「世界一かわいい音楽を作れる」東大OB作曲家、ヤマモトショウさんに会いに行った

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「歌が下手だったのがよかったかもしれない(笑)」

ーお話を伺っていて、ヤマモトさんはバンド時代から現在まで一貫して、作家的な考え方なのかなと思いました。

たとえば音楽を始めるときにも、いわゆるシンガーソングライター的な思考だと、自分はどんな音楽性でやっていきたいのか、何を伝えたいのかということを考えていくと思います。ヤマモトさんはバンド時代から、そうしたある種「自分語り」的な姿勢が全くない。

そして、現在の作詞家作曲家という仕事、アイドルの音楽制作という仕事は、まさにそうした「自分語り」的なものとは対極の「共作」というスタイルですよね。しかもその中でも、フットワークを軽く持って、日々自分の音楽性をアップデートしているというのは、音楽家としてもパーソナルな方向にいかない方なのかなと。

そうした「自分語り」的な、パーソナルな方向にいく可能性は最初からなかったのでしょうか。

ヤマモトそれでいうと、僕は実は歌が下手なんですよ(笑)

ーそうなんですか(笑)

ヤマモトでもそれが良かったのかもしれないです。もし歌が歌えていたら、自分で歌おうと思って、どうにもならずに消えていたかもしれない。

この前、松本隆さん(編注:日本を代表する作詞家の一人。「赤いスイートピー」「木綿のハンカチーフ」などヒット曲多数。)がテレビで「日本でシンガーソングライターと呼ばれている人でまともな歌詞を書いた人は10人くらいしかいない」と話していて、たしかにその通りだと思いました。歌い手としての能力も作詞家としての能力もどちらも高い人なんて、そうそういるはずないんですよ。でも、そういう限られた人たちに憧れて、シンガーソングライターになりたいと思う人が多いんでしょうね。

ー本当にその通りだと思います。日本に限らず、世界的にみても、たとえばバンドというスタイルでパーソナルな要素が強いのは、ビートルズというあまりに巨大な才能が、最初の頃に現れてしまったからなのかなと。

ヤマモトそうですね。あとは、目指すなら多くのものを目指した方がいいですよね。たとえば椎名林檎さんに憧れてシンガーソングライターを目指す女の子とか、本当にたくさんいると思うんですけど、林檎さん自身は様々な種類の音楽にたくさん影響を受けて、シンガーソングライターをしているわけで。一人のわかりやすいスターを目指すのは楽ですけど、それではスターにはなれない。

 

「あなたには何ができるの?」

ーミュージシャンに憧れる若者の話が出ましたが、東大生でも、卒業後エンターテイメントで活躍したいと思う人はいると思います。最後に、そうした学生に対してアドバイスをいただければうれしいです。

ヤマモト学生に限らず、若手の人とかに「仕事ください!」と言われることも多いのですが、そういうときにいつも思うのは、「じゃああなたは何ができるの?」ということなんですよね。何ができるのかわからない人にあげられる仕事なんてあるわけないじゃないですか。よくある言葉でいうと、セルフブランディングということになるのかもしれませんが。

ーヤマモトさんも以前、Twitterのbioに「世界一かわいい音楽を作れます」と書かれていましたよね。

ヤマモトそうそう。そんなの、まあ言ったもん勝ちみたいなものですけど、それでも書いておくことには意味があるんですよね。特に作詞って、極論誰でもできるんですよ。そういう中で作詞家として仕事をもらうには、なにか自分の売りを明確にしてアピールしておく必要があります。

フィロソフィーのダンスをやってから、「哲学から影響を受けた」みたいにメディアで取り上げられていただくことも増えて、たしかにさっき話したように必ずしも哲学的な歌詞を書いているつもりはないんですが、それでもそういうキャッチフレーズがあるのはありがたいことだなと思っています。

そういう意味で、東大出身というのも、ポジティブに使っていければいいですよね。東大卒というとなんだかんだインパクトがありますし、それで相手の印象に残るなら、それに越したことはないんですよね。そういう部分が強い業界でもあると思います。

そうやって自分ができること、自分の売りを明確にしていくためには、自分のアイデンティティと向き合って、深掘りしていくことが必要です。自分の場合はやっぱりそこで、哲学がベースになっている部分もあるのかもしれませんね。

 

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悲観も楽観もなく、目の前の仕事にまっすぐ取り組む。けれども、ストイックという言葉では重すぎる、どこか飄々とした強さが伝わってくるような、終始淡々と進んだインタビューでした。

東大を受験しようと思ったとき、理系から哲学科に進んだとき、そして大学を卒業してミュージシャンを仕事にしようと決めたとき。過去のどんな大きな決断でも迷いがなかったのは、日々目の前のことに真摯に取り組む姿勢の裏返しのような気がします。

「これまで生きてきた中で一番の挫折はなんですか」という質問に、「挫折かあ…あんまり思い当たらないですね。まあある意味日々挫折みたいなもんですよ (笑)」と笑いながら教えてくれた姿が印象的でした。

 

ヤマモトさんの最新リリース情報はこちら。

2018.03.14 発売
1st Album「new life wave」

「new life wave」はSORORが過去に配信リリースした楽曲や、それらにリアレンジやリミックスを施したバージョン、新曲を含む10曲入り。今作のゲストには吉澤嘉代子、高野麻里佳(イヤホンズ)、藤岡みなみ、大森靖子、南波志帆、日向ハル(フィロソフィーのダンス)、ナナヲアカリのほか、SORORの楽曲に初参加となるコレサワ、山田愛奈、櫻井友理子(ハイスイノナサ)の10組が名を連ねている。

 

1st Album「new life wave」
¥2,500+tax / COCONOE RECORDS / CNQ-0007
【収録曲】※収録曲順は未定。
・ はなせばわかる feat. 吉澤嘉代子(Album ver.)
・ みんなわがまま feat. 高野麻里佳(Album ver.)
・ タイムリープ・タイムループ feat. 藤岡みなみ(Album ver.)
・ 大人の恋愛 feat. 大森靖子
・ ヴィーナス・ルール feat. 南波志帆
・ スモール・ワールド・ダイバーシティ feat. 日向ハル
・ カルチャー・カースト feat. ナナヲアカリ
・ 自分ファースト feat. コレサワ
・ おいしい声 feat. 山田愛奈
・ スプレッド・アウト feat. 櫻井友理子(instrumental)

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ABOUTこの記事をかいた人

murata

文学部美学芸術学3年。ポップカルチャー全般。

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