やかな語り口から溢れ出る、日本酒への(半端ない)愛と情熱、それらに裏打ちされた行動力が魅力的な方でした。
宮内さんのインスタグラムはこちら、ツイッターはこちらから。SNSのフォロワー数が多いと最終選考の際に「発信力がある」とみなされて高評価に結びつくそうなので、宮内さんを応援したいなあと思われた方はどんどんフォローしちゃいましょう!
それでは、アディオス!